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熟年離婚の5つの原因やメリット・デメリット、後悔しないための準備

熟年離婚の原因やメリット・デメリット|後悔しないための準備

長年連れ添った夫婦の「熟年離婚」。近年、日本では熟年離婚をする夫婦の割合が増えてきています。

厚生労働省のデータによると、1980年代は約2万件だった熟年離婚の件数は、2000年代にかけて約4万件と、20年間で2倍に増加しています。また、離婚事件全体に占める熟年離婚の割合も、年々増加しています。

熟年離婚は、夫婦お互いが年齢を重ねているという点で、若い頃の離婚とは違う、特有のメリット・デメリットや注意点があります。本記事で詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

熟年離婚をお考えの方は弁護士へご相談ください

熟年離婚とは

熟年離婚とは、長年連れ添った中高年夫婦の離婚を意味します。

具体的には、婚姻期間20年以上で、多くが50歳代以上の夫婦を熟年離婚と呼ぶケースが多数です。

50歳以上の夫婦が離婚するからといって、婚姻期間が短い場合には熟年離婚にはあてはまりません。

熟年離婚は、すでに子供が成長して独立している家庭が多いので、親権、養育費、面会交流など子供に関する条件で揉めるケースは少ない一方で、婚姻期間が長い分、退職金を含む財産分与、年金分割など金銭に関する条件で揉めるケースが多いのが特徴です。

妻と夫のどちらから切り出すケースが多い?

「熟年離婚」と聞くと、妻がある日突然、夫に離婚を突き付ける場面が頭に浮かびませんか?

最近では、夫から妻に離婚を切り出すケースも増えてきているようですが、依然として妻から切り出すケースが多い様です。

女性の社会進出が進み、仕事を持ち経済的に自立できる女性が増えたことや、離婚後の年金分割制度が整備されたことが、妻が離婚を決意しやすくなった要因となっていると考えられます。

熟年離婚の原因と夫婦の特徴

熟年離婚に至る夫婦には、いくつか特徴があります。

長年寄り添ってきた夫婦だからこその離婚の原因があります。

具体的には次のようなものが挙げられます。

  • 夫婦間の価値観が違う
  • 定年退職によって家にいる時間の増加
  • 子供が自立して手がかからない
  • 介護をしたくない
  • 相手の浮気・不倫

次項でそれぞれ詳しく解説していきましょう。

夫婦間の価値観が違う

熟年離婚の夫婦に限ったことではありませんが、離婚原因として最も多いのは、価値観の違い性格の不一致)です。

最初はどんなに愛し合って結婚した相手でも、金銭感覚や家事・育児へのスタンス、宗教観、生活習慣へのこだわりなど、一緒に生きていく上で大切な価値観があまりにも違い過ぎると、一生を共にすることは難しいでしょう。

子供の自立や夫の定年退職といったタイミングを機に、これまで抱えていた我慢から解放され、残りの人生を好きなようにストレスなく過ごしたい、という理由から熟年離婚に踏み切るケースが多いようです。

定年退職によって家にいる時間の増加

夫の定年退職をきっかけに離婚する夫婦は多く見受けられます。

今まで平日の夜と休日しか家にいなかった夫が、定年退職により、一緒に過ごす時間が増加します。

一緒にいる時間が増加したことによって、「家にいるのに一切家事を手伝ってくれない」、「毎日3食食事を作るのが苦痛」、「会話がなくなった」など、何十年と過ごしてきた生活スタイルの変化から、ストレスが蓄積して、苦痛を感じ、これ以上一緒にいたくないと離婚を決意する方がいらっしゃいます。

子供が自立して手がかからない

夫婦に子供がいる場合、離婚は夫婦2人だけの問題ではなく、子供の人生にも大きく影響します。

そのため、「子供が小さいうちは、子供のために離婚しない」と決意し、どんなに辛くても、なんとか我慢して結婚生活をやり過ごしている夫婦もいるでしょう。

しかし、子供が経済的・社会的に自立してしまえば、「子供のために」我慢する必要はなくなります。

「子供のために」という枷(かせ)が無くなった途端、今度は自分のための第二の人生を謳歌しようと、一気に離婚に踏み切りやすくなるようです。

介護をしたくない

熟年離婚に特有なものとして、介護問題(特に、義理の親の介護)も離婚原因の1つに挙げられます。

たとえ自分の親であっても、介護は、過酷な重労働であることは言うまでもありません。

それにもかかわらず、配偶者やその親族から義理の親の介護を押し付けられたり、大変さを理解してもらえなかったり、協力してもらえなかったり、感謝されなかったり・・・。
介護疲れや配偶者の思いやりのない態度が原因で、熟年離婚にまで発展することもあります。

