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解雇制限とは?労働基準法の定めや例外ケースをわかりやすく解説

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

解雇は、不正などを行った従業員に対して会社が行う、最大にして最後の手段です。
従業員への不利益が大きいため法律によって制限されており、会社の勝手で解雇することは許されません。

繰り返し横領を行うなど、目にあまる問題行動があれば解雇が相当となるケースはあります。
しかし、労働基準法の解雇制限期間に該当する場合には、従業員に相応の非があっても解雇できません。

この記事では、解雇制限の対象や、制限が解除されるケース、期間についての考え方などについて解説します。

解雇制限とは?

解雇制限とは、労働基準法第19条に定められた、条件に当てはまる労働者の解雇を禁止する制度です。
求職活動が難しい労働者を保護して、困窮するのを防ぐことなどを目的としています。

違反すると、解雇が無効となるだけでなく、6ヶ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金刑に処せられるおそれがあります。

解雇することが禁止されているのは、下記に該当する労働者です。
定められた期間は、労働者に落ち度があったとしても解雇できないことに注意しましょう。

  • 業務上の負傷や疾病による療養のため休業する期間中およびその後30日間
  • 産前産後休業期間中およびその後30日間

労災による休業の解雇制限

従業員が業務上の原因で、病気やケガをし、その療養のために休業している期間と、その終了後30日間については解雇することができません。
これは、業務が原因で病気やケガをした従業員をさらに追い詰めることがないよう保護するための措置です。

また、療養期間が終わっても、労働能力の回復には時間がかかるため、終了後30日間についても解雇できないよう制限がかけられています。
ただし、労災による休業のすべてが解雇制限の対象になるわけではありません。通勤災害による負傷等は解雇制限の適用除外となっています。

業務災害は会社の管理下で生じた事故なので、会社に責任があると考えられますが、通勤災害は会社の努力では回避できないので適用除外になっていると考えられます。
労災ではない業務外の私傷病についても、同様に解雇制限の対象外となります。

労災に認定される基準については、以下の記事で解説しています。

さらに詳しく労災認定基準とは?

妊娠中や育児休業明けの解雇制限

女性従業員が産前産後休業を取得している期間と、その終了後30日間の解雇は労働基準法19条で禁止されています。これは、出産前後の女性の身体的・精神的負担を考慮した保護措置といえます。

産前産後休業期間は、産前6週間(多胎妊娠は14週間)から産後8週間と定められています。
産後8週間以降は育児休業を取得するケースが多くなっていますが、育休期間については労働基準法上の解雇制限は設けられていません。

しかし、育児・介護休業法や男女雇用機会均等法によって、妊娠・出産・育休の取得等を理由として解雇するなどの不利益な取扱いは禁止されています。

なお、産前休業は本人から請求されたら取得させる義務があります。産後休業は、請求されていなくても取得させる義務があります。

産休・育休について会社側が行う手続きについては、以下の記事で解説しています。

さらに詳しく産休・育休時に会社側が行う手続き一覧・スケジュールを徹底解説!

解雇制限が適用されない例外的なケース

労働基準法の解雇制限期間については、原則として解雇は許されません。
しかし、解雇制限が解除される例外的ケースが2つあります。

  • 打切補償を支払ったケース
  • 天災等により事業継続が不可能になったケース

打切補償を支払った場合

業務を原因としたケガや病気(労災)の治療で休業している等の場合には解雇制限が適用されますが、以下のような例外があります。

  • 打切補償を支払うことで解雇制限の対象外となる
    打切補償とは、労災の治療開始から3年経っても治療が終わらない場合、会社が平均賃金の1200日分を従業員へ支払うことで、補償を終了し、解雇制限を解除するというものです。
  • 治療開始から3年以上経過した段階で、従業員が労災保険の傷病補償年金を受給している場合
    打切補償を支払った場合と同様に、解雇制限の対象外として扱われます。

ただし、打切補償の支払いは会社にとって金銭的負担が重いだけでなく、支払った後で労働者が復職を希望してトラブルになるリスク等もあるため、あまり用いられない方法です。

天災等により事業継続が不可能になった場合

震災などの天災や火災によって事業が継続不可能となった場合についても、解雇制限の例外対応が認められています。

ただし、事業が継続不可能かどうかの判断は、その原因が真にやむを得ない事由といえるかがポイントとなります。たんなる経営悪化や一時的な営業不能では、解雇制限の解除要件にあたりません。

