※会社・経営者側専門となりますので労働者側のご相談は受付けておりません
※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。

TEL.0120-686-041 お問い合わせ

残業代とは?仕組みや割増率など基本ルールとよくあるトラブルなど

    残業代

担当弁護士の写真

監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

残業代とは、会社ごとに定められた所定労働時間を超えて働いた場合に支給される賃金をいいます。 そして、法定労働時間を超えて働いた場合は、1.25倍の割増賃金が支払われることが通例です。

残業代については、労基法によりその計算方法が厳しく定められており、これが適切に守られていないと、未払い残業代が発生し、会社と社員間でトラブルになるケースも少なくありません。

そこで、このページでは、残業代とはいったい何なのか、その定義や種類、正しい計算方法などについて解説していきます。

残業代とは

残業代とは、会社ごとに定められている所定労働時間を超えて働いたときに支払われる賃金をいいます。

この「所定労働時間」とは、就業規則などに基づき、社員に働くことを義務付けている労働時間をいいます。
例えば、始業が9時、終業が17時、休憩が1時間であれば、所定労働時間は7時間となります。

他方、所定労働時間とは別に、労基法では、労働時間の上限を原則として「1日8時間、1週40時間」と定めており、これを「法定労働時間」といいます。会社が所定労働時間を決めるときは、この法定労働時間の上限内で設定しなければなりません。

社員が所定労働時間を超えて働いたとしても、法定労働時間の範囲内であれば、法定内残業として、時給に換算した賃金を残業代としてそのまま支払います。割増賃金を支払う必要はありません。

一方、法定労働時間を超えて働いた場合は、法定外残業として、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

残業と36協定の関係

会社が法定労働時間を超えて社員を働かせたり、休日労働させたりするためには、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

具体的には、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数代表者)と書面による協定を結び、所轄の労基署に届け出た上で、社員がいつでも閲覧できる場所に掲示・交付しておかなければなりません。

もっとも、36協定の締結は、個々の社員に残業を義務付けるものではなく、「時間外労働させても会社として刑事罰が科されなくなる」という免罰的効果を有するにすぎません。

実際に残業を命じるには、36協定を結んだ上で、労働協約や就業規則、雇用契約書などに、「業務上の必要性がある場合に36協定の範囲内で時間外労働を命じることができる」ことを明確に定めておくことが必要です。

残業代の支払が必要ない職種

基本的に、残業した場合は、残業代が支払われるのが原則です。
ただし、例外として以下の職種は残業代の支払い対象となりません。

  • 農業、畜産業、漁業、水産養殖業、養蚕業など
  • 管理監督者
  • 機密事務取扱者(社長秘書など)
  • 監視・断続的労働従事者(警備員やマンション管理人、役員運転手など)

これらの職種は業務の性質上、厳格な労働時間管理になじまないため、労基法の労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されず、残業代も発生しません。 ただし、就業規則等に定めがある場合や、深夜労働させた場合は、残業代の支払いが必要です。

なお、この中で特にもめやすいのが、管理監督者です。
企業には部長や課長など様々な管理職が存在しますが、これらの者すべてが管理監督者となるわけではありません。
管理監督者に当たるためには、労務管理の指揮監督権や労働時間の裁量権があること、その地位にふさわしい待遇を受けているなど一定の要件を満たす必要があります。

残業代に関するよくあるトラブルと企業におけるリスク

社員から残業代に関する会社への訴えでよくあるトラブルとして、以下が挙げられます。

  • 日常的にサービス残業を強いられている
  • 名ばかりの管理職で残業代が支払われていない
  • 残業禁止命令は受けているが、仕事量から定時に帰れる状況ではなかった
  • 固定残業代に対応する残業時間を超えて働いたのに、残業代が支払われていない
  • 固定残業制自体が無効である

会社として残業代請求に適切に対応せず、未払い残業代を放置すると、以下のリスクを受ける可能性があります。

労基署への通報

未払い残業代を放置すると、社員が労基署に通報する可能性があります。

通報されると、労基署による調査が入り、是正勧告や指導がなされます。
指摘点を改善しない場合や悪質と判断された場合は、送検されて、懲役や罰金が科される可能性があります。