中には、日々の生活で相手に対する不満が募り、夫婦自身も年老いていく中で、「将来、この人の介護をしたくない」という理由で離婚を決意するケースもあるようです。

相手の浮気・不倫

年代問わず、いつの時代も配偶者の浮気・不倫は多くの夫婦の離婚原因となっています。

特に最近では、スマホさえあれば、マッチングアプリやSNSなどを通じて、気軽に男女が出会うことができます。

40代~50代のミドル世代においても例外ではなく、出会い系サイトやSNSをキッカケに出会った「熟年不倫」が原因で、離婚に至るケースが増加しているようです。

また、熟年離婚の場合は、その他にも、「相手が不倫をしていることはずっと前から気付いていても、子供が大きくなるまでは離婚しないで仮面夫婦を続けていた」というケースも、多く見受けられます。

熟年離婚のメリット・デメリット

メリット

熟年離婚のメリットは、なんといっても残りの人生を、自分の好きなように謳歌できるという点でしょう。

  • 長年の我慢・ストレスから解放される
  • 老後に相手の世話をしなくて良い
  • 趣味や自分の好きなことに、思う存分没頭できる
  • 折り合いの悪かった相手の親族との関係を断ち切れる
  • 義理の親の介護問題から解放される

熟年離婚をすれば、結婚生活中に抱えていた、このような煩わしい問題から一気に解放され、自分の好きなように、第二の人生を送ることができます。もちろん、恋愛も自由です。

デメリット

熟年離婚には、長年のストレスから解放されるという大きなメリットがある一方、特有のデメリットやリスクも存在します。

見切り発車で離婚に踏み切り、後悔したり生活に困ったりしないよう、特に、次に挙げる点には気を付けておきましょう。

孤独感

熟年離婚をすると、最初のうちは自由で、清々しい気持ちでいられるかもしれません。
しかし、熟年離婚後の1人暮らしは、以下のような理由で、想像以上に孤独を感じることが多いそうです。

  • 定年退職して社会との繋がりがなくなった
  • 健康問題に不安がある
  • 周りの友人も家庭を持っており、思っていたほど一緒に出掛けたりできない

老後に孤独な生活に陥ることのないように、趣味を見つけたり、地域社会のサークルに入ったりして、社会との繋がりを持てるよう、心掛けておくと良いでしょう。

経済的な不安

熟年離婚の大きなデメリットとして、経済的な不安が挙げられます。特に、専業主婦として夫の経済力に依存していた方は、離婚後の生活費や老後の資金について、一番不安を感じているのではないでしょうか。

離婚後の生活は、当然、夫の収入をあてにすることはできません。
離婚前に財産分与や年金分割をきちんと行って老後の生活費を確保する、自身も仕事を見つけるなどして、離婚後に経済的に困窮しないよう、準備を整えておく必要があります。

生活面での不安

特に男性に当てはまりますが、普段、家事を妻に任せきりにし、仕事一筋で生きてきた方は要注意です。離婚後は当然、掃除・洗濯・炊事などの日常生活は、全て自分1人で回さなければなりません。
慣れない家事を上手くこなせずに、部屋が散らかる・食生活が偏るなど、生活の質が大きく落ちてしまう可能性があります。

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後悔しないための熟年離婚の準備とは?

