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労働安全衛生法違反とは?事例や罰則、企業が負う責任などを解説

    企業責任

    #事例

    #労働安全衛生法違反

    #罰則

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を整備することを目的とした法律です。もし、この法律に違反すると、労働者からの損害賠償請求や行政処分、さらには刑事責任を問われるリスクが生じ、企業経営に大きな影響を与えかねません。

労働安全衛生法を正しく理解し、社内体制を整えることは企業にとって重要な課題の1つといえます。本稿では、労働安全衛生法違反の具体例や罰則、企業が負うべき責任、違反時の対応策など、実務で押さえるべきポイントをわかりやすく解説していきます。

労働安全衛生法違反とは

労働安全衛生法違反とは、職場における労働者の安全と健康を確保するために事業主に課せられた義務を怠る行為を指します。労働安全衛生法は、安全な作業環境の提供、危険源の除去、労働者の健康管理など、具体的な対策を事業主に義務付けています。

これらの義務を怠り、労働災害が発生した場合や、発生する可能性が高い状況を放置した場合に労働安全衛生法違反となります。違反行為は、安全装置の未設置や適切な作業環境の確保を怠ること、定められた健康診断を実施しないことなどが該当します。

もし違反が発覚した場合には、実際に違反行為を行った個人だけでなく、事業主体である企業(法人)自体にも罰則が科される「両罰規定」が設けられています。違反内容に応じて、実行者と企業の双方が刑事・行政処分の対象となるため、日頃からの法令順守が非常に重要となります。

労働安全衛生法違反の事例

労働安全衛生法違反には、以下のような事例が挙げられます。

  • 労災事故が発生した場合(安全配慮義務違反)
    機械設備の不備: 機械の安全カバーが設置されていなかったため、労働者が機械に巻き込まれて負傷した。
    高所作業: 高所作業を行う際に安全帯を使用させず、作業員が墜落して負傷または死亡した。
    作業主任者選任義務: 一定の危険作業において、作業主任者が監視を怠ったため、労働者が負傷した。
  • 労働災害発生時の報告義務違反
    ・労働災害が発生したにも関わらず、労働基準監督署への報告を怠った、または虚偽の報告を行った。
  • 健康障害の防止措置義務違反
    長時間労働: 労働者の健康状態を考慮せず、過度な長時間労働をさせた結果、労働者が過労で倒れた。
    健康診断: 定期健康診断や特殊健康診断を実施しなかったり、健康診断の結果に基づいた適切な事後措置(就業制限など)を講じなかった。

これらの事例は、労働安全衛生法違反のごく一部です。作業環境や手順、監督者の監視状況などを定期的に見直す運用体制を整えるとよいでしょう。

労働安全衛生法に違反した場合の罰則一覧

以下表の違反内容は代表的な違反事例であり、実際の違反事例はこれらに留まりません。弁護士などの専門家のアドバイスを踏まえて、徹底した安全対策と法令遵守を遂行することが求められるでしょう。

罰則・罰金 違反内容
3年以下の拘禁刑
または
300万円以下の罰金
  • 労働者に重度の健康障害を生ずるものを何らの許可を受けずに、製造・輸入・譲渡・提供・使用した (第116条)
3年以下の拘禁刑
または
250万円以下の罰金
  • 製造時や性能の検査等を行う特定業務担当者へ賄賂を供与、またはその約束をした(第115条の4)
1年以下の拘禁刑
または
100万円以下の罰金
  • 許可を得ずに、特に危険な作業を要するとして法令に定められた機械等を製造した
  • 労働安全コンサルタント等がその業務において知り得た秘密を漏らし、あるいは盗用した
  • 登録製造時等検査機関等が、業務停止命令に従わなかった
6ヶ月以下の拘禁刑
または
50万円以下の罰金
  • 安全衛生教育を実施していない(第59条の3)
  • 労働者の危険や健康障害を防止する措置を講じなかった
  • 有害業務を行う屋内作業場等で、必要な作業環境測定を行なわず、記録もしなかった
  • 作業主任者の選任義務違反
  • 特定の伝染病に罹患した従業員の就業を禁止しなかった
50万円以下の罰金
  • 衛生委員会を設置していない(第18条の1)
  • 安全衛生教育を実施しなかった
  • 労働災害発生の報告義務を怠った
  • 政令で定められた機械に対して、検査の実施、記録を行わなかった
  • 長時間労働者の面接指導未実施

