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IPOにおける労務監査とは?流れや企業が確認すべきポイントなど

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

企業がIPO(新規株式公開)を目指すにあたって、「労務監査」は非常に重要なステップです。労務監査とは、労働関係諸法令を遵守しているかの調査であり、上場審査においても重要視されています。

もし、法令違反や管理体制の不備があれば、IPOの審査が通らず上場できないなどのリスクも考えられます。

また、上場後であっても労務問題が表面化すれば、企業の信頼低下による株価の下落や訴訟リスクにもつながりかねません。

しかし、労務監査は決して簡単な手続ではありません。本稿では、IPOにおける労務監査の目的や流れ、企業が確認すべきポイントなど幅広く解説していきます。

IPOにおける労務監査とは

IPOのための労務監査とは、企業が株式上場を目指す際に、労務管理体制が法令に適合しているかどうかを第三者が客観的に調査・評価するものです。

主な目的は、労働基準法や関連法令に違反がないかを確認することで、潜在的なトラブルやリスクを洗い出し、労務環境を改善させることにあります。

調査内容は、労働契約書や就業規則の整備状況、未払い賃金の有無、ハラスメント防止対策の状況など多岐にわたります。

労務監査は非常に複雑であるため、主に労務分野に精通した弁護士や社会保険労務士などの専門家に依頼することが一般的です。

専門的な観点から詳細なチェックとアドバイスを受けられれば適切な労務体制を構築することができ、IPO準備をスムーズに進められるでしょう。

労務監査を受けるべき理由

労務監査を受けるべき一番の理由は、IPO審査において労務管理の状況が審査基準の一部となっているためです。

具体的には、労働基準法や社会保険に関する法令遵守、適切な労働時間管理や賃金支払い、ハラスメント対策などが上場審査で問われます。

これらの基準を満たしていない場合は上場審査に通過できず、IPOそのものが延期または中止となるおそれがあります。

あらかじめ労務監査を通じて自社の労務管理体制の課題やリスクを早期に発見できていれば、是正し、労務環境改善につなげることができます。

労務監査自体に法的な義務はありませんが、上場準備を万全に進めるのであれば、専門家による労務監査を受けておくことは必須といえるでしょう。

労務監査が実施されるタイミング

IPO準備_労務監査_タイミング

労務監査が実施されるタイミングは、IPO準備の初期段階から行うことが望ましいとされています。

一般的に、上場準備は3年程度かかるといわれていますので、1回目の労務監査は上場準備の初期段階で実施しておくとよいでしょう。

1回目の監査では、現状の労務管理体制全般をチェックし、法令違反の有無や改善点を洗い出すことが目的となります。

改善点をクリアにしたうえで、上場申請前の直前期に2回目の監査を行い、是正状況や実際の運用状況の確認、さらには最新の法令適用についてもチェックします。

1回目の監査では全体的な現状把握と改善点の指摘が主となりますが、2回目はその改善が定着しているかを重点的に確認するという点で視点が異なります。

IPOのために労務監査を受ける流れ

IPOのために労務監査を受ける流れは、主に以下の3つのステップに分かれます。

  • 労務監査実施の準備
  • 労務監査の実施
  • 労務監査報告

各段階で求められる対応について解説していきます。

①労務監査実施の準備

労務監査を成功させるためには、事前の準備が不可欠です。以下の項目を参考に、準備を進めましょう。

  • 労務監査の内容や範囲、期間等について打合せ
  • 監査人の選定、見積り
  • スケジュールと予算の策定
  • 必要書類の収集と整理

監査人は弁護士や社会保険労務士などの専門家を選定します。監査のスケジュールや予算を策定したら監査人と協議し、必要書類を確認し準備しましょう。

準備する労務資料としては、就業規則や労働契約書、賃金台帳、出勤簿、36協定等の労使協定が一般的です。

労務監査の準備を怠ると、監査の効果が不十分となるだけでなく、監査結果が誤ったものになるおそれもあります。

事前準備が万端であれば、有効なフィードバックを得られる労務監査となりますので、計画的に進めるようにしましょう。

②労務監査の実施

労務監査の実施は、主に「監査の実施」「評価」「報告書作成」の3段階で進みます。

監査人は、事前に用意した就業規則や労働契約書、勤怠記録などの資料をもとに現状の管理体制を確認します。必要があれば、従業員へのヒアリングや現場視察も行い、実際の運用状況を把握することもあります。