未払い残業代等の支払い

残業代は最大3年分遡って支払う必要があり、さらに遅延損害金(在職中は年3%、退職後は年14.6%)も発生します。

また、裁判になると、未払い残業代の額を上限とした付加金や、さらに慰謝料の支払いも命じられる場合があります。

モチベーション・企業イメージの低下

未払い残業代があると、適正に評価されないとして社員のモチベーションが低下し、さらにSNS等の告発により、企業イメージも低下するおそれがあります。

残業代の3つの種類と割増賃金率

社員に時間外労働や深夜労働、法定休日労働させたときは、割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条)。

割増賃金率については、発生する条件ごとに、以下のように定められています。

割増賃金率
時間外労働 25%以上(月60時間超:50%以上)
深夜労働 25%以上
法定休日労働 35%以上

以下で3つの割増賃金について詳しく見ていきましょう。

時間外労働の割増賃金

労基法では、労働時間の上限を「1日8時間、1週40時間」と定めており、これを法定労働時間といいます。
そして、この法定労働時間を超える労働を「時間外労働」といいます。

社員に時間外労働させる場合には、通常支払う賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
計算例は以下のとおりです。

(例)1時間あたりの賃金1500円、所定労働時間10時~19時(休憩1時間)の社員が、10時~21時まで働いた場合

  • 10時~19時(所定労働) 1500円×8時間=1万2000円
  • 19時~21時(時間外手当)1500円×1.25×2時間=3750円

合計1万5750円

また、時間外労働の合計が月60時間を超えた場合は、その超えた部分につき50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
ただし、社員の健康を確保するという観点から、通常の割増率25%を上回る部分の割増賃金の支払いに代えて、有給の代替休暇を与える方法も認められています。

深夜労働の割増賃金

労基法では、22時から翌朝5時まで(場合によっては23時から翌朝6時まで)を深夜時間帯と定めています。
そして、この深夜時間帯に働くことを「深夜労働」といいます。

社員に深夜労働させた場合には、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
計算例は、以下のとおりです。

(例)時給1500円、22時から翌朝4時まで(休憩なし)働いた場合

  • 22時~4時:(深夜手当)1500円×1.25×6時間=1万1250円

なお、満18歳未満の年少者は原則深夜労働が禁止され、また、妊産婦が請求した場合も深夜労働をさせてはならないという制限規定があるものの、これらに当たらない限りは、深夜労働に制限はなく、36協定の締結も必要ありません。

法定休日労働の割増賃金

労基法では、休日を1週間のうち少なくとも1日、又は4週間で4日以上与えなくてはならないとしており、これを「法定休日」といいます。そして、法定休日に働くことを「休日労働」といいます。

休日労働させた場合は、通常の賃金の35%以上の割増賃金の支払いが必要です。
計算例は次のとおりです。

(例)時給1500円、法定休日9時~18時(休憩1時間)に働いた場合

  • 9時~18時(休日手当)1500円×1.35×8時間=1万6200円

もっとも、法定休日は法律で定められた最低ラインの休日であるため、労使間の取り決めにより、これを超える日数の休日(=法定外休日)を与えることも可能です。
例えば、週休2日の会社で、日曜日を「法定休日」と特定したならば、土曜日は「法定外休日」となります。

法定外休日の勤務については、休日手当は発生しません。
ただし、法定外休日でも、1日8時間等の法定労働時間を超えて働いた分は、時間外労働として25%の割増率が適用されます。

時間外かつ深夜労働の割増賃金

時間外労働が深夜の時間帯に及んだときは、時間外割増25%+深夜割増25%=50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
計算例は以下のとおりです。

(例)1時間あたりの賃金1500円、所定労働時間9時~18時(休憩1時間)の社員が、9時~23時まで働いた場合

  • 9時〜18時:(所定労働)1500円×8時間=1万2000円
  • 19時~22時:(時間外手当)1500円×1.25×3時間=5625円
  • 22時〜23時:(時間外手当+深夜手当)1500円×1.50(1.25+0.25)×1時間=2250円

