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懲戒処分を行う際に注意すべき3つのポイントとは?実施の流れ、判例を含めて解説

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    #懲戒処分

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

会社にはそれぞれ守るべきルールがあります。そのルールが破られた場合には、社内秩序維持のために一定の処罰を検討することもあるでしょう。

しかし、どのような処分でも良いというわけではありません。
問題行動の内容と処分の重さが不均衡であれば、裁判で不当処分として判断されるリスクもあります。

本稿では懲戒処分を行う際の注意点をまとめましたので、社内の運用状況とあわせてご確認ください。

懲戒処分とは

懲戒処分とは、一般的に、従業員の問題となる行動に対して、会社が行う処罰を指します。
懲戒処分の目的は、本人を含めた全従業員に向けて、問題行動に対する会社の姿勢を明確にし、企業秩序を維持回復させることにあります。

ただし、懲戒処分の内容が問題行動に比して重い場合には、裁判で不当処分となるリスクがあります。

不当処分と判断されれば、その処分内容が撤回されることになります。
その場合、会社に損害賠償等の金銭的負担が発生する恐れがありますので、問題行動の内容や態様、その程度等を勘案して、処分内容を検討しましょう。

懲戒処分の6つの種類

下表は一般的な処分の書類の一覧です。懲戒処分の種類は会社によって異なりますので、この限りではありません。

表の上段ほど重い処分となっていますので、軽い処分から段階的に検討していくことが多いでしょう。
処分内容については解説欄をご確認ください。

処分の種類 解説
懲戒解雇 問題行動に対する制裁としての解雇で、懲戒処分の中では最も重い処分です。
諭旨解雇 従業員へ退職届の提出を勧告し、提出しない場合には懲戒解雇とする処分です。
降格 従業員の職位や資格を下げる処分です。たとえば部長から課長などの処分が該当します。
出勤停止 従業員の出勤を一定期間、禁止する処分です。出勤停止中は無休となるのが一般的です。
減給 従業員の給料を減額する処分です。ただし、減額内容は労働基準法で限度額が定められています。
けん責・戒告 従業員に対して行う厳重注意です。通常、戒告が口頭のみの注意であるのが一般的で、けん責は注意に加え従業員に反省文等の提出を求める処分となります。

懲戒処分に該当する問題行動の例

各処分の種類に応じた問題行動を表にまとめています。
ただし、すべてがこの例に当てはまるわけではありません。
問題行動の内容や態様、対象従業員の反省の程度等を考慮して懲戒処分を検討することになります。

懲戒処分の種類 具体例
戒告・けん責・訓戒
  • 一日の無断欠勤
  • 業務上のミス
減給
  • 戒告、けん責、訓戒処分を行ったあとも、遅刻・無断欠勤・業務上のミスなどを繰り返す
出勤停止
  • 職場内の暴力行為
  • 職務放棄など
降格
  • 重大な就業規則違反
  • セクハラ、パワハラなどのハラスメントなど
諭旨解雇・諭旨退職・懲戒解雇
  • 業務上の横領行為
  • 長期間にわたる無断欠勤
  • 重大なセクハラなど

懲戒処分の際に注意すべき3つのポイントとは?

