ニューズレター


2026.Jan vol.134

入居者が死亡した場合の連帯保証人・相続人への原状回復費用請求


不動産業界:2026.1.vol.134掲載

私は、ある物件の賃貸人として、賃借人に物件を貸していました。ところが、ある日賃借人が突然亡くなってしまいました。突然のことだったため、物件の中の荷物等は片づけられておらず、すべて賃借人が亡くなった当時のままになってしまっています。

賃貸人である私としては、亡くなってしまった賃借人の荷物を片づけ、新たな賃借人に部屋を貸したいと考えています。

本件の賃借人の相続人は全員相続放棄をしてしまい、相続人が現在はいない状態です。

本件の賃貸借契約にあたっては連帯保証人がついているのですが、連帯保証人に部屋の片づけにかかった費用を請求することはできるのでしょうか。

また、仮に連帯保証人も亡くなっていた場合、連帯保証人の相続人に部屋の片づけにかかった費用を請求することは可能でしょうか。


賃貸借契約を解約した上で賃借人の荷物を片づけることは、賃貸借契約における「原状回復」に該当するところ、賃貸借契約において、賃借人の連帯保証人がいる場合、原則として連帯保証人は、原状回復やそれにかかる費用まで保証することとなります。そのため、原則として、連帯保証人に対し、部屋の片づけにかかった費用を請求することは可能です。

また、仮に連帯保証人が亡くなっていた場合であっても、連帯保証人の相続人がいれば、連帯保証人の相続人に対して部屋の片づけにかかった費用を請求することが可能です。

さらに詳しく

1.賃貸借契約における賃借人の死亡と賃貸借契約の帰趨

今回のような場合に、部屋の荷物を原状回復として行う前提として、賃貸借契約を終了させる必要があります。

賃貸借契約において賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は当然に終了するわけではありません。使用貸借契約の場合と異なり、賃貸借契約の場合には、賃借人の死亡による契約の終了の規定がありません(使用貸借契約の場合につき民法597条3項)。そのため、賃貸借契約における賃借人たる地位は、相続人に引き継がれることになります。

しかし、相続人が全員相続放棄をした場合はどうなるでしょうか。

民法939条によれば、相続人が相続放棄をした場合には初めから相続人ではないこととされ、相続放棄をした者に対しては、賃借人たる地位は引き継がれず、解約をすることができなくなります。

このような場合、相続財産を清算することを職務とする相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された相続財産清算人を通じて賃貸借契約を解約することになります。

2.賃貸借契約における連帯保証債務の範囲

相続財産清算人を通じて賃貸借契約を解約したのち、原状回復として物件の片づけを行うこととなります。原状回復に際して費用を支出した場合、その費用は連帯保証人に請求することができるでしょうか。

賃貸借契約においては、契約を締結する際に、賃貸借契約における債務を保証することを目的として、連帯保証契約を締結することが多くあります。

この連帯保証契約において連帯保証人が負う保証債務の内容は、基本的には賃貸人と連帯保証人との間の保証契約の内容に依存するものではありますが、「賃貸借契約から生ずる一切の債務を保証する」とされていることがあります。

この場合、賃貸借契約に基づいて生ずる賃料債務を保証することはもちろん、賃貸借契約が終了する際に生ずる原状回復やそれに伴って発生する原状回復費用(民法545条1項)も保証の範囲に含まれることになります。

今回の場合、賃貸人は、賃借人の荷物を片づけるという原状回復にかかった費用を連帯保証人に請求したいということですが、連帯保証契約の保証内容によっては、連帯保証契約における費用請求を行うことが可能であるといえます。

3.連帯保証債務の相続と相続人の範囲

では、連帯保証人も死亡していた場合、その相続人に保証債務の履行として、原状回復費用の支払いを請求することは可能でしょうか。可能であるとすると、相続人の範囲はどこまでなのでしょうか。

連帯保証契約も、賃貸借契約と同様に、連帯保証人の死亡によって当然に終了するものではありません。そのため、保証人としての地位は、相続人に引き継がれ、連帯保証人の相続人に原状回復費用の請求をすることができます。

そして、相続人の範囲は、第1順位として配偶者・子供(子供の子供も相続人となりえます)、第1順位の相続人が相続放棄をしたり不在であったりした場合には、第2順位として父母・祖父母、第1順位・第2順位の相続人がいずれも相続放棄をしたまたは不在であった場合には、第3順位として兄弟姉妹、兄弟姉妹が死亡している場合にはその子供となります。

賃借人が亡くなられて、賃貸借契約の解約をする必要がある場合には、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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