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懲戒処分の公表はどこまで可能?名誉棄損や違法とならないための注意点

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

問題行為を行った従業員に対し、会社が懲戒処分を行うことは社内秩序を保つためには必要な手段です。
では、その懲戒処分の公表についてはどうでしょうか。公表するには、就業規則への定めが原則として必要です。

しかし、規定があれば公表の内容や方法が自由というわけではありません。
不当な目的による処分の公表などは、場合によっては名誉毀損にあたり損害賠償請求の対象となります。
「懲戒処分が有効」=「公表が有効」とはならない点に注意しましょう。

本稿では懲戒処分の公表に関する注意点について解説していきます。

懲戒処分の公表とは?

懲戒処分の公表とは、問題行為の内容や懲戒した事実を公にすることを指します。公表すべき内容や範囲は事案によって異なると考えられます。

一般的に、懲戒処分の公表は、再発防止など社内の規律意識を高めることを目的として行います。

懲戒処分の対象となった従業員の反省を促すことが目的であれば、処分することで達成しているので公表までは必要ないでしょう。

もし、社内秩序の回復等、本来の目的を逸脱するような公表を行えば、違法と判断される可能性があります。

懲戒処分の公表は会社の義務ではありませんが、公表すべき事案等であれば、以降で解説するポイントに注意して行いましょう。

公表すべき内容

社内での再発を防止するなど、公表する意義を踏まえると、公表内容は以下のような項目が妥当と考えられます。

  • 懲戒処分の対象となった事案内容
  • 懲戒処分事由
  • 具体的な懲戒処分内容

対象者の氏名については、原則として公表は必要ないでしょう。

懲戒処分の公表期間・方法

懲戒処分の公表は社内の秩序回復のためという観点から、原則として社内のみの公表としておくべきでしょう。
社内公表の方法としては、導入ツール等にもよりますが、下記のような方法が一般的です。

  • 社内報への掲載
  • 社内掲示板での掲示
  • 社内ポータルサイト等での公表
  • 社内向けメールでの公表

また、公表期間についても長期間に及ぶことは避けるべきです。
懲戒処分当日~2週間程度までにとどめておいた方がよいでしょう。
理由無く長期間公表し続けることは、公表の目的が対象従業員に対する嫌がらせなど恣意的な意図が含まれると解されるおそれがあります。

取引先など社外に対する公表方法

従業員の行為によって取引先に不利益が発生した等のケースでは、懲戒処分とした旨を通知する必要性も考えられます。

このような場合であっても、公表によって従業員の社会的な評価を不当に低下させないよう注意して対処しましょう。
むやみに個人を特定できるような情報を開示することは避けるべきです。

特に社外公表の場合には、名誉毀損の可能性も高く、慎重に検討する必要がありますので、弁護士へ相談した上で行うことをおすすめします。

社外に公表する場合には、以下の3点が必要と考えられます。

  • 従業員の行為に対応する必要性が社外にある
  • 通知した内容が真実である
  • 通知内容が客観的事実に基づいている

通知する範囲についても最小限とし、必要性の低い第三者にまで通知するなどは避けましょう。

懲戒処分を公表すると名誉棄損になる?

名誉毀損とは、不特定多数の人に対し公表することで他人の名誉を傷つける行為を指します。

事実の公表であっても、対象者の社会的信用を低下させるおそれがあれば名誉毀損にあたる可能性があります。

特に、懲戒対象者の実名を公表すると裁判例でも名誉毀損成立と判断されやすい傾向があります。
氏名の公表が特別必要といった事情がない限り、氏名公表は避けるべきでしょう。

ただし、刑法第230条の2第1項に定められた以下の3つの条件をすべて満たした場合には名誉毀損に該当しないとされています。

  • 公表した事実が公共の利害に関するものであること(公共性)
  • 公表の目的が専ら公益を図ることにあること(公益目的)
  • 公表の内容が真実であること(真実性)

名誉棄損とならないための基準

懲戒処分の公表は、目的を逸脱したり過度な開示を行えば、名誉毀損として不法行為に該当する可能性があります。

公表の目的は、対象者を懲らしめることではなく、社内秩序の回復です。名誉毀損等とならないために、以下のような基準に注意した上で行いましょう。

  • 社内の規律維持という目的を踏まえ、公表は必要な範囲で行う
  • 懲戒対象者の氏名は原則として公表しない
  • 客観的事実のみの公表として、憶測の内容等を公表しない
  • 公表期間は必要最小限にとどめる。掲示する場合には懲戒当日にとどめておく。

そのほか、ハラスメントによる懲戒処分では、公表内容によって被害者が特定されないよう配慮しましょう。

懲戒処分の公表が違法とされた裁判例

(横浜地方裁判所・令和元年10月10日・平成30年(ワ)第3828号・ロピア事件)

スーパーマーケット経営会社Yに勤務するXは、精算をしないまま精肉商品を持ち帰り、この件を理由として、懲戒解雇となりました。

その後、YはXの実名とあわせて、窃盗行為であることや懲戒解雇としたなどの処分に関する文書を、Yの全店舗で2週間ほど掲示しました。

これに対し、Xは、懲戒解雇は不当であり、公表は名誉毀損にあたるとして訴えました。
裁判所は、本件持ち帰り行為は窃盗罪を構成するとは認められず、誤った事実の公表であるとしました。

また、掲示場所は一般客から見えない場所ではあったものの、Yの全店舗に掲示されていたことから、従業員のみでも相当数が閲覧できたとし、伝播性は否定されないとしました。

以上の点から本件掲示はXの社会的評価を低下させる名誉毀損にあたり、不法行為として判示しています。

また、懲戒解雇についても持ち帰り行為が一度であり、故意の証明もないことから無効と判断しています。

懲戒処分の公表を適切に行うためのポイント

懲戒処分の公表は、問題行為に対する会社の姿勢を従業員へ広く周知することができ、社内規律を維持するには有効な手段です。

ただし、目的を踏まえて適切に行うことが必要です。
もし、不適切な公表となった場合には、名誉毀損などとして新たなトラブルに発展するおそれもあります。
懲戒処分の公表を行う場合は、その内容や範囲が適切であるのか確認をした上で行いましょう。

事前確認にあたっては、弁護士へ相談することをおすすめします。
あらかじめ公表文書を弁護士へ確認してもらうことで、不適切な内容が含まれていないかなどのチェックを受けることができ、トラブルの防止に繋がります。

懲戒処分の公表に関する就業規則の定めについても事前にチェックを受けるとよいでしょう。

懲戒処分の公表が違法とならないためにも労働問題に強い弁護士にご相談ください

懲戒処分の内容が事実で有効であれば、公表が認められるわけではありません。
処分内容を公表するには、再発防止など社内秩序の回復といった目的に基づいて行う必要があります。

もし、恣意的な目的など不適切な公表であれば、懲戒処分は有効であっても、処分対象者から名誉毀損として損害賠償請求される可能性があります。

懲戒処分の内容を公表するのであれば、公表の内容や範囲、公表方法などをあらかじめ弁護士へ相談した上で、適切に行いましょう。

労働問題に強い弁護士であれば、法的リスクを踏まえた適切なアドバイスを行うことができます。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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