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人員削減とは?実施方法や企業が知っておくべき注意点などを解説

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

会社を長きにわたり経営していると、経営を立て直すために、または事業を変革するときに、経営者の責任として人員削減に踏み切ることが必要な場合もあります。

ただし、人員削減は雇用契約を打ち切るものであるため、社員とトラブルになりやすい傾向にあります。法的なリスクを伴い、残る社員のモチベーションを下げる可能性もあるため、慎重に対応を進める必要があります。

この記事では、実際に人員削減を行う方法や注意点などについて解説していきます。

人員削減とは

人員削減とは、その名のとおり会社が人件費を削減するために社員の数を減らすことをいいます。
いわゆるリストラの一つであり、英語でStaff reductionと呼ばれます。

その目的はさまざまですが、経営難からの脱却や業務の効率化、競争力の強化などのために行われることが多いです。
例えば、会社の業績が悪化し収支を改善するためや、不採算部門の撤廃のために人員削減するケースが挙げられます。

また、業績が好調な会社であっても、経営戦略として技術革新や業務の自動化を推し進めて人員削減を行うこともあります。

人員削減の主な方法として、新規採用の中止や非正規社員の雇止め、希望退職者の募集、退職勧奨、整理解雇などが挙げられます。

人員削減が行われる主な理由

人員削減が行われる主な理由として、以下が挙げられます。

  • 経営状態の改善
  • 不採算事業の廃止
  • 業務の自動化や効率向上
  • 組織再編や経営戦略の変更

個々の理由を確認していきましょう。

経営状態の改善

会社の経営状況が悪化したときに、人件費をカットして収支を改善するために人員削減を行うケースです。

経営を立て直すためには、売上の増加とコスト削減が不可欠です。

会社の経費の大部分が人件費であるため、余剰人員の整理により企業収支の改善を見込むことができます。特に日本ではまだ年功序列の慣習が残っていることもあり、勤続年数に応じて給与額が高くなる傾向があります。そのため、中高年層の希望退職者を募集し、人員削減を行う会社が増えています。

人員削減によって収支が回復すれば、倒産のリスクが減るだけでなく、浮いた余剰資金を設備投資や新規事業の立ち上げなどに活用できます。結果として、会社の生産性の向上につながります。

不採算事業の廃止

時代や顧客ニーズの変化により、かつて採算の取れていた部門が不採算事業となる場合があります。

不採算事業とは、赤字を継続的に発生させている事業部門や店舗、製品ライン、特定の取引先などを指します。

不採算事業は放置すれば会社経営をむしばむ可能性があります。そのため、不採算事業からの撤退を目的として、その事業に所属する社員をメインに削減する会社は多いです。

もっとも、不採算事業を廃止すると、他の事業部や取引先に悪影響を与えるリスクもあります。
経営再建が見込めるのであれば、事業を継続することで良い効果をもたらす可能性もあります。

不採算事業の廃止を判断するにあたっては、事業の現状を多角的に分析することが大切です。

業務の自動化や効率向上

業務の自動化により従来は人が行っていた業務が不要になり、人員削減を行う場合があります。
例えば、AI(人工知能)やRPA、ロボティクスなどの導入による業務の自動化が挙げられます。

製造業におけるロボットによる自動組立ラインの導入、小売業でのセルフレジの導入、オフィスワークでは文書管理や顧客対応の自動化ソフトウェアの利用などが代表例です。

これまで人が実行していた作業をAIやロボットなどのツールで代行することで、人件費の削減や作業時間の短縮、業務効率の向上などを見込むことが可能です。生産性を高めながらコストを抑えられるため、今後も働き方改革の一環として、さまざまな自動化手段の導入が進むでしょう。

組織再編や経営戦略の変更

会社が新しい経営戦略を打ち出すとき、これまでの組織体制を見直し、経営戦略に合わせた組織体制を整備する場合があります。

このことを組織再編といい、合併や会社分割、株式交換などの手法があります。組織再編を行った結果、これまでの役割やポジションが不要となり、人員削減を行うケースが多いです。

例えば、M&A(合併・買収)によって会社が統合されるとき、重複する業務や部門が統廃合されることがあります。この結果、余剰人員が発生し、人件費カットの一環として人員削減が行われます。

