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残業を拒否する社員への対応は?正当な理由や解雇について

    問題社員

    #残業拒否

    #解雇

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

特別な理由がないのに、繁忙期であっても残業を拒否する社員がいるのは問題です。職場の士気や企業経営にも悪影響を与えるため、厳しい処分を検討せざるを得ないこともあるでしょう。

ただし、残業を拒否する社員への対応を間違えると、パワハラや不当解雇などのトラブルにつながるおそれがあります。残業を拒否する理由を確認して、慎重に対応する必要があります。

この記事では、残業を拒否する社員への対応や、残業命令を適切に行うためのポイントなどについて解説します。

残業を拒否する社員への対応は?

正当な残業の指示を行ったのに、社員から残業を拒否されてしまった場合には、以下のような手順で対応を行います。

  1. 残業の理由を説明して説得する
  2. 説得に応じない場合は残業命令を出す
  3. 命令に従わない場合は懲戒処分を検討する
  4. 懲戒処分でも改善されなければ退職勧奨を検討する
  5. 最終的には解雇を検討する

①残業の理由を説明して説得する

まずは残業を拒否する社員と面談し、残業を拒否する理由を丁寧に聞き取ることが必要です。
正当な理由が認められない場合は、残業の必要性や業務の現状を説明し、説得を試みましょう。

裁判例でも、業務命令違反を理由に解雇した事案につき、まずは業務命令の趣旨を説明するなどして、社員の誤りを指摘・指導し、その理解が得られるよう努力するべきだったのに、十分な説明をせず解雇しているとして不当解雇と判断しています(東京地方裁判所 平成27年10月28日判決)。

残業の必要性について十分に説明し、社員の理解を得られるよう努めることが大切です。

②説得に応じない場合は残業命令を出す

面談後も説得に応じず残業を断り続ける場合は、書面やメールなど記録に残る形で残業命令を出す必要があります。残業の業務内容や時間、具体的な理由を記載します。

業務命令自体の証拠がそろっていないと、業務命令違反を理由に懲戒や解雇をすることは法的に難しくなります。そのため、口頭による指示ではなく、文書やメールなどで明確に残業命令を出し、残業命令違反や指導した事実を客観的に証明できる証拠を揃えておくことが重要です。

③命令に従わない場合は懲戒処分を検討する

文書やメールでの命令にも従わない場合は、懲戒処分を検討する必要があります。
残業命令に従わない社員を放置すると、残業に応じて真面目に働いている社員に不公平感が生じてしまいます。

また、これを真似て残業を断る社員が出てくる可能性もあるため、一部の社員による残業拒否を許すべきではなく、懲戒など処分を科す必要があります。

懲戒処分として、戒告、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇を就業規則で定めることが実務上多く、順番に重くなります。
まずは戒告やけん責など軽い懲戒を行って反省を促し、それでも改善しなければ、減給、出勤停止と処分を重くしていくのが望ましいでしょう。

懲戒処分の方法について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく懲戒処分の流れや注意点

④懲戒処分でも改善されなければ退職勧奨を検討する

懲戒処分を行っても、なお残業を拒否するときは、本人の仕事のスタイルが会社のルールに合わないことを伝え、退職勧奨を検討する必要があります。

退職勧奨とは、会社が社員に自主的に退職するよう勧めることです。
社員が退職に合意すれば、退職届を提出してもらい会社を辞めてもらうことができます。

解雇は退職勧奨と異なり社員の同意は不要ですが、不当解雇と判断されて高額な金銭の支払いを余儀なくされるケースが少なくありません。
解雇は高リスクであるため最終的な切り札と考え、まずは低リスクの退職勧奨を行うことをおすすめします。

退職勧奨の方法や違法となるケースについて知りたい方は、以下の記事をご参考ください。

さらに詳しく退職勧奨が違法となるケース

⑤最終的には解雇を検討する

退職勧奨を拒否されるなど、他に手段がなくなったら解雇を検討しなければなりません。

会社が36協定を締結しており、就業規則や雇用契約書に残業の義務を定めていれば、基本的に、会社は社員に対して業務上必要な残業を命じることができます。
ただし、社員は妊娠や育児、介護といった正当な理由があれば残業を拒否することが可能です。

会社側が正当な手続きを踏んで再三の残業命令を行ったのに、社員が断り続けた場合には解雇が認められやすいです。

腰痛を理由として残業を断り続けた社員を解雇した事案につき、再三の注意を受けても命令に従わず、同僚に仕事を押し付けたため解雇を有効と認めた裁判例があります(大阪地方裁判所 平成19年7月26日判決)。

解雇の進め方については、以下の記事で解説しています。

さらに詳しく問題社員を解雇するときの進め方・手順は?

