【離婚】セックスレスに対する慰謝料請求|できるケースや相場など
夫婦の中には、「セックスレス」を理由に離婚したいと考える方もいらっしゃることでしょう。
しかし、セックスレスで離婚ができるのか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2018年、2019年では、性的に合わず離婚した方が男性で2406件、女性で3462件の5868件と報告されています。
この数字から、約20万の夫婦のうち2.8%の方がセックスレスなど、性に関する不満で離婚していることになります。
では、セックスレスで離婚になった場合に、慰謝料を請求できる(若しくは請求される)のでしょうか?
結論としては、夫婦のどちらか一方が正当な理由なく性交渉を拒否している場合には離婚事由となり、さらに、100万円程度の慰謝料を請求できる場合があります。
この記事では「セックスレス」に着目し、セックスレスとはどのような状態なのか、離婚はできるのかなどの疑問に詳しく解説していきます。
目次
セックスレスは離婚理由として認められるのか?
セックスレスであっても夫婦がお互いに離婚に合意していれば離婚することができます。
話し合いで折り合いがつかない場合は、調停、裁判に移行しますが、裁判の場合では以下の法的離婚事由が必要です。
【法的離婚事由(民法770条)】
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意の遺棄があったとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
セックスレスの場合では、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときに当てはまるかが重要なポイントです。
セックスが長期間ないことより、夫婦関係を継続していくことが難しい場合に離婚が認められます。
一口に「セックスレス」と言っても様々なパターンがあり、慰謝料を請求できる場合とできない場合があり、以降で詳しく解説していきます。
離婚理由については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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そもそも「セックスレス」とはどんな状態こと?
セックスレスに法的な定義はありませんが、日本性科学会がセックスレスを、「特別な事情がないにも関わらず、夫婦の合意した性交渉またはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」と定義しています。
つまり、1ヶ月以上パートナーと何らかの性愛的コンタクトがないことを、セックスレスと捉えます。
セックスレスは性の不一致の一つでもあります。
性の不一致にはセックスレスのほかに、身体的・精神的な原因による性交不全、性的異常などがあります。
これらの事情により婚姻を継続させるのが難しい場合は離婚が認められることとなります。
セックスレスが原因の離婚で慰謝料請求できる?
セックスレスでは、慰謝料請求ができるケースと慰謝料請求ができないケースがあります。
以降でそれぞれについて詳しく解説していきます。
慰謝料を請求できるケース
慰謝料を請求できるケースは以下のとおりです。
【夫婦のどちらかが一方的にセックスを拒絶する場合】
慰謝料の請求が認められるには、「相手が性交渉できるのにも関わらず、しようとしない」といった状況が必要です。
つまり、EDなどの病気や高齢を理由にしたくてもできない場合、慰謝料は認められません。
慰謝料請求が認められるには、夫婦の年齢がある程度若く、性交渉があるのが当然という夫婦状況であるにもかかわらず、理由なく性交渉を継続的に拒絶するということが想定されます。
【夫婦のどちらかが不倫している場合】
不貞行為がありセックスレスになってしまった場合は、そもそもの原因は不貞行為によるものなので、セックスレスが理由となるかは別にして、不貞行為をした側に慰謝料を請求できます。
【セックスレス以外にDV・モラハラがある場合】
セックスレス以外にもDVやモラハラがある場合には、離婚事由を作ったきっかけとして慰謝料が発生する可能性があります。
慰謝料を請求できないケース
慰謝料を請求できないケースは以下のとおりです。
【病気などでセックスができない場合】
病気などでセックスができない場合は、本人に非がないので慰謝料の請求はできません。
【夫婦のどちらもセックスを望んでいない場合】
例えば、高齢の夫婦の場合では、自然とセックスをしなくなったり、若い夫婦でも疲れてしなくなったりすることがあります。このようにお互いが望んでいない場合は双方に非が無いので慰謝料を請求することはできません。
【セックスレスの程度が軽い場合】
例えば、3回に1回は応じてもらえたり、3ヶ月に1回は性交渉があったりする場合には、慰謝料の請求は難しいでしょう。
セックスレスによる離婚で慰謝料請求が認められた判例
セックスレスによる離婚で慰謝料が認められた判例をご紹介します。
- 性交渉を拒否する中、ポルノビデオで自慰行為をする夫に対し妻が離婚と慰謝料を求めた事案 慰謝料120万円(福岡高等裁判所 平成5年3月18日判決)
- 結婚してから約4年間の同居期間中、1度も性交渉がなく、夫が性的不能であることを隠して結婚した事案 慰謝料200万円(京都地方裁判所 昭和62年5月12日判決)
- 結婚した当初は性交渉があり、結婚して子供もできたが、その後性交渉を拒否するようになり、夫は別の男性と同性愛の関係を持っていた事案 慰謝料150万円(名古屋地方裁判所 昭和47年2月29日判決)
セックスレスで離婚した場合の慰謝料相場は?
