性格の不一致とは|具体例や離婚を切り出す前に知っておくべき知識
「離婚」と聞くとマイナスなイメージを持たれるかもしれませんが、現在の日本では3組に1組が離婚するといわれており、離婚はより身近なものとなっています。
離婚する理由は夫婦の数だけさまざまですが、令和5年度の司法統計によると、男女ともに離婚したい理由は性格が合わないつまり性格の不一致が第1位となっています。
この記事では、はたして性格の不一致を理由に離婚や慰謝料の請求ができるのか、離婚する手順などについて解説していきます。
目次
離婚原因1位!性格の不一致とは?
性格の不一致とは、生まれ持った気質や育ってきた環境の違い等から生じる、物の考え方や価値観の違い全般のことを指します。
些細な生活習慣の違いに始まり、金銭感覚や子供の教育方針、宗教観など、具体的な内容は多岐にわたります。
令和5年度に裁判所が公表した司法統計データによると、下表のとおり、男女ともに「性格が合わない」ことが離婚を希望する原因の第1位となっています。
日本では、ほとんどの夫婦が性格の不一致が原因で離婚しているのです。
順位 | 男性側 | 女性側 |
---|---|---|
第1位 | 性格の不一致 | 性格の不一致 |
第2位 | その他 | 暴力を振るう |
第3位 | 精神的に虐待する | 生活費を渡さない |
第4位 | 異性関係 | 精神的に虐待する |
第5位 | 暴力を振るう 浪費する |
異性関係 |
性格の不一致の具体例
性格の不一致として離婚の原因に挙げられる具体的な内容は、夫婦の数だけ様々です。
例えば、一例として以下のようなものが考えられます。
- 価値観の違い
あらゆることに対する物の考え方や優先度の違い(親族・友人との付き合い方や家族観、食事、マナー、休日の過ごし方 など) - 金銭感覚のズレ
貯蓄や浪費に対する考え方、借金の有無、お金の使い方 など - 宗教観
夫婦間での信仰の違い、宗教活動の態様や程度、配偶者や子供に対する信仰の強要の有無 など - 子供の教育方針
習い事やしつけ、進路についての方針、教育熱心過ぎる・無関心過ぎる など - 結婚前と結婚後での違い
結婚生活をおくるにつれ、また、出産・育児・介護という環境の変化を機に、考え方や価値観にズレが生じ、夫婦喧嘩や離婚問題に発展することがあります。
性格の不一致を理由に離婚はできる?
性格の不一致を理由とする離婚は、協議離婚または離婚調停であれば成立する可能性があります。
離婚調停とは、調停委員を介した話し合いで問題の解決を図る手続きです。
これらは、基本的に夫婦の話し合いであるため、どのような理由であっても当事者が合意すれば離婚が成立します。
しかし、協議離婚や離婚調停で話がまとまらず、離婚裁判にまで発展してしまうと注意が必要です。
裁判で離婚を認めてもらうには、法定離婚事由が必要ですが「性格の不一致」は法定離婚事由のいずれにも該当しません。
そのため、単に性格が合わない、価値観が違うという理由だけで、離婚裁判まで発展した場合は、離婚が認められない可能性が高いです。
協議離婚や離婚調停については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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裁判で性格の不一致による離婚が認められるケース
離婚裁判では、基本的に「性格の不一致」だけでは離婚は認められません。
しかし、性格の不一致が不仲の理由でも、それがもとで以下のような状況になり、今後も改善の見込みがないほどまで婚姻関係が破綻している場合には、法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
- 夫婦喧嘩が絶えず、相手が家出し、生活費を渡さない
- 浪費癖が激しく、何度話し合っても改善しない
- 仕事や宗教活動にのめり込み、家庭を顧みない
- セックスレスや性的異常
- 暴言、怒鳴る、物に当たるなどのモラハラ
- 別居期間が相当期間にわたっている
「法定離婚事由」がある
法定離婚事由とは、民法で定められた、裁判で離婚が認められる5つの離婚理由のことです。
離婚裁判では、離婚を求める理由が下表に記載されている法定離婚事由のいずれかに該当していないと、離婚を認める判決を出してもらえません。
不貞行為 | 配偶者以外の人と肉体関係を結ぶこと |
---|---|
