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身元保証書とは?書き方のポイントと注意点をわかりやすく解説

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

身元保証書とは、会社が社員の入社時に提出を求める書類です。保証人がその人物の信用を保証し、万が一会社に損害が生じた場合には一定の責任を負うことを約束するものです。

しかし、書き方や内容に不備があると、法的効力が認められないリスクもあるため、会社としては慎重に対応する必要があります。

この記事では、会社が押さえておくべき「身元保証書」の基本的な仕組みから、実務で使える書き方のポイント、法的トラブルを防ぐための注意点までを、わかりやすく解説します。

身元保証書とは

身元保証書とは、会社が社員の採用時に提出を求める書類で、第三者がその人物の信用や行動を保証する契約書です。社員が不正行為や重大なミスをして会社に損害を与えたときに、会社が保証人に損害賠償を求められるようにするために用いられます。また、緊急時の連絡先確保や、不正行為の防止にも活用されます。

法律上、会社が必ず身元保証書を提出させなければならないという決まりはありませんが、必要と判断した場合には提出を求めることができます。とくに現金や機密情報を扱う部署では、リスクを減らす目的で身元保証書を提出させることが一般的です。

身元保証書には、社員や保証人の情報のほか、保証人が負う責任の上限額や保証の期間などが記載されます。

身元保証人による損害賠償の範囲

身元保証人の責任が過度にならないよう、その損害賠償の範囲や条件は法律によって厳しく制限されています。

保証契約の有効期間は原則として3年、最長でも5年とされており、自動更新は認められていません。

また、2020年の民法改正により、保証人が負う損害賠償の上限額(極度額)を身元保証書に明記することが義務づけられました。極度額が記載されていないと、身元保証契約自体が無効になり、保証人への損害賠償請求は認められなくなるため注意が必要です。

実際に損害賠償を請求する際には、社員の過失の程度や会社側の監督体制、保証契約が結ばれた経緯などが総合的に考慮されます。そのため、保証人が全額を負担するとは限らず、裁判では会社の管理責任が重いとして、損害額の25%のみの負担が適切とされたケースもあります。

従業員と身元保証人の関係

身元保証人は、父母や配偶者、兄弟姉妹など親族がなるのが基本で、「安定した収入がある18歳以上の成人」であることが条件となるケースが多いです。

また、親族ではなくても、自立して生計を立てている成人であれば、友人や知人でも問題ないとしている企業も多く見られます。
身元保証人について法的要件は定められておらず、会社ごとに独自の要件を設けることが可能です。

代表的な要件例として以下があげられます。

  • 定職についていること
  • 18歳以上の成人であること
  • 年金受給者ではないこと
  • 社員本人と生計を共にしていないこと
  • 〇親等内の親族

会社によって要件は異なり、たとえば「年金受給者も可」とする会社もあります。

身元保証書を提出させる3つの目的

身元保証書には損害賠償請求以外にも、いくつかの目的があります。

身元保証書を提出させる目的として、以下があげられます。

  • 本人(入社した者)の就業に問題がないことの証明
  • 不正防止の抑止力
  • 緊急連絡先の確認

①本人(入社した者)の就業に問題がないことの証明

一般的に会社は履歴書や職務経歴書、面接などの結果をもとに採用の可否を判断します。

ただし、これらはすべて自己申告の情報であり、本人が採用で有利になるために経歴などを偽っている可能性もあります。

しかし、身元保証書を提出してもらえば、身元保証人を通じて、社員が信頼性の高い人物であることを証明することができます。もし社員が過去に不祥事を起こしていたならば、保証人に就くことを避けると考えられるからです。

また、身元保証書は、なりすまし入社や、履歴書や職務経歴書への虚偽記載を防止する役目も担います。

②不正防止の抑止力

社員に自らの行動に責任を持たせて、不正を防止することも身元保証書の目的のひとつです。

会社の金銭や備品の横領、機密情報の漏えい、SNS上での誹謗中傷など、不正行為にはさまざまな形態があります。社員が不正行為によって会社に損害を与えた場合、まず社員に対して損害賠償を請求しますが、本人に支払い能力がないときは、身元保証人に請求することになります。

このように保証人にまで責任がおよぶ仕組みが、「保証人に迷惑をかけたくない」という意識を社員に芽生えさせ、不正行為を未然に防ぐことが期待されます。

③緊急連絡先の確認

急病や事故など思わぬトラブルで、社員本人と急に連絡が取れなくなると、他の社員や取引先に悪影響を与えるおそれがあります。

長期間連絡が途絶えた場合には、身元保証書に記載された緊急連絡先に連絡すれば、状況を確認することができます。また、社員が精神的に不安定で冷静な話し合いが困難な場合には、身元保証人に対して協議の場に加わるよう求めることも可能です。

緊急連絡先から事情を把握できれば、会社は速やかに必要な対応策を実行できます。このような危機管理の視点から、社員に身元保証書の提出を求めておくことが重要です。

【2020年4月】民法改正による身元保証書の変更点とは?