労働安全衛生法に違反した場合の企業の責任

労働安全衛生法に違反した場合、企業には以下のような責任が課せられます。なお、これらは労働者や第三者からの通報によって発覚するケースも多く、企業の対応姿勢が問われます。

【民事上の責任】
労災事故や健康被害が発生した場合、企業は被害者や遺族に対して生活に困らないように補償する責任を負います。また、企業の安全配慮義務違反を理由に、労働者から損害賠償請求を受けるケースもあります。

【行政上の責任】
労働安全衛生法違反や労災発生の急迫した危険がある場合には、都道府県労働局長や労働基準監督署長から、改善命令・作業停止などの行政処分が科される場合があります。そのほか、是正勧告や指導の対象となることもあります。

【刑事上の責任】
労働災害の発生の有無を問わず、法令違反によって、その個人および法人に拘禁刑や罰金等の刑事罰(両罰規定)が科される可能性があります。事案によっては、業務上過失致死傷罪に問われるおそれもあります。

【社会的責任】
違反が公表されることで企業イメージや信用が大きく損なわれ、取引停止や人材流出のリスクも生じます。

違反発覚時の企業対応が、その後の責任の大きさに直結します。誠実に対応することが早期解決には不可欠といえるでしょう。

労働安全衛生法違反による不利益を抑える方法

まずは、日頃から労働安全衛生法を守り、安全衛生管理を徹底することで、違反を未然に防ぐ体制づくりが重要です。

それでも法律違反が生じてしまった場合には、迅速な原因究明と再発防止策の策定、誠意ある対応などが重要です。その点を踏まえ、労働安全衛生法違反による企業の不利益を抑えるには以下のような方法が挙げられます。

  • 損害賠償請求には示談で早期解決を目指す
  • 行政指導に従って違反内容を改善する
  • 違法・不当な捜査への対策をとる

損害賠償請求には示談で早期解決を目指す

労働安全衛生法違反による労働災害が発生した場合、被害者や遺族から損害賠償請求を受けることがあります。仮に裁判まで進んでしまうと、解決までに長い時間がかかる上、企業側にも多大な負担や費用が生じてしまいます。

また、対外的なイメージの低下や従業員の動揺といった二次的な悪影響も懸念されます。そのため、企業としてはできるだけ早期に示談交渉を行い、誠実な謝罪や適切な補償を提示し、円満解決を目指すことが大切です。

示談による合意が成立すれば、企業と被害者の双方にとって、精神的・経済的な負担を軽くすることができます。示談交渉の際は、早期解決のためにも専門家である弁護士に相談し、適切なサポート受けることをおすすめします。

行政指導に従って違反内容を改善する

行政処分によるダメージを最小限にするためには、はやめの是正と誠実な対応が不可欠です。労働安全衛生法違反が疑われると、まず労働基準監督署などから是正勧告や行政指導が入ります。

これを受けて速やかに指摘内容を改善すれば、通常は厳しい行政処分(命令や事業停止、罰則等)を回避できる可能性が高くなります。しかし、行政指導を無視したり、改善を怠ったりすると、命令や行政処分、さらには刑事告発に発展することがあります。

そのため、違反を指摘された場合は直ちに改善計画を立て、労働基準監督署とも積極的に連携しながら対応することが重要です。誠実に改善措置を講じ、行政指導に従うことで、より重い処分の回避や企業イメージの早期回復につながります。

違法・不当な捜査への対策をとる

社内で重大な労働災害が発生した場合、労働基準監督官が司法警察員として取り調べなどの捜査を行うことがあります。その際、違法または不当な捜査が行われる可能性はゼロではありません。