また、やむを得ない事情による事業の継続不能について解雇制限を解除する場合には、労働基準監督署の認定を受けることが必要とされています。
事務所が倒壊して物理的に事業を継続できないなどの事態でなければ認定は難しいです。

認定手続きに不明点等があれば弁護士へ相談するようにしましょう。

解雇予告期間と解雇制限期間の考え方

解雇制限と解雇予告

解雇予告期間中に労災などの解雇制限事由が生じると、その後、解雇予告期間が満了しても、解雇制限事由が継続している限り解雇はできません。
この場合には、解雇制限期間が終了してから解雇することになります。

解雇予告と解雇制限はいずれも、突然の解雇から労働者を保護する仕組みですが、その目的や適用条件は異なります。

解雇予告は突然の失業を防ぎ、求職期間を確保することが目的です。
少なくとも30日前までに解雇予告をしなければなりませんが、解雇予告手当を支払うことによって期間を省略できます。

解雇制限期間は、特定の状況下における従業員の解雇を禁止する制度です。
これら解雇予告期間と解雇制限期間は、重複して適用されるケースもあります。

解雇制限の適用の判断が難しいケース

解雇制限が適用されるかどうか判断に迷うケースもあります。
解雇のタイミング次第では結論が変わってくる事案もありますので、判断に迷う場合は専門家に相談しましょう。

定年退職

解雇制限は、あくまでも「解雇」を特定の期間禁止する制度です。
定年退職制は、一定の年齢に達したことによる契約の自動終了であり、解雇に該当しません。
つまり、定年退職については、解雇制限期間中であっても、定年に達した段階で退職になります。

一方、定年年齢に達した段階で、会社が解雇の意思表示を行う定年解雇制は、解雇に該当するため、解雇制限の影響を受けます。
いわゆる「定年」が、どのような制度として導入されているのかによって判断が異なりますので、注意しましょう。

休職期間満了での退職

休職期間を満了しても、労災で休職しているのであれば解雇はできません。
休職制度を導入する場合、休職期間満了時に復職できなければ退職として定めているケースが多いです。

しかし、休職の原因が業務による病気やケガ(労災)であった場合、その治療のために休業している期間は解雇制限が適用されます。
休職の原因が私傷病であり労災でなければ、解雇制限の対象外になるため、休職期間満了による退職が可能となります。

休職の対象となった疾病等が、労災なのか私傷病であるのかについては判断が難しく、トラブルになるケースも多々あります。

契約社員・パート・アルバイトの解雇

契約期間満了時の雇止めには、解雇制限は適用されません。
そのため、労災などによって解雇制限期間中の有期雇用労働者であっても、雇止めは可能です。

ただし、有期雇用労働者の雇止めには雇止め法理が適用されます。
次のような状況では、合理的な理由なく雇止めをすると違法になるため注意しましょう。

  • 契約が何度か更新されているなど、無期労働契約と同視できる事情がある
  • 労働者が契約の更新を期待する合理的な理由がある

試用期間中の解雇

試用期間中であっても、労災などによる解雇制限は適用されます。
そのため、解雇制限期間中は解雇できません。

試用期間満了時の本採用拒否であっても、解雇制限の原因となった労災などを理由としていると判断されれば違法とされるリスクが高いです。

労災などが発生する前から、無断欠勤を繰り返すような問題があったケースについても、弁護士に相談しながら慎重に対応する必要があります。

試用期間中の解雇については、以下の記事で解説しています。

さらに詳しく試用期間中に解雇できる?

解雇制限の適用により解雇無効が認められた裁判例

(平成19年(ワ)第15550号・平成23年5月25日・大阪地方裁判所・第一審)

【事件の概要】

信販会社Yで課長職を務めていたXは、債権回収業務に従事していましたが、うつ病に罹患し休職しました。
Xの病状は長期にわたって治療を要し、休職期間満了までに復職できませんでした。
そのため、Y社は休職期間満了に伴う退職としました。

これに対しXは、うつ病の発症は業務が原因であり、労災の治療期間中の解雇は労働基準法19条の解雇制限に違反するとして、解雇無効を訴えました。
Y社は、うつ病の原因は悪性腫瘍の転移への不安であり、私傷病であるから解雇制限には該当しないと主張しました。

