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労働審判を起こされたときに企業側が準備すべき証拠とは?提出時のポイントも解説

    労働審判

    #ハラスメント

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    #労働審判

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働審判は、個々の労働者と企業間における労働トラブルを迅速に解決するため、手続きを簡略化した司法制度です。おおよそ3回程度の期日で審理終結になるため、会社が労働審判に臨むにあたっては、いち早く従業員側の主張を把握し、的確な反論を行うための事前準備が重要となります。

特に、反論を根拠づける証拠の収集は、審判の結果を大きく左右するといっても過言ではないでしょう。本稿では、会社側が労働審判で準備すべき証拠について、具体例を交えて解説していきます。

労働審判を有利に進めるには証拠の提出が重要!

文書(書面)
  • 雇用契約書や就業規則など権利義務を表す文書
  • メールやメモなどの経緯を示すもの
  • 給与明細
  • 業務日報 など
その他の物証
  • 録音データ
  • 勤怠記録
  • インターネットの閲覧履歴
  • 防犯カメラ等の映像記録
  • 日記 など
人証(証人)
  • 上司や同僚 など

労働トラブルでは、言った・言わないの争いが多く存在しますが、口頭での主張だけでは説得力に欠け、裁判所が真実と認定することは少ないといえます。つまり、客観的な証拠を提出することで、主張の信憑性を高めることができれば、労働審判を有利に進めることも可能になるでしょう。

まずは適切な証拠を収集し、期限内に提出することが必須です。事案によって有効となる証拠は異なりますが、一般的には表に記載した文書等が有効な証拠になり得るでしょう。

労働審判に向けて企業側が準備すべき証拠とは?

労働審判においては、申立人である従業員側が立証責任を負い、会社側は従業員の主張に反論する場合に、その反論の立証を行うことが原則となります。しかし、労働関連の資料は従業員側ではなく会社側が保有していることが一般的でしょう。

労働審判は迅速な解決を目指す制度ですので、裁判所が会社側にデータの提出を求めることもあります。労働審判においては厳密な立証責任に固執せず、労働問題に関する就業規則などの基本的な資料は会社側で提出すべきといえます。

ただし、会社が保有している資料をとにかく提出してしまうと、事案に不要な資料まで提出することになってしまいます。提出すべき書類は事案によって異なりますので、要否を踏まえて準備しましょう。提出すべき証拠について、以降で事案毎に解説します。

不当解雇を争う場合の証拠

労働トラブルであれば、雇用契約書や就業規則、賃金台帳など労務の基本となる資料は証拠として必要になることがほとんどです。なかでも不当解雇を争う事案では、どのような証拠が有効かは、解雇の種類や解雇理由によって異なります。一般的には、解雇の要因となった事実や解雇検討の経緯等を示す資料が証拠として必要になります。

たとえば能力不足を理由として解雇したのであれば、注意や指導の記録、反省文、人事評価の査定記録などが解雇の正当性を示す証拠になります。このような資料は会社側が保有していることがほとんどですので、会社側で提出準備をしておくほうがよいでしょう。

解雇通知書や解雇理由書などは、解雇を言い渡す段階で従業員へ交付することが一般的ですので、労働者側から提出されることが多くなっています。

労働審判における不当解雇について詳しく知りたい方は、下記ページをご覧下さい。

さらに詳しく会社側が主張すべき反論と答弁書作成のポイント

整理解雇・懲戒解雇に関する証拠の例

不当解雇には、普通解雇や懲戒解雇、整理解雇などがあります。いずれであっても解雇通知書など解雇に関する書類が証拠になることはもちろんですが、それだけではありません。解雇の内容によって事由が異なるため、その証拠の内容も様々です。解雇の種類毎に一般的な証拠資料をまとめましたのでご参考下さい。

普通解雇・懲戒解雇
  • 労働者の業務態度が分かるもの
  • 人事評価、業務成績に関する資料
  • 業務に関するメールや報告書
  • 社内調査報告書
  • 病気療養に関する資料 など
整理解雇
  • 会社の業績を示す決算書や損益計算書
  • 整理解雇以外の経営改善策を検討したことを示す資料
  • 人選の基準を示す資料 など

残業代請求を争う場合の証拠

残業代請求に関する労働審判では、どのような契約を締結し、どのようなルールで就業していたのかを確認する必要があります。そのため、雇用契約書や就業規則、賃金台帳、タイムカードなどの基本的な証拠は、残業代算出に必須の証拠となります。もし、固定残業代が支給されているのであれば、その規定が確認できる書類も必要です。