合計1万9875円

休日深夜労働の割増賃金

法定休日に深夜労働させたときは、休日割増35%+深夜割増25%=60%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
計算例は次のとおりです。

(例)1時間あたりの賃金1500円、法定休日の13時から24時まで(休憩1時間)働いた場合

  • 13時〜22時:(休日手当)1500円×1.35×8時間=1万6200円
  • 22時~24時:(休日手当+深夜手当)1500円×1.60(1.35+0.25)×2時間=4800円

合計2万1000円

法定休日は暦日(0時~24時)で判断されるため、例えば法定休日(日曜)から月曜にまたがる勤務をした場合は、日付をまたいだ時点で、通常の労働日となるため、休日手当の支払い義務はなくなります。

(例)法定休日(日曜)に、19時から翌月曜5時まで(休憩1時間)働いた場合

  • 19時~22時:(休日手当)35%
  • 22時~24時:(休日手当+深夜手当)60%
  • 0時~4時:(深夜手当)25%
  • 4時~5時:(時間外手当+深夜手当)50%

残業代の計算方法

残業代は、基本的に以下の計算式を使って求めます。

残業代(割増賃金)=残業をした社員の1時間あたりの賃金×割増率×残業時間

残業代の計算は、まず1時間あたりの賃金を求めるところから開始します。
その金額に一定の割増率と残業時間をかけたものが、残業代となります。
支払方法ごとの1時間あたりの賃金の求め方は、以下のとおりです。

【時給】

1時間あたりの賃金=時給

【日給】

1時間あたりの賃金=日給÷1日の所定労働時間

【出来高給】

1時間あたりの賃金=賃金計算期間における出来高給の総額÷当該賃金計算期間における総労働時間

【月給】

1時間あたりの賃金=月給÷1ヶ月の平均所定労働時間
※1ヶ月の平均所定労働時間=(1年の日数-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12

残業代の計算のベースとなる賃金には、基本給だけでなく、役職手当や資格手当、精皆勤手当といった諸手当も含まれます。
ただし、社員の個人的な事情に応じて付与される以下の手当については、残業代の計算から除外することが可能です。

  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 別居手当
  • 臨時に支払われる賃金(退職金や結婚祝金など)
  • 子女教育手当
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

残業代に関する裁判例

ここで、残業代に関する裁判例をご紹介します。

【東京地方裁判所 平成29年10月6日判決 コナミスポーツクラブ事件】

(事案の概要)

本件は、会員制スポーツクラブで支店長として働いていた原告が、労基法41条2号でいう「管理監督者」として残業代が支払われていなかったことを違法として、被告であるスポーツクラブ側を提訴した事案です。

(裁判所の判断)

裁判所は、以下を理由に、原告は管理監督者に当たらないと判断し、時間外手当の支払いを命じました。

  • 労基法41条2号の管理監督者の該当性については、①経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任を与えられているか、②自身の裁量で労働時間を管理できるか、③その地位に相応しい待遇がなされているか、という点から判断すべきである。
  • 支店で提供する商品・サービス内容の決定、営業時間の変更については、原則として直営施設運営事業部が行っており、支店長の判断で決められず、これらのうち多額の出損を伴う重要事項につき経営会議への参加も要求されていなかった。
  • 原告を含め複数の支店長は、人員不足により管理業務だけでなく、フロント業務やインストラクター業務など一般社員と同様の業務にも日常的に携わり、恒常的に残業を余儀なくされていた。
  • 役職手当の支給のみで、支店長に対し管理監督者としての地位にふさわしい待遇がされているとはいい難い。

(判例のポイント)

本件のポイントは、管理監督者の該当性については、支店長という役職名だけでなく、勤務実態で判断すべきと裁判所が判示した点にあります。
実際、支店長や部長などの管理職に対し、残業代を支払っていない企業は少なくないでしょう。
労基法上、確かに管理監督者に対し、深夜手当を除き、残業代を支給する必要はありません。
しかし、この「管理監督者」と、世間一般的に考えられている「管理職」とは意味が異なります。
管理職=管理監督者と混同すると、ある日突然、高額の残業代を請求されるという不測の事態に陥りかねません。どのような者が管理監督者に該当するのか、その判断基準を適切に理解しておく必要があります。

残業代に関するQ&A

未払い残業代が発生した場合の罰則はありますか?