慰謝料の金額はセックスレスの状況によって大きく変わり、相場は数十万~100万円程度でしょう。
もっとも、一口にセックスレスと言っても、その内容、程度、理由はケースバイケースです。
慰謝料の金額は、以下によっても変わってきます。
- 婚姻期間
- 相手の年収
- 相手の職業
- 子供の有無
セックスレスの慰謝料が増額されやすいケースとは?
セックスレスの過去の判例では、ケースによって異なりますが、300万ほどの慰謝料が認められたケースもあります。
では、どのような場合に慰謝料は増額するのでしょうか。
以下にセックスレスの慰謝料が増額しやすいケースをまとめます。
- セックスレスの期間が長い(3年以上)
- 結婚後に一度もセックスをしていない
- セックスを拒絶している側が不倫している
- セックスを拒絶された側が初婚
- セックスレスに加えてモラハラやDVがある
- 婚姻期間が長い
- 未成年の子供がいる<
- 相手がセックスをするために努力をしていない
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セックスレスで慰謝料を獲得するには証拠が必要!
セックスレスを理由として、配偶者へ慰謝料を請求するにはその事実を裏付ける証拠が必要です。
では、セックスレスな状態を裏付けるにはそのような証拠を集めればよいのでしょうか。
セックスレスは証明が難しい問題です。
証拠資料として、お互いの生活状況を記したメモ、日記、メールでの性交渉の記録などが役立ちます。
以降ではセックスレスを裏付ける証拠について詳しく解説していきます。
日記・メモ
まずは、お互いの生活状況をメモや日記に記しましょう。お互いの起床時間や帰宅時間、就寝時間をメモする程度で構いません。
これらを継続的に続けることで、相手が本来性交渉できる状態であるのに応じていないことが証明できます。
また、性交渉を求めた日には、状況と相手からの回答、対応をなるべく具体的に書き込みましょう。
日記は毎日記録するのがおすすめです。毎日記録することで、相手から「でっち上げだ」と言われてしまうことを防ぎます。
メール・会話の録音
上記の日記やメモが難しい場合には、メールや会話の録音も有効な証拠となります。
例えば、メールであれば、メールで性交渉を誘った時に、相手からのメールの返信を保存しておきます。
一連の流れのメールを定期的に保存しておくことで、相手がセックスを拒絶している事実の証拠となります。
また、ボイスレコーダーでセックスについて会話しているところを録音するのも一つの手でしょう。
ボイスレコーダーで録音する際には相手の承諾は必要ありませんが、気づかれないよう注意が必要です。
また、裁判になった時に裁判官に証拠として提出するため、音声が鮮明に録音されていることが重要です。
セックスレスで慰謝料請求する手順
セックスレスで慰謝料を請求する手順は以下のとおりです。
- 話し合い
- 離婚調停
- 離婚裁判
以降でそれぞれについて詳しく解説していきます。
まずは話し合い
まずは希望する慰謝料の金額について話し合いましょう。
話し合いで合意ができれば合意書を作成します。合意書は公正証書にしておくのが安心です。
「公正証書」とは、合意した内容について公証人が証書として作成し、内容を証明する書類のことを言います。
合意書と公正証書の大きな違いは「強制執行」です。相手を信用していても、慰謝料を払ってくれない、分割にしたけど滞納しているというトラブルはよくあることです。
その場合に公正証書をもとに裁判所で強制執行の申立てをすると直ちに相手の財産を差し押さえることができます。
話し合いで慰謝料を請求することが難しい場合は「内容証明郵便」を送るのも一つの手です。
「内容証明郵便」とは、郵便局の事業の一つで、「いつ、誰が、誰に、どのような内容」を送ったかを証明できるものです。
内容証明は法的な効力はありませんが、相手に心理的なプレッシャーを与えることができます。
また、郵便局が同じ内容の郵便を保管してくれることから、証拠として有効です。
協議離婚については以下の各リンクでも詳しく解説しています。ご参考ください。
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離婚調停で請求する
