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副業禁止に違反した従業員を解雇できる?認められないケースや注意点など

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

副業禁止違反の処分として、解雇を検討すべき事案もあるでしょう。

しかし、副業は原則自由とされており、解雇は容易ではありません。本業への支障が大きい場合や企業秘密が流出するリスクがある場合など、有効性は限定的といえます。
不当解雇になれば会社が受けるダメージも大きく、慎重な判断が必要です。

本稿では、

  • 副業禁止違反を理由とした解雇が認められるケースと認められないケース
  • 解雇を検討する場合の注意点

などについて解説していきます。

そもそも副業を禁止することはできる?

就業規則などによる副業の全面的な禁止は、法的には無効と判断される可能性があります。

憲法22条では「職業選択の自由」が保障されており、勤務時間外の時間は本来、従業員が自由に利用できるものです。そのため、「副業は原則自由」であるという考え方が定着しています。

ただし、副業の自由は無制限ではありません。副業を一律に許可してしまうと、過労や睡眠不足で本業に支障をきたしたり、会社の機密情報を漏洩させるといった事態を引き起こす可能性があるからです。

このような会社の利益を損なうおそれのある副業については、例外的に就業規則などで制限または禁止することが認められています。

副業禁止違反による解雇が認められる5つのケース

副業禁止違反による解雇が認められるケースとしては、主に以下の5つのパターンが考えられます。

  • 業務時間中に副業をしていた
  • 副業の影響で本業に支障をきたした
  • 競合他社で副業をしていた
  • 情報漏洩の可能性がある副業をしていた
  • 副業により本業の社会的信用を低下させた

①業務時間中に副業をしていた

本業の業務時間中に隠れて副業を行うことは、職務専念義務に違反する行為であるため、解雇の対象となります。
例えば、テレワーク中のSEが、個人で請け負った仕事も同時に行っているような場合が挙げられます。

労働者は会社と雇用契約を結ぶことにより、契約によって決められた時間内において、会社の指揮命令に従って本業に専念しなければならないという「職務専念義務」を負うことになります。

就業時間内に副業を行うことは職務専念義務違反であり、かつ実際に本業でのパフォーマンスにも支障が生じているならば、正当な解雇理由として認められるものと考えられます。

②副業の影響で本業に支障をきたした

本業の業務時間外に副業していた場合でも、深夜や連日にわたる副業などを行い、本業の仕事に支障が生じている場合は、解雇の正当な理由となり得ます。

例えば、日中の時間帯を本業の会社で働き、その後夜に長時間の副業をすると、疲労がたまり、遅刻や欠勤、業務上のミスを繰り返すおそれがあります。
このような本業の遂行に支障をきたす問題社員は、解雇の対象となります。

③競合他社で副業をしていた

競合他社で行う副業は、「競業避止義務」に抵触するため、解雇の正当な理由となり得ます。

労働者は会社と雇用契約を結ぶことによって、会社の不利益となる行為をしてはならないという「競業避止義務」を負っています。
競合他社で副業したり、自ら競合する会社を設立するなどの行為は、競業避止義務に反する行為です。

競合他社で副業した場合には、顧客の横取りや本業のノウハウの不正利用などによって、本業の売上を減少させてしまうといった深刻なリスクが考えられます。
そのため、競合他社で副業した場合の解雇は認められる傾向にあります。

なお、競合行為によって、会社の利益が著しく侵害され実害が認められれば、解雇だけでなく損害賠償請求を検討することも可能です。

④情報漏洩の可能性がある副業をしていた

会社の重要な機密情報や独自のノウハウが外部に漏れれば、自社の競争力の低下を招き、多大な損失に繋がるおそれがあります。
そのため、情報漏洩の可能性がある副業をしていた場合には、解雇の対象になると考えられます。

労働者は業務上知り得た秘密を守る義務を負っています。
たとえ情報漏洩が悪意によるものでなかったとしても、会社の利益を著しく害する可能性があれば、そのような副業については禁止する高度の必要性があると考えられます。

同業他社での副業や、同様の手法を用いたビジネスなどは、情報漏洩が大きな脅威となり得ます。情報漏洩によって会社に回復不能な損害を与える副業を行っていた場合は、解雇が認められる可能性があるでしょう。

⑤副業により本業の社会的信用を低下させた

本業の社会的信用を低下させるような副業についても、解雇の対象となります。

反社会的勢力との関連が疑われる会社での副業や、詐欺などの違法な副業、風俗などの副業を行っていた場合は、本業の社会的信用を傷つけるリスクが高いでしょう。

例えば、高いモラルを求められる金融機関に勤務しながら、風俗店でアルバイトをしていることが広まると、会社の品位が損なわれ、売上げの減少につながる可能性もあります。

なお、どのような副業が社会的信用を低下させるかは、本業の業種や規模、副業の内容などによって異なります。解雇を検討する前に、対象の副業が企業イメージにどれほどの影響を与えるのか、慎重に判断することが必要です。