悪意の遺棄 | 夫婦の同居・協力・扶助の義務を正当な理由なく果たさないこと |
3年以上の生死不明 | 配偶者が3年以上音信不通で生死がわからないこと |
強度の精神病 | 配偶者が日常生活に支障をきたすほどの精神病を患い、回復の見込みがないこと |
その他婚姻を継続し難い重大な事由 | DVやモラハラ、セックスレス、親族との不和、信仰上の対立等により、夫婦関係が破綻していること |
「性格の不一致」は上記の表のいずれにも該当しないことから、単に「性格が合わない」という理由では裁判によって離婚を認めてもらうことは難しいでしょう。
しかし、性格の不一致が原因で不貞行為や悪意の遺棄、DVやモラハラ、相当期間の別居など、法定離婚事由のいずれかに発展した場合は、裁判で離婚が認められる可能性があります。
離婚が認められる理由について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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法定離婚事由を証明するには証拠が重要
裁判で離婚が認められるためには、「性格の不一致」が原因で婚姻関係が破綻し、改善の見込みがないことを客観的な証拠を用いて証明し、裁判官に認めてもらわなければなりません。
特に、別居やDV、モラハラ、不倫などに発展している場合、各事情に応じた証拠をなるべく多く集めておきましょう。
例えば、以下のような証拠が有用です。
- DVやモラハラを受けているときの映像、音声データ、相手から言われたことや受けた暴力の詳細を記録した日記
- DVによる怪我の写真、医師の診断書
- 不倫相手とラブホテルに出入りする写真
離婚裁判についての基礎知識や詳しい内容は、以下の記事でも紹介されています。ぜひ併せてご覧ください。
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長期間別居している
別居期間が長くなると、夫婦としての実態が失われているとして、裁判でも離婚が認められやすくなります。
裁判所の判断によりますが、一般的には、最低3年から5年位の別居期間があれば、婚姻関係が破綻していると判断される傾向にあります。
そのため、性格や価値観の不一致の他に主立った離婚理由がなく、このまま裁判に発展しても勝ち目が薄いと思われる場合は、戦略的に数年間の別居期間の実績を作ることで、裁判でも離婚できる可能性が高まります。
なお、別居期間中であっても、離婚成立までは、夫婦の収入が少ない方は、多い方に対し、生活費や子供を育てるための費用(婚姻費用)の分担を請求することができます。
離婚と別居の関係や婚姻費用についての基礎知識は、以下の記事に詳しくまとめられています。ぜひ併せてご覧ください。
性格の不一致による離婚が認められた裁判例
「性格の不一致」が婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとして、裁判で離婚が認められた事例をいくつかご紹介します。
- 俗っぽいものを極端に嫌い、高い水準の知的生活を望む夫と平凡な妻との間に大きな生活観・人生観の隔たりが生じ、これが原因で夫婦関係が修復不可能な状態まで陥ったと認めた事例(東京高裁判決昭和54年6月21日)
- 生活費や子供の学費に手を出すほど妻の浪費癖が激しく、何度も夫婦で話し合い修復を図ろうと試みたが、改善しなかった事例(東京家審判決昭和41年4月26日)
- 妻の度を超す宗教活動が原因で、日常生活や子供の養育にも支障が生じた事例(大阪高裁判決平成2年12月14日)
- 正当な理由のない夫からの性交拒否等が長期間にわたり、夫に対する妻の愛情が喪失した事例(福岡高裁判決平成5年3月18日)
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性格の不一致による離婚の切り出し方
性格の不一致を理由に離婚したい場合は、裁判に発展する前に離婚を成立させる必要があります。
つまり、協議や調停で決着をつけることが大切です。
そのためにも、まずは自分の気持ちを整理するなど、事前準備をしっかり行いましょう。
また、話し合いで揉めないためにも離婚の切り出し方が重要となりますので、以下のポイントに注意しましょう。
- あくまで冷静に
- 離婚したい理由を明確にしておく
- 相手の主張も聞く
- 子供のいる前では極力話し合わない
性格の不一致による離婚で慰謝料請求できる?
