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親権決定のための完全ガイド | 親権者になる5つの条件【離婚と子ども】

親権決定のための完全ガイド | 親権者になる5つの条件【離婚と子ども】

離婚する際に決める、財産分与や慰謝料などの離婚条件のひとつに親権があります。
離婚条件のうち「親権」だけは、離婚時に父母のどちらが親権を取得するか決めなければいけません。しかしながら、父母のどちらも子供を愛するあまり、親権について激しく争いになることもあります。

最高裁判所の司法統計によると、母親が親権を獲得する割合が約9割となっていますが、決して、父親は親権が取れないわけではありません。

そこで本記事では、「親権」について、父親も母親も参考になるように、様々な角度から詳しく解説していきます。

親権の獲得を目指すなら弁護士へご相談ください

目次

親権とは

親権とは

親権とは、成年に達していない子供の身上の世話と教育を行い、子供の財産の管理を行うために、父母に認められる権利及び義務のことをいいます。
なお、親権は子供の利益(幸せ)を最優先に考えて行使すべきとされており、子供が成人年齢である18歳に達するまで行使することができます。

日本では、婚姻中は父親・母親の両方が共同親権者として子供の養育にあたりますが、離婚後はどちらか一方のみが親権者になることができます。
離婚後の共同親権は現在認められておらず、それ故に、親権は、離婚の際に非常にトラブルになり易いテーマでもあります。
また、一度決めたあとの親権者の変更は簡単にできませんので、慎重に決める必要があります。

親権の具体的な内容は大きく分けて次のようになります。

  • 財産管理権
  • 身上監護権

次項で詳しく解説していきます。

財産管理権

財産管理権とは、文字通り、子供の財産を管理する権利・義務です。
また、未成年の子供は単独では契約などの法律行為を行えないため、子供に代わって財産に関する法律行為をしたり同意を与えたりする権利・義務も、これに該当します。

例えば、以下のような行為が当てはまります。

  • 子供がもらったお年玉や、子供名義の預貯金を管理する
  • 子供がアパートの賃貸借契約を締結することに同意する

身上監護権

身上監護権は、子供に衣・食・住を与えて保護・世話をしたり、適切な教育を受けさせたりなど、社会的に未熟な子供を成人まで育て上げるために親が負う権利・義務です。

ここでいう教育には、学校教育を受けさせることはもちろん、身体面・精神面の健全な発達を図ることも含まれると解されています。

身上監護権は、細かく分類すると、以下の4つの権利で成り立っています。

権利 解説
身分行為の代理権 子供が婚姻・離婚・養子縁組などの身分行為をすることに同意し、代理する権利。未成年の子供は親権者の同意がないと婚姻することができない。
居所指定権 子供が住む場所を決める権利。
懲戒権 子供を叱る、子供にしつけをする権利。子供への体罰や虐待を正当化する口実に使われることが多く、近年では懲戒権の在り方や必要性自体が疑問視されている。
職業許可権 子供が働くことを許可したり、反対に仕事を辞めさせたりする権利。

親権と監護権は分けることもできる

監護権者とは、子供と実際に一緒に住んで、子供の監護・養育を行う者をいいます。
通常は親権者と監護権者は同じ者がなりますが、場合によっては親権者と監護権者を分けることができます。

例えば、夫婦間で合意した場合や、裁判所の手続きで親権について争っていたときに裁判所が判断した場合などです。
親権のうち、身上監護権(監護権)のみ親権者から切り離して、親権者でない者がもつことができます。
ただし、注意しないといけないのは、親権者と監護権者を分けるときは、離婚届に親権者を記入する欄はありますが、監護権者を記入する欄はありません。

あとから、監護権者として認めた覚えはないなどと言ってきて、トラブルになるのを未然に防ぐために、監護権の内容を記載した離婚協議書などの書面に残しておくようにしましょう。

親権者になるための5つの条件

親権者とは、話し合いで決める場合はお互いの合意があれば特に必要な条件はありません。

しかし、夫婦の話し合いがまとまらない場合は、調停や裁判で、裁判所に親権者を判断してもらうことになります。そして、裁判所は主に、5つの要素を元に、客観的な事実からどちらが親権者として相応しいかを判断します。以下、それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

