契約
#業務委託契約書
監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
業務委託契約書は、業務内容や報酬、問題が生じた場合の対処方法など取引条件を明確にし、委託者と受託者双方の認識違いやトラブルを未然に防ぐ非常に重要な書類です。
2024年には「フリーランス新法」が施行され、フリーランスと契約する場合には業務委託契約書などで契約条件を明示することが法的に義務化されました。
このような背景から、契約書作成の重要性はますます高まっています。本稿では、業務委託契約書の基本から、契約書に盛り込むべき具体的な記載事項や作成・締結方法、フリーランス新法への実務対応など、幅広く解説します。
目次
業務委託契約書とは
業務委託契約書とは、企業などが外部の個人や法人に特定の業務を依頼する際、その委託業務の内容や報酬条件などを明確にするために作成する書面です。
もし、業務委託の契約内容を口頭で済ましてしまえば、依頼業務の範囲や納期、報酬内容など、様々なトラブルに発展するおそれがあります。業務委託契約を書面にし、双方が内容を確認することで、安心して契約することができます。
業務委託契約は、委託者が受託者に対し、一定の業務の遂行や成果物の作成を依頼し、その報酬や業務範囲、スケジュールなどを取り決める契約であり、雇用契約とは異なります。成果物の受領や業務の完遂をもって、委託者は報酬を支払い、業務委託契約は終了となります。
業務委託契約の種類
実は「業務委託契約」という名称は法律上の正式な契約類型ではありません。
民法で定義される業務委託契約は「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の3つの契約形態に分類されます。請負契約では、成果物の完成が目的とされており、その成果物に対して報酬が発生します。
たとえば、システム開発や建物の工事など、成果物の受領をもって契約が完了する業務が請負契約に適しているといえるでしょう。一方、委任契約や準委任契約の目的は成果物の完成ではなく、業務行為そのものが報酬対象となります。
具体的には、委任契約は弁護士が行う法律相談などが該当し、準委任契約は、法律行為以外の事務やコンサルタントなどの業務で使われることが多くなっています。
このように、業務委託といっても、その目的は異なるため、実際の業務内容に応じ、それぞれの契約形態に当てはめて契約することが大切です。
業務委託契約と雇用契約の違い
業務委託契約と雇用契約では、契約当事者間の関係性や依頼業務の進め方という点で大きな違いがあります。
雇用契約では、会社と従業員の間には主従関係があります。
会社は雇用主として従業員の労働時間や業務の進め方などを直接的に指揮・命令し、従業員はその指示に従って働く義務を負います。
これに対し、業務委託契約では主従関係はなく、対等なビジネスパートナーとして契約することになります。
受託者は委託者の指揮命令に服すことなく、業務の進行や働き方については自らの裁量で業務を遂行します。
また、雇用契約の場合は労働基準法や社会保険制度の対象となりますが、業務委託契約については原則として労働法の適用外となります。
業務委託契約書に作成義務はある?
業務委託契約書については、基本的に法律上の作成義務はありません。つまり、企業が他社や個人と業務委託契約を結ぶにあたっては、口頭だけで契約が成立する場合もあります。
ただし、2024年11月に施行された「フリーランス新法」により、フリーランスと業務委託契約を結ぶ場合には、取引条件を書面や電子データで交付することが義務づけられました。
そのため、フリーランスに対して仕事を依頼する際には、必ず契約内容を明示する必要があります。
業務委託契約書を作成しないリスク
業務委託契約書を作成しない場合、業務内容や報酬額、納期などで双方に認識のズレが生じやすくなり、トラブルにつながるリスクが高まります。
たとえば、
「どこまでが業務範囲か認識が異なり追加作業を巡って揉めた」
「納品物の内容や質を巡るクレーム」
などがよくある事例でしょう。
また、万が一トラブルが訴訟に発展した際も、口頭だけの約束では証拠がなく、言った言わないの水掛け論になる可能性があります。 そうなれば自分の主張を裏付けることができず、不利な立場に追い込まれるおそれもあります。
このようなリスクを避けるためにも、業務委託契約書は必ず作成することをおすすめします。
フリーランスとの業務委託契約は作成が義務化
