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企業名の公表とは?公表基準や企業が取り組むべき対策などを解説

    企業名公表

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

企業名の公表とは、労働基準法などの法令に違反し、行政指導を無視して違法行為を繰り返す、いわゆる「ブラック企業」に対して行われるペナルティです。

厚生労働省が企業名を公表することで、社会的な信頼を大きく損なうだけでなく、採用活動や取引先との関係にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、企業名が公表される具体的な基準、公表を回避する対策について解説します。企業の信頼を守るために今何をすべきかを知る第一歩として、ぜひご一読ください。

企業名公表とは?

企業名公表とは、労働基準法などの労働関係法令に違反した企業の実名を、厚生労働省が公式に公表する制度です。一般に「ブラック企業リスト」とも呼ばれ、長時間労働や未払い賃金、安全配慮義務違反など、重大な法令違反が確認された企業に対して行われます。

厚生労働省が、違反内容や違反した法令の条文、企業名、所在地、送検日などの詳細を、原則として約1年間にわたり自らのウェブサイトに掲載します。

企業名の公表は、単なる罰則ではなく、企業に労働環境の改善を促すための制度です。労働者の安全と権利を守るために、社会的な警告として機能します。公表された情報は、求職者や取引先企業にとっても重要な判断材料となるでしょう。

企業名が公表されるケース

企業名公表の対象となるケースは、以下のとおりです。

  • 労働基準法違反
    月80時間を超える残業を、10人以上または4分の1以上の従業員に行わせ、それが1年程度の間に複数の事業場で繰り返されている場合で、是正勧告を受けても改善しない大企業など
  • 男女雇用機会均等法違反
    性別・妊娠・出産・育休などを理由に、解雇や降格など不利益な扱いを行い、是正勧告にも従わない場合
  • 労働安全衛生法違反
    労働者の生命や健康に重大な危険を及ぼす法令違反があった場合(安全装置の未設置や危険な作業環境での労働を強いるなど)、労働者死傷病報告書の未提出・虚偽報告があった場合など
  • 障害者雇用促進法違反
    行政による特別指導を受けても、法定の障害者雇用率を達成していない場合など
  • 最低賃金法違反
    地域ごとに定められた最低賃金を下回る賃金を支払い、是正勧告にも従わない場合
  • 労働施策総合推進法違反
    パワハラ対策を怠り、是正勧告にも従わない場合など

労働基準法違反による企業名公表の基準

労働基準法違反による企業名の公表は、とくに悪質で継続的な違法行為が確認された大企業に対して行われます。この大企業とは、従業員300名以上の企業を指し、それ未満の中小企業は対象外です。

厚生労働省による企業名公表の基準は、以下のとおりです。

  • 労働時間、休日、割増賃金に関する労基法違反があり、月の時間外・休日労働が80時間を超えている
  • 1つの事業所で10名以上または4分の1以上の労働者が該当する
  • 1年程度の間に複数の事業所で繰り返されている

これらを満たすと、労働基準監督署が是正指導を行い、それでも改善されない場合に、最終手段として企業名が公表されます。なお、これらの基準に該当しなくても、過労死や過労自殺など重大な労災が発生した場合には、企業名が公表されるのが通例です。

ブラック企業として企業名を公表された場合のデメリット

厚生労働省が企業名を公表するのは、労働基準法などの重大な違反があり、是正勧告にも従わないなど、悪質性が高いと判断されたケースです。このような公表は、行政処分にとどまらず、会社に以下のようなデメリットを及ぼす可能性があります。

  • 企業の社会的信用が低下する
  • 採用活動や人材確保に影響を与える
  • 社員のモチベーションが低下する

企業の社会的信用が低下する

現代では、インターネット上での情報拡散が非常に速く、厚生労働省のサイトで公表された企業名は検索結果やSNSなどを通じて長期間にわたり広く共有され続けます。

このような情報が広まることで、企業に対する世間の評価は急速に悪化し、取引先や顧客との関係にも悪影響を与えるリスクがあります。信頼を失った企業は、新規の契約獲得が難しくなるだけでなく、既存の取引先から契約内容の見直しや取引停止を受ける可能性も高まります。

つまり、企業名の公表は風評被害にとどまらず、経営全体に波及する深刻なデメリットをもたらすおそれがあるため注意が必要です。

採用活動や人材確保に影響を与える

求職者は企業の評判や職場環境を事前にインターネットで調べるのが一般的であり、「ブラック企業」として名前が出ている企業は、応募の段階で敬遠されやすくなります。

その結果、企業は新卒・中途を問わず人材の確保が難しくなり、採用活動の長期化や採用コストの増加といった問題に直面するおそれがあります。

さらに、採用活動が滞り、人手不足が深刻化すると、既存の社員に過度な業務負担がかかり、職場環境の悪化を招く可能性もあります。企業名の公表は採用活動や人材戦略に直接的なダメージを与えるため、企業にとっては深刻な問題です。

社員のモチベーションが低下する

ブラック企業として企業名が公表されると、その影響は社外だけでなく、社内にもダメージを与えます。

とくに大きな問題となるのが、社員のモチベーションの低下です。企業が法令違反を犯し、社会的に非難される状況に置かれれば、従業員は自分が働いている会社に対するプライドや信頼を失うでしょう。

また、インターネットやSNSを通じて企業名が広く拡散される昨今では、社員自身が「ブラック企業に勤務している」と見なされることへの不安やストレスを感じる可能性も高まります。
このような心理的な負担は、従業員の仕事へのモチベーションや職場への愛着心を損ない、生産性の低下や離職率の上昇といった問題につながりかねません。