残業を拒否できる正当な理由とは?

社員に残業を拒否する正当な理由がある場合には、残業拒否に対して懲戒や解雇することはできません。
残業命令の拒否が認められる正当な理由として、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 36協定の労働時間を超えている(労働基準法36条)
  • 体調不良がある(労働契約法5条)
  • 妊娠中・出産後1年未満である(労働基準法66条)
  • 育児・介護が必要である(育児介護休業法17条、18条)
  • 他社での副業を認めている
  • 業務上の必要性がない

36協定の労働時間を超えている

時間外労働や休日労働を命じるためには、36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
しかし、36協定を結んでいても無制限に残業を命じられるわけではありません。
36協定において定められる残業時間の上限は、原則として「月45時間」「年360時間」となっています。

また、繁忙期など臨時的な必要がある場合に特別条項を結んだ場合でも、年間720時間や月100時間未満などの厳しい制限があります。
この上限を超える残業は違法となり、社員は拒否することが可能です。

体調不良がある

病気やケガなど体調が悪い場合は、残業指示が正当なものでも、社員に残業を強要できません。
会社には労働者の健康に配慮するべき安全配慮義務があるためです(労契法5条)。

裁判例でも、眼精疲労により残業を拒否したことによって解雇された社員が解雇無効を訴え、勝訴しています(東京高等裁判所 平成9年11月17日判決 トーコロ事件)。
体調不良の社員に残業させたり、体を壊しかねない長時間労働を強要したりすると、安全配慮義務違反として、損害賠償請求や行政指導を受けるおそれがあるためご注意ください。

妊娠中・出産後1年未満である

社員が妊産婦であることも、残業を拒否する正当な理由となります。
妊産婦とは、妊娠中または出産後1年未満の女性のことをいいます。

労働基準法では、妊産婦が請求した場合は、時間外労働や休日労働、深夜労働をさせることを禁止しています(労基法66条)。
変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)による場合でも同様です。

そのため、たとえ36協定や非常事由があったとしても、妊産婦が時間外労働等を拒否したならば、残業を強制することはできません。

育児・介護が必要である

会社は小学校入学前の子供を養育する社員や、要介護状態の家族を介護する社員から請求された場合は、原則として所定労働時間を超えて働かせてはいけません(育介法16条)。

また、これらの社員から請求された場合は、1ヶ月につき24時間、1年につき150時間を超える時間外労働を命じることも禁止されています(同法17条)。
ただし、以下のケースでは、会社は例外的に残業を命じることができるとされています。

  • 事業の正常な運営を妨げる場合
  • 日々雇用される者
  • 継続雇用期間が1年未満の者
  • 週の所定労働日数が2日以下の者

他社での副業を認めている

会社が他社での副業を認めていた場合は、他社での勤務に間に合わないような残業を指示することはできません。

また、他社で働くのではなく、自営業としての副業を認める場合は、副業を理由とする残業拒否はできないことをあらかじめ明確にしておく必要があります。
なお、厚生労働省のガイドラインでは、本業と副業の労働時間を通算して管理することを会社に求めています。

長時間労働とならないよう、それぞれの会社で時間外労働や休日労働の抑制などを行うべきとしているため、残業を強制できない可能性もあります。

業務上の必要性がない

業務上の必要性が認められない残業については、労働者が拒否できる可能性があります。

労働時間は、基本的には必要最小限に抑えるべきものなので、形式的な居残りや慣例的な付き合いによる残業、嫌がらせを目的とした残業命令などは拒否できる可能性が高いです。

業務上の必要性がある場合についても、業務量や納期設定に無理がある場合には、使用者の労務管理上の責任が問題となる可能性もあります。企業としては、適切な業務配分と指示の明確化が求められます。