その後、収集した情報をもとに評価が行われ、法令違反などの問題点や企業が抱える課題を専門的な観点から整理します。監査人はその結果を「労務監査報告書」としてまとめ、経営者や責任者に提出します。

報告書には、現状の問題点やリスク、今後必要とされる改善点などが記載されていますので、これをもとに適切な改善対応策を検討・実行していくことが大切です。

③労務監査報告

労務監査報告では、監査結果を経営陣や関係部門へ提出するだけでなく、専門家による報告会が実施されることもあります。

報告会では、監査で明らかになった現状の課題や法令違反の有無、リスクとなるポイントなどについて、専門家から具体的な説明を受けます。同時に、必要な是正措置や改善策についてもアドバイスが得られるでしょう。

企業は報告内容をもとに、改善計画を立て、期日を定めて対応します。監査人と進捗状況を共有しながら、改善策が現場に定着するよう継続的なアドバイスや支援を受けることで、労務環境の適切な改善が可能となります。

こうした一連の流れを行うことで、企業の労務リスクを抑え、IPOにふさわしい労務体制へのレベルアップを図ることができます。

IPOにおける労務リスクと企業が確認すべきポイント

労務監査で指摘されやすく、かつIPOにおいても問題となりやすいポイントとしては、以下の8点が挙げられます。

  • 労働契約書を作成しているか
  • 労働時間を適切に管理しているか
  • 未払い賃金がないか
  • 36協定の締結・届出をしているか
  • ハラスメント対策等の安全衛生管理体制を整備しているか
  • 労務関連規定を整備しているか
  • 社会保険への加入もれがないか
  • 年次有給休暇の取得ができているか

各ポイントについて以降で解説していきます。

労働契約書を作成しているか

労働契約書は、企業と従業員の権利義務関係を明確にする重要な書類です。労働契約書には労働時間や賃金、休日、業務内容などの法定事項が具体的に記載されていなければなりません。

もし、労働契約書がない、もしくは労働条件が曖昧であったり記載漏れ等があると、労使トラブルが発生しやすくなり、潜在的なリスクを高めることに繋がります。

また、正社員、パート・アルバイト、契約社員などの雇用形態の違いにも配慮し、個別の労働条件を明確にしておく必要があります。

労働時間を適切に管理しているか

タイムカードや勤怠システムなどを活用して、出退勤記録及び残業管理を正確に行っているか確認します。労働時間が適切に管理されていなければ、サービス残業の有無や過重労働の実態を把握することはできません。

法定労働時間を超過している場合には、割増賃金を支払う必要がありますが、正確な労働時間を把握していなければ適切な対応は難しいでしょう。

不適切な労働時間管理は、未払い残業代請求や過重労働を引き起こす原因となります。労働時間管理の運用チェックは労務監査における重要事項の1つといえるでしょう。

未払い賃金がないか

未払い賃金トラブルは、企業にとって大きなリスクとなります。未払い賃金とは時間外労働に対する残業代だけでなく、深夜手当、休日手当なども含まれます。

過去に遡って請求されるケースや複数の従業員から請求されるケースもあり、多額の支払いが発生する可能性があります。

また、退職した従業員であっても、時効となっていなければ未払い賃金の請求は可能ですので、注意が必要です。

そのほか固定残業代制や変形労働時間制などを導入している場合、制度の理解が不十分だと、意図せず未払い賃金が発生している可能性もあります。

管理職と認識していた従業員が、労働基準法上の管理監督者に該当しないなど、未払い賃金問題は多岐にわたります。定期的に賃金計算の正確性をチェックし、未払いがないか確認することが重要です。

36協定の締結・届出をしているか

法定労働時間を超えて従業員を労働させる場合や、休日に労働させる場合は、事前に労働組合または労働者の代表者と「36協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定を締結せずに時間外労働や休日労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。

