自営業者が支払う養育費はいくら?計算方法や注意点などを解説
養育費とは、未成熟子を監護・養育するために必要な費用です。離婚時の取り決めで親権者(監護権者)となり、子と同居する親は、子と別居する非親権者(非監護権者)に養育費を請求できます。
養育費の金額は両親の年収や職業、子供の人数や年齢など、家庭の事情により変動します。また、同じ年収でも給与所得者(会社員)より自営業者(個人事業主)の方が高額になる傾向があります。
この記事では、自営業者の養育費について、養育費を計算する方法や計算する際の注意点などについて解説していきます。
自営業者の養育費はどうやって決める?
養育費の金額は、夫婦の話し合いで自由に決めることができます。双方が合意すれば、いくらでも構いません。
しかし、実際には金額で揉めてしまう場合も多く、そのようなときには裁判所が公開している養育費算定表で養育費の目安を確認することができます。
養育費算定表は、両親の所得と子供の人数・年齢で金額が決まります。給与所得者と自営業者の両方について記載があるため、自営業者の欄を確認しましょう。
自営業者の養育費の平均相場はいくら?
令和3年度・全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、母子家庭または父子家庭で支払われた養育費の平均は以下の表のようになります。
| 子供1人 | 子供2人 | 子供3人 | 子供4人 | 子供5人 | 平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 母子家庭 | 4万468円 | 5万7954円 | 8万7300円 | 7万503円 | 5万4191円 | 5万485円 |
| 父子家庭 | 2万2857円 | 2万8777円 | 3万7161円 | ― | ― | 2万6992円 |
上記の金額は、給与所得者と自営業者を含んだ相場となります。ご自身の相場を確認したい場合は、以下で解説する計算方法の活用や、弁護士への相談を検討しましょう。
養育費の相場については、以下のリンク先で詳しく解説しています。
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自営業者の養育費が給与所得者より高い理由
一般的に、同じ年収であったとしても、給与所得者と自営業者を比較して自営業者の方が養育費の金額が高くなる傾向にあります。
これは、年収から以下の費用などを差し引いた基礎収入が自営業者と給与所得者とでは異なると考えられているためです。
- 年金保険料
- 税金
- 住居費
- 医療費
- 業務上の費用 など
また、平成30年度の司法研究によると、年収に占める基礎収入の割合を以下のように定めています。
| 給与所得者 | 自営業者 |
|---|---|
| 38%~54% | 48%~61% |
この結果からも自営業者の方が、基礎収入が多いと考えられ、給与所得者よりも養育費の金額が高額となります。
自営業者の養育費を計算する方法
ここからは具体的に自営業者の養育費の金額を計算する方法について解説していきます。
自営業者の養育費を計算する流れは以下のとおりです。
- 自営業者の年収を求める
- 算定表から養育費の金額を求める
まずは自営業者の年収を求めましょう。
養育費は父母の年収で金額の相場が決まるため、自営業者の年収が分かれば、後は該当する表を用いて相場を確認できます。
養育費の計算ツールが以下のリンク先にあるのでご利用ください。
①自営業者の年収を求める
自営業者の年収を求めるためには、実際に手元に残る金額(基礎収入)を計算する作業が必要となります。正しい金額を算出するために、確定申告書を用意しましょう。
確定申告書には、課税される所得金額が記載されています。しかし、税法上控除される費用には実際には支出していない費用も含まれています。
実際には支出していない費用は、課税される所得金額に加算しなければなりません。加算しないと、年収が本来より低く算出されてしまいます。
支払う自営業者の年収が低くなってしまうと、養育費の金額も少なくなってしまうため注意しましょう。
自営業者の年収を算出する式は以下のとおりです。
自営業者の年収=課税される所得金額+税務上の控除のうち実際には支出していない費用
課税所得に加えることができる費用
| 実際に支出していない項目 |
|
|---|---|
| 養育費の支払いのほうが優先される項目 |
|
| 養育費・婚姻費用算定表ですでに勘案されている項目 |
|
養育費の算定において、課税所得に加えることができるのは、表に記載したような費用です。
自営業者は、確定申告における「課税される所得金額」から年収を算出します。経費などを多く計上すれば、「課税される所得金額」は少なくなり、養育費の額を抑えられるということです。
そのため、子供にとって不利益とならないように、養育費の計算では実際に支出していない費用を課税所得に加え、収入を再計算する決まりとなっています。
再計算をすれば、確定申告書の「課税される所得金額」が低かったとしても、本来の年収に近い金額で養育費を計算できます。
②算定表から養育費の金額を求める
実際に自営業者の年収を計算し、養育費算定表から養育費を算出してみましょう。
例
養育費を支払う側(義務者)
- 所得合計金額:800万円
- 社会保険料控除:40万円
- 青色申告控除:65万円
養育費を受け取る側(権利者)
- 年収0円:専業主婦
子供2人:5歳、10歳
- 義務者の年収を計算する ⇒800万円-40万円+65万円=825万円
- 子供の人数、年齢に合った養育費算定表を確認する
- 権利者の年収0円と義務者の年収(自営)825万円が交差する部分を確認する
その結果、養育費の相場は18万~20万円になることが分かります。
自営業で給与所得もある場合の養育費は?
