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離婚の調停調書とは?効力や公正証書との違い、確認すべきことなど

離婚の調停調書とは?効力や公正証書との違い、確認すべきことなど

離婚調停が成立すると、裁判所の書記官によって調停調書が作成されます。

調停調書は調停で話し合われた内容が記載されていて、確定判決と同様の法的効力がある重要な書類です。

本記事では、離婚の調停調書について、内容を確認する際のポイントや、調停調書があることでどのようなことができるのか、調停成立後の手続きを含めて解説していきます。

調停調書と混同されがちな公正証書・和解調書との違いも紹介していくので、ぜひ参考になさってください。

離婚調停は経験豊富な弁護士法人ALGにご依頼ください

離婚の調停調書とは

離婚の調停調書とは、調停が成立すると裁判所の書記官によって作成される書面です。

離婚調停が成立した事実と、合意内容が記載されます。

調停成立後の手続きで必要になるため、調停調書の正本や謄本などを申請して交付してもらいます。

【離婚の調停調書が作成される流れ】

離婚の調停調書は、次のような流れで作成されます。

  1. 当事者が家庭裁判所へ離婚調停を申し立てる
  2. 調停期日で調停委員を介した話し合いが行われる
  3. 話し合いがまとまり、夫婦双方が合意できれば調停が成立
  4. 裁判官が読み上げた合意内容に誤りがないか確認し、異論がなければ調停調書が作成される

調停調書の効力

調停調書は、裁判の確定判決と同じ効力があります。

調停調書に記載されている合意内容が守られない場合には、その内容を実現するために、強制執行を申し立てることができます(詳細は後述します)。

このように強い法的効力を有する調停調書は、明らかな記載ミスを除き、作成後に内容を変更したいと思っても簡単には変更できず、不服を申し立てることもできません。

調停時に取り決める内容について納得できない場合は、安易に合意しないようにしましょう。

また、調停調書の内容に誤りや記入漏れがないか、しっかり確認することも大切です。

調停調書の種類

調停調書には、原本謄本抄本正本があります。

  概要 用途 交付申請
原本 裁判官の押印が直接された、オリジナルの文書 裁判所での保管用 できない
謄本 原本のすべてを写した文書 役所への提出など できる
抄本 原本の一部だけを写した文書 役所への提出など できる
正本 謄本の一種で、原本と同じ効力を有する文書 強制執行 できる
  • 離婚届を役所に提出するときは調停調書の謄本
    (または離婚届提出に必要な内容のみを記載した省略謄本)
  • 年金分割を行うときは、年金分割に関わる内容のみが記載された調停調書の抄本
  • 強制執行するときは、調停調書の正本

というように、用途に応じて家庭裁判所に交付申請する調書の種類が異なるため、間違えないように注意しましょう。

公正証書・和解調書との違い

調停調書と混同されやすい文書に、公正証書和解調書があります。

いずれも離婚の合意内容が記載される文書ですが、作成される場面や作成場所など、次のような違いがあります。

  調停調書 公正証書 和解調書
作成される場面 離婚調停で
離婚が成立した場合
協議離婚で
離婚が成立した場合
離婚裁判で
裁判上の和解が
成立した場合
作成場所
(作成者)
裁判所
(書記官)
公証役場
(公証人)
裁判所
(書記官)
強制執行認諾文言 不要 任意 不要
強制執行できる
範囲
金銭以外も可能
(面会交流なども可能)
金銭のみ
(養育費や慰謝料など)
金銭以外も可能
(面会交流なども可能)

【公正証書で強制執行するには強制執行認諾文言付きにする必要がある】

裁判所で作成される調停調書や和解調書は、強制執行認諾文言がなくても債務名義として強制執行が可能ですが、公正証書に強制執行認諾文言の記載がない場合は別途訴訟手続きが必要となるため、注意が必要です。