話し合いで合意できない、話し合いに応じてくれない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停では、調停員が間に入り、慰謝料や離婚について話し合います。
調停はあくまで話し合いであり、調停員はどちらの味方もしないことに注意しましょう。
離婚調停については以下のリンクでも詳しく解説しています。ご参考ください。
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最終的には離婚裁判
調停でも折り合いがつかず、調停不成立の場合は裁判を申し立てます。
離婚裁判では、裁判所がすべての判断をするため、セックスレスの事実を立証する証拠が何より大切です。
また、ひとりで裁判を戦うことはとても不安で難しいことでしょう。
離婚裁判は弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで裁判の手続きを任せられ、代理人として裁判で主張・立証を行うことができます。セックスレスで悩み、一人で戦っているわけではないと思えるだけでも心強いのではないでしょうか。
離婚裁判については以下のリンクでも詳しく解説しています。ご参考ください。
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よくある質問
セックスレスで慰謝料請求する場合、切り出し方のポイントはありますか?
まずは自分の気持ちを整理しましょう。
- なぜ離婚したいのか
- 相手が拒否したらどうするのか
- 離婚後どうしたいか
自分の気持ちを整理したうえで、それでも離婚や慰謝料請求に踏み切ろうと思った時は、お互いが落ち着いているときに話し合いをしましょう。
話し合いをするうえで、ヒートアップしてしまい、冷静になれないこともあるかもしれません。
そのような場合に同じ家の中にいることは余計に話がこじれてしまうことも考えらます。
その場合、しばらく滞在できる場所を確保することも考えましょう。
子供がいる場合、セックスレスの慰謝料とは別に養育費も請求することは可能ですか?
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セックスレスの慰謝料請求を夫が拒否します。何か対処法はありますか?
夫婦の当事者間で慰謝料請求の交渉をするのは、なかなか難しいでしょう。
慰謝料請求を拒否された場合には、一般的には、請求金額を下げたり分割払い等の提案をしてみるというのも一つですが、うまくいくことは少ないのではないでしょうか。
慰謝料請求は、交渉となるため、相手方が拒否する場合は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、相手方と交渉するだけでなく、裁判に移行した際にも慰謝料を払うべき理由を主張・立証し、慰謝料の請求に力添えができます。
夫のEDでセックスレスになったのですが、夫に対して慰謝料請求できますか?
EDは病気であり、相手に非はないため、EDでセックスレスになったことで慰謝料を請求するのは難しいでしょう。
もっとも、ED以外にDVやモラハラがある場合は慰謝料請求が可能です。
また、EDによりセックスレスとなり、夫婦関係が破綻し、改善の努力をしてくれないなどの理由がある場合は慰謝料を請求できる可能性があるかもしれません。
セックスレスが原因での離婚・慰謝料請求でお悩みなら、まずは弁護士にご相談ください。
セックスレスに陥ると、男女とも自信を無くしてしまうことがあり、とてもつらい思いをされていることと思います。また、セックスレスだと他人に打ち明けることは難しく、一人で悩むストレスもあるでしょう。
セックスレスは立派な離婚原因となる可能性があります。セックスレスでお困りの方は弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、現状を詳しくヒアリングすることで、相手方と話し合いをしたり、話し合いで解決しない場合は調停・裁判へ移行し、解決を目指すことができます。
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保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)