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養育費を払わないのは許される?強制執行や免除される場合について

養育費を払わないのは許される?請求方法や払わなくてもいい場合についても解説

離婚をして、子供と離れて暮らすことになっても、親権者ではなくなっても、子供の扶養義務は継続します。ですので、たとえ親権者でなくなったとしても、子供に対し養育費は支払う義務があります。

また、養育費を公正証書や裁判所で取り決めたにも関わらず養育費を支払わないでいると、強制執行の手続きによって、給与や預金口座など財産を差し押さえられる可能性もあります。

さらに、養育費について、例外的ではありますが、支払いが免除される場合もあることをご存じでしょうか。本ページでは、養育費の支払いについて、いろんな角度から解説していきます。

養育費には支払い義務がある

養育費は、実の親が子供に対して負っている扶養義務を具体化したもので、法律上も義務とされています。離婚をして、親権がなくなり、子供と離れて暮らすことになったとしても、親子関係があることに変わりはありません。

また、養育費の支払い義務はとても重いものとされています。例えば、多くの借金をして自己破産をした場合には、借金の返済義務は免責され、借金を返す必要が無くなります。

しかし、滞納した養育費の支払いは免責されません。また、将来の養育費の支払いについても同様に免責されることはありません。借金を負い、自己破産するほど生活が困窮していたとしても、養育費は支払い続けなければならないとされています。また、養育費を支払わなければ、強瀬執行を申立てられ、財産や預金口座を差し押さえられたりします

養育費を請求されたら弁護士にご相談ください

いつまで支払うべきなのか

養育費は子供が社会的・経済的に自立できない間(未成熟子である間)、親の扶養義務として生活費を負担するものです。一般的に子供が未成年のうちは養育費を支払わなければならないと考えている方が多いですが、「未成熟子」である間であり、未成年とは異なります。そのため、養育費を負担する期間は子供の状況に応じて、夫婦間で取り決めることができます

今は専門学校、四年制大学などに進学する方も増えており、18歳を超えて成人を迎えても、学生の間は自立して生活するのは難しいでしょう。養育費を支払う期間を「未成年の間」ではなく、父母間で養育費の支払いの終期を「20歳まで」、「大学卒業まで」などと話し合いで取り決めておくと子供のために良いでしょう。

また、2022年4月に民法改正によって、成人年齢が18歳に引き下げられましたが、夫婦間で争いにならないためにも、離婚協議の際は養育費の支払い終期を具体的に定めておくべきです。

養育費の支払いがなかった場合

養育費の支払いの約束をしたにもかかわらず、養育費が支払われていないという相談は多数あります。

養育費の合意は、相手方を信じて口頭の約束のみでするのではなく、できる限り合意書を作成しましょう。また、相手方が応じるのであれば、合意書を公証役場で作成し、その際に「養育費の支払いを怠ったときは、直ちに強制執行に服することを認めた」旨、記載すると強制執行が可能となります

このような、公正証書での合意書を、「強制執行受諾文言付きの公正証書」といいます。強制執行は、相手の預金・不動産や給料を差押え強制的に支払わせる手続きですので、養育費をもらう方にとって、かなり安心することができるでしょう。また、調停や裁判で養育費の支払いについて取り決めた場合も、強制執行は可能となります。

養育費の合意をしていない方、合意書を公正証書化していない方も、一切養育費を支払ってもらえないわけではないので、養育費でお悩みの方は、弁護士にご相談ください。

「離婚 公正証書」について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

養育費の未払い請求は弁護士にお任せください

延損害金の発生

養育費の支払い期限が守られず滞納された場合は、約束した養育費の金額に加え、遅延損害金を請求することができます。遅延損害金とは、支払い期限を守らなかったとき損害賠償金として支払われるお金のことです。

遅延損害金の法定利率は2020年3月31日までは年5%でしたが、民法改正により現在は年3%になっています。

財産の差し押さえ

養育費を支払われなかった場合、強制執行の申立てをすると、相手の財産を強制的に差し押さえられることが可能となります。差し押さえが可能な代表的な財産は下記の3種類とおりとなります。

債権
  • 給与
  • 預貯金
  • 生命保険 など
不動産
  • 土地
  • 建物
  • 生命保険 など
動産
  • 現金(66万円以上に限る)
  • 自動車
  • 骨董品
  • 宝石類 など