公正証書については、以下ページで詳しく解説していますのであわせてご参考ください。

調停調書で確認すべき6つのこと

離婚調停で取り決めた内容が守られなかったときに備えて、調停調書に合意内容が正確に記載されているか、しっかり確認しましょう。

次項では、裁判官が合意内容を読み上げるときや、調停調書が手元に届いたときに確認すべき6つの事柄を解説していきます。

【調停調書で確認すべき6つのこと】

  1. 離婚成立の形態
  2. 離婚届の提出者
  3. 財産分与
  4. 年金分割
  5. 養育費・親権・面会交流
  6. 慰謝料

離婚成立の形態

離婚調停における離婚成立の形態には、調停離婚離婚届提出の2種類があります。

調停離婚 「申立人と相手方は、本日、調停離婚をする」
と、調停調書に記載され、調停成立と同時に離婚が成立します。
調停成立後10日以内に離婚届を役所に提出する必要があります(報告的届出)。
戸籍には「離婚の調停成立日」と記載されます。
離婚届提出 「申立人または相手方が離婚届を役所に届け出る」
と、調停調書に記載され、役所で離婚届が受理された時点で離婚が成立します。
調停の場で作成した離婚届を、調停調書で指定された者が役所へ提出します。
この形態では、調停をした事実が戸籍に残りません。

このように、離婚成立のタイミングや戸籍に残る離婚方法も異なるため、ご自身の認識と相違ないか確認し、内容に適した届出を忘れないようにしましょう。

離婚届の提出者

申立人と相手方、どちらが離婚届を提出することになっているのかも確認しましょう。

調停離婚の場合

調停離婚の場合は、調停調書の記載によってどちらに届出義務があるのかが異なります。

  • 「申立人と相手方は、本日、調停離婚をする」
    申立人に届出義務があります
  • 「申立人と相手方は、本日、相手方の申し出により、調停離婚をする」
    相手方に届出義務があります
  • 届出義務者は、調停成立後10日以内に、役所へ離婚届を提出しなければなりません。

離婚届提出の場合

離婚届提出の場合は、申立人と相手方のどちらに届出義務があるのかを、調停調書に明示する必要があります。

義務者が離婚届を提出して受理されない限り離婚は成立しないため、離婚に反対していた方を義務者とするのはリスクがあります。

いずれのケースも、結婚によって姓や本籍地が変わった方が義務者となることが多いです。

財産分与

財産分与とは、離婚に際して婚姻中に夫婦で協力して築き上げた財産を公平に分け合うことです。

離婚調停で財産分与について取り決めた場合は、金額・支払方法・約束が守られなかったときのペナルティなどの合意内容が正確に記載されているか確認しましょう。

【名義変更が必要な財産が含まれる場合の注意点】

不動産や自動車などを財産分与で名義変更する場合、基本は調停調書があれば単独で手続きが行えます。

ただし、調停調書の内容によっては相手の協力がなければ名義変更できない場合もありますし、生命保険や学資保険は単独で名義変更できないため、「名義変更の手続きに協力する」などの条項を取り入れおくと安心です。

年金分割

年金分割とは、離婚に際して婚姻中に夫婦が協力して納めた厚生年金納付記録を分け合うことです。

離婚調停で年金分割について取り決めた場合は、分割方法や分割割合などの合意内容が正確に記載されているか確認しましょう。

【年金分割の方法には合意割合と3号割合とがある】

合意割合 合意で年金分割の割合を自由に決めることができる方法です。
分割割合を記載した調停調書謄本があれば、請求者が単独で手続きを行えます。
3号割合 合意によらず、年金分割の割合を当然に2分の1ずつとする方法です。
調停調書がなくても、請求者が単独で手続きを行えます。

養育費・親権・面会交流

離婚する夫婦の間に子供がいる場合は、養育費・親権・面会交流について取り決め、調停調書に正確に記載されているか確認しましょう。

取り決めが守られなかった場合に強制執行手続きが実現しやすくなるよう、それぞれの確認すべき事柄を抑えておきましょう。

  • 養 育 費・・ 金額、支払方法、支払期間、支払いが遅れた場合のペナルティなど
  • 親  権・・ 父母のどちらが親権者になるのか
  • 面会交流・・ 交流の方法、日時、頻度、時間、場所、待ち合わせ方法など

【調停調書の内容が守られなかった場合の強制執行手続き】

養育費 養育費の未払いが生じた場合、強制執行手続きを行うことで、支払う側(義務者)の給与や財産を差し押さえて、強制的に養育費を回収することができます。
面会交流 取り決め通りの面会交流が実施されない場合、最終的には間接強制金の支払いを命ずるなどして、自発的な債務履行を促すことができます(間接強制)。

