事実婚でも慰謝料を請求できる?相場や請求方法について
近年では、法律上の婚姻関係を結ばずパートナーとして婚姻生活を送る事実婚を選択する方も増えています。
事実婚のパートナーが浮気や不倫をした場合、不貞行為として法律上の夫婦と同じように慰謝料を請求できるのでしょうか。
この記事では、事実婚で慰謝料請求ができるケースや事実婚関係の慰謝料相場などについて解説していきます。
目次
事実婚でも慰謝料は請求できるのか?
事実婚のパートナーが不貞行為をした場合、慰謝料を請求することができます。
事実婚は内縁関係とも呼ばれ、法律上の婚姻手続きは行っていないものの、事実上の結婚生活を送っている状態であるため、法律婚同様、事実婚でも貞操義務があると考えられており、パートナー以外と肉体関係を持つことは「不貞行為」となり、慰謝料を請求することができます。
また、相手の不貞行為を理由に事実婚を解消することもでき、その際には養育費や財産分与を請求することも可能です。
事実婚の定義
そもそも、事実婚とはどのような状態を指すのでしょうか。
事実婚とは、婚姻届は提出していないものの、婚姻の意思をもって実際に夫婦生活を送っている状態のことを指します。
婚姻届を提出していないことから、法律上の婚姻関係にあるとは認められず、戸籍上は別々に扱われるため、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」などの税制上の優遇を受けることはできません。
また、事実婚を解消する場合にも法的な手続きは必要なく、双方が話し合い、合意に至れば関係を解消することができます。
事実婚については、以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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事実婚と同棲・内縁関係の違い
事実婚と似たものに「内縁関係」や「同棲」がありますが、これらはどのような違いがあるのでしょうか。
「事実婚」と「内縁関係」の違い
元々、内縁関係は当人同士に婚姻の意思があっても、都合により婚姻できない状態を指し、事実婚は当人同士の意思によって、あえて婚姻届を提出しない状態として、両者を使い分けていましたが、いまでは、事実婚と内縁関係は同じ意味と捉えて良いでしょう。
「事実婚」と「同棲」の違い
事実婚と同棲はまるで異なるものです。同棲は婚姻の意思を持たずに一緒に暮らしている状態を指し、事実婚は婚姻の意思があって一緒に生活している状態を指します。
事実婚の証明方法
事実婚の場合、パートナーやその不貞相手に慰謝料を請求するにあたり、相手から「事実婚ではなかった」と主張される可能性があります。
そのため、慰謝料を請求する際には、事実婚関係であったことを証明する必要があります。
そのためには、ご自身とパートナーの関係が以下の2つの要件を満たしていることを明らかにしなければなりません。
- 双方に婚姻の意思があること
- 法律婚の夫婦とほとんど変わらない日常生活を送っていること
法律婚であれば、「戸籍謄本」から、婚姻関係にあることは明らかとなりますが、事実婚では作成されません。
そのため、次のような様々な書類や事実関係から事実婚を証明していくことになります。
- 住民票
- 賃貸借契約書
- 民生委員が作成する事実婚の証明書
- 親族や友人たちから夫婦として扱われている
- 結婚式や披露宴を挙げたことが分かる写真や書類
事実婚で慰謝料請求できる具体的なケースと相場
事実婚でも法律婚と同じように、パートナーに慰謝料を請求することが可能です。
具体的には、以下のようなケースで慰謝料を請求することができます。
- 不貞行為(不倫・浮気)があった場合
- DV・モラハラ被害に遭った場合
- パートナーが一方的に別居をした場合
- パートナーが一方的に関係を解消した場合
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
不貞行為(不倫・浮気)があった場合
不貞行為とは、配偶者(パートナー)がある者が、自由意思に基づき配偶者(パートナー)以外と肉体関係を結ぶことをいいます。
不貞行為の慰謝料相場は50万~300万円程度となりますが、慰謝料を請求したい場合は、客観的に見て不貞相手と肉体関係があったことが分かる証拠を集めることが大切です。
有効な証拠には、以下のようなものが挙げられます。
- 性交渉の動画・画像
- ラブホテルに出入りする写真や動画
- 肉体関係のあったことが推測されるメールやLINE
- 不貞行為を認める念書や録音データ など
確実な証拠がない、証拠を入手したい方は探偵会社への相談をおすすめします。私たち弁護士法人ALGには提携している探偵社がありますので、ぜひご相談ください。
不倫相手に請求する場合
不倫相手に慰謝料請求する場合、一般的には内容証明郵便で請求を行うことが多いため、不倫相手の名前と送付先の情報が必要となります。送付先は不倫相手の自宅住所か勤務先が考えられます。