2020年4月1日の民法改正により、身元保証書には「保証人が負う損害賠償額の上限(極度額)」を明記することが義務化されました(民法465条の2)。これは、保証人が予想外の高額な責任を負うことを防ぐためのルールです。極度額の記載のない身元保証契約は無効と判断されるためご注意ください。

ただし、2020年3月31日以前に締結された身元保証書にはこの改正は適用されず、極度額の記載がなくても有効です。そのため、過去の契約を修正したり、再契約したりする必要はありません。

この改正の目的は、保証人の保護を強化することにあります。会社は保証契約を結ぶ際に、極度額を明確に設定し、保証人に内容を十分に説明することが求められます。

身元保証書の書き方とポイント

身元保証書は会社が書面を作成し、本人と保証人が必要な事項を直筆で記入し、署名・押印する形で契約を結びます。

書き方に法的なルールはありませんが、一般的には以下を記載します。

  • 作成日(入社日または身元保証書の提出日)
  • 本人に関する事項(住所、氏名、生年月日など)
  • 身元保証書の期間
  • 損害賠償の極度額(上限額)
  • 保証人に関する事項(氏名、住所、生年月日、本人との関係、職業など)

印鑑は認印で構いませんが、身元保証書の偽造を避けたい場合は、実印と印鑑証明書を求めるという方法もあります。

以下で身元保証書の記載事項について詳しく解説します。

身元保証書の期間

法律では、身元保証人に長期間責任を負わせるのは負担が大きいと考えられており、身元保証書には有効期間の制限があります。

保証期間を定めなかった場合は原則として3年間、期間を定めた場合でも最長5年間までとされています(身元保証法1条、2条1項)。
たとえ会社と保証人の間で5年を超える期間を合意しても、法律上は自動的に5年に短縮されます。

また、契約の自動更新は認められておらず、更新する場合は新たに身元保証書を作成し、署名・捺印が必要です。更新後も有効期間は最長5年までです。

このように、身元保証書の期間には法的な上限と手続きのルールがあるため、会社は適切な管理と運用が求められます。

損害賠償の極度額(上限額)

身元保証人が負う損害賠償の極度額(上限額)については法的ルールがなく、会社側で自由に決められます。ただし、あまりに高額にすると保証人を見つけづらくなり、低額にしすぎると、十分な補償を受けられなくなるおそれがあります。

一般的には、社員の業務内容やリスク、身元保証書人の負担などを踏まえて、現実的な範囲で設定することが多いです。実務では100万円から1000万円程度で設定されることが多いです。
「○円」と具体的な金額を明記するだけでなく、「給与の○ヶ月分」といった計算基準も書くのが適切です。

最終的な損害賠償額は、裁判所が判断します。そのため、身元保証書には「最終的には裁判所の判断による」旨を記載しておきましょう。

身元保証人の連絡先

身元保証書は、緊急時や本人と連絡がとれないときの連絡先としても活用できます。

緊急連絡先を確実に把握するため、身元保証人に以下の情報を必ず記載してもらいましょう。

  • 氏名
  • 住所
  • 続柄
  • 電話番号
  • 携帯電話番号
  • メールアドレスなど

身元保証書のテンプレート・ひな形

身元保証書のテンプレートと作成例は以下のとおりですので、ご参考にしてください。

保証契約の締結日(保証人が署名・押印した日)を記載するのが原則です。これは、保証の有効期間の起算点となるため重要です。

身元保証書

株式会社〇〇(以下「甲という」)と被用者〇〇(以下「乙」という)、および身元保証人〇〇(以下丙という)は、以下のとおり身元保証契約を締結する。

第1条 乙が甲乙間の雇用契約に違反したとき、または故意・過失によって甲に損害を生じさせたときは、丙は直ちに乙と連帯して甲に対して、その損害を賠償する責任を負担する。
第2条 前条に定める損害額の上限は〇万円とする。
第3条 本契約の存続期間は本契約成立の日から5年間とする。
第4条 甲は以下の場合においては遅滞なくこれを丙に通知しなければならない。
①乙に業務上不適任または不誠実な行為があって、これのために丙の責任を引き起こす恐れがあることを知ったとき。
②乙の任務または任地を変更し、これのために丙の責任を加重しまたはその監督を困難ならしめるとき。

本契約の成立を証するため、本書3通を作成し、署名押印の上、甲が原本を、乙と丙がその写しを各自保有する。

年   月   日

使用者(甲)  住所
株式会社〇〇
代表者

被用者(乙)  住所
氏名生年月日

身元保証人(丙)住所
氏名生年月日
本人との続柄
電話番号

身元保証書を作成する上での注意点

従業員による身元保証書の代筆はできない

身元保証書の身元保証人の欄を社員が代筆することはできません。
身元保証契約は、会社と身元保証人で取り交わす契約であるため、必ず保証人本人が署名・押印する必要があります。

保証人が記載すべき箇所を代筆すると契約が無効となり、いざ保証人に賠償請求する場面で「代筆なので無効だ」と主張されるリスクがあります。

社員から「保証人が遠方に住んでいて記入できない」と相談された場合でも、郵送で対応するよう促しましょう。また、保証人が身元保証書に確実に自署した証拠として、実印の押印と印鑑証明書の添付を求めることをおすすめします。