例えば、強引な聴取や不適切な手続きによる供述調書の作成などが起きるケースもあります。こうしたリスクを防ぐためには、事前に弁護士へ相談し、捜査への対策を講じておくことが重要です。

また、取り調べの際には供述調書に安易に署名せず、内容を十分に確認しましょう。納得できない点があれば指摘し、訂正を要求するべきです。捜査に対応する際は、冷静な判断が求められます。

企業全体で、捜査への適切な対応方法を共有し、不当な手続きが行われないよう事前の備えが重要なポイントとなります。

労働安全衛生法違反で刑事責任を問われた判例

事件の概要

(平成27年(う)第1998号・平成28年11月8日・東京高等裁判所・控訴審)

自動車部品メーカーのY社で、アルミを成形する大型機械(ダイカストマシン)を使って作業していた従業員Xが、全自動運転中の金型部分に頭を挟まれ死亡しました。

過去にもY社の別工場で、従業員がダイカストマシンに手を挟まれる事故が発生しており、労働基準監督署の指導を受けて、その工場の機械には安全扉が設置されました。

しかし、Xが使用していた機械には両手で操作する安全装置はありましたが、自動運転時には作動せず、かつ危険を防ぐ安全扉も設置されていませんでした。

原審では「Y社に安全扉を設置する義務はなかった」として無罪となりましたが、これを不服として、検察が控訴しました。

裁判所の判断

裁判所は、労働安全衛生規則147条1項の「労働者が身体の一部を挟まれるおそれ」とは、作業中に機械の可動部に近づく可能性(抽象的危険)があれば足りるにもかかわらず、実際に事故発生に繋がる危険(具体的危険)を必要とした原判決には法令適用の誤りがあると指摘しました。

また、全自動運転中でも金型に付着したバリを取るために作業員が近づくことがあり、過失の有無に関わらず挟まれる危険があったと認定されました。

そのため、両手操作式の安全装置が自動運転時に機能しないのであれば、安全扉などの物理的な安全装置が必要であったにもかかわらず設置がなされていないのは、安全衛生法違反にあたるとされました。その結果、原審の無罪判決は破棄され、会社に罰金50万円の有罪判決が言い渡されました。

ポイント・解説

この判決の大きなポイントは、「危険がある」と判断される基準です。高等裁判所は、実際に事故が起きる直前の状態(具体的危険)でなくても、作業中に機械の危険部分に近づく可能性があれば、安全装置を付ける義務があると指摘しています。

つまり、「事故の可能性は低い」「安全教育をしている」だけでは不十分といえるでしょう。現場で作業員が危険部分に近づくことがあり得るなら、物理的に機械を止める安全扉などの安全装置を設置するべきと考えられます。

企業は、現場の実態をよく把握し、作業手順や運転モードに応じた安全装置を確実に備えることが大切です。特に大型機械を使用したり、危険な場所での作業を伴う場合などは、適宜、作業環境を確認し、労働者の安全を確保できる体制を整えましょう。

労働安全衛生法の違反におけるトラブルは弁護士にご相談ください

労働安全衛生法違反が原因で労災事故が発生した場合や、行政指導・刑事捜査の対象となった場合は、その対応には専門知識が必要です。

このようなトラブルが起きた際には、早めに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。弁護士に相談することで、被害従業員との示談交渉や損害賠償請求への対応、行政や捜査対応時の適切なアドバイスやサポートを受けることができます。

法的サポートを受けて適切に対応することができれば、企業のリスクを最小限に抑えることが可能です。弁護士法人ALGでは、労働法分野に豊富な経験を持つ専門性の高い弁護士が多数在籍しております。

専門知識と実務経験をもとに、貴社の状況に合わせた的確なアドバイスを提供し、トラブルの初期対応から根本的な再発防止策の策定までトータルでサポートいたします。労働安全衛生法に関するお悩みは、ぜひ私どもへご相談ください。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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