相手の住所が分からないというケースも多いと思いますが、相手の名前と電話番号が分かっている場合には、弁護士に慰謝料請求を依頼していることを前提として、弁護士会を通して携帯電話会社へ照会をかけて、住所を割り出せる可能性もあります。
DV・モラハラ被害に遭った場合
法律婚の夫婦と同様に、事実婚のパートナーからDVやモラハラの被害を受けている場合は、慰謝料を請求できます。慰謝料の相場は数十万~300万円程度でしょう。
しかし、ケンカの延長で心無いことを言われた程度では、慰謝料の請求は難しく、日常的にモラハラやDVの被害を受けている事実と証拠が必要です。
モラハラやDVの証拠には、以下のようなものが挙げられます。
- パートナーのDVやモラハラによって怪我を負ったり、精神病になったときの医師の診断書
- DVによって負った怪我の写真
- DVやモラハラの動画や音声データ
- 日常的にDVやモラハラを受けている事実を記録したメモや日記 など
パートナーが一方的に別居した場合
正当な理由もなく、一方的にパートナーが別居した場合は慰謝料を請求できる可能性があります。
夫婦には、同居や協力・扶助義務があり、これは事実婚であっても同じです。そのため、理由のない一方的な別居は同居義務違反として慰謝料を請求できる可能性があります。慰謝料の相場は数十万~300万円程度でしょう。
“正当な理由もなく一方的に別居した”と、同居義務違反になるケースには、以下のようなものがあります。
- 話し合いが可能な状況なのに一方的に別居を始めた
- 自由になりたいという理由で別居を始めた
- 愛人と同居するために別居を始めた など
パートナーが一方的に関係を解消した場合
双方に婚姻の意思があり、法律婚の夫婦とほとんど変わらない生活を送っている事実婚は、「婚姻に準ずる関係」として認められています。
そのため、正当な理由なく一方的に関係を解消することは不法行為となり、慰謝料を請求できます。
“正当な理由がない”とは、以下のような理由が考えられます。
- 一緒に暮らしていく気がなくなった
- ほかに好きな人ができた
- 親に反対されているから など
事実婚で慰謝料を請求できないケース
ここまで事実婚で慰謝料を請求できるケースを解説してきましたが、反対に「慰謝料を請求できないケース」もあります。
詳しく見ていきましょう。
同棲はしているが事実婚関係を証明できない場合
事実婚の定義に該当しなかったり、事実婚関係を立証できなかったりする場合は、慰謝料の請求はできません。
例えば、以下のようなケースが当てはまります。
- 同居していたけどルームシェアをしていただけの場合
- 婚姻の意思がない場合
- 片方が結婚すると思い込んでいた場合
事実婚関係が破綻している場合
事実婚関係が破綻していたケースでは、事実婚関係における慰謝料請求の対象とはなりません。
例えば、以下のような状況が当てはまります。
- 相当の別居期間が続き、相手とも全く連絡を取っていなかった
- 事実婚解消について話し合っていた
- お互いに関係修復の意思がない
- 性的接触がない など
しかし、どこからが事実婚関係の破綻といえるかは、個別の事情によりますので、弁護士に相談することをおすすめします。
重婚的な事実婚関係だった場合
相手が既婚者であることを知った上で事実婚関係を結んだ場合には、相手が一方的に関係を解消しても慰謝料請求が認められない場合があります。
ただし、事実婚関係を結んだ時点で、相手夫婦の婚姻関係が破綻していれば慰謝料請求が認められるケースもあります。
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事実婚で慰謝料を請求する方法
事実婚関係で慰謝料を請求する方法を解説していきます。
- 相手に直接連絡して請求する
- 内容証明郵便を送付する
- 調停・訴訟の申立てをする
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
①相手に直接連絡して請求する
まずは、パートナーや不貞相手など慰謝料を請求したい相手に直接連絡して交渉をします。
その際、必ずしも対面で交渉しなければならないという決まりはありません。
メールやSNSなどのツールであれば、請求した内容や相手の返信内容などを証明できるため、これらのツールを利用することをおすすめします。
また、相手が「事実婚という事実はなかった」というケースもあるため、事前に言い逃れできないよう、事実婚の証拠を準備しておくことが大切です。
②内容証明郵便を送付する
事実婚のパートナーとすでに別居している場合や、直接交渉に応じない場合、不貞行為の相手に慰謝料請求する場合などは、内容証明郵便を送付することも有効です。
内容証明郵便を送付することで、相手側に心理的なプレッシャーを与えることができるでしょう。
しかし、内容証明郵便を送付したからといって、相手に支払い義務が生じるわけではありません。相手側が支払いをしないからといって罰則があるわけではないことに注意しましょう。
③調停・訴訟の申立てをする