また、合併により社員に新たなスキルが求められるようになり、それに応えられない社員を削減の対象とすることもあります。

人員削減を行う6つの方法

実際に人員削減を行う6つの方法として、以下が挙げられます。

  • 新規採用の中止
  • 不採算事業の廃止
  • 契約社員やパートの雇い止め
  • 希望退職者の募集
  • 退職勧奨
  • 整理解雇

以下で具体的に見ていきましょう。

新規採用の中止

人員削減を行う場合にまず検討するべきことは、新規採用の中止です。
新卒や中途の採用数を必要最低限の数に減らせば、入社する社員よりも辞める社員の方が増えて、人員削減につながります。

今いる社員の雇用を守り、かつ将来の人件費を削減することができますが、社員の世代交代が進まずに高齢化し、会社の活力を失うリスクもあるため注意が必要です。

なお、希望退職者の募集や整理解雇の実施を検討している場合は、原則として新規採用は中止しておくべきです。
希望退職者を募集する一方で新規採用を行うと、社員の不信感を招く可能性があります。
また、整理解雇の要件の一つである解雇回避義務の履行に反する可能性もあるため、避けましょう。

派遣契約の終了

派遣社員を受け入れている会社では、正社員の希望退職者の募集や整理解雇を行う前に、まず派遣社員の削減を検討することが求められます。自社との直接の雇用関係がないため、正社員やパートなどの人員削減と比べて法的なリスクが低いためです。

具体的には、派遣契約の期間満了のタイミングで、契約を更新せずに打ち切ることになります。

なお、期間終了にともなう派遣契約の終了について特に法的な制限はありませんが、派遣契約を期間の途中で解約する場合は制限があります。原則としてやむを得ない事情と派遣元との合意が求められます。

また、派遣元が解約後の残りの契約期間について派遣社員を休業させる場合はその休業補償分を、解雇した場合は解雇予告手当分を負担する義務があるためご注意ください。

契約社員やパートの雇い止め

契約社員やパートなどの有期雇用労働者については、期間満了をもって雇用契約を打ち切ることで人員削減を図れます。これを「雇止め」といい、正社員の解雇よりも広く認められやすい傾向にあります。

裁判例でも、正社員を整理解雇する前に、まずそれ以外の解雇回避努力を図るべきとしており、雇止めもその一つに挙げられることが多いです。そのため、人員削減を行うときは、正社員の解雇よりも前に雇止めを検討する必要があるでしょう。

ただし、雇止めは無制限に認められるわけでなく、雇止め法理という法的ルールで制限されています。

例えば、以下のケースでは雇止め法理が適用され、正当な理由がない限り雇止めが無効となり、更新を強制される可能性があるため注意が必要です。

  • 更新時に雇用契約書を作っていない
  • 契約社員の仕事内容が臨時的なものではなく正社員と違いがない
  • 契約社員について、社内で長年、雇止めをしない運用が行われている
  • 上司から長期雇用を約束する発言があった

希望退職者の募集

新規採用の中止、派遣契約の終了、有期雇用労働者の雇止めを行った後も、さらに人員削減が求められるときは、正社員から希望退職者を募集することが一般的です。

退職金の上乗せや再就職支援などのインセンティブを提示した上で、特定部門や特定の年齢層などから退職者を募集し、社員との合意で雇用契約を解約する人員削減の方法です。

希望退職者の応募者が自らの意思で退職するため、トラブルとなるリスクが低いというメリットがあります。

ただし、合意による退職であるため募集人数に達しない可能性や、事業継続に欠かせない優秀な社員までが応募してしまうなどのリスクがあります。

会社に残ってほしい人と辞めてもらいたい人を区別し、それぞれへの対応を工夫して調整する必要があるでしょう。

退職勧奨

退職勧奨とは、会社が辞めてもらいたい社員に対して、個別に退職をお願いすることをいいます。

退職勧奨そのものは合法であり、人員削減の手段としてよく使われています。

もっとも、退職勧奨はあくまでお願いレベルであり、退職に応じるか否かの決定権は社員の方にあります。退職勧奨の状況から、実質的に会社が退職を強要していると評価される場合は、退職強要として退職の合意が無効となる可能性があります。

例えば、以下のやり方は違法な退職強要にあたる可能性があるため、退職勧奨の進め方にはご注意ください。

  • 長時間、多数回にわたる退職勧奨
  • 侮辱的な発言
  • 「応じなければ解雇する」との発言
  • 退職に追い込むための配置転換や転勤命令、仕事のとりあげ
  • 怒鳴る、机をたたくなどして威迫する

整理解雇

希望退職の募集や退職勧奨などによっても人員削減が図れないときは、整理解雇を検討することになります。

整理解雇とは、経営難などを理由に社員を強制的に退職させることです。

整理解雇は裁判に発展するケースも多く、不当解雇と判断されると会社に高額な金銭支払いが命じられる可能性があります。リスクが高いため、あくまで最後の手段と考えるべきでしょう。