慰謝料

離婚調停で慰謝料について取り決めた場合は、金額や支払方法が正確に記載されているか確認しましょう。

慰謝料は未払いに備えて離婚調停の場で支払ってもらうこともできますが、後日払いとなった場合、未払いとなる場合を想定して“遅延損害金”などのペナルティについても取り決めて、調停調書に記載してもらいましょう。

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調停調書を作成した後の流れ

離婚調停が成立し、調停調書が作成されたあとの流れを確認しておきましょう。

調停調書が作成されたあとは、【調停調書の謄本の交付申請 ➡ 離婚届を役所に提出する】という流れで進みます。

以下、詳しくみていきましょう。

調停調書の謄本の交付申請する

離婚調停が成立して調停調書が作成されたら、調停調書の謄本の交付申請をしましょう。

調停調書の謄本は、離婚届を役所に提出する際に必要となるため、忘れずに申請しましょう。

  • 調停調書の謄本の交付申請の方法
    調停調書の謄本を交付申請する方法は、裁判所に足を運んで申請する方法と、郵送で申請する方法があります。
    調停が成立したその場で交付申請するのが一般的で、2~3日ほどで郵送してもらえます。
  • 調停調書の謄本の交付申請にかかる費用
    調停調書の交付申請には、手数料として1ページにつき150円の費用がかかります。
    申請書に必要額の収入印紙を貼り付けて納めます。
    なお、郵送で申請する際には、送達費用として別途郵便切手の添付が必要になります。

必要に応じて調停調書の抄本や正本も交付申請しておく

年金分割を行う場合は、年金に関する内容だけが記載された調停調書の抄本を申請しましょう。

財産分与・慰謝料・養育費などを取り決めた場合は、強制執行するかどうかにかかわらず、調停調書正本の送達※1と送達証明書の取得も申請しておきましょう。

※1・・送達とは、裁判所が調停調書を当事者双方に送付することです。

離婚届を役所に提出する

調停調書の謄本を裁判所から受領した後は、離婚届とあわせて役所に提出します。

調停離婚の場合、調停の成立と同時に離婚が成立しますが、役所に離婚届を提出しないと戸籍は婚姻中のままとなって、離婚の記載がなされません。

そのため、調停が成立した日を含めて10日以内に夫婦の本籍地、または調停の申立人の所在地にある市区町村役場に、調停調書の謄本と離婚届を提出する必要があるのです。

10日を過ぎると5万円以下の過料が課される可能性もあるので注意しましょう。

必要に応じて婚氏続称の手続きを行う

離婚後も婚姻中の氏をそのまま称したい場合は、離婚届とあわせて、婚氏続称届を提出しましょう。

婚氏続称届は後日提出することも可能ですが、同時に提出すれば戸籍謄本は1通で済みます。

相手が調停調書の内容を守らないときの対処法

調停調書に記載された内容を相手が守らなかったときの基本的な対処法と流れを確認しておきましょう。

【調停調書の内容が守られないときの対処法と流れ】

  1. 取り決めた内容が履行されるよう、まずは相手に直接連絡する
  2. 直接連絡しても応じてもらえない場合は、裁判所に履行勧告・命令をしてもらう
  3. 履行勧告・命令にも従わない場合は、強制執行を申し立てる

慰謝料や養育費が支払われない、面会交流の約束が守られない、などでお困りの方に向けて、次項で詳しく解説していきます。

①相手に直接連絡する

調停調書の内容が守られなかった場合、まずは相手に直接連絡して督促してみましょう。

単に支払いを忘れているだけの可能性もあるので、法的な手段をとる前に電話やメール・LINEなどで連絡してみましょう。

内容証明郵便を利用して連絡する方法もおすすめです。

なお、調停での取り決めで相手と連絡を取ることを禁止されていたり、相手と連絡がとれなかったり、相手に支払う意思がない場合には、裁判所を通して催促することができます。

②裁判所に「履行勧告・命令」をしてもらう

当事者間で解決できない場合に、調停調書の内容が守られるように裁判所を通して催告する方法として、履行勧告履行命令があります。

履行勧告 履行勧告とは、調停調書の内容を履行するように、裁判所から相手に対して支払いを促してもらう方法です。
家庭裁判所に申し立てるにあたって費用はかかりません。
強制力はありませんが、相手にプレッシャーを与えられる可能性はあります。
履行命令 履行命令とは、金銭的な取り決めが守られない場合に、期限を定めて義務を果たすよう、裁判所から相手に命じてもらう方法です。
家庭裁判所に申し立てるにあたって、手数料がかかります。
正当な理由なく命令に従わない場合には10万円以下の過料が課されます。