親権者に必要な5つの要素

  • 子供への愛情
  • 子供の年齢と意思
  • 親の健康状態
  • 離婚後の生活環境
  • 離婚後の経済状況

①子供への愛情

当然、子供への愛情の深さや子供との関係性、精神的な結びつきの強さは、親権者を判断する際に大変重要視されます。

裁判所は、主に以下のような客観的な事情を考慮し、親の子供に対する愛情の深さを判断します。

  • 実際に子供の世話をしてきた実績
  • 普段の子供と過ごす時間の長さ、コミュニケーションの内容
  • 仕事と育児の両立の仕方(仕事をしながらも保育園への送迎や学校行事への参加を積極的にしていたかなど)
  • 休日の過ごし方(自分の時間を優先せず、積極的に子供と触れ合ってきたか)

②子供の年齢と意思

「幼い子供にとって母親は必要不可欠な存在であり、子供は母親と暮らし方が幸せである」という考え方があります。これを「母性優先の原則」といいます。

実際に、特に乳幼児など、子供の年齢が幼ければ幼いほど、母性優先の原則が重視され、親権争いでは母親の方が有利であるというのが実情です。

しかし、母性優先の原則も絶対的なものではありません。
時代の変化とともに家族の在り方や価値観は変化していますし、裁判実務上は、15歳以上の子供であれば子供の意思が尊重されます。

加えて、これまで子供の世話をしてきた実績やその他諸々の事情を総合的に考慮し、父親が親権者として相応しいと判断されるケースもあります。

③親権者の健康状態

健康状態が悪く子供の日常的な世話ができなければ、親権者として相応しくないと判断される可能性があります。

持病があると絶対に親権者になれないというわけではありませんが、子供の福祉(しあわせ)のため、親権者には、子供の日常的な世話ができる程に「身体的」「精神的」に健康であることが求められます

④離婚後の生活環境

離婚後の生活環境はどうなのかという点も重要な判断要素です。 子供が幼い場合は、子供と一緒に過ごせる時間が長いほうが、親権者として望ましいと判断される傾向にあります。 そのほかにも、親権者となる親が子供と一緒にいられない場合は、代わりに子供の面倒をみてくれたり、生活をサポートしてもらえたりする祖父母などの親戚が、近所にいる環境かどうかも親権者を判断するにあたって考慮されます。

⑤離婚後の経済状況

離婚後の親の仕事や経済状況も、親権者を判断する際の判断材料の1つです。もちろん、離婚後も経済的に不自由なく子供を育てていける方が、子供の福祉にとって望ましいと判断されます。

しかし、たとえ相手より収入が低かったとしても、その分は養育費で補えるため、夫婦の経済力の差は、実務上はあまり重要視されていません。

なお、借金を繰り返していたり、浪費癖が激しかったりなど、そもそもの経済観念に問題があると判断される場合は、親権者の適格性が否定されることは言うまでもありません。

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父親は親権者にはなりにくい?

確かに、父親が親権者になりにくいのが実情です。

実際に父親は外で働いてお金を稼ぎ、子供の世話をしているのは主に母親である家庭は多く、親権を決める際も「これまでどおり母親が子供の世話をするのがいい」と判断されるケースが多い傾向にあります。
また子供の福祉の観点から、子供は父親より母親と暮らしたほうが望ましいという「母性優先の原則」の考えが残っており、母親が親権争いで有利なのも事実です。

しかし、割合としては、少ないですが、父親が親権を獲得しているケースもあります。
次項では、

  • 父親が親権獲得に不利な理由と解決策
  • 父親が親権を獲得するためのポイント

を詳しく解説していきます。

父親が親権獲得に不利な理由と解決策

父親が親権獲得に不利なのは、次のような理由が挙げられます。

  • 子供の福祉の観点から、子供は父親より母親と暮らしたほうが望ましいという「母性優先の原則」の考えがいまだに根強くあるから
  • 今まで子供の世話を主にしてきたのが母親だから
  • 離婚後、父親が子供の養育や監護に費やす時間を確保するのが難しいから
  • 子供自身が、父親よりも母親と暮らしたいと希望するから