交渉でも慰謝料が支払われない場合は、次の手段として訴訟や調停の申立てを行います。
以下の訴訟と調停から、該当する方法を選択します。
| 慰謝料請求訴訟 | 裁判を通じて慰謝料の支払いを求める |
|---|---|
| 内縁関係調整調停 (夫婦関係調整調停) |
調停委員を介して相手と事実婚関係の解消を図る、それに伴う慰謝料、財産分与についても協議する |
どの方法を選択すべきかについては以下をご参照ください。
【慰謝料請求の訴訟を提起した方が良いケース】
- 不貞相手にだけ慰謝料を請求したい
- 有効な証拠がある
【調停で話し合っていく方法が望ましいケース】
- 証拠に乏しい
- 事実婚関係を解消したい
事実婚の慰謝料について不安がある場合は弁護士に相談するのがおすすめ
事実婚での慰謝料請求について、少しでも不安がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。
信頼していたパートナーに不貞行為をされた悲しみは、一人で抱え込む必要はありません。弁護士とともに、今後の方針についてじっくり検討していきましょう。
弁護士であれば、慰謝料をどのように請求していくか、関係を解消したい場合や解消したくない場合など、ご相談者様のご希望に沿った解決策をご提案いたします。
また、弁護士であれば相手方とのやり取りを代理人として代わりに行うことができます。
調停や裁判をすることになっても、手続きの代行や代理人として主張・立証を行っていくため、適切な金額の慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
事実婚の慰謝料に関するQ&A
事実婚で不倫相手に対する慰謝料請求はできますか?
事実婚のパートナーが不貞行為をした場合は、パートナーとその不貞相手に対しても慰謝料の請求ができます。また、不貞相手にだけ慰謝料請求も可能です。
しかし、不貞相手に慰謝料を請求する場合は、不貞相手が「事実婚関係について知っていたこと、もしくは、知ることができたこと」の立証が必要となります。
不貞相手が事実婚関係にあることを知っていたかどうかによっても慰謝料請求が可能か、判断が分かれますので、まずは一度弁護士にご相談ください。
事実婚で同居後何年から慰謝料請求が可能になりますか?
これは法律婚にもいえることですが、婚姻期間や事実婚期間が短い場合は、慰謝料請求をしても相場より低額になる可能性があります。
一般的には、3年以上共同生活を続けていれば、事実婚関係の成立に必要な共同生活を送っていると認められやすいでしょう。
ただ、慰謝料請求が認められるかどうかは不貞の程度など個別事情によって変動しますので、判断が難しい場合は一度弁護士にご相談ください。
事実婚のパートナーが浮気をした場合、関係を解消せずに慰謝料請求することはできますか?
事実婚関係を解消せずに慰謝料を請求することは可能です。そもそも、不貞慰謝料は、不貞行為によって精神的苦痛を負ったことに対する補償です。
事実婚関係を解消する・しないに関わらず、精神的苦痛は発生しています。そのため、事実婚関係を解消しなくても、不貞行為による精神的苦痛が発生しているため、慰謝料の請求が可能となります。
しかしながら、関係を解消せずパートナーに慰謝料を請求しても、家庭内で金銭が循環することになるため、現実的にはメリットのないケースがあります。
不貞慰謝料は不貞相手のみにも請求できますので、事情を考えて不貞慰謝料の請求先を検討することが重要です。
事実婚のパートナーが不倫をした場合、不倫相手にだけ慰謝料を請求することはできますか?
不貞行為は、不貞相手と共同して行った不法行為であるため、不貞相手にも慰謝料請求ができ、不貞相手にのみ全額の慰謝料を請求することも可能です。
しかし、慰謝料全額が100万円で、不貞相手から100万円を受け取った場合はパートナーに対しては請求できません。
事実婚の慰謝料請求についてお悩みの方は弁護士法人ALGへご相談ください!
近年では、様々なかたちで関係を築くことが増えています。事実婚であっても互いにパートナーを信頼し、愛していることは法律婚となんら変わりはないでしょう。
そのような中で、パートナーに不貞行為をされてしまったら、その悲しみや精神的苦痛は大きなものとなってしまうことが想像できます。
事実婚での不貞行為にお悩みの方は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
適切な慰謝料を支払ってもらうためにも、個別事情に応じた解決策をご提案し、尽力いたします。
事実婚であることや不貞行為をされたことは、他人には相談しにくいことでしょう。しかし、弁護士はあなたの味方です。まずは一度私たちにご相談ください。
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保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)




