計画性なく、気持ちだけを先行して熟年離婚をすると、経済面や生活面で厳しい環境におかれ、こんなはずではなかったのに・・・離婚しない方が良かったかもしれないと熟年離婚したことを後悔するおそれがあります。

後悔しないためにも、事前に熟年離婚後の生活を想定して、検討して準備しておくのが得策です。

では、具体的に熟年離婚をする前に、考えておくべきこと、準備しておくべきことなどを次項で詳しく解説していきましょう。

今後の生活について

熟年離婚後の生活に困らないように前もって生活基盤を整えておく必要があります。

具体的には、離婚後の住む場所の確保や、専業主婦(主夫)の方は、就職先を探さなければいけません。

今所有している家を一方が引き継ぐ場合は、他方は住む家がなくなってしまいます。

離婚時に家を売却して、売却代金を分配して、金銭を確保する方法もあります。

しかし、高齢になると民間の賃貸住宅を借りるのは非常に難しいのが実情です。

離婚後住む場所については十分な検討が必要です。

就職についても、今までのブランクを考えると、なかなか就職先が見つからない可能性もあるので、できるだけ早い段階から、資格取得や面接対策など事前準備をしておくべきです。

また、今後一人で生活していくのにどのくらいのお金がかかるのかシュミレーションしておき、どのように捻出するかも予め計算しておくようにしましょう。

財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が2人で協力して築き上げた財産を、離婚時に、夫婦で公平に分け合う制度です。

もちろん、熟年離婚の場合も、離婚時の財産分与を請求することができます。財産分与の対象となり得る資産として、例えば、以下のものが挙げられます。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 車や美術品、宝飾品などの動産
  • 株式などの有価証券
  • 退職金

熟年離婚の場合は、婚姻期間が長い分、夫婦で築き上げた資産も多く、また、退職金が財産分与の対象となる可能性が高いことから、若い夫婦の離婚と比べると、財産分与の金額が高額になる傾向にあります。

何が財産分与の対象となり得るか、また、相手に隠し財産はないかなど、離婚を切り出す前に、入念な調査をしておきましょう。

財産分与の交渉・早期解決は弁護士にお任せください

年金分割

年金分割とは、離婚をする際に、婚姻期間に対応している期間の厚生年金保険料支払実績を多い方から少ない方に分割するという制度です。

熟年離婚の場合は、婚姻期間が比較的長く、夫婦ともに年齢を重ねているケースとなるため、通常の離婚より年金分割の対象となる標準報酬が高額になる傾向にあります。
専業主婦の期間が長かった方などは特に、年金分割を忘れずにした方が良いでしょう。

まず、年金分割には「合意分割」「3号分割」の2種類があります。

「合意分割」とは、按分割合を上限2分の1までとして、夫婦の合意や家庭裁判所の決定によって按分割合を決めるものです。

「3号分割」は、2008年4月1日以降に納めた厚生年金保険料が対象となり、専業主婦(主夫)やパートタイマーなど第3号被保険者であった期間の標準報酬を自動的に2分の1の按分割合で分割するものです。

合意分割も3号分割も期限が設けられており、離婚した日の翌日から2年以内に手続きしなければいけません。
離婚をしたら自動的に年金分割してもらえる訳ではありませんので注意が必要です。

年金分割については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。


慰謝料請求

熟年離婚の場合も、離婚原因によっては相手に対して慰謝料を請求できます。

そもそも、離婚時の慰謝料とは、相手の「不法行為」(不倫、DV、モラハラ、一方的な別居など)により受けた、精神的苦痛に対する賠償金です。

単なる性格の不一致が原因で離婚する場合や、相手に重大な落ち度や責任がないのに離婚する場合は、「不法行為に対する精神的苦痛」自体が存在しないため、慰謝料は請求できません。

