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テレワーク中のハラスメント(リモハラ)とは?事例や企業がすべき対策

    ハラスメント

    #テレワーク

    #リモハラ

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監修 | 弁護士 家永 勲 弁護士法人ALG&Associates 執行役員

昨今では、新型コロナウィルス対策としてテレワークを導入する会社が急増し、自宅や外部の会議室で働くという新たな勤務スタイルが定着しつつあります。

社員にとっては、「通勤時間が少ない」「ストレスがかからない」などリモートワークを評価する声が多くある一方で、テレワーク中のハラスメントが問題視されるようになってきています。テレワーク中のハラスメントは「リモートハラスメント」とも呼ばれます。

会社にはハラスメントを防止するべき法的義務があるため、テレワーク中の労務管理を徹底し、テレワーク中にハラスメントが発生しないよう歯止めをかける必要があります。

このページでは、企業がとるべきテレワーク中のハラスメント防止策などについて解説していきます。

リモートハラスメント(リモハラ)とは?

リモートハラスメント(リモハラ)とは、在宅ワークなどリモートワーク時に発生する、パワハラやセクハラなどのハラスメント行為をいいます。

例えば、オンライン会議やチャット、メールのやり取りなどにおいて生じるハラスメントはリモハラに当たります。

リモートでは出社せず、私的な空間から会話をするため、相手との距離感やコミュニケーションの取り方を誤り、リモハラにつながる可能性があります。また、リモハラは自宅や個室などの周囲の目が行き届かない状況で行われるため、行動がエスカレートしやすいという特徴があります。そのため、周囲の社員が気付かぬうちに、リモハラ被害者の心が深く傷つき、精神不調に陥っている可能性もあるため注意が必要です。

リモハラが起きてしまった場合の企業リスク

リモートハラスメントは、会社以外の場所で行われるため、会社が状況を把握することは困難です。

ただし、放置するのは危険です。会社にはハラスメントを防止する義務があり(均等法11条ほか)、ハラスメント防止策を怠ると、是正指導や企業名公表の対象となります。

また、会社は雇用契約を結ぶと同時に、社員が働きやすい就業環境を作る「安全配慮義務」を負います(労契法5条)。リモートハラスメントを放置した場合は、安全配慮義務に違反したとして、損害賠償を請求されるおそれもあります。

法的責任を追及されたことが世間に広まると、ブラック企業であるとして社会的信用を失い、顧客の流出など経済的損失を被るケースもあります。そのため、社員からリモートハラスメントの相談を受けた場合は、すぐに事実確認を行い、適切な防止策を講じる必要があります。

テレワーク中に起こりやすいハラスメント事例

テレワーク中に起こりやすいハラスメントとして、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメントの3つタイプが挙げられます。それぞれの具体例を以下で見ていきましょう。

パワーハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)とは、職務上の優越的な立場にある者が、仕事の範囲を超えて苦痛を与えたり、就業環境を害したりすることをいいます。

テレワーク中のパワハラの例として、以下が挙げられます。

  • 常にカメラをONにするよう求める
  • 業務内容の報告を過度に求める
  • 業務時間外のチャットなどへの対応を強要する
  • テレワークを理由に業務量の管理をせず、過剰なノルマを課す 
  • オンライン飲み会の参加を強制する

テレワークでは部下の働きを直接見られないため、さぼっているのではないかと疑う上司も多いです。

その結果、行き過ぎた監視をする、レスポンスが少し遅れただけで怒るなど、パワハラにあたる行為をする管理職が増えています。悪気はなくとも、部下に不快感を与えてパワハラにつながる可能性があります。

セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、職場における性的な言動により、労働者の就業環境を害することをいいます。

テレワーク中のセクハラの例として、以下が考えられます。

  • メイクの有無や服装について指摘する
  • 容姿や体型について言及する
  • オンライン会議中に性的な発言をする
  • パートナーの有無などプライベートを過度に詮索する
  • 個人的なメールアドレスやSNSのアカウントを聞き出そうとする

上記のようなセクハラが起こるのは、オンライン会議の背景に社員の自室が写っているため、プライベートに踏み込んでしまったり、オンラインによるコミュニケーションを積極的に行おうとしたりした結果、セクハラへとつながることが原因として考えられます。