副業禁止違反による解雇が認められない3つのケース

副業禁止違反があったとしても、解雇が有効とならない場合もあります。
以下の3つのようなケースでは、解雇は認められにくいでしょう。

  • 副業による本業への影響が少ない
  • 従業員の副業を黙認していた
  • 副業の規模が小さい

①副業による本業への影響が少ない

就業規則で副業を禁止する目的は、副業を行うことで本業がおろそかになることを防ぐことにあります。

そのため、副業が就業時間外に行われており、かつ本業への影響力も少ない副業であれば禁止できず、解雇することも困難です。

例えば、年に数回のアルバイトや趣味の手作り品の販売、家賃収入、株式投資といった本業に支障が生じる可能性が低い副業が挙げられます。

副業が本業に与える影響の大きさについては、普段の勤務態度や勤務成績、本業の就業時間中に副業を行っていないか、副業による疲労の蓄積が本業に支障を与えていないかなどの点を踏まえて判断する必要があります。

②従業員の副業を黙認していた

たとえ就業規則に副業禁止の規定が設けられていたとしても、副業をしていることを会社として知りながら注意しなかった場合は、会社が副業を黙認していたと判断される可能性があります。

副業を黙認していた場合は、解雇という厳しいペナルティを下すことが法的に困難となります。

裁判例でも、タクシー運転手が車の船積み作業の副業を会社に無断で行っていたことを理由に解雇された事案につき、裁判所は社内で管理職も含めて長年堂々と副業が黙認されていた事情を踏まえて、何ら指導せずいきなり解雇したことは冷酷であるとして、不当解雇と判断しています(広島地方裁判所 昭和59年12月18日判決参照)。

③副業の規模が小さい

副業違反があったとしても、その規模が極めて小さい場合には、副業を抑制する必要性は低いと考えられます。そのような副業を理由に解雇した場合には、不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。

例えば、家業を時々手伝う程度や趣味の延長で少額の利益を得ているようなケースでは、本業への支障や実害は非常に小さいといえます。このような規模の小さな副業を理由として解雇することは、労働者に与える不利益が大きすぎるため、権利の濫用と判断される可能性があります。

規模の小さな副業違反があった場合には、まずは口頭による注意や指導を行うべきでしょう。

副業禁止違反を理由とした解雇に関する判例

副業を理由とした解雇が有効と判断された判例

(事案の内容)

【平23(ワ)25441号 東京地方裁判所 平成25年2月28日判決】

ポータルサイトの運営を行うY社で働いていた社員Xが、Y社を退職して競合他社を起業した元上司から依頼を受け、競合他社の仕事を請け負い、顧客の奪取に加担したことを理由に懲戒解雇されたことを不服として、Y社を提訴した事案です。

(裁判所の判断)

裁判所は、社員Xが1年にわたり継続して競業行為に加担したこと、その内容はY社の重要顧客に関するホームページのデザイン制作という顧客の奪取にまで及んでおり、さらにY社の就業時間内にY社のパソコンを使って行ったこと、その報酬として社員Xは10万円を受け取ることにしたこと、実際に上記加担期間中におけるY社の重要顧客からの売上げが落ち込んだといった事情を踏まえ、懲戒解雇は有効であると判断しました。

(判例のポイント)

競業行為は会社に対する背信性の高い行為であるため、本件のように、懲戒解雇が行われるケースは少なくありません。

競業行為を理由とする懲戒解雇の有効性については、競業行為の態様や会社に生じた影響、競業を行った社員の役職などを考慮して判断する必要があります。

例えば、競業行為により実際に会社の売上が減少した場合や、管理職の社員が競業行為を行ったような場合は、厳しい処分を持って臨むべきであり、懲戒解雇の有効性もより高まると考えられます。

社内に競業行為が疑われる社員がいる場合は、まずどのような態様で競業を行っているのか、実際に会社にどのような影響を与えているのかを十分に調査し、記録化して証拠として残しておくことが重要です。

副業を理由とした解雇が違法と判断された判例

(事案の内容)

【平19(ワ)12956号 東京地方裁判所 平成20年12月5日判決】

私立大学の教授が、大学側の許可を得ることなく語学学校講師などを兼職し、大学の講義を休講したことを理由として、大学から懲戒解雇された事案です。これを不服とした教授が解雇無効と主張して大学側を提訴しました。

(裁判所の判断)

裁判所は、以下を理由として、本件懲戒解雇を無効と判断しました。

  • 兼業は使用者の権限が及ばない労働者の私生活上の行為である。
  • 職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務提供に特段の支障を与えない程度・態様による兼業については、就業規則の兼業制限の規定への実質的な違反に当たらないものと考えられる。
  • 本件の大学教授による副業は夜間や休日に行われており、本業への支障がなかったことが認められる。