しかし、母親よりも父親と暮らすほうが、子供の利益(幸せ)になると判断されれば、父親が親権を獲得するのも決して不可能ではありません。まずは、子供の世話を積極的に行い、子供と接する時間を増やすことから始めてみるのが得策です。

父親が親権を獲得するためのポイント

父親が親権を獲得するためには、次のようなポイントを抑えておくべきです。

  • 離婚前から子供の世話を積極的に行って、養育監護の実績を作る
  • 周囲に子供の世話をサポートしてくれる祖父母など監護補助者の協力を得て、離婚後の養育体制を整える
  • 離婚後の子供の生活環境や養育環境を極力変わらないようにする
  • 親権をもった場合、子供のために面会交流の実施に前向きな考えでいる
  • 母親の子育てに問題があるのを証明できる
  • など

母親が親権を獲得できないことがある?

母親が親権獲得に有利とされているのは、婚姻・同居中の生活において、働き方などの現実的な要請から子供は父親よりも母親と一緒に過ごす時間が長いことが多いため、母親が親権者となったほうが、離婚による子供の生活の変化や精神的負担を最小限にできると一般的に考えられることが主な理由です。

しかし、親権を決めるときに最も重視されるどちらと暮らしたほうが子供の利益になるか、幸せかを考慮したときに、母親と暮らすより父親と暮らすほうが子供の利益になる(幸せ)と判断されれば、母親が親権を獲得できない場合もあります。

具体的にはどのようなケースをいうのか、次項で詳しく解説していきましょう。

母親がネグレクト(育児放棄)や虐待をしているケース

母親が子供に対し、以下の表のようなネグレクト(育児放棄)や虐待をしている場合は、母親に親権は認められません。

子供に対するネグレクトや虐待 解説
ネグレクト(育児放棄) 食事を与えない、不潔にする、病院に連れて行かない、子供を家においたまま何日も家を空ける、学校に行かせない など
身体的虐待 殴る、蹴る、叩く、火傷を負わせる、冷水を浴びせる、溺れさせる、戸外に閉め出す、縄やケージなどで身体を拘束する など
精神的虐待 暴言を吐く、脅す、兄弟間で差別的に扱う、無視する など

精神疾患などで育児が困難なケース

母親がうつ病や統合失調症、幻聴、幻覚などの精神疾患を抱えており、育児ができないほど症状が重い場合は、親権を獲得することは難しいでしょう。

なお、精神疾患を抱えていても、その症状の程度が、育児をするのに支障がない程度であると認められる場合は、親権を獲得できる可能性があります。

子供が父親と暮らしたがっているケース

子供自身が父親との生活を望んでいる場合、父親が親権を獲得できる可能性があります。

一般的には、15歳以上の子供であれば、自分が置かれた様々な状況を適切に判断する力が備わっていると判断されるため、親権者について、子供自身の意向は必ず聴かれます。
15歳以上の子供の意向は、親権者の決定において、尊重される可能性が高いです。

なお、裁判実務上は、10歳前後の子供の意思も、一定程度尊重されているケースが多いようです。

父親の方が育児をしていたケース

裁判所による親権者の判断においては、「監護の実績」(実際の子供の日常の世話は、どちらがどれだけ行ってきたのか)がとても重視されます。

そのため、例えば父親が専業主夫として家事や育児を一手に担っていたケースや、共働きの場合でも、父親の方が母親よりも育児にかかわり実際の子供の世話をしてきたようなケースでは、父親の方が親権者として相応しいと判断され、母親が親権を獲得できない可能性があります。

別居中に子供が父親と暮らしていたケース

父親と母親が既に別居しており、子供が父親と暮らしている場合、父親の方が親権者として相応しいと判断されることがあります。

親権者を決める判断基準の1つに「継続性の原則」というものがあります。
これは、「子供が現在、安定的な環境で生活できているのであれば、できる限り環境を変えない方が望ましい」という考え方です。

この考え方のもと、父親と引き離すことで、引越しや転校など、子供の生活に大きな変化が生じるのであれば、父親を親権者として、今の環境を継続させた方が良いと判断される可能性があります。

専業主婦でも親権を獲得することはできる!