モラルハラスメント

モラルハラスメント(モラハラ)とは、道徳や倫理に反する嫌がらせをいいます。人格否定をして侮辱したり、会話や連絡を無視したり、特定の社員を仲間はずれにしたりするなどの行為が挙げられます。

テレワーク中のモラハラの例として、以下が挙げられます。

  • 相手の住環境や家族を批判する、嫌味を言う
  • 言葉や態度、メールや文書などによって相手の人格や尊厳を傷つける
  • 一人だけチャットグループから外すなど孤立するよう仕向ける
  • 家族の話し声が入ったことを叱責する

リモートハラスメントが発生する原因として、自宅で仕事をしているために仕事とプライベートの切り替えができず、距離感を見誤っていることや、相手の私生活への嫉妬、リモートワークにより溜まったストレスの発散などが考えられます。

テレワーク中にハラスメントが起きる原因とは?

テレワーク中にハラスメントが起きる原因として、以下が考えられます。

  • 仕事とプライベートの線引きができていない
  • テレワーク環境が整備されていない
  • 管理に不安があり過干渉になっている

以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

仕事とプライベートの線引きができていないから

リモートでオンライン会議をしていると、Webカメラ越しに相手の自宅が見えるため、あたかもプライベートでやり取りしているかのような錯覚が生まれます。そのため、仕事とプライベートの線引きがあいまいになり、オンオフの区別がつきにくくなります。

その結果、プライベートに過度に踏み込んだり、気が緩んで配慮に欠けてしまったりして、相手に不快感を与え、リモートハラスメントが起こりやすくなるものと考えられます。

あくまでテレワークは業務の手段であり、実際のオフィスで禁止されることは、テレワーク中であってもしてはいけないということを社員に自覚させる必要があります。

テレワーク環境が整備されていないから

リモートワークが導入されたのは、新型コロナウィルスが流行してからのことです。

これまでは実際に出社して働くのが通例でした。リモートワークが普及したのは最近であるため、まだ慣れていない社員も多いです。また、テレワークに関するルールが整備しきれていない職場も少なくありません。

テレワークのやり方や禁止事項が定められていないと、社員としては手探りで仕事を進めるほかありません。

その結果、テレワーク中に相手を不快な気分にさせたり、上司が部下をオーバーに監視してしまったりするなど、ハラスメントにあたる行為が生じやすくなるものと考えられます。

そのため、テレワークを導入するにあたっては、リモートワークのルール策定など十分な準備が必要となります。

管理に不安があり過干渉になっている

上司にリモートの経験が少なく、部下の管理方法が分からず、リモートワークに慣れていないことによるコミュニケーションエラーもリモートハラスメントの原因となる可能性があります。

リモートワークでは、オンライン会議やチャットでのやり取りでしか相手の状況を知ることができません。

そのため、部下への指示出しのタイミングやコミュニケーションの方法、距離感の取り方などについて思い悩む管理職の方は少なくないようです。

部下の管理への不安により、必要以上に仕事状況の確認や過干渉をしてしまいがちとなり、その結果、部下を不快にさせて、リモハラの要因になるものと考えられます。特に責任感が強い上司ほど、その思いが仇となり、ハラスメントにつながる可能性が高くなります。

テレワーク中にハラスメントが起きた際の対応

十分な対策をとっていても、リモハラが起きる可能性を0にはできません。

テレワーク中にハラスメント被害にあったとの相談を受けた場合に、会社がとるべき対応として、以下が挙げられます。

  • 適切な事実調査
  • ハラスメントの有無の判断
  • 調査報告書の作成
  • 被害者への配慮
  • 加害者への対応
  • 再発防止に向けた措置

ハラスメントを放置すると2次被害が起きるおそれがあるため、迅速かつ正確に事実確認を行う必要があります。

まずは当事者や関係者にヒアリングを行い、事実関係の調査と証拠の収集を行いましょう。

ハラスメントがあったと事実認定できた場合は、調査報告書を作成し、速やかに被害者をフォローし、加害者に対しては注意指導や人事異動、懲戒など必要な対応を行います。さらに、リモハラが繰り返されぬよう、再発防止策を講じることも必要です。

企業がとるべきテレワーク中のハラスメント防止策

次に、会社が行うべきテレワーク中のハラスメント防止策として、以下が挙げられます。

  • 仕事上のつながりであることを認識する
  • テレワーク時の社内ルールを策定する
  • リモハラに関する社内研修を実施する
  • ハラスメント相談窓口を設置する

