再婚禁止期間とは|離婚後から再婚までの期間が必要?
厚生労働省の人口動態統計によれば、離婚から再婚までの平均期間は、男女ともに離婚後1~5年以内に再婚する方の割合が非常に高くなっています。
離婚を経験して、新しいパートナーと早く再婚をして新たな生活を送りたいという方はたくさんいらっしゃるかと思います。
しかし、女性は「再婚禁止期間」というものがあり、離婚から一定期間を空けないと再婚できません。ただし、例外的に一定期間空けないでも再婚できる場合もあります。本ページでは、「再婚禁止期間」について、詳しく解説いたします。
目次
再婚禁止期間とは
民法では、再婚期間について以下のように定められています。
「女性が前婚の解消または取消しの日から起算して百日間を経過した後でなければ再婚をすることができない」(民法733条1項)
つまり、離婚をしてからの100日間は「再婚禁止期間」となって、再婚を待たなければなりません。
また、再婚禁止期間が適用されるのは女性に限られており、男性については離婚後すぐに再婚が可能です。
なぜ女性にだけ再婚禁止期間があるのか?
なぜ、女性だけ再婚禁止期間が定められているかというと「扶養義務を負う父親を明らかにして子供の利益や権利を保護するため」とされています。
離婚後すぐに再婚して妊娠した場合、母親は誰であるかは、分娩の事実から特定できますが、父親は、そうとは限りません。
「生まれてきた子供の父親は誰なのか?」を明確にするために再婚の時期を考慮する必要があるとされています。
父親であれば、子供を扶養する義務が発生しますし、将来的に父親が死亡したときは相続権が発生します。
子供の法律上の利益や権利を安定させるためにも「離婚後300日以内に生れた子供」は前夫の子供、「婚姻の成立の日から200日が経過した後に生れた子」は現在の夫の子供と定められており、再婚禁止期間があることによって父親の推定の重複を避け、未然にトラブルを防止するために設けられています。
法改正により再婚禁止期間が100日に短縮
元々、再婚禁止期間は180日でしたが、民法改正により100日に短縮されました。
民法改正となるきっかけとなったのは、ある女性が「再婚禁止期間があるために、結婚が遅れ精神的苦痛を受けた」として、国を相手に165万円の賠償を求めました。
1審、2審とも敗訴しましたが、最高裁は「再婚禁止期間を定める民法の規定の合理性自体は認めながらも、100日を超えて女性の再婚禁止期間と設ける部分は違憲」と判断しました(最高裁平成27年12月16日判決)。
この最高裁判決を機に2016年6月1日に女性の再婚禁止期間を離婚後100日にすると民法改正法案が成立しました。
加えて、離婚したときに妊娠していないことの証明書があれば、離婚後すぐに再婚できることも新たに改正されました。
再婚禁止期間中の再婚が認められる例外ケース
例外的に再婚禁止期間中に再婚が認められる場合もあります。
- 離婚時に妊娠していない場合
- 離婚前に妊娠し出産した場合
- 離婚後に同じ相手(前夫)と再婚する場合
- 妊娠の可能性がない高齢者の場合
- 子宮の全摘出している場合
- 離婚理由が夫の3年以上不明の生死不明の場合
などです。それぞれ下記項目で詳しく解説していきます。
離婚時に妊娠してない場合
離婚時に妊娠していない場合は、その後、妊娠しても前夫の子供ではなく、再婚相手である現在の夫の子供であることが明らかになるため、父親の推定が重複する問題は生じませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能です。
ただし、医師が作成した妊娠していないことがわかる証明書が必要となります。
離婚前に妊娠し出産した場合
離婚前に妊娠して、離婚後に出産した場合は父親の推定が重複する問題は生じませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能です。
ただし、離婚前に妊娠し、離婚後に出産したことが分かる、医師が作成した証明書が必要となります。
離婚後に同じ相手(前夫)と再婚する場合
前夫と再び婚姻する場合は、妊娠しても父親と推定される人物は前夫の1人だけとなります。
父親の推定が重複する問題は生じませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能です。
妊娠の可能性がない高齢者の場合
女性が閉経を迎えている年齢であれば妊娠することが困難なため、父親の推定が重複する問題は生じませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能となります。過去に67歳の女性の再婚を認めた判例があります。
子宮の全摘出をしている場合
子宮を全摘出している場合は、医学的に妊娠する可能性はありませんので、父親の推定が重複する問題は生じませんので再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能です。
ただし、医師が作成した証明書を提出する必要があります。
離婚理由が夫の3年以上の生死不明による場合
夫が失踪宣告(夫が生死不明になって7年経過したときは死亡したとみなす制度)を受けた場合や夫の生死が3年以上不明であることを理由に裁判離婚の手続きで離婚した場合は、前夫との間に子供が生れる可能性はありませんので、父親の推定の重複する問題はありませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することが可能です。
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再婚禁止期間に違反するとどうなる?
