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労働審判を起こされた場合の会社側の対応とは?弁護士がポイントを解説

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    #労働審判

    #解決金

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

ある日突然、裁判所から「労働審判」の呼出状が届いたら、多くの経営者は混乱してしまうことでしょう。
労働審判は「第1回の期日でほぼ勝負が決まる」という大変スピード感のある手続きであるため、会社側に与えられる準備期間は非常に短くなります。

始めの段階で、労働審判への対応を誤ると、会社側の主張を通せないまま、社員側の主張どおりの審判が下されてしまうおそれがあります。

そこで、本ページでは、会社として不利益を受けることのないよう、労働審判の手続きの流れや、労働審判を起こされた場合に会社側がとるべき対応について解説していきます。

労働審判とは(概要・流れ)

労働審判とは、会社と社員間で発生した労働トラブルを迅速に解決するための制度です。
扱われる内容として、解雇・雇止め・配置転換・懲戒処分の有効性、未払い残業代・退職金請求などが挙げられます。労働審判の流れは、次のとおりです。

  • 労働審判の申立て
  • 期日指定・呼び出し
  • 答弁書等の提出
  • 第1回~第3回期日
  • 審判終了
  • 訴訟への移行

申立人(労働者)が裁判所に申立書を提出すると、裁判所から第1回期日の指定と呼び出しがなされます。相手方(会社)は期限内に答弁書等を提出しなければなりません。

労働審判委員会(裁判官1名と労働問題の専門家2名)は原則3回以内の期日で審理し、話し合い(調停)による解決を試み、話し合いがまとまらない場合はトラブルの実情に応じた審判を下します。審判に不服がある場合は異議申立てができ、その場合は裁判へと移行します。

裁判は終結まで1年以上かかることが多いですが、労働審判の70%は3ヶ月ほどで終了しています。

労働審判の具体的な手続きの流れについて知りたい方は、以下のページをご覧ください。

さらに詳しく労働審判を起こされたときの手続きの流れ|会社側の対応を弁護士が解説

会社側は早急な対応が必要

第1回期日は、原則として申立日から40日以内に指定されます。そして、第1回期日の7日~10日ほど前までに、会社側の反論を書いた答弁書と証拠を提出しなければなりません。
つまり、3週間ほどで答弁書を作成しなければならないため、労働審判を起こされたら、すぐに事実関係の確認や証拠の収集といった準備を進める必要があります。

裁判所は提出された申立書や答弁書、証拠を熟読した上で、第1回期日において争点整理や証拠調べなどを行い、おおよその心証(解決の方向性)を決めてしまいます。そのため、第1回期日までにどれだけ説得的な答弁書を作成できるか、有効な証拠を確保できるかが勝負となります。

また、第1回期日は、書面だけでは判断できない点について、裁判所から当事者や関係者に質問が出され、それに回答するという審尋形式で進められます。曖昧な回答をすると心証が悪くなるため、予想される質問への回答や反論の準備をして期日に臨む必要があります。

労働審判を起こされた場合の会社側の対応ポイント

労働者より労働審判を起こされた場合に、迅速かつ適切に対応しないと、十分な反論を行えず、会社側が敗訴してしまう可能性が高くなるため要注意です。
労働審判を起こされた場合に会社がとるべき対応として、以下が挙げられます。

  • 「期日呼出状及び答弁書催告書」を確認する。
  • 期限までに答弁書を作成する。
  • 会社側の出席者を決定する。
  • 第1回期日に向けた準備を行う。
  • 和解の落としどころを見極める
  • 異議申立ては2週間以内に行う

「期日呼出状及び答弁書催告書」を確認する

労働審判の申立てがあった場合は、裁判所から会社あてに申立書と証拠の写し、「期日呼出状及び答弁書催告書」が郵送されます。まずは呼出状に書かれた以下の内容を確認しましょう。

  • 労働審判が開催される裁判所
  • 第1回期日の日時(原則として申立日から40日以内)
  • 答弁書の提出期限(第1回期日の7日~10日ほど前)

これらの期日変更は基本的に認められず、労働審判を申し立てられた会社には、指定期日に裁判所に出頭すべき義務があります。必ず期日に出頭できるよう予定調整をし、指定された期限までに答弁書を提出しましょう。やむを得ない理由で出席できない場合には、早めに裁判所に連絡することが必要です。

正当な理由なく第1回期日を欠席すると、5万円以下の罰金に処せられる場合があり、答弁書を提出しないと社員側の請求がそのまま認められるリスクもあるため、真摯に対応しましょう。

