うつ病の妻と離婚する際の条件|慰謝料や子供の親権など
元気だった妻がうつ病となった場合、家庭が安らぎの場ではなくなったり、子供の精神や生活の影響を考えたりして、「離婚」が頭をよぎるのではないでしょうか。
うつ病になってしまった妻が苦しいのはもちろんですが、そばにいる家族も長年サポートを続けていれば、辛い日々となってくるため、離婚を考えるのはやむを得ないでしょう。
精神病について、「配偶者が重度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という離婚原因に該当する可能性があります。
この記事で「妻のうつ病」に着目し、うつ病を理由に離婚ができるのか、慰謝料や親権、養育費などについて詳しく解説していきます。
目次
妻がうつ病になる原因
明るく元気だった妻が急にうつ病と診断されれば驚くことでしょう。
では、いったいなぜ妻は「うつ病」になってしまったのでしょうか。
それは、妻の性格や置かれている環境に問題があるのかもしれません。
真面目すぎるから
几帳面でまじめなタイプの人は、うつ病を発症しやすくなります。
このような性格に加え、「結婚生活が始まった」「初めて出産し、1人で育児をしている」といった新しい出来事があると、なんでも真面目にこなそうと思い、気づかないうちに自分にプレッシャーを与えてしまいます。
これまで完璧に何でもこなしてきた妻は、このようにしてうつ病を発症しやすくなります。
病気が原因の可能性も
妻の身体的な病気や家族の病気などで精神的負担がある場合も、うつ病を発症しやすくなります。
もし妻が身体的に大きな病気を患った場合は、それが原因の可能性もあります。
また、身体的な病気が治ったとしていても、心は回復していない場合もあります。
否定されるのが苦手
元々まじめで、ダメ出しに不慣れなタイプもうつ病になりやすいでしょう。
世の中には性格が合わない人もいて当たり前ですが、元々まじめで、ダメ出しに不慣れなタイプの方の場合、職場やママ友から、否定・ダメ出しを受けることでどんどん追い込まれていってしまいます。
また、夫からのダメ出しでうつ病を発症してしまう方もいます。
このタイプは「怒られる」「ダメ出しをされる」といったことが今までなかったために、気づかないうちにプレッシャーになっていたと考えられます。
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妻にこんな症状が出たらうつ病のサイン
見逃したくない「うつ病のサイン」ですが、一体どのような症状がうつ病のサインなのでしょうか。
あなたの妻は以下の項目に当てはまらないでしょうか?チェックしてみましょう。
- 完璧だった家事がおろそかになっている
- 帰宅してもご飯を作ろうとしない
- 朝起きてくれない
- 話しかけても返事がない
- 部屋に引きこもっている
- 育児放棄している
- 体調が悪そうだ
うつ病の治療のためにできること
うつ病の症状が出た場合は、まずは病院に行きましょう。通院することで適切な治療を早期に受けられます。また、家族のサポートも大事です。しかし、やりすぎては家族の負担が大きくなってしまうため、うつ病の妻に接する際は以下のことに気を付けましょう。
- 励ましすぎない
- 無理に外に連れ出そうとしない
- 叱ったり、問い詰めたりしない
うつ病を理由に離婚は可能?
夫婦での話し合いで離婚に合意する場合、離婚の理由は何でも構いません。そのため、妻のうつ病を理由に離婚することもできます。
しかし、話し合いでは合意できず裁判に移行した場合、離婚が認められるためには「法定離婚事由」が必要となりますので、うつ病を理由に離婚することは難しくなります。
また、協議離婚の場合には慰謝料の有無や親権、養育費、財産分与といった項目も話し合いで決めていきますが、うつ病では話し合いが進まないこともありえます。漏れが無いように弁護士などの専門家に介入してもらうと良いでしょう。
3-1離婚裁判で離婚するのが難しい理由
離婚裁判で離婚する難しさを知るために、大前提となる、民法で定められている「法定離婚事由」を見ていきましょう。
【法定離婚事由】
- ①配偶者に不貞行為があったとき
- ②配偶者から悪意の遺棄があったとき
- ③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- ④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
妻のうつ病を理由に離婚する場合、④「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当する可能性があり、この場合、妻のうつ病が「強度の精神病」に当てはまるかが大きなカギとなります。
また、④「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」には該当しない精神病であっても、⑤「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして離婚が認められることもあります。例えば、うつ病がきっかけとなって長期間別居していたり、DVやモラハラがきっかけとなってうつ病を発症した場合などです。