また、提出していればよいというわけではなく、36協定の内容が法令に適合しているか、届出内容を遵守しているかなども重要です。特別条項を設ける場合には、特別条項が付された書式を使用する必要もあります。

未締結・未届の場合には行政から指導や是正を求められる可能性もあり、場合によっては企業名の公表などの社会的信用に影響する事態も引き起こされるおそれがあります。

ハラスメント対策等の安全衛生管理体制を整備しているか

職場におけるハラスメントは、従業員の心身の健康を損ねるだけでなく、企業の評判を大きく損なう可能性があります。ハラスメント防止のための社内規定を整備し、従業員向けの研修を実施すること等が重要です。

労働施策総合推進法の改正では、パワハラ相談窓口を設置し、企業にパワハラ防止措置を行うことが義務づけられました。

これらの義務を履行せず、パワハラによるメンタルヘルス問題などが発生すれば、企業の安全配慮義務違反が問われることにもなりかねないでしょう。

そして、企業の安全衛生管理体制に必要なのはハラスメント対策だけではありません。労働者の安全と健康を確保するために、定期的な健康診断の実施、作業環境の改善、ストレスチェックなども必要です。社内の安全衛生管理体制を定期的に見直し、整備するようにしましょう。

労務関連規定を整備しているか

就業規則や付属する各種規程が最新の法令に則り整備され、全従業員に周知されているかを確認しましょう。規程が古いままでは、法違反や誤解の種となるおそれもあるため注意が必要です。

就業規則は、労働時間や賃金、休日、休暇、服務規律など、労働条件や職場におけるルールを定めた重要な書類です。労働基準法に基づき、作成し、周知した後は行政への届出が義務付けられていますので、作成するだけでは不十分であるという点に注意が必要です。

また、就業規則の内容が法令に適合しているか、実態と乖離がないかを定期的に見直し、必要に応じて改定しましょう。

また、就業規則本体だけでなく、付属する育児・介護休業規程、退職金規程などについても定期的に整備し、改定する際には、従業員に周知し、届出する必要があります。

社会保険への加入もれがないか

社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)への加入は、法律で義務付けられています。そのため、加入要件を満たす従業員を適切に加入させているかを確認する必要があります。

近年、社会保険の適用拡大によってパート・アルバイト社員も加入対象となっています。雇用形態にかかわらず全従業員の加入もれがないかチェックしましょう。

また、社会保険へ加入していても保険料の算定基礎に各種手当てを算入していないなど、保険料が不適正である場合には、行政から調査などが行われる可能性があります。

もし、社会保険の未加入や保険料の不適正があった場合、過去に遡って保険料を請求される可能性もあるため、期間や人数によっては莫大な費用になるリスクがあります。

年次有給休暇の取得ができているか

年次有給休暇は、従業員が心身のリフレッシュを図るための重要な権利です。従業員が希望する時季に、年次有給休暇を取得できるよう、企業は積極的に働きかける必要があります。

特に2019年4月以降、企業は、年次有給休暇が10日以上付与されている従業員に対し、年5日以上有給休暇を取得させることが義務化されました。年次有給休暇の取得状況を適切に管理し、取得が遅れている従業員には企業から働きかけて取得させる必要があります。

場合によっては、年次有給休暇の計画的付与制度を導入することも有効でしょう。年次有給休暇管理簿の作成と保存についても適切に運用されているか確認する必要があります。

IPOにおける労務問題への対応は弁護士にご相談ください

IPOを目指す企業にとって、労務監査は自社の労務管理体制や法令遵守状況を客観的に確認し、課題を洗い出す重要な役割を果たします。

しかし、労務問題は法令や実務の複雑な知識が必要となる場面が多く、専門家のサポートなしでは対応が難しいこともあります。

弁護士に相談することで、上場審査に必要な書類作成や手続きのサポートはもちろん、発見された労務リスクへの具体的な対策やトラブル防止策についても的確なアドバイスを受けることができます。

弁護士法人ALGでは、IPO支援や労務監査のご相談に積極的に対応しております。労務問題の経験豊富な弁護士が多数在籍しておりますので、そのノウハウを活かした実践的かつ迅速な支援が可能です。

IPOにおける労務問題にお困りの際は、ぜひ私どもにご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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