やむなく整理解雇に踏み切る場合は、以下の要件から整理解雇の有効性が評価されることを踏まえて、必要な対策をとることが必要です。

  • 人員削減の必要性があるか
  • 解雇回避努力を行ったか(役員報酬の削減、新規採用の中止、希望退職の募集など)
  • 解雇の対象者は合理的な基準で選ばれたか
  • 対象者や労働組合と十分に協議したか

整理解雇の要件について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

さらに詳しく整理解雇の4要件とは?実施手順や注意点をわかりやすく解説

人員削減を行う際の注意点

人員削減を行うと、労使トラブルや社員の士気の低下などを招くリスクがあります。
リスクを軽減するには、以下の対策を講じることが必要です。

  • 対象者への支援
    人員削減の対象者に割増退職金や再就職支援サービス、キャリアカウンセリングの提供といった支援を行うことが必要です。
  • 他のコストカット
    人員削減を行う前に、広告宣伝費や消耗品費、家賃や外注費など、人件費以外のコストカットを行う必要があります。
  • 業務の効率化
    ペーパレス化や不必要な作業の廃止、新システムの導入、適正配置などにより業務を効率化すれば残業が減り、人員削減の回避につながります。
  • 残った社員へのフォロー
    残った社員に会社の現状や今後の経営ビジョン、事業計画などを説明して不安を払拭させ、士気を高めることが必要です。

人員削減による解雇の有効性が問われた裁判例

事件の概要

【平成30年(ワ)第38952号 東京地方裁判所 令和3年12月13日判決 バークレイズ証券事件】

Xは外資系の証券会社Yで、企業への融資を行うシンジケーション本部の部長に昇進し、年収4200万円という高額の給与支払いを受けていましたが、Yを含めたグループ会社全体の業績が悪化し、同本部の収益も苦しいとの理由で整理解雇されました。

これに納得のいかないXが解雇は無効として裁判を起こした事案です。

Yは、外資系金融機関は終身雇用を想定しておらず、会社に貢献できない場合に解雇するのは常識であると主張していました。

裁判所の判断

裁判所は、整理解雇の有効性は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性を踏まえて評価すべきとした上で、以下の当てはめを行い、整理解雇は無効と結論づけました。

  1. 人員削減の必要性
    グループ会社の社員の賞与や役員報酬は増えており、Xの所属部門でも一時的に収益が低下したものの収益が増加し、事業規模を縮小せずに存続しているため、人員削減の必要性は認められない。
  2. 解雇回避努力
    Yが行ったXの配置転換の検討は3部門だけで、その他の部署への配転や降格、賃金や賞与の減額については検討していない。
  3. 人選の合理性
    YはXの所属部門に在籍する他の社員に希望退職者の募集や配置転換を行っておらず、解雇対象者の選択に合理性があったとはいえない。
  4. 手続の相当性
    本件では判断されていませんが、対象者や労働組合と協議していたことなどが求められます。

ポイント・解説

裁判所が外資系金融機関の社員であっても、整理解雇は日本の労働契約法16条から判断すべきであると判示した、画期的な判決です。

裁判所は外資系の会社の雇用慣行と、日本の解雇要件への考慮は矛盾せず、Xの解雇には正当な理由がないため無効と判断しています。

Yは本件の解雇が無効なら、国際企業が日本におけるビジネスから撤退しかねないと主張していましたが、裁判所は解雇の有効性を裏付ける証拠資料を適切に作成・保存することで対処できるとして、会社の主張を否定しました。

解雇が認められるための法的ハードルは高いため、整理解雇を検討している場合は弁護士に相談することをおすすめします。

人員削減についてのご不明点は弁護士にご相談ください

人員削減は会社にとって苦肉の策であると思いますが、手順を間違えるとトラブルに発展しやすいです。

特に整理解雇が認められるための法的ハードルは高く、不当解雇と判断された場合に会社が受ける損失は大きいため、慎重な対応が求められます。

トラブルを防止するには、人員削減の進め方について弁護士の法的チェックを受けながら検討することが重要です。

弁護士法人ALGには企業法務に精通する弁護士が多く在籍しており、人員削減についても豊富な実績があります。

人員削減の手続きの適法性や社員との交渉、トラブル解決など、様々な面で専門的なアドバイスを提供することが可能です。

人員削減についてご不明な点がある場合は、ぜひご相談下さい。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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