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うつ病の妻と離婚するための条件
うつ病の妻と離婚するには、以下のような条件が必要です。
- ①これまで妻のサポートを十分行ってきたこと
- ②強度の精神病で回復の見込みがないこと
- ③離婚後妻が問題なく生活できること
次項でそれぞれについて解説していきます。
離婚裁判で離婚するのが難しい理由
民法第752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。つまり、協力し、助け合いながら夫婦関係を維持するということです。
片方が働けなくなったり、家事ができなくなったりしても、互いに協力し、2人で乗り越えていけるよう精一杯努力しなければなりません。
このような背景から、うつ病になってしまった妻をまったくサポートしてこなかった場合、離婚が認められないリスクがあるでしょう。
日常のサポート(例)
- 通院:予定通り通院できているか確認する、通院に付き添う
- 服薬:薬を決められた量、タイミングで飲めるよう声かけする、お薬ケースを用意する
- 睡眠:一緒に寝室へ行く、電気を消してあげる
- 食事:なるべく栄養バランスの取れたメニューにする、2人で一緒に食事をとる
- 軽い運動:一緒に散歩する
強度の精神病で回復の見込みがないこと
うつ病を強度の精神病として裁判で離婚を認めてもらいたいのであれば、うつ病が民法第752条の定める夫婦の協力義務を履行できないほどの精神障害で、回復の見込みがないことを医学的に証明しなければなりません。
しかし、うつ病は、通常、比較的軽度の精神病と考えられ、夫婦の協力義務を履行できないほどの精神障害とも、回復の見込みがないとも、なかなか認められないでしょう。
また、精神病に罹ったことについて本人に責任はないこと、現実的な要請として、離婚後の精神病者の療養・生活に関する十分な手当等の問題があることから、強度の精神病を理由に離婚が認められることは多くありません。
裁判所は、強度の精神病と認められる場合でも、精神病者の離婚後の療養・生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度見込みのついた上でなければ、離婚請求を認めません。
うつ病であることの証明
裁判に移行した場合、裁判所が離婚について判決を下します。そのため、裁判官に離婚を認めてもらうためにも「証拠」が重要なポイントです。
妻のうつ病で離婚したい場合は「強度の精神病であること」「回復の見込みがないこと」の医学的な証明が必要となります。
具体的には、次のようなものが証拠として役立つ可能性があります。
- 治療履歴
- 回復の見込みがないことを明記した専門家の診断書
- 専門医の鑑定
離婚後も妻が問題なく生活できること
裁判所は、強度の精神病であると認められる場合でも、離婚後の精神病者の療養、生活等について、具体的方途が講じられ、ある程度前途に見込みがついていることを離婚請求認容の要件としています。
具体的方途の中心は離婚後の妻の引受先と療養・生活に関する費用負担についてであり、夫や妻の親族の協力、公的扶助の可能性が認められることが必要とされます。
具体的には、以下のようなケースです。
(例)
- 離婚しても妻が生活できるように配慮した財産分与を行う
- 妻の親族に生活を支えてもらう
- 障害年金を受け取れるよう手続きをしておく
- 精神障害者保健福祉手帳を交付してもらい、離婚後の生活に困らないようにする
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うつ病の妻と離婚するための条件
離婚をする場合は、慰謝料や親権、養育費についても取り決めを行います。
うつ病の妻から慰謝料や養育費を受け取ることはできるのでしょうか。また、うつ病の妻は親権を持つことはできるのでしょうか。
次項で詳しく解説していきます。
慰謝料請求は可能?
うつ病になってしまった妻もなりたくてうつ病になってしまったわけではありません。そのため、うつ病になったからというだけでは慰謝料の請求は難しいでしょう。
うつ病の妻は病気のため、十分に働くことも難しい状態でしょう。収入も満足に得られない場合もあるため、慰謝料の請求は困難となるでしょう。
ただし、以下のようなケースでは慰謝料請求できる可能性もあります。
- うつ病を理由に自分だけ実家に帰ってしまった
- DV、モラハラがあった
また、うつ病の発症原因について夫に責任のある場合や妻がうつ病になってしまっても、夫が何もサポートをしないまま離婚を切り出す行為は、逆に慰謝料を請求される可能性もあるため注意しましょう。
子供の親権は妻が有利?
親権者は親が子供と居たいという気持ちではなく「子供が健やかに成長するためにどちらと一緒に住むのがいいか」といった目線から決めていきます。
妻のうつ病の状態が軽い場合は、従前妻が主たる監護者として子供を養育してきたのであれば、妻に有利となるでしょう。しかし、うつ病の状態が重度であり、子供の監護養育に支障を来たす場合は、親権者として適切とは判断されないでしょう。
夫婦で話し合う時には「子供の幸せ」を第一に考え、親権者を決めましょう。
うつ病の妻から養育費はもらえない?