性格の不一致による離婚では、基本的に慰謝料は発生しません。
そもそも、「慰謝料」とは、精神的苦痛に対する補償です。例えば、不倫やモラハラなどをされ、精神的なダメージを受けたことに対する「償い」や「誠意」といった意味の込められたお金です。
しかし、性格の不一致では、どちらかが一方的に悪いということはなく、上手く歩み寄れなかった結果であり、お互い様だと考えられます。
そのため、慰謝料は発生しません。
ただし、性格の不一致が原因の不貞行為により精神的ダメージを受けた場合は、慰謝料を請求できる場合もあります。
離婚慰謝料の基礎知識について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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請求できるケースと相場
離婚の際に慰謝料を請求するためには、相手方に不法行為がなければなりません。
不法行為とは、故意または過失によって他人に損害を被らせる行為をいい、離婚の場合では、不貞行為やDV・モラハラ、生活費を渡さない(悪意の遺棄)、セックスレスなどが当てはまります。
それぞれの不法行為に対する慰謝料の相場を見ていきましょう。
不法行為 | 慰謝料相場 |
---|---|
不貞行為 | 200万~300万円程度 |
DV・モラハラ | 数十万~300万円程度 |
悪意の遺棄 | 数十万~300万円程度 |
セックスレス | 0~100万円程度 |
不倫された場合の慰謝料請求について、詳しくは以下のページをご覧ください。
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性格の不一致で離婚するときに決めるべき条件
性格の不一致を理由として離婚する場合にも、決めておかなければならない離婚条件があります。
性格の不一致により離婚する手順
性格の不一致が原因で離婚を決意した場合も、離婚までの基本的な流れは、他の離婚原因のときと変わりません。
典型的な手順は以下のとおりです。
- 夫婦で話し合う
離婚したいことを相手に伝え、まずは夫婦2人で、離婚条件について話し合います。
話し合いが合意に至れば、離婚届の提出をもって離婚成立です。なお、離婚条件等は、「離婚協議書」として、できれば公正証書の形で書面化しておきましょう。
- 離婚調停
夫婦の話し合いで解決できなかった場合、裁判所を交えた話し合いである「離婚調停」を申し立てることができます。
裁判所が介入するとはいえ、調停はあくまでも話し合いです。合意に至らなければ不成立で終了します。
- 離婚裁判
離婚調停が不成立となった場合、最終的には、裁判で離婚の可否と条件を争うことになります。
裁判で離婚が認められるためには、離婚したい理由が法定離婚事由に該当していることを証明し、裁判官から離婚を認める判決を出してもらわなければなりません。
離婚手続きの流れや詳細は、以下の記事で分かりやすくまとめられています。ぜひ併せてご覧ください。
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性格の不一致による離婚のお悩みで弁護士ができるサポート
性格の不一致により離婚したいとお考えの場合、裁判で離婚することは難しい傾向にあり、相手方と話し合いによって離婚条件を決定し離婚に合意してもらう必要があります。
当事者同士の話し合いでは感情的になって話が進まなかったり、離婚条件についても適正な基準が分からず取り決めが難航するケースが多いでしょう。
弁護士に依頼すれば、次のようなサポートを受けることができ、性格の不一致による離婚に向けて前進する可能性が高まります。
- 相手と直接交渉をしてくれる
- 法的根拠に基づいて主張してくれる
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性格の不一致に関するQ&A
性格の不一致を理由として、一方的に離婚することは可能ですか?
離婚をしたい原因が「性格の不一致」の範疇である限り、相手が離婚に合意しなければ、どんなに離婚したくても、基本的には一方的・強制的に離婚を成立させることは難しいと考えた方が良いでしょう。
しかし、「性格の不一致」の他に、不倫をされていたり、DVやモラハラを受けていたり、別居をしていたりするなどの事情がある場合は、これらの事情を総合的に考慮した上で、裁判所が「婚姻関係が破綻している」と判断すれば、離婚が認められる可能性があります。裁判で離婚を認める判決を得られれば、相手の合意がなくても、離婚が成立します。
子なし夫婦の場合、性格の不一致による離婚は認められやすいですか?