残業代請求事案では、時間外労働等に対する不適当な割増率などが原因になることもありますが、不適当な勤怠管理によって生じるケースもあります。タイムカードはあっても、退社の打刻後に勤務していたのであれば、従業員側はメールの送受信履歴やパソコンの使用履歴、手帳へのメモなどによって残業時間の証明を行う可能性があります。

もし、これらの事実を会社が認識していながら証拠を隠したのであれば、裁判所の心証を損ねることになり、会社側にとって不利な判断になるおそれもあります。不利と思われる証拠であっても、隠匿することでより大きなダメージになることもあります。判断に迷う場合は弁護士に相談しましょう。

労働審判における未払い残業代についての詳細は下記ページよりご確認下さい。

さらに詳しく労働審判で未払い残業代を請求されたら?

セクハラ・パワハラを争う場合の証拠

セクハラやパワハラについて争う場合、どのような証拠が有効になるのかは事案の内容や状況によって異なります。ただし、どのような事案であっても客観的な証拠を集めることが重要となります。たとえば、メールやSNSでのやり取り、録音データ、動画データ、関係者からのヒアリング資料、診断書、日記などが挙げられるでしょう。

セクハラやパワハラ事案では、労務に関する基本資料では足りず、客観的にハラスメントであると認定できるだけの証拠収集が必要となります。ハラスメントは隠れて行われることが多いため、明確な証拠が残っているケースは少ない傾向があります。

企業側が労働審判で証拠を提出する際の3つのポイント

会社が労働審判で証拠を提出することは非常に重要ですが、提出さえできればそれで良いというわけではありません。証拠を提出する際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。

  • 証拠の提出期限を守る
  • 客観性のある証拠を集める
  • 証拠は第1回期日で全て出し切る

各ポイントについて以降で詳しく解説していきます。

①証拠の提出期限を守る

証拠は必ず答弁書の提出期限にあわせて書面とともに提出しましょう。もし、期限を守らずあとから提出するとなれば、証拠として採用されず、答弁書の内容を立証できない可能性があります。その場合には口頭のみの主張と同等の扱いになる可能性があり、労働審判が不利になることも十分考えられます。

しかし、労働審判では呼出状が届いてから提出期限までの期間は、2~3週間程度であることが一般的です。準備期間としては決して十分とはいえませんので、呼出状の内容を確認したらすぐに準備にとりかかる必要があるでしょう。

もし、どのような反論を行うべきなのか、その根拠となる証拠はどのような資料を準備すればよく分からないといった場合には、早い段階で弁護士へ相談しましょう。証拠の準備は一刻を争いますので、いかに早く着手できるかがポイントとなります。

②客観性のある証拠を集める

提出する証拠は、主張内容を裏付けるためのものですので、客観性があるものが理想的です。たとえば個人の日記よりも、防犯カメラの映像や勤怠システムのデータなどのほうが客観性には優れているといえます。

証拠は紙媒体のものに限られませんので、録音データなどの音声記録はもちろん、動画データも有効な証拠になります。改ざんが難しい形式であればあるほど、信用性の高い証拠となるでしょう。

③証拠は第1回期日で全て出し切る

労働審判の審理は基本的に3回までとされていますが、第3回期日まで行われる保証はありません。労働審判の多くが事実関係の確認を第1回期日で行い、その後の期日では行っていません。また、原則として第2回期日が終了したあとは、証拠の追加提出は認められていません。つまり、確実に事実認定が行われる第1回期日で証拠を出し切らなければなりません。

どれほど有効な証拠であっても機会を逸してしまえば、立証のチャンスを失い、リスクを負うことになります。この証拠は最後の切り札だ、などと出し惜しみせず、必ず答弁書とともに提出し、労働審判委員会に検討してもらう機会を逃さないことが一番大切です。

労働審判の証拠収集について、労働問題に詳しい弁護士がアドバイスいたします。

労働審判は短期解決を目指す制度であるが故に、その証拠提出の機会も限られています。主張する内容に沿った有効な証拠を適切に収集できなければ、会社側に不利な決定が下るおそれもあります。証拠収集は労働審判を進める上で、決して失敗できない重要な要素といえるでしょう。労働審判の証拠収集について不明点があれば弁護士へ相談しましょう。

弁護士法人ALGでは、労働問題に精通した弁護士が多数在籍しており、労働審判においても豊富な実績を有しております。事前の法的アドバイスはもちろん、書面作成や代理人としての出廷など貴社の要望に応じて柔軟な対応を行っております。労働審判の証拠収集について少しでも疑問をお持ちであれば、まずはお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修

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弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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