たとえ離婚時に無職の専業主婦であっても、親権を獲得することは十分可能です。実際に、約9割の母親が親権争いで親権を勝ち取っているという統計データもあり、その中には多くの専業主婦が含まれています。

特に、子供の年齢が幼ければ幼いほど(特に乳幼児)、母親の職業や収入状況にかかわらず、母親に親権が認められる可能性が高いです。

また、専業主婦として無職であり、離婚時の経済力が乏しくても、離婚後は父親から養育費を受け取ることが可能です。さらに、母子家庭に対する公的な助成制度・扶助制度も受けることができます。

そのため、離婚時の夫婦の経済力の差は、親権者の適格性の判断に際し、実際はあまり重視されません。

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親権者の決め方

親権者が決定されるまでの一般的な流れは、以下のとおりです。

  • 夫婦の話し合い
  • 離婚調停
  • 離婚裁判

次項で、各段階の詳しい内容について解説いたします。

親権の決め方

夫婦での話し合いで決める

まずは、夫婦間で親権について話し合います。
どちらが親権をもつかを話し合う際は、自分たちの気持ちだけを押し通そうとするのではなく、「子供の幸せ」を第一に考えて決める必要があります。

具体的には、これまで監護養育はどちらがしてきたか、今後の子供の生活環境が整っているか、子供自身の意思などを考慮して、子供がどちらと暮らしたほうが幸せ(利益)になるのかを慎重に考えなければいけません。

なお、離婚届には親権者を記入する欄があり、親権者を決めて記入しておかなければ離婚届は受理されません。よって、親権で激しく争いがある場合は、先行して離婚を成立させることはできません。

話し合いで決まらない場合は調停へ

夫婦の協議がまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員らを交えて引き続き親権について話し合うことになります。

親権を争っている事案は通常、裁判所から指名された「家庭裁判所調査官」という人達が、様々な調査を行い、その調査結果は裁判所が親権者を判断するにあたり、重視されます。

調停の申し立てに必要な書類や費用は、以下のとおりです。

  • 離婚調停の申立書
  • 事情説明書
  • 子に関する事情説明書
  • 連絡先等の届出書
  • 進行に関する照会回答書
  • 夫婦の戸籍謄本
  • 収入印紙(1200円分)
  • 郵便切手(1000円分前後。裁判所によって異なる)

離婚調停の詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。


調停を有利にすすめるポイント

●親権者として相応しいことをアピールする
これまで主となって子供をしっかり監護・養育してきたこと、子供と過ごす時間が多くとれること、周りに子供の世話をサポートしてくれる親戚がいることなどを主張して、親権者として相応しいことをアピールするのが有用です。
これらの事実を裏付ける証拠を提出すると、さらに効果的だと考えられます。

●調停委員を納得させる
調停委員に対して、相手よりもしっかり主張を行い、自分の言い分を理解してもらえるように働きかければ、調停委員は納得し、ご自身の味方になってくれる可能性があります。
そうすれば、調停委員から相手を説得してもらえる場合があります。

●弁護士に相談する
弁護士は、過去の経験から、調停時にどのような主張をして、どのような資料を提出すると親権に有利になるのか熟知しています。
またご自身が主張したいことを法律的に意味のある言い方に換えて、代わりに伝えることもできますので、弁護士に相談すれば調停を有利に進められるでしょう。

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家庭裁判所の調査官調査とは?

親権について双方が激しく争っている場合に、心理学、教育学、社会福祉学などの人間関係諸科学の専門知識を有している家庭裁判所調査官によって子供の監護状況や意向などの調査が行われます。
家庭裁判所調査官は、具体的に次のような調査を行います。

●親の面談
父母がどのように婚姻に至ったのか、どのように子育てしてきたか、別居後どのような生活をしているのか、などを聞き取りします。


●子供の面談
現在の生活状況や父母に対する気持ちを子供本人から聴き取ります。子供がある程度の年齢に達しているときは、基本的に父母の同席は控えて、調査官と子供のみで面談します。


●家庭訪問
子供がどのような生活をしているのかを把握するために、普段子供が生活している自宅に家庭訪問します。


●子供が通っている保育園、幼稚園、小学校など第三者機関の調査
子供の担任をしている先生に、普段の子供の様子や、別居後の子供の様子、何か変化があったか、などを聞き取ります。