以下で順を追って見ていきましょう。

仕事上のつながりであることを認識する

テレワークでは、お互いが自宅にいるときに業務連絡をし合うケースが多いため、お互いのプライベートな部分が見えやすくなります。そのため、相手と親密な関係になったと誤解しがちです。

テレワークを通じて距離が近くなったと考えてしまうと、一方的に親近感を感じて、相手のプライベートに過度に介入するなどハラスメントへとつながるおそれがあります。そのため、公私混同しないよう社員に注意喚起することが必要です。

あくまで仕事上のつながりであることを認識させ、仕事に関係のないことに言及しないことやプライベートに介入しないことなどを心掛け、オフィスに出社するときと同じく緊張感をもって仕事に取り組むよう指導することが大切です。

テレワーク時の社内ルールを策定する

テレワーク時のルールが曖昧であると、社員間で認識の食い違いやトラブルが発生し、その結果お互いにストレスがたまり、ハラスメントが生じる可能性が高まります。

そのため、テレワークを導入するにあたっては、オフィスでの就業時と同じく、明確なテレワーク時の社内ルールを設けることが必要です。

具体的には、就業規則やリモハラ防止規程などに、テレワーク時のルールやコミュニケーションの方法、リモートハラスメントの定義、禁止事項、相談・苦情への対応などを定めておきましょう。また、どのような行為がリモハラに当たるのか理解できるよう、具体例を載せたガイドラインの作成も推奨されます。

リモハラに関する社内研修を実施する

テレワークは普及して間もない働き方であるため、いきなりリモートハラスメントをやめましょうと注意を促したとしても、テレワークに慣れていない社員にとっては理解しづらいものと考えられます。

そのため、リモハラを知らない社員に理解してもらうための社内教育を徹底して実施することが大切です。

就業規則やガイドラインなどを踏まえて、リモートハラスメントの定義や、どのような言動がリモハラにあたる可能性があるのか、リモハラを防ぐためにどのような模範行動をするべきかなどについて、周知しましょう。

研修の際は、参加者同士で意見交換してもらうとより理解が深まるためお勧めです。

ハラスメント相談窓口を設置する

テレワーク中にハラスメントを受けた時、誰にも相談できないと抱え込むおそれがあるため、リモートハラスメントに関する相談窓口を設けることも必要です。

リモハラ被害を受けた場合や、リモハラに関して不安なことがある場合に、すぐに相談できる窓口があれば、社員は安心してテレワークを行うことが可能です。

相談しやすさを考慮して、メールや電話などで、匿名で相談できるようにすることや、相談担当者を最低でも男女1名以上設けるのが望ましいといえます。また、リモハラにより精神的な不調に陥っている社員については、産業医とすぐに連携できる体制を整備しておくべきでしょう。

なお、社内だけでの相談対応に自信がない場合は、弁護士など社外の信頼できる外部機関に委託するという方法もあります。

テレワーク中のハラスメント対策でお悩みの際は、なるべく早く弁護士にご相談ください。

テレワークでは、仕事のオンとオフの切り替えが難しく、テレワークならではの距離感やコミュニケーションの取り方の難しさがあります。本人に悪気はなくとも、言われた方は深く思い悩むなど、意図せずリモハラを行っている危険性があります。

また、管理職としても、部下の姿が直接見えないため、ハラスメントに気づきにくいという側面があります。

もっとも、ハラスメントを防止することは会社の義務であり、怠った場合に会社が受けるダメージは大きいため、適切なハラスメント防止策を講じなければなりません。

テレワーク中のハラスメント対策でお悩みの際は、企業側の労働法務に精通する弁護士法人ALGにぜひご相談下さい。法律や実務上の知識を踏まえて、会社ごとの事情に合わせた最適なハラスメント対策についてご提案させて頂きます。

この記事の監修

担当弁護士の写真

弁護士 家永 勲
弁護士法人ALG&Associates 執行役員

保有資格
弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:39024)

執行役員として法律事務所の経営に携わる一方で、東京法律事務所企業法務事業部において事業部長を務めて、多数の企業からの法務に関する相談、紛争対応、訴訟対応に従事しています。日常に生じる様々な労務に関する相談対応に加え、現行の人事制度の見直しに関わる法務対応、企業の組織再編時の労働条件の統一、法改正に向けた対応への助言など、企業経営に付随して生じる法的な課題の解決にも尽力しています。

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