強制執行の手続きは、預金や給与の差押えは、申立て書類が整っていれば、比較的簡易かつ速やかに行うことができますが、不動産や動産の場合は、売却をして現金に換価しなければならないので、手続きが複雑で時間も要します。 強制執行は複雑な点も多いため、弁護士にご相談ください。

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養育費の請求方法

養育費の支払いが滞納された場合、公正証書(強制執行受諾文言付き)や、調停調書・判決文などがあり、強制執行ができるのであれば、特に相手方に通知せず、いきなり強制執行をすることも可能です

ただ、強制執行をするには、手間暇がかかるため、まずは、話し合いをしたり、内容証明郵便を送付して養育費の請求をしたりするのが一般的でしょう。

特に、公正証書等がない場合、話し合いで支払われない場合、養育費を請求するために調停の手続きを行う必要があります。下記事項で詳しく解説していきます。

まずは内容証明郵便での請求

協議が進まない場合や、そもそも話し合いにならない場合には、内容証明郵便で請求するのが一般的です

内容証明郵便は、日本郵便が提供するサービスのひとつで、郵便局で送付することができます。送付したことを郵便局が証明してくれるので、裁判所に証拠として提出するのにも有効です。しかし、内容証明郵便には、相手方がその内容の郵便を受け取ったという証明と時効の延長以外に法的効力は特にありません。ただ、内容証明郵便が届くと、相手方はこちらが本気なんだなと感じ、任意で支払いをしてくるケースもあります。

また、内容証明を受け取った側は、郵便を無視するとその後に裁判手続き等を起こされる可能性があるため、差押えをされることなく話し合いで解決したい場合は、できる限り速やかに対応することをお勧めします。

公正証書がある場合

公正証書(強制執行認諾文言付)がある場合は、強制執行の手続きによって、給与や預貯金を差し押さえることが可能となります

給与や預貯金を差し押さえられると、自由に使えるお金が制限され、生活が苦しくなる場合もありますし、給与が差し押さえられると強制執行が行われた事実を会社の人が知ることになりますので、仕事上の立場が悪くなるかもしれません。

給与を差押えられて初めて事の重大性を認識したという、法律相談もよくありますので、公正証書や調停条項があり差し押さえられる可能性がある場合は、話し合いで解決するべきでしょう。

公正証書がない場合

公正証書がない場合は主に2通りのパターンが考えられます。

ひとつは、話し合いを行い、養育費の合意書を公正証書で作成することです。強制執行認諾文言付で作成することにより、養育費の不払いが生じたときに強制執行が可能となります。

もうひとつは家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てする方法です。裁判官や調停委員を交えて、話し合いで養育費を取り決めます。調停は強制参加ではないので、欠席することも可能ですが、話し合いで解決するのは困難と判断され、調停が不成立となれば、審判に移行することになります。審判に移行すると裁判所が養育費の内容を決定することになります。

調停で成立すると調停調書、審判が確定すると審判書が作成され強制執行が可能となります。

養育費と面会交流との関係

養育費と面会交流は、それぞれ別に考え、独立して取り決めることとされています。

「養育費を支払ってくれないから面会交流はさせない」、「面会交流をさせてくれないから養育費は支払いたくない」といった相談はよくありますが、基本的に許されません。

面会交流で揉めている方へ

養育費を支払わなくてもいい場合もある?

例外的に養育費を免除、または減免される場合もあります。どのようなケースがあるのか下記のとおり解説していきます。

支払能力がない場合

養育費を支払う側は、子供の生活レベルを自身と同水準に維持するよう「生活保持義務」で定められています。状況によっては、自分の生活レベルを落としてでも養育費を支払わなければいけません。

言い換えると、自分より良い生活をさせる必要まではない、自分が生活できなくなるほどの支払い義務はない、ということにもなるため、病気や怪我で働けなくなって収入がない、支払い能力がない場合などは減額もしくは免除される場合もあります

受け取る側の収入が高い場合

養育費の金額は子供の人数、年齢と両親(養育費を支払う側と受け取る側)の年収によって決まります。受け取る側(親権者)の収入が高ければ、支払う側の養育費の負担が少なくなる場合や免除される場合もあります

払わないと約束した場合

離婚後、「相手と一切関わりたくないから」、「養育費の代わりに多額の財産分与を分配してもらったから」などの理由で、養育費を支払わないことについて、相手と合意している場合は、基本的には当事者間では有効となるので、養育費を支払わなくても問題ありません