2024年に施行された「フリーランス新法」(特定受託事業者に係る取引適正化等に関する法律)により、企業がフリーランスと業務委託契約を締結する際には、取引条件を書面などで明確に伝える義務が新たに課されました。
これにより、発注者は業務内容や報酬の額、納期などの契約条件を、書面またはメールなどの電磁的方法でフリーランスに明示しなければなりません。
この義務に違反した場合には、行政指導の対象になる場合もあります。フリーランスとの取引におけるトラブルを予防するためにも、必ず契約内容を明文化し交付しましょう。
業務委託契約書の記載事項・書き方
業務委託契約書は、法律で作成義務や記載内容が厳格に定められているわけではないため、当事者間で内容を自由に決めて作成できます。ただし、後々のトラブルを防ぐためには、重要な事項を具体的に盛り込むことが重要です。
以下では、業務委託契約書の主要な記載項目について詳しく解説していきます。
委託業務の内容
委託業務の内容は、業務委託契約書の中でも特に重要な項目です。
ここでは、「何を」「どこまで」「どのように」委託するのか、業務の内容や範囲をできるだけ具体的に記載することが求められます。例えば、「〇〇システムの設計・開発」「ホームページの新規作成及び既存ページの修正」といった具合に、業務の内容や成果物、作業範囲を詳細に記載しましょう。
契約期間
契約期間の記載は、業務委託契約書に必ず設けましょう。契約期間には、「開始日」と「終了日」もしくは「契約日から1年間」など、明確に記載します。
業務遂行期間を定めておくことで、いつまでに業務を完了させるべきかといった認識を一致させることができます。
また、必要に応じて自動更新の有無や、更新方法(期間満了時に通知がなければ自動で更新する等)、および契約途中での解除方法やその条件についても記載しておくと安心です。
委託料(報酬)
委託料(報酬)の記載は、報酬を巡る誤解や未払いなどの問題が起きないよう「○○円」「1件につき○○円」といった具体的な金額を記載しましょう。
一定の要件に応じた報酬形態であれば、その算出方法についても明記しておくべきです。
また、消費税が含まれているか、もしくは「別途消費税が加算される」のかについても必ず明記しておくことが重要です。
さらに、追加作業や修正が発生した場合の追加報酬の有無や、その計算方法についても記載しておきましょう。
支払条件・支払時期
支払条件・支払時期は、「いつ」「どのような方法で」報酬を支払うのかを具体的に定める必要があります。
たとえば、「業務完了後30日以内に指定口座へ振込」「毎月末締め翌月末払い」「着手金の有無」「一括または分割」など、支払いパターンはいくつか考えられます。
また、振込手数料の負担者(発注側か受託側か)も明記しておくと、無用なトラブルを防げます。そのほか、交通費などの経費負担についても明らかにしておくと安心です。
秘密保持
秘密保持の取り決めについては、契約に付随して知り得た情報やデータ、資料などを第三者に漏らさないことや不正使用しないことを明記します。
また、違反時には損害賠償や契約解除などの法的措置を取る可能性についても記載しておくと、万が一のトラブル時に備えることができます。情報の安全管理は、双方の信頼関係を構築する基盤でもあるため、この点はしっかりと取り決めておくことが大切です。
成果物の権利
契約によって生じた成果物や知的財産(著作物、プログラム、デザイン、資料など)の権利がどちらに帰属するのかを定めておくことは、業務委託契約書の中でも重要なポイントの1つです。
一般的には「納品後、全ての成果物の著作権は委託者へ移転する」や「受託者に帰属させる」など、成果物ごとに取り決めることが多いでしょう。また、成果物の利用範囲や、委託者が内容を改変・再利用できるかどうかについても慎重に設定しておくべきです。
再委託
再委託とは、受託者がさらに第三者に業務の一部または全部を委託することを指します。
一般的には、委託者の許可なく再委託することを禁止し、再委託を行う場合は「事前に書面による承諾を得ること」などとしておくべきでしょう。これは、業務品質の維持や秘密情報の漏洩リスク回避のためにも非常に重要なポイントです。
契約解除
契約解除とは、契約期間中であっても、特定の理由や条件により契約を途中で終了できる仕組みです。
記載する際は、どのような場合に解除が可能か、具体的な事由を定めておくとよいでしょう。たとえば「重大な契約違反」や「業務遂行が困難になった場合」などが一般的です。
また、「解除する場合は○日前までに書面で通知する」といった手続きや、解除の際に発生する損害賠償や違約金の有無や範囲についても定めておきます。
禁止事項