懲戒処分の内容が不当に重い場合は、従業員の不利益に繋がります。
そのため、懲戒処分の検討には以下の点に注意が必要となります。

  • 就業規則の有無
  • 処分の相当性
  • 二重処罰の禁止

その他、客観的な判断を必要とする場合や、処分に迷う場合には弁護士へ相談することをおすすめします。
以降で各ポイントについて詳しく解説していきます。

就業規則の有無

就業規則とは会社のルールブックにあたります。
就業規則を作成し、従業員へ周知することによって、法的な拘束力をもつことになります。

「周知」とは、従業員が見ようと思ったときに見ることができる状態を指します。
この点が不十分であれば就業規則に法的な効果が発生しませんので注意しましょう。

就業規則に、どのようなことをすれば懲戒処分に該当するのかという根拠規定が無ければ、懲戒処分はできません。

就業規則は10人未満の事業所では作成義務はありませんが、懲戒処分を行うには就業規則の作成と周知が必要となります。

就業規則には、懲戒処分の種類・懲戒事由・弁明の機会の付与を含む手続きを定めておくとよいでしょう。
また、定めた内容に従って処分することも大切です。

処分の相当性

懲戒処分の内容が問題行動と比較して重くならないよう注意しましょう。
行為と処分は均衡している必要があります。

処分の重さについては、会社に自由裁量があるのではなく、客観的に妥当でなければならないとされています。

もし、軽い行為に対して重い処分を行えば、懲戒権行使の濫用となり無効と判断される可能性があります。

無効と判断されれば、損害賠償等の金銭的負担や、内容によっては社会的信用を損なうなどのリスクも伴うため、処分の選択は慎重に行う必要があります。

二重処罰の禁止

1回の問題行動に対して、2度の懲戒処分を行うことは許されないのが原則です。
これは、懲戒処分が制裁罰に該当することから、刑事罰の二重処分の禁止の原則が適用されるためです。
1つの問題行動に対しては、懲戒処分は1度きりと考えておくとよいでしょう。

よく問題になるのは、会社が調査をするために従業員を出勤停止処分にした後に懲戒解雇をする場合に、二重処罰ではないかとして争われることが多々あります。

もし、すでに懲戒処分歴がある従業員に対して、再度懲戒処分を行うのであれば、新たな問題行動に対する処分であるのか確認しましょう。

前回の処分対象行為について反省の態度が見られないということだけで懲戒処分を行うことは、新たな問題行動がないため、二重処罰の禁止に抵触します。

ただし、問題行動を繰り返すようであれば、新たな問題行動に対する処分内容を前回よりも重くすることは可能と考えられます。

懲戒処分の実施までの流れ

懲戒処分を行う流れは以下の通りです。

  • 就業規則の確認

    まず、社内に有効な就業規則が存在するのか、そして、懲戒処分のルールが規定されているのか確認しましょう。
    対象行為が、懲戒処分の理由として定められている必要があります。

  • 対象行為の記録、証拠の収集

    対象行為について、内容、日時等できるだけ詳しく記録しておきます。
    指導票や反省文等の証拠は必ず保管しておきましょう。
    これらの記録と証拠が懲戒処分の根拠となります。

  • 対象者の弁明の機会の付与

    法的義務ではありませんが、従業員に弁明の機会を与えた方がよいでしょう。
    弁明の機会を与えなかったことをもって、処分が無効とされた事例もあるので、懲戒処分をすることにより紛争のおそれがある場合は、できる限りしてください。
    なお、就業規則に弁明の機会が規定されている場合は必ず行わなければなりません。

  • 処分内容の決定

    証拠や従業員の弁明をもとに処分内容を決定します。対象行為に対して処分内容が重すぎないか確認しましょう。
    懲戒処分はトラブルになることも多いので、懲戒処分を検討する場合には、弁護士へ相談してから処分決定されることをおすすめします。

懲戒処分に関する判例

各懲戒処分に関して、有効・無効と判断された裁判例をご紹介します。

戒告・けん責・訓戒に関する判例

(東京地方裁判所・令和2年6月10日・平成29年(ワ)第38309号・アクサ生命保険事件)

育児による短時間勤務で働く部下に対し、上司が午後11時などの時間外に業務報告を求める連絡を頻繁に行いました。

会社はこれらをパワハラ行為にあたると判断して、上司を戒告処分としました。

裁判所は、この上司の行為をパワハラと認定した上で、会社による戒告処分の選択は重すぎるといえず、処分に至る経緯に会社の権利濫用を裏付ける事情は認められず、戒告処分は妥当であると判断しました。