どんな離婚理由であれ、「子供がいるから裁判で認められにくい/子供がいないから離婚が認められやすい」 ということは、基本的にはありません。
裁判で離婚が認められるかどうかは、あくまでも離婚原因が法定離婚事由に該当しているかどうかであり、子供の有無は関係ありません。
しかし、未成年の子供がいる夫婦は、親権や養育費、面会交流など、どうしても子供のいない夫婦よりも争う内容が多くなってしまいます。
そのため、裁判でも、子供のいない夫婦より「揉めやすい」「長期化しやすい」ということは言えるかもしれません。
性格の不一致で離婚したい場合、どのような準備をしておくべきですか?
性格の不一致を理由に離婚したいと思っても、相手も自分と同じように苦痛やストレスを感じているとは限りません。
また、不倫やDVのような分かりやすい出来事がない場合、相手が離婚を望んでいなければ、離婚に向けた交渉は難航するでしょう。
離婚を望む方は、なぜ、どんな理由で、何がきかっけで離婚したいと思うようになったのかということを、事前に具体的・時系列にまとめ、自分の意見を整理しておきましょう。
また、裁判に発展した場合に備え、性格の不一致が原因で夫婦の婚姻生活が破綻していると示せる客観的な証拠を集めておきましょう。
離婚に向けた準備については、下記の記事でも詳しく解説されています。ぜひ併せてご覧ください。
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性格の不一致が原因で離婚をしたいのですが相手からわがままだと言われ離婚してくれません。離婚は諦めるべきでしょうか?
協議や調停で夫婦間に合意が成立しなければ、性格の不一致を理由として離婚をするのは難しくなります。
しかし、性格の不一致だけでなく、それを理由に配偶者が不貞行為をしたり、配偶者からDVやモラハラを受けているなど、婚姻を継続し難い重大な事由があると判断されれば、裁判により離婚が認められる可能性があります。
しかし、これらを裁判で主張するためには証拠が必要です。
こうした不法行為がない場合は、裁判の前にまずは相当期間の別居をするという手もあります。
どのようにすればいいかお悩みの場合は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士であれば、最善の方法を提案してくれるでしょう。
性格の不一致を理由に婚約破棄されました。慰謝料の請求はできますか?
性格の不一致による婚約破棄は、正当な理由にはならないため、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、単に「結婚しよう」と約束していたというだけでは足りず、以下のような客観的事実が必要です。
【婚約の事実】
- 両親への顔合わせ
- 結婚指輪の購入・受け渡し
- 結婚式場や新婚旅行の予約
- 新居の準備 など
【婚約の証拠】
- 結婚指輪の現物・領収証
- 結婚式場の予約をした際の案内状や招待客リスト
- 新婚旅行の申し込みを示す旅行会社からの通知・領収証
- 新居を購入する際に組んだローンに関する資料 など
婚約破棄については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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子供が欲しいのに相手から拒否されています。子作りの考え方の違いによる離婚は認められますか?
子供を持つことに対する意見の相違は、価値観の不一致ということになり、裁判で離婚は認められないでしょう。
しかし、協議や調停では、お互いが合意さえすれば離婚理由は何でも構わないため、離婚は可能です。
ただし、子供を持つことに相手が反対しているだけでなく、配偶者が不貞行為をしていたり、セックスレスであれば、裁判により離婚が認められる可能性もあります。
まずは、弁護士にお気軽にご相談ください。
性格の不一致で離婚を検討している方は弁護士にご相談ください。後悔しないためにアドバイスいたします。
夫婦といえども育ってきた環境が違えば、性格や価値観に違いが生まれ、「性格の不一致」を理由として離婚したいと思うこともあるでしょう。
しかし、性格の不一致は裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」に該当しないため、協議や調停で離婚を成立させることが望ましいです。
性格の不一致で離婚をお考えの場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、離婚問題や夫婦問題の経験豊富な弁護士が多数在籍しており、ご相談者様のご希望に沿った解決になるよう尽力いたします。
なるべく協議や調停の段階で解決できるよう、代理人として相手方と交渉し、裁判に発展した場合に備えたアドバイスやサポートが可能です。
性格の不一致での離婚は、まずは一度、私たちにお話をお聞かせください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)