【裁判所の判断】

裁判所は、Xの当時の勤務状況を踏まえ、業務量の増大による長時間労働を余儀なくされていたことを認定しました。

うつ病の発症原因について、悪性腫瘍への不安が寄与したことが窺われるとしても、主たる原因は業務にあると推認しました。
うつ病と業務に因果関係が認められたことから、Y社が行った退職手続きは解雇制限期間中に行われたものであり、無効であると判示されました。

【ポイント】

本件のポイントとして、Xは形式的には解雇ではなく、休職期間満了に伴う退職とされていましたが、労基法19条1項の類推適用により退職を無効としたことが挙げられます。
また、Xの業務が質的にも量的にも過重性を有するものだったとして、うつ病が悪性腫瘍や転移への不安による私傷病だとは認めなかったことも重要なポイントです。

解雇制限以外にも法律で解雇が禁止されるケースがある

解雇が禁止されるケースとして、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 国籍や信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)
  • 性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第6条)
  • 労働者派遣法違反の事実の申告を理由とする解雇(労働者派遣法第49条の3第2項)
  • 組合員であること等を理由とする解雇(労働組合法第7条)
  • 障害者であることを理由とする解雇(障害者雇用促進法第35条)
  • 公益通報に対する報復としての解雇(公益通報者保護法第3条)

企業としては、解雇理由が形式的には正当でも、真の動機がこれらに該当しないか慎重な判断が求められます。

解雇制限に関するQ&A

労災申請中の場合でも解雇制限は適用されますか?

労災の申請中や審査中であっても、業務上の負傷などによって休業していることが明らかであれば、解雇制限が及ぶと考えられます。

精神疾患などのような、業務上の傷病なのかが明らかでない場合については、慎重に対応することが必要です。解雇してから、業務上の傷病だとして労災認定されてしまうと、解雇は無効となってしまいます。

私傷病による休職は解雇制限の対象になりますか?

私傷病による休職は、基本的に解雇制限の対象にはなりません。労基法19条の、業務上の傷病に当たらないからです。

ただし、怪我や病気の影響でしばらく働けなくなった従業員を解雇すると、不当解雇だとして争われるおそれがあります。

就業規則を整備して、十分な休職期間を設けるなど、解雇権の濫用にならないように注意しましょう。

懲戒解雇をする場合でも解雇制限は適用されますか?

懲戒解雇をする場合であっても、解雇制限は基本的に適用されます。そのため、労災による休業期間中や産前産後休業中は、重大な不正があっても直ちに解雇できるわけではありません。

対策として、制限期間の満了を待つか、自主的に退職してもらう方法が考えられます。
天災事変等で事業継続が困難な場合などでは、例外的に解雇が認められるケースもあります。

懲戒解雇の会社側のデメリットについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく懲戒解雇の会社側の6つのデメリットと対策をわかりやすく解説

解雇制限期間中に配置転換や退職勧奨は可能ですか?

解雇制限期間中でも、より適した業務への配置転換は可能です。
退職勧奨も、直ちに違法となるわけではありません。

ただし、どちらについても慎重さが求められます。
労災の申請などへの報復を示唆するような配置転換をしたり、実質的に退職強要と評価されるような退職勧奨をしたりすると、無効と判断されるリスクが高いです。

配置転換については、業務上の必要性や合理性を十分に説明しましょう。退職勧奨は、あくまでも本人の自由な意思で退職してもらう必要があります。

解雇制限について不安なことがあれば労働問題に精通している弁護士にご相談ください

従業員による重大な服務規定違反など、信頼関係が完全に崩れてしまうような問題行動があった場合、会社としては社内秩序を維持するためにも解雇を検討するケースが多いでしょう。
しかし、解雇を選択したくても、解雇制限期間中には解雇を行うことができません。

解雇制限は不正行為を免責するものではないので、期間満了後に解雇するか、自発的な退職を促す方法などが考えられます。
これらの方法であっても、対応を誤れば、解雇無効を主張されるリスクがあります。

解雇制限について不安のある方は、労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。
弁護士法人ALGでは、労働問題に精通した弁護士が多数在籍し、全国展開で対応しております。

解雇の検討からトラブル対応まで幅広くサポートしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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