(判例のポイント)

就業規則の兼業禁止規定違反を理由に、大学が教授に対して行った懲戒解雇の有効性について争いとなった裁判例です。

裁判所は、兼業は原則として労働者が自由に行うことのできる行為であると認めた上で、兼業禁止規定に違反するケースを狭く解釈し、職場秩序や仕事への支障の大きさを実質的に考慮して、懲戒解雇の有効性を判断した点に特徴があります。

兼業禁止違反を理由に懲戒処分を行う場合は、実質的な観点から労働者の兼業が就業規則違反に当たるかどうかを慎重に検討する必要があります。

副業禁止違反の従業員を解雇する際の注意点

注意指導を徹底する

副業違反があったとしても、最初から解雇処分とするのではなく、まずは注意指導によって改善を促しましょう。

会社が改善の機会を設けずいきなり解雇といったペナルティを下せば、会社として尽くすべき指導を行っていないとして、解雇無効となる可能性があります。

また、注意指導を行っていないという事実が、会社として副業を容認していたと判断されるおそれもあります。

注意指導を行う際は、本業に支障が生じている問題点について事実を示しながら具体的に指導を行い、指導内容を記録しておきます。注意指導を徹底し、改善がみられなければ段階的に処分を重くしていくようにしましょう。

解雇要件を満たしているか慎重に判断する

副業禁止規定に違反した社員を懲戒解雇する際は、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 就業規則の懲戒解雇事由に該当すること
  • 規定違反の証拠があること
  • 懲戒解雇を行うことが問題行為の内容に比べて重すぎないこと(労働契約法15条)
  • 弁明の機会を与えていること

懲戒解雇は労働者へ大きな不利益を与える処分であるため、その有効性は厳格に判断されます。
副業が本業にきたす支障の程度や会社への損害、注意指導歴、過去の社内の類似事案との公平性などを考慮して慎重に検討しましょう。

不当解雇と判断されれば、会社に大きな金銭的負担が生じる可能性があります。解雇は最終手段と考え、判断に迷う場合は早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

詳しくは以下のページをご覧ください。

さらに詳しく問題社員を解雇するときの進め方・手順は?

解雇以外の処分や退職勧奨も検討する

解雇以外に副業をしていた社員を処分する方法として、懲戒処分や退職勧奨などが挙げられます。

  • 懲戒処分
    懲戒処分の種類として、譴責、戒告、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などが挙げられます。
    問題の程度に応じた処分を選択しなければ、不当な処分と判断されます。
    例えば、副業が原因で数回遅刻したが、反省して今後はやめると約束したような軽微な事案では、譴責や戒告など軽い処分が妥当です。
  • 退職勧奨
    会社が社員に退職を勧めて、合意による退職を目指すことです。
    本人の同意を得て辞めてもらうため、解雇よりも争いとなりにくいですが、無理やり退職を迫るなど行き過ぎた退職勧奨を行うと、違法な退職強要ととられる可能性があるためご注意ください。
さらに詳しく懲戒処分で注意すべき3つのポイントは?

副業によって解雇した場合の退職金の支払いについて

懲戒解雇とするときは、退職金を不支給または減額すると就業規則に設ける会社が多いです。

ただし、懲戒解雇が認められるほど悪質な副業禁止違反であったとしても、退職金を不支給・減額することができるかどうかは、さらに詳しく検討する必要があります。

なぜなら、裁判例では、これまでの長年の勤務の功績を消去する、または減少させるほどの悪質な行為でない限りは、退職金を不支給・減額してはならないと判示しているからです(東京地方裁判所 平成18年5月31日判決参照)。

副業禁止違反を理由とした解雇で、退職金を減額できるケースとしては、競合他社で副業をしていたケース、機密情報の漏えいなどによって実際に本業の会社に損害を与えたことが明らかなケース等が挙げられます。

さらに詳しく懲戒解雇の場合は退職金を不支給にできる?

副業を理由とした解雇でトラブルにならないためにも弁護士にご相談ください

副業を理由とする解雇については法律上多くの注意点が存在します。

例えば、どのような副業であってもすべて解雇するなどシビアな処分を下してしまうと、労働審判や裁判を起こされ、不当解雇として会社側が負けるリスクがあります。そのため、副業を目の敵にしすぎるのは危険です。

不当解雇と判断されぬよう、就業規則に副業禁止を定めるタイミングから適切に対応する必要があります。
また、実際に解雇を行う場合は、特に会社側の改善指導歴が重要となります。

労働法務に精通する弁護士であれば、副業を理由とする解雇が認められるための要件や手続き方法、就業規則への規定の仕方などについて適切にご提案・アドバイスすることが可能です。ぜひご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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