残業命令を適切に行うためのポイント

労働者から残業を拒否されないためには、残業させるための条件を満たしてから命令を行わなければなりません。

適切な残業命令をするために、以下のようなポイントを意識して、条件を満たしているかを確認しましょう。

  • 36協定の締結と雇用契約書等へ明記する
  • 法定労働時間を超えない残業命令を出す
  • 緊急事態時は労働基準監督署の許可を得る

36協定の締結と雇用契約書等へ明記する

会社は労働者の過半数を組織する労働組合または労働者の過半数代表者と36協定を結び、労基署に届け出れば、社員に時間外・休日労働をさせることが可能です。
ただし、締結と届け出だけでは残業を命じることはできません。

36協定の締結は、法定外残業をさせても罰則を受けないという免罰効果を与えるにすぎません。

実際に残業を命じるには、雇用契約書や就業規則に、36協定の範囲内で残業を命じることがある旨や、残業の上限時間などを明記する必要があります。
さらに、これらを社員に交付するか閲覧できる状況にして周知することも求められます。

法定労働時間を超えない残業命令を出す

法定労働時間を超えない残業については、36協定の締結や届け出は必要ありません。
法定労働時間とは、労働基準法で定められた「1日8時間、週40時間」を原則とする労働時間の上限です。

一方、所定労働時間とは、会社が独自に定める勤務時間です。

例えば、会社が所定労働時間を(10時から18時まで、休憩1時間)と設定している場合は、19時まで残業をしたとしても、法定労働時間の8時間を超えません。
このように法定労働時間内の残業であれば、36協定なしでも、雇用契約書や就業規則に残業義務を定めている限り、残業を命じることが可能です。

緊急事態時は労働基準監督署の許可を得る

災害や事故など緊急事態が発生した場合は、労働基準監督署の許可を受けることで、時間外・休日労働を命じることが可能になります(労基法33条)。

一刻を争う事態で、許可を受ける時間がないときは、事後に届け出ることもできます。
例えば、IT会社でシステム障害が発生し、深夜対応が求められるケースが挙げられます。

このような場合は、36協定の締結や届け出がなくても、残業を命じることができるため、社員は残業を拒否できません。

残業拒否する従業員への解雇が認められた判例

事案の内容

【平成10年(オ)第555号 最高裁判所第2小法廷 平成13年6月22日判決】

卒業アルバムの制作会社Yは、住所録の作成業務に従事する社員Xに、業務の繁忙を理由に残業を命じたところ、眼精疲労であるとの診断書を提出されて残業を拒否されました。
そのため、YはXに自主的に退職するよう説得しましたが、Xは応じなかったため、業務命令違反を理由に解雇しました。

これに納得できないXが不当解雇として、裁判を起こした事案です。

裁判所の判断

裁判所は以下を理由に、社員の主張を認めて解雇を無効と判断しました。

  • 36協定が有効とみなされるためには、①労働者の過半数で組織する労働組合、または②適法に選出された労働者の過半数を代表する者と協定を結ぶ必要がある。
  • 役員と社員で構成される「トーコロ友の会」の代表者を自動的に過半数代表者と決定しているが、友の会は労働組合ではなく、労働者の過半数代表者でもないから、36協定と残業命令は無効である。
  • Xの眼精疲労については医師の診断書があり、以前から目の疲れを訴えていたこと等を考慮すれば、残業命令に従えない正当な理由もあったといえる。

判例のポイント

裁判所は、社内の親睦団体の代表者は労働者の代表と認められないと判断し、36協定と残業命令、解雇をすべて無効と判断しています。

残業命令の前提となる36協定が有効となるためには、過半数代表者が正しく選出されている必要があります。
選挙など民主的な方法で選出せず、形式的に毎回同じ者が代表者になっていたり、会社側が指名して選んでいたりする場合は、36協定が無効となる可能性があります。

また、実際に残業を命じる場合は、36協定に記載された事由(どのような場面で時間外労働を命じることができるか)に該当するかどうかや、残業の上限規制の範囲内かも確認する必要があるためご注意ください。

残業拒否する従業員について弁護士に相談するメリット

残業拒否する社員について弁護士に相談するメリットとして、以下が考えられます。

  • 労働契約や法律を踏まえて、残業命令が違法とならないか確認してもらえる
  • 残業を拒否できる正当な理由があるかを確認してもらえる
  • 残業を拒否する社員への対応や指導方法を相談できる
  • 懲戒処分について相談できる
  • 解雇の要件を満たしているか判断してもらえる
  • 退職勧奨や解雇の面談の立合いをお願いできる
  • 労働審判や裁判に発展した場合も、全面的に任せられる

特に解雇は慎重な検討が必要です。
安易に解雇すると不当解雇となり、バックペイや慰謝料の支払い、社会的信用の低下などのリスクを負いかねません。

残業拒否に関するよくある質問

体調不良による残業拒否には診断書の提出を求めても良いですか?