履行勧告にも従わない場合は、強制執行を申し立てることになります。

③強制執行を申し立てる

相手が履行勧告にも従わない場合は、裁判所に強制執行を申し立てることもできます。

強制執行とは、裁判所の権限をもって強制的に約束を実現させる最終的な解決方法のことで、調停調書の内容が守られない場合には、直接強制間接強制が利用できます。

直接強制 調停調書の内容のうち、養育費や慰謝料、財産分与といった金銭的な取り決めが守られない場合は、相手の財産(給与、預貯金、不動産など)を差し押さえて、強制的に取り決めた内容を実現させることができます。
これを直接強制といいます。
間接強制 調停調書の内容のうち、面会交流など、金銭的な取り決め以外の部分が守られない場合には、「応じないときは1回あたり〇万円」というように、取り決めた内容を実現させるために制裁金(間接強制金)を課すことができます。
これを間接強制といいます。

強制執行手続きには調停調書の正本と送達証明書が必要

強制執行手続きは調停調書の正本を当事者が受け取っている必要があります。

また、相手方が調停調書正本を受け取ったことを証明する送達証明書も必要になるため、調停成立後に申請手続きを行っておきましょう。

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調停調書に関するQ&A

調停調書の再発行はできますか?

離婚調停が成立した後に作成される調停調書は再発行が可能です。

必要に応じて、郵送や裁判所に足を運んで交付請求しましょう。

調停不成立となった場合に、事件終了の旨が記載された調停調書についても同様に再発行が可能です。

もっとも、調停の記録の閲覧(見ること)や謄写(コピーすること)については、家庭裁判所の許可が必要です。

調停調書の内容変更はできますか?

調停調書の内容は基本的に変更できません。

したがって、確定前に裁判官が合意内容を読み上げる段階で、合意内容や条件に漏れ・誤りがないか細部までしっかり確認することが重要です。

もっとも、計算ミスや誤字・脱字といった明らかな記載ミスであれば変更は可能です(=家庭裁判所の更正決定)。

なお、当事者双方が話し合って合意できれば、調停調書の内容を変更することも可能です。

この場合は、変更内容を公正証書にしておくと安心です。

話し合いがまとまらない場合には、再び調停を利用することもできます。

相手のDVが不安で調停調書に住所を載せたくないのですが何か方法はありますか?

住所などの特定の情報を相手に知られたくないときは、家庭裁判所に対して秘匿申出をすることができます。

ご質問のケースのように、調停調書で住所が相手に知られてしまうことによって生活平穏が脅かされたり、二次的な被害が生じ得たりする場合、家庭裁判所に秘匿申出書を提出することで、住所や勤務先、電話番号などが相手に知られないように、秘匿措置がとられます。

もっとも、秘匿申出をしても必ず秘匿措置がとられるとは限りません。

また、裁判所に提出した書類は相手も自由に閲覧・謄写できるため、知られたくない情報はマスキング(黒塗り)したり、代理人弁護士の連絡先を記載したりして、ご自身で対策を講じることも大切です。

調停調書の保存期間はどれぐらいですか?

離婚調停における調停調書の保存期間は30年間です。

この期間であれば、いつでも正本・謄本・抄本を交付してもらうことができます。

一方で、調書以外の議事録や証拠書類などの記録は保存期間が5年と短いため、閲覧や謄写を希望する方は注意しましょう。

【まとめ】離婚調停や調停調書でご不明点があれば弁護士にご相談ください

調停調書は、裁判の確定判決と同様の強い効力を有しています。

調停で取り決めたことが守られなかった場合に、スムーズに強制執行の手続きがとれるように、調停調書の内容をしっかり確認することが大切です。

強制執行に備えた調停調書にしたいけど、どのような内容にすればよいか分からずにお困りの方、一度弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、ご依頼者様の一番の味方となって離婚調停に同席し、相手方との交渉や調停調書の確認、そして強制執行までの手続きをトータルでサポートすることができます。

調停調書や離婚調停に関する不安や疑問を、まずは私たち弁護士法人ALGにご相談ください。

 

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弁護士法人ALG 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名を擁し()、東京、札幌、宇都宮、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸、姫路、広島、福岡、タイの13拠点を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。