未払い残業代が発生した場合、つまり、時間外・休日・深夜労働させたにもかかわらず、割増賃金を支払っていない場合は、使用者に対し「6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科される可能性があります(労基法37条、119条1号)。

一般的にいきなり刑事罰に処せられることはありませんが、労基署による是正勧告を無視し続けていると、最終的には刑事罰が科せられる場合があります。

罰則の適用対象は、基本的には事業主としての会社や会社代表者、取締役等となりますが、場合によっては、違法な残業を直接指揮・命令していた管理職や責任者が刑事罰を受けることもあります。

パートの残業代を15分単位で支払う必要はありますか?

労基法では、賃金全額払いのルールが定められているため、残業代は1分単位で計算して支払うことが必要です。

パートの残業代を15分単位で勤怠管理し、14分以下は切り捨てて残業代を支給しないといった運用は認められないため注意が必要です。

残業代をボーナスで支払うことは可能ですか?

残業代をボーナスで支払うことはできません。

労基法では、「賃金は毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めているため、残業代についても、残業したその月ごとに支払わなければなりません。

残業代を月の給料ではなく、ボーナスと併せてまとめて支払うことは違法となります。
仮にこのような支払いをした場合は、支払い遅れによる遅延損害金の支払いも必要となるため、注意が必要です。

早朝出勤は割増賃金の対象になりますか?

早朝出勤についても、時間外労働に当たるのであれば、割増賃金を支払う必要があります。

例えば、定時に退社していたとしても、早朝出勤を含めて、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働いた場合は、時間外手当を払わなければなりません。

ただし、早く出社するべき業務上の必要性がないにもかかわらず、例えばラッシュを避けるため自主的に早朝に出社した場合など、会社の指揮命令下にない状況では、労働時間とは認められません。このような場合は、法定労働時間を超えていたとしても、時間外労働とは認められないことになります。

労働時間に当たるか否か判断にお悩みの場合は、弁護士にご相談下さい。

就業規則に割増賃金は支払わない旨を定めることは可能ですか?

たとえ就業規則で割増賃金は支払わない旨定めたとしても、法律により割増賃金の支払いが義務付けられていますので、支払わなければなりません。

就業規則よりも法律の効力が優先されるため、法律に違反する就業規則は、その部分について無効となります。

フレックスタイム制の場合でも割増賃金は発生しますか?

フレックスタイム制の場合でも、割増賃金が発生することがあります。

フレックスタイム制とは、会社が定めた一定期間(清算期間)の総労働時間内で、社員が始業・終業時刻、労働時間について自由に決められる制度です。

フレックスタイム制では、社員が1日の勤務時間を自由に選択できるため、仮に社員が8時間を超える労働をしたとしても、割増賃金は生じません。

ただし、清算期間(1ヶ月~3ヶ月)における実際の労働時間の合計が、法定労働時間の総枠を超えた場合は、時間外労働にあたり、その超過分について割増賃金を支払う必要があるため注意が必要です。

残業代に関するご不明な点等は弁護士にご相談ください

昨今の労働者の権利意識の高まりとともに、社員から残業代を請求されるケースは増加傾向にあります。さらに、未払い残業代は、2020年の民法改正により、時効が2年から3年になったことで、その請求額が大きく増えることも想定されます。

そのため、会社として残業代のルールを正確に把握した上で、就業規則の整備や残業時間管理などを徹底し、未払い残業代の発生を防止していくことが重要です。

弁護士法人ALGは企業側の労働問題に対する豊富な解決実績を有し、残業代を支払うべきかの判断や未払い残業代の発生予防策、実際に発生した場合の対応など、様々な面でお力になることが可能です。残業代について何かご不明な点がある場合は、ぜひ一度お問い合わせください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

プロフィールを見る

企業の様々な労務問題 弁護士へお任せください

企業側労務に関するご相談 初回1時間 来所・ zoom相談無料

会社・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受付けておりません

※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。


受付時間平日 09:00~19:00 / 土日祝 09:00~18:00
  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。