禁止事項の記載では、受託者が行ってはならない具体的な行為を定めておきます。
たとえば、「成果物の無断転用・流用の禁止」「委託者の事前承諾なく競合他社への業務提供を行わない」などが挙げられます。また、SNS等での業務内容や顧客情報の発信禁止なども盛り込むとよいでしょう。ただし、服務規定の遵守などを受託者に課すような記載は、偽装請負に繋がるおそれがありますので注意しましょう。
損害賠償
損害賠償の条項には、受託者や委託者が契約違反や債務不履行により相手に損害を与えた際、その損害を賠償する責任の有無や補償額等について記載します。
また、損害賠償の範囲や上限額(例:「賠償額は契約金額を上限とする」など)を定めておくと、不測の高額請求リスクを防ぐことができます。
反社会的勢力の排除
反社会的勢力の排除条項は、企業のコンプライアンスや取引リスク管理の観点から、現代の業務委託契約書に欠かせない規定となっています。
この条項では、委託者・受託者のいずれも暴力団や反社会的組織などと一切関係がないことを相手方に表明します。もし、当事者のいずれかが反社会的勢力と関係をもっているなどが判明した場合には、即時契約を解除できる旨を明記しておきます。
契約不適合責任の発生期間
契約不適合責任の発生期間とは、成果物の欠陥やミスなどの不具合があった場合に是正(修補)などを求められる期間をいいます。
成果物を納品しても、その後、欠陥などが見つかることもありますが、保証期間を無制限にしておくことは受託者側にとってリスクになります。保証期間を明確に定めておくことは、受託者の責任期間が過度にならず、無期限のクレーム対応を避けることに繋がります。
管轄裁判所
管轄裁判所の条項は、契約に関するトラブルが発生した場合に、どの裁判所で訴訟を行うかをあらかじめ合意しておく項目です。
業務委託契約書には、具体的な裁判所名や所在地を明記しておきましょう。管轄裁判所の取り決めは、紛争対応の効率化とコスト削減にもつながるため、必ず契約書に盛り込むようにしましょう。
フリーランスとの業務委託契約書に必要な記載事項
2024年のフリーランス新法施行により、フリーランスと業務委託契約を結ぶ際には、下記のような項目の明示が義務化されました。
これらの取引条件を書面等により明示しなかった場合には、行政指導の対象となる可能性があります。主な記載事項は以下の通りです。
-
受託業務の内容
業務の範囲や成果物、作業内容をできる限り詳細に記載し、認識の齟齬を防ぎます。 -
報酬の額および算定方法
「税込」「税別」など明確にし、金額や計算方法、追加報酬の有無も明記します。 -
支払方法および支払時期
具体的な支払日や分割払いの有無などを記載します。 -
発注事業者・フリーランスの名称
契約相手を特定できるよう、正式な名称や氏名を記載します。 -
業務委託をした日
具体的な日付を記載します。 -
業務の実施場所と納期
業務を行う場所、成果物の納品方法や納期も記載し、双方の認識齟齬を防ぎます。 -
(検査を行う場合)検査完了日
委託業務の内容によって検査が必要となる場合には、その検査完了日を明記します。 -
(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項
振込等による場合は、振込先や手数料負担者も含めて記載します。
業務委託契約書のテンプレート・ひな形
業務委託契約書のテンプレートや雛形は、インターネット上に多く出回っていますが、2024年のフリーランス新法へ対応するためには、「契約条件の明示義務」に沿った内容が盛り込まれていることが重要です。
契約相手がフリーランスである場合は、必ず書面または電子データで交付しましょう。以下の雛形を利用する際には、自社の取引内容や条件に合わせてカスタマイズしてください。
業務委託契約書の作成・締結方法
業務委託契約書は、委託者・受託者のどちら側が作成しても構いませんが、実務上は受託者側が草案を作成するケースが多いでしょう。
作成した側は自社の意向や要望を契約内容に反映しやすいメリットがありますが、一方的な内容にならないよう、相互で内容を確認し調整することが大切です。契約締結の方法としては、双方が内容に合意した上で署名や押印を行い、それぞれが原本を1通ずつ保管します。
最近では電子契約サービスを利用し、インターネット上で合意・署名を行う「電子契約」も急速に普及しています。電子署名やタイムスタンプにより法的な証拠力も担保されているので、ペーパーレス化や事務作業の効率化も踏まえて活用するとよいでしょう。
業務委託契約書の収入印紙|どちらが負担する?