自営業者だけでなく、給与所得者としても仕事をしている配偶者のケースについて、養育費の相場の算出方法を具体的なケースを用いて確認します。
- 義務者:自営業者として年収600万円、給与所得者として年収400万円
- 権利者:年収0円(専業主婦)
- 子供1人(6歳)
このように、自営業者としての年収と、給与所得者としての年収の両方がある場合は、給与所得者としての年収を自営業者としての年収に換算する必要があります。
給与400万円は、自営業者の収入でいうと294万円と同じであるとされています。
したがって、自営業者の収入600万円に294万円を足して義務者の年収を894万円(自営業者)として計算します。
養育費算定表より、義務者の年収894万円、権利者の年収0円が交差する部分を確認すると、養育費の相場は14万~16万円となります。
自営業者から養育費を受け取る側が押さえておくべき注意点
自営業者の養育費を計算するときには、給与所得者と異なる考え方をするため、主に以下のような3つの注意点があります。
- 申告の所得が正しいとは限らない
- 経費の内訳を確認する
- 未払い時に給料の差し押さえができない
①申告の所得が正しいとは限らない
自営業者の養育費算定では、確定申告の所得が実態を正確に反映しているとは限りません。
売上の計上時期の調整や、経費の過大な計上などの方法によって所得を低く見せられる場合もあるからです。
申告額が不自然に低いと感じた場合には、通帳や請求書、事業の実態に関する資料などと照らし合わせましょう。離婚や養育費の話題が出てから、急に所得が減っているケースは特に怪しいと考えられます。
自身での判断が難しいケースでは、弁護士に相談して、適正な養育費の算定を目指す必要があります。
②経費の内訳を確認する
自営業者は、仕事とは関係のない物品の購入や飲食までを経費として計上している可能性があります。
なぜなら、経費を増やせば、実際の所得よりも所得金額が低くなり、養育費の負担も少なくなるからです。
勤務先で源泉徴収が行われる給与所得者とは異なり、自分で売り上げや経費を計上して、確定申告を行います。不正を行いやすいため、少しでも経費の内訳や所得金額に違和感を覚える場合は、経費の内訳を確認する必要があります。
しかし、帳簿やお金の出入りを調べなければ実態を明らかにすることは困難であるため、弁護士に相談することをおすすめします。
③未払い時に給料の差し押さえができない
相手方が自営業者である場合には、会社員のような給与の差し押さえはできません。勤務先から給料を得ているわけではないからです。
会社員と比べて、養育費が支払われない場合に、回収できなくなるリスクが高いため、強制執行を行えるように、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しましょう。
また、預貯金口座を特定しておくなど、なるべく踏み倒されないようにするための対策が必要です。
ただし、強制執行を申し立てたとしても、相手方の生活に最低限必要な家財道具、家電、仕事用品などは差し押さえできません。
差し押さえができる財産は、預貯金や不動産、現金、自動車、絵画、宝石、ブランドバッグなどです。
2020年の民法改正により、公正証書があれば財産の開示請求ができるようになったため、財産を隠されたときには開示を申し立てましょう。
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養育費の話し合いが進まない場合はどうする?
養育費の金額や算定に用いる年収について夫婦の話し合いがまとまらない、または話し合いができない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用する方法があります。
養育費の請求が離婚時なのか、離婚後なのかによって申し立てる調停が異なりますので注意しましょう。
- 離婚時 ⇒夫婦関係調整調停(離婚)
- 離婚後 ⇒養育費請求調停
調停は調停委員を間に挟んだ話し合いであり、ご自身でも行うことができますが、慣れない書類を準備したり、調停期日に出席して調停委員と話し合いをしたりすることは、精神的に負担が大きいでしょう。
調停の手続きについては、離婚に詳しい弁護士にご相談ください。弁護士は代理人として調停に出席し、依頼者の代わりに効果的に主張することができます。
自営業者の養育費について弁護士に相談するメリット
弁護士に相談すれば、養育費が相場に照らして適正であるかを判断してもらえる可能性が高いです。
自営業者に対する養育費の請求は、売上と経費の区分や収入の変動が大きいため、金額の妥当性を判断するのが難しい場面も少なくありません。
弁護士であれば、決算書や確定申告書などの内容を踏まえながら、経費計上が適切かを専門的に検討できます。
正確な所得を把握するために、必要な資料の収集や開示請求、場合によっては調査方法の提案まで任せられる点も安心できるでしょう。
話し合いによって養育費の金額を決められず、調停に進んだ場合であっても、主張立証の整理や期日の対応をサポートしてもらえるため、納得できる解決に近づきやすくなります。
自営業者の養育費に関するよくある質問
自営業で年収800万の養育費はいくらですか?
