人事
#定年
#無期転換
監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が義務化されたことにより、継続雇用制度等を導入する企業はとても多くなっています。
定年後に有期契約で再雇用された高齢の労働者に対しても、無期転換申込権は発生するため、定年退職した者が再度無期雇用になるという事態も起こり得ます。
会社としては管理業務が膨大になるだけでなく、人員計画にも影響を及ぼしかねないでしょう。
本稿では、定年後の再雇用に関する無期転換ルールや特例措置、無期転換後の定年制などについて解説していきます。
目次
無期転換ルールに定年はない
無期転換ルールとは、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申し込みによって、期間の定めのない無期労働契約に転換される制度です。
この制度には、年齢による上限や定年の定めは設けられておらず、無期転換されると、雇用期間満了による労働契約の自動的な終了はなくなります。
そのため、企業側から労働契約を解消するには、解雇の手続きが必要となります。
しかし、解雇には「客観的に合理的な理由」や「社会通念上の相当性」が求められ、要件を満たさない場合は解雇無効となるリスクがあります。もし、不当解雇と判断されれば、その期間の未払い賃金としてバックペイなどが生じるおそれがあり、企業は慎重に対応する必要があります。
無期転換ルールは60歳以上でも適用される
60歳以上の労働者であっても、有期労働契約が通算5年を超えて更新されれば、無期転換申込権が発生します。無期転換ルールには、年齢制限がないためです。
定年後に企業が導入した継続雇用制度(再雇用制度)を利用して、1年契約などの有期契約で働くことになった労働者も、無期転換ルールの対象となります。
例えば、60歳で定年退職し、その後5年間、1年ごとの有期契約で再雇用された場合、労働者は無期転換を申し込むことができます。この権利を行使された場合、企業は拒否できず、無期労働契約に転換されます。
企業は高年齢の再雇用者だからといって無期転換の対象外と誤解せず、雇用期間の通算に注意して対応する必要があります。
継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例
定年後に継続雇用制度(再雇用)によって有期契約で働く高齢者にも、原則として無期転換申込権は発生します。しかし、一定の要件を満たした場合には、「無期転換ルールの継続雇用の高齢者に関する特例措置」を適用することができます。
この特例は、定年後に引き続き雇用される期間について無期転換の通算期間から除外し、無期転換権が発生しないようにできるというものです。
ただし、対象となるのは、定年を迎えた会社(グループ会社含む)に継続雇用された者です。
定年前から有期雇用契約だった人や他社で定年後に雇用した人は対象外です。特例を受けるには、本社を管轄する労働局に適切な雇用管理に関する計画を提出し、認定を受ける必要があります。
認定後は、労働者に対し特例適用後の労働条件を明示する手続きも行うようにしましょう。
無期転換後の定年を設けるには?
無期転換ルールには特例措置がありますが、それだけでは対応として十分とはいえません。
特例措置の対象外となる60歳以上の無期転換者が生じるケースもあるため、無期転換後の定年制度についても検討するべきでしょう。
具体的には以下の対応が必要となります。
- 就業規則などに第二定年を定める
- 労働契約書などに無期転換後の定年を明示する
就業規則などに第二定年を定める
無期転換によって期間の定めのない契約に切り替わった高齢の労働者に対しては、「第二定年」を設定するとよいでしょう。
第二定年とは、無期転換された労働者に対して、通常の定年(例:60歳)とは別に新たに定める定年年齢のことを指します。第二定年を、通常の定年とは異なる別段の定めとして、就業規則や労働協約などにその年齢を明確に規定すれば適用することができます。
単に口頭で伝えるだけでは不十分ですので、必ず規定を盛り込むようにしましょう。
例えば、「無期転換した者の定年は65歳に達した日の翌月の末日とする」などと無期転換後の雇用期間の終期を明確に定めることで、予期せぬトラブルの回避につながります。
労働契約書などに無期転換後の定年を明示する
無期転換の申し込みを受け入れた際、企業は労働者に対し、無期転換後の労働条件を明確に伝えなければなりません。
この労働条件のうち、定年に関する定めは、労働基準法で定められた絶対的明示事項(必ず明示すべき事項)に含まれます。口頭ではなく、労働契約書や労働条件通知書などの書面を用いて、無期転換後の定年年齢を含めた条件を明示しましょう。
記載内容としては、「定年に関する事項:本契約の定年は満65歳とし、満65歳に達した日以降の最初の3月31日をもって退職とする。」などがあります。
定年の時期に関する認識の齟齬が生じないよう、具体的に記載することが大切です。
無期転換した労働者に定年を設ける場合の注意点
無期転換後の定年制度を設ける際の注意点として、主に以下の2点が挙げられます。
- 60歳を下回る定年は設定できない
- 65歳を下回る定年の場合は継続雇用制度が必要
各注意点について以下で確認しておきましょう。
60歳を下回る定年は設定できない
無期転換によって有期契約から無期契約に転換した労働者に対して、企業が第二定年などを新たに設ける場合でも、その定年年齢は60歳を下回ることはできません。
これは、無期転換ルールとは関係なく、高年齢者雇用安定法によって、60歳を下回る定年制度が法律で禁止されているためです。
たとえば、無期転換後の定年を58歳などに設定することは法律違反にあたります。無期転換した労働者に定年制度を設ける際は、必ず60歳以上の年齢で設定するようにしましょう。
65歳を下回る定年の場合は継続雇用制度が必要
無期転換後の定年を65歳未満に設定した場合には注意が必要です。必ず、65歳までの継続雇用制度の導入をセットとして検討しなければなりません。
なぜなら、企業には高年齢者雇用安定法に基づき、希望する労働者を65歳まで安定して雇用するための措置を講じる義務があるからです。
具体的には、65歳までの有期契約による再雇用などの継続雇用制度を導入しなければなりません。これは、たとえ無期契約に転換した労働者であっても適用されるルールです。
無期転換ルールや定年の定めについては弁護士にご相談ください
無期転換ルールには年齢の上限がないため、再雇用の高齢者を含む全有期契約労働者が対象となります。
しかし、無期雇用労働者が無計画に増えてしまうと、多大な人事管理負担が生じるなどの問題が生じます。こうした問題への対応には専門知識が必要となるため、社内での対応に不安があるかもしれません。
弁護士に相談をすれば、複雑な法令を遵守するためのアドバイスや、実態に応じた就業規則の整備などのサポートが受けられます。
弁護士法人ALGでは多数の労務顧問を請け負っており、就業規則の整備や制度設計などの予防法務はもちろん、トラブル時の対応まで幅広く対応しております。
無期転換ルールや定年制度について少しでも疑問があれば、まずはお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修
弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員
- 保有資格
- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
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