再婚禁止期間に違反して再婚すると、どうでしょうか。
法律上の罰則はありませんが、再婚禁止期間中に妊娠して出産すると、子供の父親が前夫の子供と推定され、裁判や審判(調停)で子供の父親を判断することになります。
下記項目で詳しく解説していきます。
法律上の罰則はない
再婚禁止期間中は、原則として、役所は婚姻届を提出しても受理はしません。
万が一、手違いで受理されたとしても罰則はありません。逮捕されたり、罰金を支払わったりしないといけないようなこともありません。
しかし、再婚後すぐに妊娠して出産することになれば子供の父親は前夫なのか現夫なのかわからない状態に陥ってしまいます。
下記項目で詳しく解説しますが、罰則はなくても、時間や労力や費用がかかり、大変手間になり兼ねません。
裁判所が子の父親を判断することになる
再婚禁止期間を違反した場合、「離婚後300日以内」と「再婚後200日以上経過した後」が重複した際に子供が生れたとき、裁判所の手続きを踏んで、父親を決めることになります。
戸籍謄本も「父未定の子」と記載されたままとなります。
まずは、家庭裁判所に「父を定めることを目的とする調停」を申し立てることになります。
DNA鑑定を行い、その結果に争いなければ「合意に相当する審判」によって父親を定めます。もし、DNA鑑定の結果に納得いかないようなことがあれば、裁判を提訴して争い、裁判所が前夫の子か現夫の子か判断することになります。
再婚禁止期間中に妊娠が発覚した場合
再婚禁止期間中に妊娠が発覚した場合、妊娠した時期が重要となります。
離婚から300日以内に生れた子供は前夫の子供と推定されますので、戸籍上の父親は前夫となります。
しかし、実際は前夫の子供でない場合は下記の手続きが必要となります。
- 前夫から「嫡出否認調停」を申し立ててもらう。
(子供が生れたことを知った日から1年以内) - 「親子関係不存在確認調停」を申し立てる。
実際、戸籍上だけでなく、前夫が父親である場合は、前夫は子供に対して扶養義務を負いますので、養育費を請求することも可能です。
離婚後すぐに妊娠が発覚すると、不貞をしていたのではないかと疑われる恐れがあり、心理的に前夫に協力を求められないという方もいますが、前夫は扶養義務を負い養育費を支払わなければならない立場であることの理解を得られれば、協力をしてくれることも結構あります。
再婚禁止期間の考え方について
民法第733条第1項は再婚禁止期間について以下のように定めています。
「女は、前婚の解消または取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」
このように、離婚が成立した日を起算日として、離婚が成立した日を含めて100日を計算することになります。
再婚できるのは離婚した日から101日目以降となります。
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離婚後の再婚期間に関するQ&A
再婚禁止期間中に婚姻届を提出してしまった場合、取り消すことはできますか?
再婚禁止期間中にあやまって、婚姻届を受理された場合は、取り消し請求は可能です。
本人のほかに、前夫、現夫、再婚した当事者の親族、または検察官(ただし、再婚の当事者の一方が死亡したときは不可能)から取り消し請求することができます。
ただし、取り消し請求をするとき、再婚禁止期間である100日を過ぎていたり、再婚後に出産していたりすると、取り消しすることはできません。
離婚後300日以内に生まれた子供の養育費は、元夫に請求できますか?
離婚後300日以内に生れた子供は、前夫(元夫)の子供と推定されます。
前夫は子供の父親となるため、養育費を請求することは可能です。
法律上、親子関係が生じれば、扶養義務は発生し、前夫は、子供に対して、自分と同水準の生活をさせる義務があります。
まずは、前夫に直接養育費を請求して、話し合いましょう。前夫と直接話すのがいや、もしくは話し合ってくれない場合などは、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てして、調停の場で話し合いましょう。
調停での話し合いもうまくいかず、不成立になれば、審判に自動的に移行して、裁判所が養育費について判断します。
養育費については、下記ページで詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
合わせて読みたい関連記事
前々夫と再婚する場合、再婚禁止期間は適用されますか?
【前夫と再婚する場合】
前夫と離婚をして、前夫とすぐに再婚する場合は、妊娠して子供が生まれても、子供の父親の推定は前夫の1人ですので、父親の推定が重複する問題が生じませんので、再婚禁止期間を待たずに再婚することができます。
【前々夫と再婚する場合】
前々夫と再婚をする場合、原則通り再婚禁止期間が適用され、離婚後すぐに再婚はできません。
妊娠して出産した時期によっては子供の父親が特定できず、生まれてくる子供に不利益が生じる可能性があるためです。
離婚してから再婚までの期間で不明点があれば、お気軽に弁護士までご相談ください。
女性は離婚した後、再婚するには、「再婚禁止期間」の100日間を経て再婚が可能となるのが原則だということは理解していただけましたでしょうか。
しかし、再婚禁止期間を待たずに再婚ができる例外的なケースもあります。
ご自身が例外に該当するか不安な方や再婚を急ぐ何らかの事情のある方は、ぜひ、弁護士にご相談ください。
そのほかにも離婚と再婚のタイミングで生まれてくる子供の父親の特定で悩んでいる方、トラブルになっている方は、家庭裁判所の手続きが必要となりますので、代わりに弁護士が申立ての手続きをしたり、裁判所に出廷したりすることも可能です。
離婚後すぐに再婚をお考えで何かお困りのある方は、お気軽にご相談ください。
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保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)