さらに、慰謝料の請求が認められるためには、相手が不法行為を行ったということを、第三者が見てもわかるように、具体的・客観的な証拠を用いて証明しなければなりません。

離婚を切り出す前に、写真や音声・録画データなどの客観的な証拠を、なるべくたくさん集めておきましょう。

離婚慰謝料のお悩みは弁護士法人ALGへご相談ください

未成年の子供がいる場合

夫婦に満18歳未満の未成年の子供がいる場合は、離婚時に夫婦のどちらが親権者になるのか決めなければいけません。

親権者が決まれば、離婚後、子供と一緒に暮らす親権をもつ親は、子供と離れて暮らす親に養育費を請求できます。

養育費とは、子供が経済的・社会的に自立するまでに養育にかかる費用をいいます。
具体的には、子供の衣食住に必要な費用、教育費、医療費などになります。

熟年離婚となれば、子供もある程度大きくなっており、食費や教育費などが嵩む時期だと考えられますので、養育費はしっかり取り決めておくべきです。

養育費についての基礎知識や相場の金額などについては、以下の記事が参考になります。


熟年離婚の流れ

熟年離婚であっても、離婚が成立するまでの手続きの流れは、他の一般的な離婚の場合と変わりません。

基本的には、

  • 夫婦間での話し合い(協議離婚)
  • 家庭裁判所での調停(離婚調停)
  • 離婚裁判

という段階を踏んでいくことになります。
次項で、各段階の詳細について、解説していきます。

話し合いによって離婚を決める協議離婚

離婚したい理由が何であれ、夫婦で話し合い、お互いに離婚することに合意すれば、離婚が成立します。

夫婦の話し合いだけで成立した離婚のことを協議離婚といい、日本で離婚した夫婦の実に90%以上は、協議離婚の方法で離婚していると言われています。

熟年離婚の場合、若い夫婦と比べると、財産分与や年金分割、慰謝料、養育費など、離婚に伴い支払義務の発生する費目が高額になったり、条件も複雑になったりする傾向にあります。

離婚後のトラブルを防ぐためにも、離婚条件は「離婚協議書」や「公正証書」といった、正式な書面の形で残しておきましょう。

協議離婚で損をしないために弁護士にご相談ください

夫婦のみで解決しなければ離婚調停

離婚について夫婦の話し合いで合意に至らなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てします。

離婚調停では、裁判官や調停委員を交えて話し合いを行い、夫婦双方の意見や主張を聞いて、助言をしたり、まとめたりしてもらって、離婚の成立を目指す手続きです。

熟年離婚は、婚姻期間が長いので、離婚条件・内容が複雑になり、揉めるケースが多く見受けられます。夫婦だけの話し合いでは合意できずに離婚調停の手続きを行う夫婦は多い傾向にあります。

離婚調停は経験豊富な弁護士法人ALGにご依頼ください

調停が成立しなければ離婚裁判

離婚調停でも離婚が成立しなかった場合、最終的には、裁判で争うしかありません。

しかし、裁判においては、離婚したい理由が以下の5つの法定離婚事由のいずれかに該当していなければ、離婚が認められません。

  • 不貞行為(肉体関係を伴う浮気)
  • 悪意の遺棄(一方的に別居を開始する、生活費を入れないなど)
  • 3年以上の生死不明
  • 回復見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由(DV、モラハラなど)

例えば、「定年後の夫が家にいることがストレスだから」という理由は、法定離婚事由に該当しないため、裁判では離婚が認められない可能性が高いでしょう。

熟年離婚で後悔しないためにも弁護士にご相談ください

熟年離婚は、事前の準備がとても大切です。

準備不足のまま感情だけで離婚してしまうと、熟年離婚後に金銭面や生活面などで苦労して、離婚したことを後悔する事態に陥りかねません。

後悔しない熟年離婚をするためにも、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士に相談すれば、熟年離婚で最も揉めやすい退職金を含む財産分与についても、相手名義の財産を把握する方法や適正な財産分与の金額の算出などのアドバイスを行います。

ご家庭の個別の事情を伺ったうえで、慰謝料や年金分割などその他の離婚条件についても具体的なアドバイスをいたします。

また弁護士に依頼すれば調停や裁判など裁判所の手続きへ発展する前に、相手と直接交渉して協議離婚が成立するように全面的なサポートをすることも可能です。

仮に裁判所の手続きへ移行したとしても、書面作成・提出、裁判所とのやりとり、裁判所への出廷なども弁護士が代わりに行います。

熟年離婚後、豊かな生活を送れるようにするためにも、一人で抱え込まず、まずは弁護士法人ALGにお問合せください。

 

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弁護士法人ALG 執行役員 弁護士 谷川 聖治
監修 :弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates執行役員

保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)

東京弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名(司法書士1名を含む)を擁し()、東京、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、神戸、姫路、大阪、福岡、バンコクの11拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。