養育費とは、子供を監護、教育するために必要な費用です。養育費の支払は親の義務であるため、うつ病だからといって支払い義務がなくなるわけではありません。
しかし、養育費の金額は親権者と非親権者双方の収入を目安に決まるため、支払ってもらえるかはケースバイケースです。
うつ病の程度により働けない状況にある場合は十分な収入を得ることができないため、養育費の支払いを受けられない可能性もあります。
妻がうつ病になった場合の相談先
うつ病の妻を一人で支えていくことは、あなたの健康にも被害が出てしまう可能性もあります。
うつ病の方に寄り添うことは、中々難しいことです。時にはあなたが精神を病んでしまう可能性も否定できません。
1人で抱え込まず、以下の相談先を頼りましょう。
【準備しておくこと】
- 病院
心療内科などを一緒に受診し、家族でカウンセリングを受けることも大事です。
抱え込まずに専門医に相談しましょう。 - 無料電話相談
無料電話相談も有効活用していきましょう。
妻の状態、支えるあなたの状態などを聞いて適切なアドバイスをしてくれます。
話を聞いてもらえるだけで気持ちが楽になることもあるでしょう。 - 整体や鍼灸も有効的
うつ病の妻やその家族を含めた整体や鍼治療も有効かもしれません。 - 実家などのサポート
妻の実家でもいいですし、自分の両親にも話してサポートをしてもらいましょう。
身近で信頼できる人への相談は大事なことです。
うつ病を支えるあなたの心強い味方になってくれるでしょう。
うつ病の妻と離婚する際によくある質問
うつ病の妻から養育費はもらえない?
妻のうつ病が重度で会話が難しかったり、自らの意思を表示できなかったり、意思能力がない場合は「成年後見人」と呼ばれる代理人を立てる必要があります。
成年後見人とは、判断能力を失っている人をサポートするために、法律行為を代わりに行ったりする人のことです。成年後見人が必要な場合は、本人が住む地域を管轄している家庭裁判所に申し立て、選任してもらいます。
成年後見人をつけるためには、基本的に本人が手続きを行いますが、本人が手続きを行うことが困難な場合は配偶者が代わりに手続きを行うことができます。成年後見人が決定したら、成年後見人を被告として離婚訴訟を提起することになります。
うつ病の妻と離婚前に別居することは可能ですか?
妻のうつ病の症状が軽く、日常生活を問題なく送ることができ、妻が別居に同意している場合は別居することに問題はないでしょう。
しかし、妻のうつ病が重度で日常生活が困難な場合や、別居することを伝えず勝手に出て行ってしまった場合は、「悪意の遺棄」という不法行為を行ったと判断される場合もありますので、注意しましょう。
別居することでお互いに一人の時間を持つことができ、冷静になり話し合いがスムーズに進むこともあります。また、別居期間はうつ病の妻に振り回されず、心身の回復につながるでしょう。
離婚の話が進まず裁判に至った場合でも、3~5年ほど別居していれば婚姻関係が破綻しているとみなされ、離婚が認められるケースもあります。
うつ病の妻に離婚話をしてもし自殺行為などをした場合、法的責任などはありますか?
うつ病の妻が心身ともにつらい中、離婚を切り出された場合には、最悪のケースも考えられます。 実際に妻が自殺という手段を選んでしまった場合は、以下のようなことを慎重に検討します。
- 妻の病状、看病・介護の状況
- 婚姻生活の状況
- 離婚提案の内容、態様、方法等
これらを総合的に判断し、夫からの離婚の切り出しが妻に対する違法な権利侵害行為なのか、離婚の切り出しと自殺に因果関係があるのかを検討します。
当然ながら、法的責任がないからといって相手を傷つけることを言っていいわけではありません。
離婚の切り出しは相手のあることですから、慎重に行いましょう。
うつ病の妻と離婚を考えている場合は弁護士にご相談ください
妻がうつ病になってしまった場合、1番辛いのは妻本人かもしれませんが、妻を支える家族にも相当の負担がかかっていることでしょう。
心身ともに疲れ切り、「離婚」を考えるのも当然のことだと思います。
うつ病の妻との離婚は難しい面があるため、一人で抱え込まず弁護士に頼ってください。あなたの負担がどんどん大きくなってしまい、最悪の場合あなたも精神を病んでしまうことも考えられます。
裁判に移行した場合に離婚が認められるためには、状況に応じた適切な対応が必要となりますので、弁護士のアドバイスがあると良いでしょう。
うつ病の妻との離婚は慎重に進めていくべきです。うつ病の妻との離婚についてお悩みの際は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
離婚のご相談受付
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※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。
保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)