義務者である配偶者が自営業者で年収(基礎収入)800万円の場合には、子供の人数、年齢、親権者の年収により以下のように養育費相場が変動します。
| 子供の人数 | 子供の年齢 | 権利者の年収(給与所得者) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 0円 | 100万円 | 200万円 | 300万円 | ||
| 1人 | 14歳以下 | 12万~14万円 | 10万~12万円 | 10万~12万円 | 10万~12万円 |
| 15歳以上 | 16万~18万円 | 14万~16万円 | 12万~14万円 | 12万~14万円 | |
| 2人 | 14歳以下が2人 | 18万~20万円 | 16万~18万円 | 16万~18万円 | 14万~16万円 |
| 14歳以下が1人・15歳以上が1人 | 20万~22万円 | 18万~20万円 | 16万~18万円 | 16万~18万円 | |
| 15歳以上が2人 | 22万~24万円 | 18万~20万円 | 18万~20万円 | 16万~18万円 | |
| 3人 | 14歳以下が3人 | 22万~24万円 | 20万~22万円 | 18万~20万円 | 16万~18万円 |
| 14歳以下が2人・15歳以上が1人 | 22万~24万円 | 20万~22万円 | 18万~20万円 | 18万~20万円 | |
| 14歳以下が1人・15歳以上が2人 | 24万~26万円 | 20万~22万円 | 20万~22万円 | 18万~20万円 | |
| 15歳以上が3人 | 24万~26万円 | 22万~24万円 | 20万~22万円 | 18万~20万円 | |
しかし、この金額はあくまでも相場であり個別の事情により金額は変動します。
また、子供が4人以上の場合や権利者の年収が表以上の場合には個別に計算する必要がありますので、お気軽に弁護士にご相談ください。
個人事業主で収入が不安定な場合、養育費の減額は認められますか?
自営業者で収入が不安定な場合でも、養育費はすぐに減額されるわけではありません。売上の一時的な落ち込みでは事情変更と評価されにくく、支払義務は基本的に維持されます。
長期間に渡って収入が継続的に減少し、回復の見込みが乏しいといった事情が認められれば、実態に応じた減額が認められることがあります。
養育費が減額できる条件などについては、以下のリンク先で詳しく解説しています。
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自営業の相手が確定申告書を見せてくれない場合はどうすればいいですか?
自営業の相手が確定申告書を見せてくれない場合、家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
調停では、当事者双方に対し収入資料の提出が求められます。
2026年4月1日の法改正により、確定申告書や預貯金口座の残高など、収入や資産に関する情報の開示を、調停において裁判所から命じてもらえるようになりました。
そのため、相手が任意に資料を開示しない場合でも、一定の客観的資料をもとに話し合いを進めることが可能です。
ただし、どの資料が有効か、どのように収集して主張すべきかには専門的な知識が必要となります。早い段階で弁護士へ相談することで、適切な養育費算定につながりやすくなります。
養育費の未払いがある場合、自営業の相手に強制執行できますか?
家庭裁判所の調停または審判で養育費を取り決めた場合、または養育費の取り決めについて強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた場合には、養育費を支払わない相手方に対して強制執行を申し立てることができます。
強制執行を行っても、相手方に差し押さえる財産がない場合は不払いの養育費を回収することができません。
その場合には、次のような方法を検討しましょう。
- 回収が難しければ、一度申立てを取り下げて、お金がありそうな時期に再び強制執行を申し立てる
- 相手方の両親などが保証人となる旨を定めた公正証書がある場合には、保証人に払ってもらう
未払い養育費の強制執行については、以下のリンク先で詳しく解説しています。
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自営業者の養育費についてお悩みの方は弁護士法人ALGへご相談ください!
養育費では、自営業者と給与所得者では、基礎収入の算定にあたり、異なる計算式を用います。
自営業者の場合は、収入の内訳をはっきりさせないと適切ではない金額を受け取ることになってしまうおそれがあります。
自営業者の養育費については、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
当事務所には離婚問題や夫婦問題の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍しており、適切な養育費を請求できるよう親身になってサポートいたします。
養育費について少しでも不安のある場合は、一度私たちにお話をお聞かせください。
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※事案により無料法律相談に対応できない場合がございます。※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください。
保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)



