しかし、養育費の支払いを受けないことで、子供の生活に支障が現実に生じるときは、事情の変更として養育費の請求が可能となる場合や、子供自身から養育費の請求が可能となる場合があります。

養育費の請求は弁護士にお任せください

子供が再婚相手と養子縁組した場合

親権者(受け取る側)が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組をすると、再婚相手が第一次的な扶養義務者となり、実親は第二次的な扶養義務者になりますので、再婚相手が優先的に子供の扶養する義務が発生します

しかし、扶養義務が完全になくなるわけではありません。再婚相手が満足した扶養ができない場合は、実親が不足する金額を支払う必要がある場合もあります。

子供が就職した場合

子供が就職により、社会的・経済的に自立して、養育の必要がなくなるという考えから、養育費は支払う必要がなくなります。しかし、勝手に支払いを止めるのではなく、父母間で話し合いや調停など適切な手続きを行うようにしましょう。

払えない場合は養育費の減額請求を

養育費を支払えないときは、相手に減額請求をしてみましょう。

養育費が減額できる場合は・・・

  • やむを得ない事情(リストラ、病気や事故に遭うなど)により、収入が減った
  • 親権者(受け取る側)の収入が増えた
  • 自身(支払う側)が再婚して、扶養家族が増えた
  • 親権者(受け取る側)が再婚した

などです。

減額請求の流れは養育費を請求する場合と基本的に変わりません。

①当事者間で話し合う

②家庭裁判所で「養育費減額調停」を申し立てして、話し合う

③家庭裁判所で「養育費減額審判」に移行して、裁判所が決定をだす

「養育費 減額」について、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

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養育費を支払いに関するよくある質問

養育費を支払わないことによって給料を差し押さえされた場合は会社に知られる可能性はありますか?

給与を差し押さえられると、会社に知られることになります。給与を差し押さえる場合、裁判所から会社宛てに「債権差押命令」の書類が送付されるからです。

法的に、会社が差し押さえを理由として解雇することはできず、辞めさせられるということはありません。

公正証書に強制執行について書かれていない場合は養育費を支払わなくても罰則はありませんか?

公正証書に強制執行認諾文言の記載がなく、養育費を支払わずにいると、そもそも強制執行もできませんし罰則もありません。日本では、養育費の不払いに対する刑事罰もありません。

しかし、公正証書により養育費の合意内容が明確なのであれば、養育費請求調停や裁判を申し立てられたりする場合があります。調停や裁判により養育費の支払いが決まれば、調停調書や判決書きに基づき財産の差押えが可能となります。

なお、財産を差押える際に、財産開示の手続きがあり、近年罰則が強化されました。財産開示に応じない場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金などの規定があるため、財産開示手続きを起こされた場合は、応じるようにしましょう。

養育費を払わなくてもいいと口約束した場合も支払い義務はなくなりますか?

当事者間で養育費について口約束で取り決めた場合も合意(約束)は成立します

しかし、口約束だと、後から親権者(受け取る側)から「支払わないでいいと約束した覚えはない」といわれると約束した内容を証明することが困難になります。できれば、証拠を残しておくために、離婚協議書や公正証書を作成しておくことをお勧めします。

未婚でも養育費の支払い義務はありますか?

未婚でも法律上の父親が確定しているのなら(認知していれば)入籍していなくても、父親は子供に対する扶養義務が発生しますので、養育費は支払う必要があります

「認知をしなければ養育費を支払わなくて済むか?」という相談がありますが、このような安易な考えはお勧めしません。任意で認知する方法だけでなく、「認知調停」や「強制認知」などで相手から認知を求めて手続きを起こされる場合もあります。

養育費を支払いがない場合は色々なペナルティが発生することがあります。そうなる前に弁護士にご相談ください

養育費を支払う約束をしたにも関わらず、支払わないままでいると強制執行をされて財産を差し押さえられるなど、様々なペナルティが発生することになります。

養育費は何らかの事情で支払えない場合は減額や免除ができる場合もありますので、支払いを放っておかずにまずは、弁護士に相談してください。

養育費の支払い合意をしたにもかかわらず、養育費の支払いを滞納していると、滞納分を一括で請求される恐れや、滞納分を含め高額な差押えをされる可能性があります

養育費の支払いについてお困りの方は、一人で抱え込まず、弁護士の力を借りることをぜひご検討ください。

 

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。