減給に関する判例

(東京地方裁判所・平成31年4月24日・平成29年(ワ)第33572号・公立大学法人会津大学事件)

大学教授が、学生達に対して、侮辱や人格を否定するような言動を繰り返したことから、大学より減給処分を受けました。

これに対し裁判所は、大学教授が学生に送ったメールは人格や尊厳を傷つけるものであったとし、不安感を煽る威嚇的な表現を用いたアカデミック・ハラスメントであると認定しました。

そして、本メールをきっかけとして、学生の1人が不登校、退学に至った点も勘案すれば、減給処分は有効であると判断しました。

出勤停止に関する判例

(最高裁判所・平成27年2月26日・平成26年(受)第1310号・海遊館事件)

管理職である男性従業員2名が、女性従業員らに対して、性的な内容の発言等を繰り返していました。

会社ではセクハラ防止の研修等取組みを行っており、会社の方針を十分理解する立場にあった管理職でありながら、約1年にわたりセクハラ行為を継続した管理職らに対し、会社は10日間の出勤停止処分を行いました。

裁判所は、管理職らの行為を極めて不適切なセクハラ行為とした上で、企業秩序や職場規律に看過しがたい影響を与えたとしています。

10日間の出勤停止処分は有効と判示されました。

降格に関する判例

(東京地方裁判所・平成27年8月7日・平成25年(ワ)第12898号・M社事件)

理事という職位でありながら、複数の部下らに対し、パワハラに該当する行為を行ったとして会社は副理事への降格処分を行いました。

裁判所は、会社がパワハラについての指導啓発を継続して行い、ハラスメントの無い職場作りを経営上の指針として明確にしていたと認定し、幹部としてこの方針に相反する言動をとり続けたことは降格処分に値するとして、有効と判断しました。

諭旨解雇・諭旨退職・懲戒解雇に関する判例

(東京地方裁判所・令和2年2月19日・平成30年(ワ)第2057号・日本電産トーソク事件)

対象従業員は、上司からの業務命令を無視し、さらに自分の要求を通すため、職場でカッターナイフを持ちだし、自身の手首を切る動作を行うなど、警察を出動させる事態を引き起こしました。

これら一連の行動について会社は、諭旨解雇処分後に懲戒解雇とする処分を行いました。

裁判所は、周囲の職員にあたえる衝撃は大きく、軽く見ることはできないとしながらも、従業員に懲戒処分歴がなかったことや、1度目の処分で直ちに諭旨解雇とすることは、やや重きに失するとして無効と判断しました。

ただし、普通解雇については有効とされています。

懲戒処分時の退職金の減額・不支給は認められるか?

懲戒解雇であれば、退職金を不支給にして良いというわけではありません。

退職金を減額・不支給とするには、退職金規定に減額、もしくは支給しない旨が記載されていなければならないので、まずは、規定の確認と整備を行いましょう。

ただし、規定があれば無制限に減額・不支給を行えるわけではありません。退職金には、在籍中の功労に報いる功労報償的性質だけでなく、賃金の後払いの性質ももつとされています。

そのため、減額や不支給は、「これまでの勤続の功を抹消または減殺するほど著しい背信行為」がある場合にのみ可能とされています。

裁判では懲戒解雇であっても不支給ではなく、3割程度の一部支給と判断される傾向があります。

適正な懲戒処分の実施は労働問題に強い弁護士にご相談ください

懲戒処分は会社の秩序を守るために必要な制度ですが、従業員にとっても不利益が発生するので濫用は許されません。

問題行動を正確に把握し、適切に処分を行わなければトラブルに発展する可能性は大いにあります。
懲戒処分の妥当性や根拠には法的判断が必要です。

弁護士であれば、懲戒処分制度の整備等含めて法的アドバイスを行うことが可能です。

また、処分の妥当性を判断するだけでなく、トラブルとなった場合のフォローまで幅広くサポートすることができます。
懲戒処分の必要を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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