体調不良を理由とする残業拒否が繰り返される場合などでは、会社として裏付けを求めることが可能であり、診断書の提出を求めることもできます。

ただし、労働者が病気にかかったことは個人情報であり、公にする義務のある情報ではありません。残業の拒否に対して、常に診断書の提出を義務付けるのは相当性を欠くおそれもあります。

過度な要求は不利益取扱いと評価されるリスクを生じさせるため、症状の重さや継続性、業務への影響などを踏まえながら、合理的な範囲で提出を義務づけるべきです。

パートや契約社員に残業拒否された場合はどうすればいいですか?

パートや契約社員であっても、労働契約や就業規則に残業義務が定められていれば、一方的な拒否は基本的に認められず、残業命令や違反に対する処分が可能です。

ただし、契約内容などによって勤務時間が限定されていれば、残業命令はできないので注意しましょう。また、家庭の事情や労働者の健康状態などにより、残業が困難である場合には配慮が必要です。

契約内容を必ず確認して、業務上の必要性と本人事情を踏まえながら個別に対応しなければなりません。

固定残業代制の場合、残業を強制することはできますか?

固定残業代制であっても、業務上の必要性がなければ、残業代に相当する時間の残業を強制できるわけではありません。

労働契約や就業規則などに基づいて、業務上の必要性が認められる限度で残業を命じることが可能です。

残業代に相当する時間を超えても、残業を命じることは基本的に可能です。その場合には、超過分の割増賃金を支払う義務があります。
また、労働者の健康への配慮や、労働時間の上限規制にも注意しなければなりません。

固定残業代が違法になるケースについては、以下の記事で解説しています。

さらに詳しく固定残業代(みなし残業)が違法になるケースとは?

従業員が私用を理由に残業を拒否した場合、クビにすることはできますか?

労働者が私用を理由に残業を拒否した場合、直ちに解雇とするのは困難です。
残業命令が不当なケースや、労働者の事情がやむを得ないケースなどでは、処分を行うことも難しくなります。

残業命令が有効で業務上の必要性が高いにもかかわらず、正当な理由なく繰り返し拒否するなど、就業規則違反の程度が重大な場合であれば、段階的な指導・懲戒を行ってから解雇できる可能性があります。

まずは事情聴取と、必要に応じた指導などを行いましょう。

派遣社員や業務委託の場合でも残業命令を出せますか?

派遣社員に残業命令を出せるかは、派遣社員と派遣元との契約によります。

派遣社員の雇用主は、派遣元の会社です。派遣先の会社は、派遣元の会社が36協定を締結していることなどを条件として、契約の範囲内で残業命令を行うことができます。

一方で、業務委託契約をしている者は社員ではないため、残業という概念自体が基本的に適用されません。時間がかかっても、依頼した仕事を行ってもらうことができます。

ただし、形式的には業務委託契約をしていても、実質的には社員と同じように働いている場合には残業代などが発生します。

残業拒否する社員への対応については弁護士にご相談ください

残業は会社の都合で勝手に命じられるわけではなく、法律上のルールに従って行う必要があります。

違法な残業命令に当たらないかどうか、どのような懲戒処分や解雇であれば有効となるのかなどは、個別具体的な事情を検討しながら最終的には裁判で判断されることになります。

そのため、弁護士に相談しながら対応を考えるのがベストです。
弁護士法人ALGには、会社からの命令に違反する問題社員に対応し、解決した経験の豊富な弁護士が多数在籍しています。

これまでの経験やノウハウを活用し、残業拒否する社員への最適な対応方法をご提示することが可能です。
退職勧奨や解雇の際の面談への立ち合いも行っておりますので、ぜひご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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