調停が不成立の場合は裁判へ

離婚調停が不成立で終了した場合、裁判所の判断で、調停に代わる審判に付され、裁判所から離婚そのものや親権を含む諸条件についての決定が下されることがあります。

しかし、実務上、離婚調停後に審判に付されることはほとんどありません。

通常、離婚調停が不成立で終了した場合は、最終的には裁判で親権を争うことになります。当事者は、裁判内で「いかに自分が親権者として相応しいか」について主張・立証を尽くし、裁判官は両者の主張内容等を総合的に考慮し、親権について、最終的な判決を下します。

家庭裁判所の裁判官が下した判決の内容に納得がいかない場合は、高等裁判所に控訴し、さらなる審理を求めることができます。

離婚裁判についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。


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離婚後に親権者を変更する方法

離婚後に親権者を変更することは可能ですが、親権は子供の人生にかかわる重要な権利です。親同士の話し合いや一存だけで、コロコロと気軽に変更できるものではありません。

親権者を変更するためには、裁判所での手続きを経て、裁判所に変更の必要性を認めてもらわなければなりません。

しかし、実務上、双方が争っている場合に裁判所が親権者の変更を認める事例は多くなく、そのハードルは高いと言わざるを得ません。

親権者の変更に関する具体的な手続内容と流れは、以下のとおりです。

親権者変更調停を申し立てる

親権者の変更を求めるときには、家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立て、調停委員会(裁判官と調停委員)を交えながら、親権者の変更の可否について話し合いを行います。

なお、調停内の協議をもってしても相手からの合意が得られなければ、調停は不成立として終了します。

調停の申し立てに必要な書類と費用は、以下のとおりです。

  • 申立書(原本及び写し各1通)
  • 戸籍謄本(父、母、子供それぞれのもの)
  • 収入印紙(未成年の子供1人につき1200円分)
  • 郵便切手(概ね1000円分前後)

(これらはあくまでも標準的な必要書類であるため、詳細は申立先の裁判所に確認しましょう。)

調停での協議の結果、当事者双方が合意したうえ、裁判所において親権者の変更が相当と認められた場合、合意内容が「調停調書」にまとめられます。

その後、変更によって親権者となる方は、役所で「親権者変更」の手続きを行わなければなりません。
親権者の変更が確定した日から10日以内に行う必要があるので、忘れないようにしましょう。

不成立の場合は親権者変更審判に移行

親権者変更の調停が不成立で終了した場合、自動的に「審判」という手続きに移行します。

審判は調停のような話し合いの手続きではなく、裁判官が親権者変更の可否につき、最終的な結論を示す手続きです。

審判では、裁判官が主に以下の内容を総合的に考慮し、子供の福祉のために親権者を変更すべきか否か、最終的な判断を下します。

  • 親側の事情(変更を求める理由、経済状況、養育状況、家庭環境)
  • 子供側の事情(年齢、性別、性格、就学状況、生活環境)
  • 子供の意向(15歳以上の子供への意向聴取は裁判所の義務)

そして、裁判官から親権者の変更を認める審判が下された場合、新たに親権者となる方は、親権者の変更が確定してから10日以内に役所で手続きを行う必要があります。

離婚時の親権に関するよくある質問

父親が親権者になった場合は母親から養育費を受け取ることはできますか?

母親から養育費を受け取ることはできます。
養育費は、父親が母親に支払うものと誤解している方がいらっしゃいます。
一般的に、離婚すると親権を母親が獲得して、子供と離れて暮らす父親が養育費を支払うパターンが多いためであって、必ずしも父親が支払うものではありません。
そもそも養育費は、「子供を養育するための費用」です。
離婚して夫婦の関係を解消しても、親子の関係は変わりませんので、扶養義務を負います。
母親か父親かは問わずに、親権を獲得した子供と一緒に暮らすのが父親であれば、子供と離れて暮らす母親に養育費の支払義務があり、養育費を請求できるのです。

ただし、養育費の金額は一般的に父母それぞれの収入を考慮して決めます。
親権をもつ父親の収入に比べて母親の収入が低ければ、養育費の額は低額になりますし、母親の収入がほとんどない場合、養育費請求は認められないでしょう。

離婚後に親権者が死亡してしまった場合はどうなりますか?

