ニューズレター


2026.May vol.138

「賃貸人は一切責任を負わない」という特約の有効性


不動産業界:2026.5.vol.138掲載

私は、個人で所有している賃貸マンションの経営をしております。入居希望者はいるのですが、老朽化が著しいため、地震や台風の際などに倒壊等の事故が発生しないか心配です。入居者が怪我をして私が責任を負うのは回避したいので、「老朽化に伴って事故が発生しても、賃借人は賃貸人に対して、一切の請求をしない」と契約書に記載しておけば、万が一のことがあっても安心ですよね?


賃借人が個人であり、かつ、事業のために賃貸借契約を締結したものではない場合には、消費者契約法の適用があります。消費者契約法第8条では、事業者の損害賠償責任を全部免除する特約は無効とすると定められています。

そのため、ご相談のような特約の合意があっても、そのような特約は効力を有しませんので、賃貸人が完全に免責されることはありません。

建物が老朽化し、賃借人を居住させるのが不安になっても、賃借人を簡単に追い出すことはできません。建物の建替え等を検討される場合は、早めに対応されることをお勧めします。

さらに詳しく

1.消費者契約法

消費者契約法は、事業者と消費者との間の契約で労働契約ではないもの(これを「消費者契約」といいます。)に適用されます。

アパートやマンションの賃貸人は、個人であっても「賃貸業」という事業を営んでいるとして、消費者契約法上の「事業者」に当たるのが一般的です。また、入居者となる個人は、事業のために契約するのでない限りは「消費者」に当たります。したがって、賃借人が個人である居住用の賃貸借契約は、ほとんどのケースで消費者契約法が適用されるものといえます。

そして、消費者契約法第8条第1項は、消費者契約において、事業者が、消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項を無効とする、と定めています。そのため、「老朽化に伴って事故が発生しても、賃貸人に対して一切の損害賠償請求をしない」との特約を定めても、このような条項は無効であり、賃貸人が完全に免責されることはありません。

2.老朽化に伴う責任

(1)債務不履行責任

賃貸借契約は、賃料を受領する対価として、賃借人に建物を使用収益させる必要があるものとされています。そのため、賃貸人は、賃貸目的物の使用収益に必要な修繕をする義務を負っています。

したがって、マンションが老朽化によって危険な状態になっている場合には、賃借人が建物を使用収益できるよう修繕する必要があります。この修繕義務に違反したために、入居者が怪我をした場合、賃貸人は修繕義務違反の債務不履行に基づいて、損害賠償責任を負うケースがあります。

(2)土地工作物責任

賃貸人がマンションの所有者でもある場合は、賃貸人は建物所有者として土地工作物責任を負います。

土地工作物責任とは、建物などの土地の工作物が、通常有すべき安全性を欠いていたために他人に損害を生じた場合に、占有者に過失がなければ所有者がその責任を負うというものです。所有者においては、建物が安全でない状態であることを知らなかったことに過失がなかったとしても、責任を免れることができないとされていることに注意が必要です。

例えば、工事の施工業者が手抜き工事をしていたために必要な耐震性が確保できておらず、そのせいで建物が倒壊した場合には、手抜き工事があったことを所有者が知らなかったとしても、入居者(被害者)に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

3.老朽化する建物との付き合いかた

建物は屋外に設置される物である以上、経年による老朽化は避けられません。賃貸マンションが老朽化した場合、比較的安い賃料設定でないと入居希望者が現れないうえ、居室の一部が使用不能になってしまった場合には、修繕コストが生じるほか、賃料の減額が認められてしまう可能性もあり、収益性はどんどん低下していきます。

このような状況下で、都度の修繕で対処しきれなくなる場合には、建物の建替えを検討しなければならない時期が来ます。もっとも、賃借人には住み続ける権利があるため、重大な契約違反がない限り、強制的に退去させることは困難ですので、建替え工事に先立って、任意の退去を求める立退き交渉が必要となります。

立退き交渉を効果的に進めるには法的知識に裏打ちされた経験が必要であるほか、どうしても時間がかかるものでもありますので、建物の建替え等を検討される場合は、早めに対応されることをお勧めします。

アーカイブ

本ニューズレターは、具体的な案件についての法的助言を行うものではなく、一般的な情報提供を目的とするものです。

本ニューズレター及び弁護士法人ALG&Associatesからのリーガルサービスに関する情報(セミナー情報、法律相談に関する情報等を含みます。)をご希望される方は次のメールアドレスに会社名、氏名、役職、部署、電話番号及び配信希望先メールアドレスを記入したメールをお送りください。なお、当該情報送信は、予告なく変更及び中止される場合があることをご了承ください。

■ 配信希望メールアドレス roumu@avance-lg.com

  • 0120-589-887
  • 0120-090-620
  • 0120-128-067
  • 0120-544-064
  • 0120-528-004
  • 0120-523-019

各種メディア関連の出演・執筆のご依頼はこちらから 03-4577-0705

Mail
CLOSE
Menu