ニューズレター
2026.Apr vol.137
不動産業界:2026.4.vol.137掲載
私は、マンションの賃貸経営をしているところ、物件を賃貸する際には、賃貸借契約書において、ペットの飼育を一律に禁止する条項を設定しています。この度、ある入居者が無断で物件内で犬を飼っていることが判明しました。近隣の住居からはクレームが入っている状況です。そこで、私としては、この入居者に対して建物の明け渡しを請求したいと思っているのですが、そのようなことは可能でしょうか。
ペットの飼育を一律に禁止する条項は有効に成立すると考えられています。賃貸借契約書上、ペットの飼育を一律に禁止する条項がある場合、これが契約内容になるため、物件内でペットを飼育することは賃借人の債務不履行を構成することになります。そして、通常、ペット不可の物件においてペットの飼育をすることは賃貸人と賃借人との間の信頼関係を大きく破壊するものですので、賃貸借契約を解除し、物件の明け渡しを請求できる可能性があります。
アパートやマンションの賃貸借契約においては、ペット不可の物件も多いです。このようなペット不可の物件においては、通常、賃貸借契約において、「物件内において、犬、猫等の動物類を飼育してはならない。これに違反した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる」といった条項が設定されています。
この点、借地借家法30条は賃貸借契約の更新等に関する借地借家法の規定に反する特約で賃借人に不利な特約は無効と規定しているため、ペットの飼育を一律に禁止する条項が、借地借家法30条及び民法90条に違反しないかが問題となります。
これについて、ある裁判例では、次のとおり判示し、ペットの飼育を一律に禁止する条項の有効性を認めています。
「確かに、犬を飼育すること自体は何ら責められるべきことではないが、賃貸の共同住宅においては、犬の飼育が自由であるとすると、その鳴き声、排泄物、臭い、毛等により当該建物に損害を与えるおそれがあるほか、同一住宅の居住者に対し迷惑又は損害を与えるおそれも否定できないのであって、そのような観点から、建物内における犬の飼育を禁止する特約を設けることにも合理性がある」(東京地判平成7年7月12日)。
別の裁判例でも、次のとおり、特約の有効性を認めています。
「本件のような多数の居住者を擁する賃貸マンションにおいて、猫の飼育が自由に許されるとするならば、家屋内の柱や畳等が傷つけられるとか、猫の排泄物などのためにマンションの内外が不衛生になるという事態を生じ、あるいは、近隣の居住者の中に日常生活において種々の不快な念を抱くものの出てくることは避け難いし、更には、前記認定のように転居の際に捨てられた猫が居着いて野良猫化し、マンションの居住者に被害を与えたり、環境の悪化に拍車をかけるであろうことは推測に難くないから、本件のような賃貸マンションにおいては猫の飼育を禁止するような特約がなされざるを得ないものということができる。従って、本件のような賃貸マンションにおいてかかる特約がなされた以上、賃借人はこれを遵守する義務がある」(東京地昭和58年1月28日)。
建物賃貸借契約を賃借人の契約違反を理由に解除したいと考えた場合でも、賃借人の契約違反が軽微な場合には解除は認められません。解除が認められるためには、契約違反が信頼関係の破壊するほどのものであると評価される必要があります。
裁判例上は、ペット禁止の条項に違反したことのみをもって賃貸借契約の解除を有効と判断したものもありますが(上記東京地裁平成7年7月12日判決)、ペット禁止条項の違反に加えてその他の事情も考慮した上で、信頼関係の破壊を認め、明渡しを認める判決も多いです。
実際に明渡しが認められるか否かは具体的な事情によるため、ペットの無断飼育にお困りの場合には、弁護士に相談することをお勧めします。