業務委託契約書に必要な収入印紙の有無や金額は、契約内容によって異なり、主に以下の3つのパターンにわかれます。
- 請負に関する契約書
- 継続的取引の基本となる契約書
- 請負または継続的取引のどちらにもあたらない契約書
契約内容に応じて、必要となる印紙税の金額が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。契約書の印紙代をどちらが負担するかについては、法的な定めはありませんが、各自が保管する分の印紙代を負担することが多いでしょう。また、電子契約による契約締結の場合は収入印紙が不要とされています。
請負に関する契約書にあたる場合
| 業務委託契約書に記載の委託料 | 必要な印紙 |
|---|---|
| 1万円未満・記載なしの場合 | 不要 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
業務委託契約書が「請負契約」に該当する場合、契約書に記載された委託料(報酬)の金額によって、収入印紙代が決められています。
具体的な金額については表をご参照ください。印紙を貼らずに契約を締結してしまうと過怠税の対象になるおそれがあるため、発注金額に応じて必ず所定額の印紙を貼付しましょう。
継続的取引の基本となる契約書にあたる場合
特定の相手と継続的に取引を行うための基本契約書は、印紙税が一律4,000円と定められています。
これは主に売買取引基本契約や業務提携契約などが該当し、継続的な関係が前提となります。ただし、契約期間が3ヶ月以内で更新条項がない場合は対象外となります。継続的取引に該当するか否かは記載されている契約内容によって判断されます。
請負または継続的取引のどちらにもあたらない場合
業務委託契約書が「請負契約」や「継続的取引の基本となる契約書」のどちらにも該当しない場合、収入印紙は不要とされています。
たとえば単なる準委任契約やコンサルティング契約などは、原則として印紙税の課税対象となる文書に当たりません。ただし、契約書の内容や文言によっては課税文書に該当する可能性もあるため注意が必要です。印紙税の課税対象となるかどうかは、国税庁の以下のページで詳細が記載されていますので、ご確認ください。
業務委託契約書を作成する場合の注意点
業務委託契約書を作成する際には、以下の点に注意して、自社に合った適切な契約書を作成することが重要です。
- テンプレートの安易な利用は避ける: インターネットで入手できるテンプレートはあくまで参考程度にとどめ、自社の業務内容や契約条件に合わせて必ず修正・加筆を行うようにしましょう。
- 契約内容の明確化: 業務内容や業務期間、委託料(報酬)などは、後々のトラブルを避けるため、明確かつ具体的に記載することが大切です。
- 偽装請負に注意: 業務委託契約書の形式であっても、実態が雇用契約と同様であれば「偽装請負」にあたるおそれがあります。
- 法的リスクの確認: 下請法違反やその他の法令に抵触するリスクがないか、契約内容を十分に確認しましょう。
このような法的リスクに備えるためには、弁護士に契約書の作成を依頼することをおすすめします。
業務委託契約書についてのご不明点は弁護士にご相談ください
業務委託契約書の記載内容が不十分な場合には、後々トラブルに発展するリスクがあります。 特にフリーランス新法などの最新法令への対応も求められるため、自社で作成する際には記載内容に注意しましょう。また、業務委託契約書について不明点があれば、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、契約書の内容が適切か、法的リスクがないかといったリーガルチェックを受けることが可能です。 弁護士法人ALGでは企業法務における豊富な経験と実績を活かし、貴社の事業内容に応じた契約書の作成やトラブル時の対応など幅広い法的サポートを提供しております。業務委託契約を安全・円滑に進めるためにも、少しでも不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修
弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員
- 保有資格
- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
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