企業名が公表されるまでの流れ

労働基準法などの違反があった場合でも、企業名がすぐに公表されるわけではありません。

多くの場合、最初のきっかけは従業員からの通報です。違法な長時間労働などが報告されると、労働基準監督署が調査を行い、違反が確認されれば企業に対して指導や是正勧告を行います。それでも改善が見られない場合に、最終的な措置として企業名の公表を行う流れとなっています。

企業名の公表に至る判断には、「署長ルート」と「局長ルート」という2つのプロセスがあります。
以下でその違いについて確認しましょう。

労働基準監督署長による指導【署長ルート】

署長ルートとは、違法な長時間労働や過労死などが複数の事業所で確認された企業に対し、労働基準監督署長が経営幹部に指導する制度です。対象となるのは、およそ1年の間に2ヶ所以上の事業所で、以下のいずれかの違反が確認された場合です。

  • 10人以上または4分の1以上の従業員が、月80時間超の残業を行い、労働時間や休日、割増賃金に関する法令違反で是正勧告を受けている
  • 過労死の労災支給が決定され、被災者が月80時間超の残業をしており、是正勧告や指導を受けている
  • 上記と同等に悪質な労働時間等の法令違反がある

該当企業には是正を求める指導書が交付され、全社的な立入り調査で改善状況が確認されます。この段階では企業名は公表されず、改善のチャンスが与えられます。

労働局長による指導【局長ルート】

局長ルートとは、労基署長による指導後も違法な長時間労働が改善されない場合や、複数の事業場で過労死が発生している場合に、労働局長が経営トップに直接指導し、企業名を公表する制度です。 対象となるのは、次のような深刻な労働環境が確認されたケースです。

  • 労基署の全社的な監督で労働法違反が確認された場合
  • 1年以内に2ヶ所以上の事業場で、①月100時間超の残業が10人以上または労働者の4分の1以上に認められ是正勧告を受けている場合、または②過労死の労災支給が決定され、月80時間超の残業が認められ是正勧告を受けている場合(②は1ヶ所以上で確認されている必要あり)

この制度では、違反が確認された時点で、改善状況の確認を待たずに、労働局長による指導と企業名の公表が即座に行われます。

企業名公表を回避するための企業の取り組み

労務トラブルにより企業名が公表されることは、会社の信用やブランドイメージに大きなダメージを与えるリスクがあります。こうしたリスクを回避するためには、以下のような取り組みを行うことが求められます。

  • コンプライアンスの体制を整備する
  • 就業規則を見直す
  • 長時間労働を防ぐ仕組みを作る

コンプライアンスの体制を整備する

企業名の公表リスクを回避するには、日頃からコンプライアンス意識を高め、法令遵守の体制を整備・運用することが不可欠です。

労働時間の適正な管理や36協定の遵守、割増賃金の正確な支払い、ハラスメントの防止といった基本的な労務管理を徹底する必要があります。そのうえで、労働法に関する研修、内部通報制度の整備、定期的な内部監査などを通じて、違反の未然防止に取り組むことが求められます。

とくにハラスメントの防止はコンプライアンスの重要な柱のひとつです。
社内方針の明確化、管理職への研修、ハラスメント窓口の設置、迅速な対応体制の整備などを通じて、職場環境の健全化を図ることが大切です。

ハラスメントの防止策について詳しく知りたい方は、こちらのリンクをご覧ください。

さらに詳しくハラスメントに関する8つの防止策

就業規則を見直す

企業名の公表を防ぐためには、就業規則の定期的な見直しが欠かせません。
就業規則を作成してから年月が経つと、会社の内部事情や会社を取り巻く環境も変わります。

古い就業規則では、テレワークの導入、副業の容認、ハラスメント対策の強化など、新しい働き方や価値観の変化に対応できません。

また、労働関連法令は頻繁に改正されており、法改正に対応していない就業規則を放置していると、労基署の調査や裁判などで企業側が不利な立場に立ち、企業名が公表されるリスクも現実味を帯びてきます。

そのため、就業規則は定期的に見直しを行い、現状の業務実態や法令に即した内容にアップデートすることが重要です。

長時間労働を防ぐ仕組みをつくる

企業名の公表リスクを回避するには、従業員の労働時間を適切に管理し、長時間労働を未然に防ぐことが必要です。
とくに月60時間を超える残業は、精神疾患の発症や過労死のリスクが高まるとされているため注意が必要です。

従業員の健康を守るため、日常的に各従業員の労働時間を把握し、業務量や人員配置を調整する体制を整えなければなりません。
たとえば以下のような取り組みが効果的です。

  • 勤怠管理システムを導入する
  • 月45時間超えの残業が発生した場合、上長による業務内容の見直しを義務付ける
  • 業務の繁閑に応じて人員を配置し、特定の従業員に負担が集中しないようにする
  • 定期的に産業医や保健師による面談を実施し、従業員の健康状態をチェックする
  • ノー残業デーやフレックスタイムなど、働き方の多様化を推進する

ブラック企業として公表されないためにも労務環境の改善は弁護士にお任せください!

労務環境の整備は、企業の信頼を守るうえで欠かせない取り組みです。

長時間労働やハラスメント、未払い残業代、就業規則の不備など、労務管理の問題を放置すれば、最悪の場合「ブラック企業」として企業名が公表され、社会的信用を大きく損なうリスクがあります。こうしたリスクを未然に防ぐためには、法的な視点から的確に対応することが必要です。

弁護士であれば、労働法に基づいた就業規則の見直しや、労務トラブルの予防・対応、行政対応のサポートまで、企業の実情を踏まえたアドバイスと実務支援が可能です。企業の健全な成長と従業員の安心を両立させるためにも、労務環境の改善は法律の専門家である弁護士にぜひご相談ください。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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