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#パート
#従業員
#雇用契約書
監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員
「パートやアルバイトだから契約書は不要」と考える企業担当者もいますが、それは大きな誤解です。
雇用契約書を作成しないまま勤務を始めると、勤務日数やシフト、賃金などをめぐるトラブルが発生する可能性があります。労働基準法では、労働条件の明示が義務付けられており、パートやアルバイトも例外ではありません。
この記事では、パートやアルバイトの雇用契約書がなぜ必要なのか、作成時に押さえるべきポイント、法令遵守のための注意点について解説します。
目次
パートやアルバイトにも雇用契約書は必要?
パートやアルバイトを雇うとき、「雇用契約書は必須なのか」と疑問に思う方は多いでしょう。
結論として、法律上、雇用契約書の作成は義務ではありません。
しかし、従業員とのトラブルを防ぐためにも、作成を強くおすすめします。
雇用契約書は、労働時間や給与などの条件を明記し、雇用主と労働者が署名・押印することで、双方の合意を証明する書面です。口頭だけの約束では「言った・言わない」の問題が起きやすいですが、雇用契約書を交わしておけば、取り決めを明確に残せるため安心です。
一方で、「労働条件通知書」の交付は法律で義務付けられています。雇用主が労働条件を一方的に通知する書面で、署名や押印は不要ですが、従業員に交付しない場合は罰則の対象となります。
パート社員・アルバイトの法的な位置づけ
パートやアルバイトは法律上「労働者」として労働基準法の適用を受け、労働時間、有給休暇、割増賃金、解雇予告などの基本的な労働条件は正社員と同様に守られます。
さらに、パートタイム・有期雇用労働法では、正社員より所定労働時間が短い「短時間労働者」という概念が定義され、パートやアルバイトの多くが該当します。
この法律は同一労働同一賃金の原則を定め、仕事内容や責任が正社員と同じ場合、不合理な待遇差を設けることを禁止しています。また、勤務時間や賃金が一定基準を満たせば社会保険や雇用保険の加入義務も生じます。パートやアルバイトは法的に保護されており、企業には適正な待遇の確保や労働条件の明示が求められる点に注意する必要があります。
労働条件通知書と契約書作成の違い
労働条件通知書とは、労働基準法15条に基づき、雇用主が労働者に対して賃金や労働時間などの労働条件を明示するための書類です。正社員やパート、アルバイトなど雇用形態にかかわらず、雇用契約を結ぶ際には必ず交付する義務があり、違反すると罰則の対象となります。雇用主から一方的に交付するもので、労働者の署名や押印は不要です。
一方、雇用契約書は、雇用主と労働者が労働条件について合意したことを証明するための書類です。法律上の作成義務はありませんが、双方の署名・押印によって契約内容を明確にできるため、トラブル防止の観点から作成が推奨されます。実務上は「労働条件通知書兼雇用契約書」として1つの書類にまとめることも可能です。
パート社員の雇用契約書を作成するポイント
パート社員の雇用契約書を作成する際に押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
- 法律で義務付けられた労働条件を明示する
- 始業・終業時刻を明確に記載する
- 有期雇用契約か無期雇用契約かは慎重に判断する
- 雇用契約の期間は3年以内とする
- 正社員との待遇の格差が生じないようにする
- 最低賃金を下回っていないか確認する
- 労働条件の変更手続きについて記載する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法律で義務付けられた労働条件を明示する
労働基準法およびパートタイム・有期雇用労働法は、パート社員の雇入れ時や契約更新時に、原則として以下の労働条件を書面で明示することを義務付けています。パート社員を雇用する際は、労働条件通知書と同様に、雇用契約書にも法律で定められた労働条件を明確に記載するとよいでしょう。
- 労働契約の期間
- 更新の有無と基準、更新上限の有無、無期転換
- 就業場所と業務内容、就業場所・業務の変更の範囲
- 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切日と支払日
- 退職に関する事項(解雇事由を含む)
- 退職金・昇給・賞与の有無
- パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する相談窓口
- 制度がある場合に明示する事項(賞与、臨時に支払われる賃金、退職金が適用される労働者の範囲、退職手当の決定・支払方法・支払日、労働者の費用負担が発生するもの、安全衛生、職業訓練、災害補償、業務外の傷病扶助、表彰、制裁、休職など)(⑪は口頭でも可)
