ニューズレター


2026.Jun vol.139

賃借人によるカスタマーハラスメント


不動産業界:2026.6.vol.139掲載

入居者から、賃貸物件の管理不足を理由に金銭を要求されており、SNSに事実とは異なることを投稿されています。その入居者は、さらに酷い内容をSNSに投稿すると言っています。これはカスタマーハラスメントでしょうか?


ご質問の事例は、事実とは異なる投稿をしながら、不当に金銭を要求する行為であり、カスタマーハラスメントに該当すると考えられます。不用意な対応をしないよう、慎重な初動対応が求められると考えられます。

さらに詳しく

1. 不動産業におけるカスハラとは

近年、不動産業界においても入居者や入居希望者からのカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)が深刻な課題となっています。少なくない数の不動産事業者が、入居者等からの迷惑行為を経験しており、その内容は暴言や不当な金銭要求など多岐にわたります。

カスハラの防止に向けて、令和8年10月1日に施行される労働施策総合推進法においても、カスハラ防止措置が事業主に義務付けられることになりました。同法では顧客等の言動であって、社会通念上許容される範囲を超えるものにより、労働者の就業環境が害されることを、カスハラと定義しています。

社会通念上許容される言動に該当するか検討するにあたっては、顧客等からのクレームや言動のうち、「要求内容」や、要求を実現するための「手段・態様」が社会通念上不相当であるかを検討することが有用です。

2. 賃貸経営でよく見られるカスハラの典型例

たとえば、入居後、事前に説明済みであった周辺環境や騒音を理由に、執拗に賃料の減額や慰謝料を要求する行為や、設例のように、「対応しなければSNSに晒す」「悪評を書き込む」と告げ、不当な減額や金銭を要求する行為が、カスハラに該当する可能性があるといえます。

また、侮辱的な発言や、大声での叱責のほか、合理的な理由なく、電話で何時間も拘束したり、店舗に居座ったりする行為も、カスハラに該当すると考えられます。

これらの言動は、刑法に定められている脅迫罪、恐喝罪、侮辱罪又は名誉棄損罪に該当しうる行為とも言えます。

3. 初期対応の重要性

カスハラが発生した場合、感情的な反論や、安易な譲歩は事態を悪化させるおそれがあるため、慎重な初動対応が必要となります。

まず、証拠の収集が必要と考えられます。カスハラが始まったと判断される時点から、録音や録画を確実に行い、対応記録を時系列で作成することが不可欠と考えられます。

また、事実確認が不十分な段階で、要求を呑むような謝罪をするのも、相手を助長させるおそれがあるため、禁物と考えられます。

一部の対応に非がある場合でも、「お待たせしたこと」など、特定の事実に限定して謝罪し、土下座や文書での謝罪要求には、その場で応じないようにするのが適切と考えられます。

また、長時間の拘束をされそうになった場合は、30分程度を目安に「他の用事がある」と伝え、話を打ち切る対応を取ることが考えられます。また、一人きりの状態を作らずに、複数人で行動することも対策となります。

賃借人との信頼関係を築く努力は必要ですが、社会通念を逸脱した要求に応じる必要まではないものと考えられます。事前に「どこまで対応するか」の方針やルールを定め、場合によっては、毅然とした態度を貫くことが適切な場合があります。対応にお困りの際や、社内ルールの策定を検討される場合は、ぜひ当事務所へご相談ください。

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