期限までに答弁書を作成する

答弁書とは、労働者が労働審判申立書に書いた内容に対し、会社側の反論を書いた文書をいいます。
答弁書には以下の事項を記載します。

  • 申立ての趣旨に対する答弁
  • 申立書に記載された事実に対する認否
  • 答弁を理由づける具体的な事実
  • 予想される争点及び争点に関連する重要な事実など

申立書が届いてから3週間ほどで答弁書と証拠書類を提出する必要があるため、非常にタイトな期限となっています。申立てを受けたらすぐに事実関係を確認し、答弁書の作成に着手しなければなりません。あわせて、答弁書に記載すべき反論を裏付けるための証拠を収集します。

答弁書は、裁判所の心証形成や、第1回期日での証拠調べ、その後の調停の行方に大きな影響を与えます。
答弁書の出来具合で勝負がほぼ決まるため、答弁書に反論したいことをできる限り詰め込むことが重要です。

充実した答弁書を作成するには高度な法的知識が必要となるため、弁護士に作成を依頼することをお勧めします。

会社側の出席者を決定する

労働審判では、第1回期日から関係者に審尋(質問)が行われるのが通例ですので、労働者、会社側ともに期日への出席が求められます。期日に出席するべき会社側の関係者として、以下が挙げられます。

  • 会社代表者

    労働審判を弁護士に依頼せず、会社自身で対応する場合、中小企業など社長が労働者の人事も担っているようなケースでは社長の出席が必須です。
    一方、弁護士に依頼した場合や大企業の場合は社長の出席は必須ではありません。

  • トラブルの事実関係を知る者

    事実関係を説明できる当事者の参加は必須です。例えば、残業代請求であれば、当該社員の残業命令や労働時間管理に直接関わった上司や人事担当者等を出席させます。ハラスメントであれば、ハラスメントの加害者や目撃者も候補に挙げられます。

  • 弁護士

    弁護士が代理人として出席することも可能です。弁護士であれば説得性のある法的主張・立証や審尋のフォロー等が行えるため、会社に有利な結果となる可能性が高まります。

第1回期日に向けた準備を行う

労働審判は第1回期日が勝負です。期日の冒頭から、労働審判委員会がトラブルの事実関係について、当事者や関係者に対し核心的な質問をする「審尋」を行うことが通例です。
その場で適切に回答しないと、委員会の心証を悪くし、会社側に不利な状況となる場合があるため、事前の準備がとても重要です。

まずは会社としての主張や理由、証拠を整理し、どのような質問がくるかあらかじめ予測した上で、想定問答集を作成し、審尋の予行演習をしておくのが望ましいでしょう。
また、社員側が提出した申立書や証拠を確認し、不備がある部分については追及したり、不明確な部分については釈明を求めたりするなど、対応の準備をしておくことも必要です。

さらに、第1回期日から和解案が出される場合があるため、会社として最終的にどうしたいのか、具体的な解決策についても検討しておくべきでしょう。

和解の落としどころを見極める

労働審判では、第1回期日から裁判所より和解を提案されるケースが多いです。
そのため、徹底的に争うのか、どのような内容であれば和解に応じるのかなど、和解の落としどころを見極めることも必要になります。

なお、早期解決のために会社側が解決金を支払って和解するケースもあります。

例えば、不当解雇トラブルにおいては、会社の本音として「不当解雇でも復職させたくない」、社員の本音として「解決金は欲しいが実は復職したくない」というケースも多く、このような場合の落としどころとして使われるのが解決金の支払いです。

解決金の金額は、トラブルの内容や裁判所の心証によって増減するためケースバイケースです。
例えば、不当解雇トラブルにおける解決金の一定の目安額は、正当解雇との心証の場合は社員の月給1~3ヶ月分ほど、不当解雇との心証の場合は月給6ヶ月~1年分ほどとなります。

労働審判における和解について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく労働審判を申し立てられたら和解すべき?会社側のメリットや解決金について

労働審判における解決金相場について詳しく確認したいという方は、以下の記事をご一読ください。

さらに詳しく労働審判制度の解決金の相場は?決め方や減額について

異議申し立ては2週間以内に行う

話し合いで解決しない場合は、最終的に裁判所が当事者の実情に応じた労働審判を下します。
この審判結果に不満がある場合、当事者は異議申立てを行うことが可能です。

異議申立ての期限は、審判書の送達を受けた日あるいは労働審判期日において労働審判の口頭告知を受けた日から2週間以内となっています。
異議申立てを行うと、裁判所が下した審判はその効力を失い、自動的に裁判へと進みます。

異議申立てを一度行うとその撤回はできず、裁判へと移行した場合は長期決戦となり、事件解決までに1年以上かかるケースもあります。そのため、審判に不服がある場合には裁判に進んでもよいかどうかについても検討する必要があります。

労働審判で会社側がやってはいけない対応は?