これらの項目は、労働条件通知書で明示することも適法ですが、雇用契約書に記載して双方が署名・押印することで、より確実にトラブルを防げます。記載する際は、曖昧な表現は避け、誰にでもわかる明確な言葉を使うことが必要です。
始業・終業時刻を明確に記載する
パート社員は正社員と異なり、勤務日数や時間帯が柔軟なため、雇用契約書に勤務時間を記載する際には注意が必要です。
勤務時間が固定されている場合は、「始業時刻」「終業時刻」「休憩時間」を具体的に明示しましょう。
たとえば、「始業は午前9時、終業は午後5時、休憩は正午から午後1時まで」といったように、具体的な時間を記載しましょう。
一方、シフト制などで日ごとに勤務時間が異なる場合は、毎日の時刻をすべて記載する必要はありません。その代わり、勤務パターンを複数提示し、週の出勤日数や労働時間の上限を明示することが望ましいです。
例えば、「週4日勤務、1日6時間以内、以下の3パターンからシフトを決定」といった記載方法です。こうした工夫により、労使間の認識のズレを防ぎ、トラブルを回避できます。
有期雇用契約か無期雇用契約かは慎重に判断する
パート社員の雇用契約書を作成する際は、「有期雇用契約」か「無期雇用契約」のどちらの契約形態にするかを決めておくことが大切です。
有期雇用契約は、あらかじめ雇用期間を決めて働いてもらう契約で、繁忙期の人手が必要なときや、特定のプロジェクト、育休中の社員の代替など、短期間の雇用に向いています。
一方、無期雇用契約は契約期間を定めずに雇う形で、長く働いてもらいたい場合に適しています。
どちらの契約形態を選ぶかは、業務内容や雇用の目的によって判断する必要があります。
いずれを選ぶ場合でも、雇用契約書には契約形態を明記し、契約更新の有無、更新の条件、契約終了時の取り扱いなどを具体的に記載することで、後のトラブルを防ぐことができます。
雇用契約の期間は3年以内とする
有期の雇用契約とする場合は、パート社員の雇用契約期間は、原則として3年を超えることはできません(労働基準法14条)。
ただし、特定の事業の完了まで必要な場合や、高度な専門知識を持つ労働者、60歳以上の労働者は最長5年まで認められています。
雇用契約書を作成する際は、契約期間を明確に記載することが重要です。例えば、「雇用期間の定めあり。2025/08/01~2025/10/31」のように具体的な日付を記載します。また、「契約更新の有無」や「更新するか否かの判断基準」も明示する必要があります。
なお、労働契約を3回以上更新、または通算1年以上雇用している場合に更新しないときは、基本的に30日前までの雇止め予告が必要ですのでご注意ください。
正社員との待遇の格差が生じないようにする
パート社員の雇用契約書を作成する際は、正社員との不合理な待遇差を防ぐことが必要です。
パートタイム・有期雇用労働法により「同一労働同一賃金」が義務付けられ、正社員と仕事内容や責任が同じ場合、賃金などで差別的な取り扱いをすることは禁止されています。
仕事内容や責任が異なる場合には、合理的な理由に基づく待遇差を設けることは可能ですが、その理由を明確にし、本人に説明する必要があります。
さらに、2024年から、従業員51人以上の企業で、週20時間以上勤務し月額賃金が8万8000円以上のパート社員には社会保険への加入が義務化されましたのでご注意ください。
なお、雇用契約書に記載された労働条件が就業規則を下回る場合は、就業規則違反となるため、整合性を確認することも重要です。
最低賃金を下回っていないか確認する
パート社員の賃金は、最低賃金を必ず上回る必要があります。
最低賃金には、都道府県ごとに定められる地域別最低賃金と、特定の産業に適用される特定最低賃金があり、両方が適用される場合は高い方が優先されます。たとえば、地域別最低賃金が1050円、特定最低賃金が1100円であれば、1100円以上を支払う必要があります。
もし最低賃金を下回ると無効となり、自動的に最低賃金額に置き換えられます。さらに、不足分の支払い義務や50万円以下の罰金などの法的リスクも発生します。最低賃金は毎年改定されるため、雇用契約書を作成する際は最新の金額を確認し下回らないよう注意が必要です。
月給制や日給制の場合も、所定労働時間で割って時給換算することが求められます。
労働条件の変更手続きについて記載する
パート社員の雇用契約書には、労働条件の変更手続きを明記することが重要です。
労働契約は労使双方の合意で成立するため、内容を変更する場合も原則として同意が必要であり、一方的な変更は認められません。特に勤務時間や賃金など不利益となる変更には本人の同意が不可欠です。