離婚後に親権者が死亡しても、自動的に親権が他の誰かに移るわけではありません

親権者死亡後の子供の処遇については、以下のようなケースが考えられます。

  • もう一方の親が親権者になる

    生存しているもう一方の親は、裁判所に親権者変更の審判を申し立てることができ、認められると新たに親権者となることができます。

  • 未成年後見人の選任

    未成年後見人とは、親権者に代わって、子供の監護養育をしたり、財産を管理したり、法律行為を代理したりする権利を持つ者です。
    親権者の死後、民法の規定に従い、裁判所によって選任されます。
    親権者は、あらかじめ遺言で子供の未成年後見人を指定することが可能です。
    また、遺言がない場合には、祖父母などの近親者や利害関係人の請求により、裁判所が未成年後見人を選定します。

母親が親権者になった場合、子供の戸籍はどうなりますか?

親権者になったからといって、自動的に子供の姓と戸籍が変更されるわけでないため、注意が必要です。

離婚前の戸籍の筆頭者が父親であったケースでは、離婚後の親権者が母親がとなった場合でも、そのまま何もしなければ子供は父親の戸籍に入ったまま、姓も父親と同じ姓のままです。この状態を解消したければ、母親は以下の3つの手続きを経なければなりません。

  • 自分が筆頭者となる新たな戸籍を作る
  • 家庭裁判所に対し、子供の姓を自分の旧姓に変更する手続きを申し立て、許可を得る
    (子の氏の変更許可手続)
  • 役所で子供の戸籍を自分の戸籍に移す手続きをする(入籍)

これらの手順を踏まないと、子供と自分の姓を揃え、子供と自分の戸籍を同じにすることはできません。

親権を獲得するのに離婚原因は関係がありますか?

一概には言えません。離婚の原因を作った側(有責配偶者)であっても、親権を獲得できる可能性は十分にあります

例えば、配偶者や子供に対する日常的な暴力が原因で離婚するようなケースだと、子供の福祉の観点からしても、子供に暴力を振るうような人は親権者として相応しくないと判断される可能性が高いでしょう。

一方で、離婚の原因が不倫の場合はどうでしょうか。
確かに、不倫をする人は、「配偶者」としては相応しくないかもしれません。
しかし、「親」としても相応しくないかといえば、必ずしもそうとは言い切れません。
不倫をしていても、子供にはきちんと愛情を注ぎ、育児を行っているケースでは、親権者としての適格性まで否定されることはないでしょう。

基本的には、「親権者の適格性」と「離婚原因」はあくまでも別問題であり、両者は切り離して考える必要があると考えます。

親権が獲得できなければ離婚後に子供に会うことはできませんか?

親権がなくても、子供に会う権利はあります。

離婚後に親権を獲得できず、子供と離れて暮らしている親も、定期的に子供と会う・電話をするなど、様々な形で子供と交流する権利があります(面会交流権)。
「会わせたくない」という親権者の一方的な感情や判断で、親子の面会交流を制限することは、基本的にはできません。

ただし、面会交流をすることが、かえって子供にとって不利益になると判断されるようなケース(暴力を振るう、連れ去りの可能性があるなど)では、面会交流は制限されるか、認められない可能性があります。

面会交流の制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。


離婚する際の親権に関して不安なことなどがあれば弁護士にご相談ください

離婚する際には、父母のどちらが親権者となるのか決めておかなければ、役所で離婚届は受理されません。
父母のどちらも「子供を引き取りたい」、「親権は譲りたくない」などと思う気持ちが強く、なかなか離婚が成立しないケースも少なくありません。
親権問題について、お悩みのある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
親権を獲得するためには抑えておくべき条件があります。
それぞれの個別の事情を伺ったうえで、どのようにすれば親権を獲得できる可能性が高まるかアドバイスいたします。

また、弁護士に依頼すれば相手と直接交渉も可能ですし、調停や裁判などの裁判所の手続きも代わりに行います。
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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。