労働審判において会社側がやってはいけない対応として、以下が挙げられます。

期日を欠席する

指定期日に正当な理由なく欠席すると、5万円以下の罰金が科されます。
また、期日に出頭しないと裁判所の心証が悪くなるばかりか、社員側の主張と証拠だけで審判が下され、会社側に不利な状況となるおそれがあります。

答弁書を提出しない

第1回期日では、提出された答弁書や証拠に基づき、事実確認や意見聴取がおこなわれます。
答弁書を提出していなければ、期日内において充分な聴取をしてもらえず、会社側の主張を理解してもらいにくくなります。

虚偽の主張を行う、声を荒げる、侮辱する

裁判所は尋問のプロであるため、尋問中に嘘をついたり、曖昧な回答をしたりした場合は、的確な質問により見抜きます。また、声を荒げたり、社員を侮辱する発言をしたりすると、心証が悪くなるため、このような対応は避けるようにしましょう。

労働審判は会社側にとって不利なのか?

労働審判は以下の理由により、一般的に会社側に不利だといわれています。

  • 会社側が反論を準備する時間が大変短い
  • 労働関係法やその判例法理は、労働者への保護に手厚いという性質がある。

第1回期日は申立日から40日以内に指定され、第1回期日の1週間ほど前までに答弁書や証拠を提出しなければなりません。さらに、第1回期日では裁判所から口頭で質問を受けるため、予行演習をする必要もあります。十分に準備してから申し立てた社員側と異なり、会社側に与えられる準備期間は非常に短いといわざるをえません。

また、労働審判で扱うトラブル(解雇・雇止めの有効性など)に適用される労働基準法や労働契約法といった法律は、会社と比べて弱い立場にある社員を保護するために制定されたという背景があります。
そのため、労働審判では社員側に有利な評価がなされる可能性が高くなります。

労働審判で会社側が受けるダメージ

労働審判を申し立てられると、会社側は次のようなダメージを受けるおそれがあります。

  • 準備や対応に労力がかかる

    申立書が届いてから答弁書の提出期限までは3週間ほどしかなく、限られた時間内で、事実関係の確認や答弁書の作成、証拠の収集などの準備や対応に追われることになり、大変労力がかかります。

  • モチベーションの低下、会社のイメージ低下

    例えば、労働審判で不当解雇と判断されたことが社内に広まれば、会社への信用が低下し、社員の働く意欲が削がれることは間違いありません。また、この事実がSNS等で外部流出した場合は、会社のイメージが低下し、会社経営に悪影響を与えるおそれがあります。

  • 解決金や弁護士費用の支払いが発生する

    労働審判を申し立てた社員への解決金の支払いや、労働審判を依頼した弁護士に支払う費用の発生など、一定の金銭的負担がかかります。

労働審判を有利に進めるには弁護士のサポートが不可欠

労働審判を会社側に有利に進めるには、弁護士によるサポートが不可欠です。
労働審判を弁護士に依頼するメリットとして、以下が挙げられます。

  • 限られた期間内で準備できる、審判を有利に進められる

    答弁書の作成や証拠収集、審尋の準備は早急に取り掛からなければなりません。また、3回という限られた期日内で、会社側に有利な主張を展開していく必要があります。
    弁護士であれば、これらすべてをサポートし万全な状態で審判に挑むことが可能です。

  • 裁判になっても対応できる

    審判結果に異議申立てをすると、裁判へと進む場合もあります。
    裁判はより厳格な手続きとなり、客観的証拠をもとに主張・立証する必要がありますが、弁護士は裁判のプロであり、裁判所の事実認定の仕方についても精通しているため、円滑に対応可能です。

従業員から労働審判を申し立てられたら、労働問題に精通した弁護士法人ALGにご相談下さい。

労働審判は裁判所の手続きであるため、単に答弁書を書けば良いわけではなく、労働関係法などの知識に基づき、法的な主張を展開していく必要があります。
これらの手続きを法的知識なく行うことは困難ですので、申立書が届いたら、できる限り早く労働審判に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士法人ALGは「企業法務専門の事業部」を設置しています。

その中でも、特に企業側の労働法務問題に力を注いでおり、労働審判の解決実績も多く有しています。事実関係の調査や答弁書の作成、尋問の予行演習、期日への弁護士の出頭など、会社側に有利な結果が得られるよう全面的にサポートすることが可能ですので、ぜひご相談ください。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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