合理的な理由がある場合、就業規則の変更で対応できることもありますが、その際も合理性の確保と労働者への周知が求められます。雇用契約書には「事前に書面で通知」「合意後に変更契約書を作成」などの手続きを明示しておくと、トラブル防止につながります。
パート社員の雇用契約書の雛形・テンプレート
パート社員向けの雇用契約書テンプレートをご用意しましたので、ぜひご活用ください。
ただし、このひな形はあくまで参考例であり、実際の労働条件や就業規則に合わせて適切に修正する必要があります。記載内容に不安がある場合や、法令遵守を確実にしたい場合は、弁護士によるリーガルチェックを受けることを強くおすすめします。
雇用契約書(パート社員用)
株式会社〇〇〇〇(以下「甲」という)と、〇〇〇〇(以下「乙」という)とは、以下のとおり雇用契約を締結する。
第1条(雇用の目的)
甲は、本契約に定める条件で乙を雇用し、乙は甲の指揮命令に従い、誠実に勤務することを約する。
第2条(雇用期間)
- 本契約は期間の定めのある有期労働契約とし、契約期間は令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までとする。
- 契約更新の有無:有
- 契約更新の判断基準:勤務成績、勤務態度、能力、健康状態、契約満了時の業務量、経営状況など
- 契約更新の上限:原則として更新回数は通算〇回または契約期間の通算〇年を上限とする。
- 自動更新の有無:無(契約満了時には毎回、双方の合意による更新手続きを行う)
- 無期転換申込権:通算契約期間が5年を超える場合、乙が申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日から無期労働契約に転換することができる。転換後の労働条件は、転換時点の労働時間・賃金その他の条件を基本とし、詳細は別途協議により定める。
第3条(就業場所および業務内容)
- 就業場所:〇〇〇〇
- 業務内容:〇〇〇〇
- 就業場所および業務内容は、業務上の必要に応じて変更することがある。
第4条(勤務時間および休憩)
- 始業・終業時刻および休憩時間は、甲が毎月〇日までに翌月分のシフトを定め、社内掲示等で周知する。
- 原則として、乙の勤務は週〇日とし、週の労働時間は〇時間以内とする。勤務パターンは以下のとおりとし、甲の業務都合により変更する場合がある。
【パターン1】13:00~21:00(休憩16:00~18:00)
【パターン2】 9:00~17:00(休憩12:00~13:00)
【パターン3】14:00~20:00(休憩なし) - 業務上必要がある場合、甲は乙に所定時間外労働を命じることがある。
第5条(休日・休暇)
- 休日は甲が作成するシフト表により定める。毎週日曜日は原則として法定休日とし、その他週〇日を休日とする。
- 年次有給休暇は、労働基準法に基づき付与する。
- その他の休暇(夏季・年末年始等)は、甲の就業規則に従う。
第6条(賃金)
- 基本給は時間給〇〇円とする。
- 通勤手当は実費相当額(上限〇万円)を支給する。
- 割増賃金率は次のとおりとする。
法定時間外労働(60時間以内):25%
法定時間外労働(60時間超):50%
法定休日労働:35%
深夜労働(22時~翌5時):25% - 賃金締切日:毎月〇日 賃金支払日:当月〇日(支払日が休日の場合は前営業日)
- 支払方法:乙の指定する銀行口座に振込にて支払う。 ただし、所得税、住民税、社会保険料等法令で定められているものは、支払いの際控除する。
- 昇給の有無:有
- 賞与および退職金の有無:無
第7条(退職・解雇)
- 定年制:有(満60歳)
- 継続雇用制度:有(65歳まで、希望者全員対象)
- 乙が自己都合により退職する場合は、退職希望日の1ヶ月以上前に甲へ届け出ること。
- 解雇は、乙が甲の就業規則に定める事由に該当する場合に、甲がこれを行うことができる。
第8条(労働保険・社会保険)
乙の勤務条件に応じて、労働保険および社会保険に加入する。
第9条(雇用管理の改善等に関する相談窓口)
雇用管理の改善等に関する相談窓口を以下のとおり設置する。
部署名:〇〇〇〇
連絡先:〇〇〇-〇〇〇-〇〇〇〇
第10条(その他)
- 本契約に定めのない事項は、労働基準法その他の法令及び甲の就業規則による。
- 労働条件を変更する場合は、甲と乙との書面による合意をもって行う。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印のうえ、各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
甲(住所)〇〇〇〇
(会社名)株式会社〇〇〇〇 代表取締役〇〇〇〇 印
乙(住所)〇〇〇〇
(氏名)〇〇〇〇 印
パート社員の雇用契約書に関するQ&A
パート社員の雇用契約書の更新は毎年必要ですか?自動更新は可能ですか?