身元保証書の期限経過後は更新が必要となる

身元保証契約の有効期間は、期間を定めない場合は3年、期間を定めた場合でも5年が上限となります。自動更新は認められておらず、更新したいときは改めて保証人と契約を結ぶ必要があります

しかし、実際には更新を求めることは社員との信頼関係を壊すとして、入社時に身元保証書を取得したら終わりという企業が多いです。
そのような場合でも、取締役など重要なポストに就任するとき、異動時や昇進時、契約変更・更新のタイミングなどでは、身元保証書を再取得することをおすすめします。

責任の範囲が拡大したり、契約内容が変更されたりするタイミングは、会社にとっても社員にとっても、リスクが高まるときであり、身元保証書の再確認が必要になるからです。

会社側から身元保証人へ対する通知義務がある

社員の不祥事や勤務条件の変更により、身元保証人の責任が増す可能性がある場合には、会社は速やかにその事実を保証人に通知する義務があります(身元保証法3条)。

通知義務のあるケースとして、以下があげられます(身元保証法3条)。

  • 社員の不正行為などで、保証人が責任を問われるリスクがあるとき
  • 社員の職務内容や勤務地を変更した結果、身元保証人の責任が重くなるとき
  • 社員の職務内容や勤務地を変更したことに伴い、社員への監督が困難となるとき

この通知をしないと、社員の行為により会社に損害が生じても、保証人への賠償請求が認められなかったり、減額されたりする可能性があるためご注意ください。

損害の全てを身元保証人に負わせることはできない

身元保証人に対して、社員が起こした損害の全額を請求することは法律上認められていません。

これは、身元保証法5条により、裁判所が保証人の責任を判断する際に、会社側の過失の有無、身元保証人が保証人になった経緯とその際に払った注意の程度、社員の職務内容や勤務状況などの事情を考慮して、正当な賠償額を決定すると定められているためです。

たとえば、会社が社員の不適切な行動を把握していながら保証人に通知しなかった場合や、業務上のリスク管理を怠っていた場合などは、保証人の責任が軽減される可能性があります。
実際の裁判例でも、損害額の20〜25%程度が保証人の負担として適切と判断されるケースが多く、全額負担は酷であるとされています。

身元保証書の提出を入社時に拒否された場合の対応は?

身元保証書の提出は法的義務ではないため、内定者が提出を拒否することも可能です。

ただし、就業規則に以下の事項を明記すれば、提出を拒否された場合、規定違反として内定取り消しや解雇が認められる可能性があります。

  • 身元保証書の提出が必要であること
  • 身元保証書の提出がなかった場合は、内定取り消しまたは解雇とすること

ただし、安易な内定取消しや解雇はトラブルの元となります。そのため、採用面接など内定を出す前のタイミングで、身元保証書の提出目的や重要性を丁寧に説明することが必要です。「身元保証書を提出しなければ採用することはできない」ことを事前に伝えておきましょう。

身元保証書についてよくある質問

パート・アルバイトにも身元保証書の提出を求めることはできますか?

会社はパートやアルバイトに対しても身元保証書の提出を求めることが可能です。
民法上、身元保証契約そのものに雇用形態による制限はありません。

正社員だけでなく、パート・アルバイトであっても、業務内容によっては会社に損害を与える可能性があるため、リスク管理の一環として提出を求める会社は増えています。

とくに現金や機密情報を扱う業務、顧客対応がある職種、またはSNSなどを通じて会社の評判に影響を与える可能性がある業務では、トラブル防止のため、身元保証書の提出を求めるのが適切でしょう。

ビザ申請時の身元保証書との違いは何ですか?

入社時の身元保証書とビザ申請時の身元保証書は、どちらも「保証人」が関与する書類ですが、目的や責任の重さが大きく異なります。

入社時の身元保証書は、社員が会社に損害を与えた場合に備え、保証人が一定の損害賠償責任を負う契約書です。保証期間や賠償の上限額(極度額)の明示が義務付けられており、法的拘束力があります。

一方、ビザ申請時の身元保証書は、保証人が外国人の日本滞在をサポートするための書類です。
保証人は生活支援や法令順守の助言などを行いますが、金銭的な責任はなく、あくまで道義的な責任にとどまります。

身元保証書について不明点があれば弁護士にご相談ください

会社が採用時に提出を求める「身元保証書」は、社員の信用性を確認し、不正行為や情報漏えいといったリスクを未然に防ぐための重要な書類です。

この書類がないと、万が一トラブルが発生しても、責任の所在が不明確になり、損害賠償の請求が困難になる可能性があります。
身元保証書の作成や運用に不安がある場合は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士法人ALGには、労働法務に精通した弁護士が多数在籍しており、最新の法改正や判例を踏まえた適切なアドバイスが可能です。

貴社の実情に応じた賠償金の上限設定、トラブル発生時の交渉・訴訟対応まで、一貫したサポートをご提供いたします。身元保証書に関するお悩みは、ぜひ私たちにご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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