パート社員の雇用契約が有期契約の場合は、契約期間が満了するたびに更新手続きが必要です。
労働基準法やパートタイム・有期雇用労働法では、契約更新時にも労働条件を明示することが求められており、条件が変わらない場合でも、原則として新たな契約書を取り交わすことが必要です。
一方で、自動更新の条項を設けることは可能ですが、繰り返し更新を行うと無期契約とみなされるリスクがあり、雇止めが難しくなる場合があります。そのため、毎回の更新を基本とし、自動更新を導入する場合はリスクを理解したうえで慎重に対応しましょう。
雇用契約書にない業務をパート社員へ頼むことはできますか?
原則として、雇用契約書に記載されていない業務を頼むことはできません。
契約書には従事すべき業務内容を明示する義務があり、記載外の業務を強制すると法違反やトラブルの原因になります。
たとえば、契約書に「レジ業務」と記載されているパート社員に、厨房での調理を命じることは認められません。ただし、「その他付随する業務を含む」といった包括的な記載があれば、レジ周りの清掃や簡単な品出しなど、関連する範囲で追加業務を依頼することは可能です。
採用時には業務範囲を明確にし、必要に応じて包括的な文言を盛り込むことが必要です。
パート社員の休日は雇用契約書にどのように記載しますか?
パート社員の雇用契約書には、労働基準法に基づき休日を明確に記載する必要があります。
法律では、1週間に少なくとも1日の休日、または4週間で4日以上の休日を与えることが義務付けられています。そのため、契約書には「毎週土曜日・日曜日を休日とする」「少なくとも週1日の休日を付与するものとし、職場の勤務シフト表により定める」など、具体的な休日の取り扱いを明記することが必要です。
また、休日の記載は、労働条件通知書や就業規則との整合性を保つ必要もあります。ご注意ください。
雇用契約書へサイン後すぐにパート社員が辞退した場合の対応を教えてください。
雇用契約書にサインした時点で労働契約は成立するため、辞退は退職と同様に扱われます。
期間の定めのないパート社員の場合、会社は民法627条1項に基づき、2週間の予告期間を設けて退職を認める必要があります。
一方、期間の定めのあるパート社員は、原則として契約期間中に一方的な解除はできません。
ただし、やむを得ない事由がある場合や、就業開始前で企業に大きな損害がない場合には、合意解除が現実的な対応となります。理論上は損害賠償請求も可能ですが、過度な請求はトラブルの原因となるため、迅速に次の採用活動へ移行する方が合理的といえます。
パートやアルバイトの雇用契約書については弁護士にご相談ください
パートやアルバイトであっても、雇用契約書を作成することはトラブル防止のために非常に重要です。しかし、単に決められた項目を記載すればよいわけではありません。相手が十分に理解できる明確な内容にすること、さらに最新の法改正に対応することが求められます。
こうした対応を怠ると、未払い残業代やシフトを巡るトラブルなどが発生する可能性があります。
弁護士に相談することで、法令に準拠した雇用契約書を作成でき、企業のリスクを軽減できます。
弁護士法人ALGは、労働問題に精通した弁護士が多数在籍し、企業の実情に合わせた雇用契約書の作成やリーガルチェックをサポートしています。パートやアルバイトの雇用契約書でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
この記事の監修
弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員
- 保有資格
- 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)
執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。
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