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通常、損害賠償額は示談交渉後に受け取ることができます。しかし、中には通院で等でお金がかかり、先に受け取りたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そんな時に使えるのが被害者請求です。 被害者請求とは、交通事故の被害者が直接加害者の自賠責保険に事故でかかった費用等を請求する方法をいいます。 被害者請求は、示談交渉成立を待たずに、先に損害賠償金を受け取りたい場合にメリットがあります。 本記事では被害者請求について解説していきます。ぜひご参考ください。
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目次
被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険会社に、損害賠償金を自分で直接請求する方法です。 必要書類を集めて加害者側の自賠責保険に提出することで、示談交渉前でも、書類の内容を調査し、約1ヶ月前後ぐらいで損害賠償金が支払われます。 ただし、自賠責保険から支払われる金額は被害者救済を目的とした最低限の補償です。足りない分については、別途相手方の任意保険に請求する必要があります。 そもそも自賠責保険とは何なのか、被害者請求以外には何があるのかを次項で解説していきます。
自賠責保険とは、強制保険であり、公道を走る車・バイクは加入が義務付けられています。自賠責保険は、被害者を救済するためにつくられた保険で、人身のみ補償されます。 自分の不注意で事故に起こしてしまった時に自賠責保険だけでは限度額が120万円のため、到底まかなえる金額ではありません。そのため、多くの人は任意保険にも加入し、自賠責保険だけでは足りない部分を任意保険で補います。 自賠責保険への請求方法には、
があります。 以下で加害者請求について解説していきます。
加害者請求というのは、まず加害者側が被害者に対し、損害賠償金を全額支払ってしまい、支払い後に加害者が自身の自賠責保険に対して、自賠責が支払わなければならない金額を請求する方法です。 つまり、被害者は加害者を通して、間接的に加害者側の自賠責保険から損害賠償金を受け取ったということになります。 この方法は相手方保険会社が申請の準備をして、手続きまでしてくれるため、被害者の方にとっては手間のない方法です。 しかし、申請内容が本当に適正なものなのか確認することはできず、不透明なところが不安点です。
被害者請求をした方がいいケースに次のようなケースが挙げられます。
それぞれについて以降で詳しく解説していきます。
通常の交通事故では、追突事故を除けば、被害者にも過失が付くことが多くあります。 被害者側に過失が付くと過失相殺され、受け取れる損害賠償額が少なくなってしまいます。 しかし、自賠責保険では、損害額を計算する時に過失相殺がされません。 そのため、任意交渉で加害者や相手方保険会社に請求できる金額よりも、自賠責基準で計算した方が、損害賠償額が大きくなる場合があります。 このような場合に、保険会社との交渉が難航し、なかなか支払いを受けられないときには、自賠責保険に対して、直接被害者請求をするメリットがあります。 なお、被害者の過失割合が7割以上のときに重過失減額が行われます。これは、損害賠償額が減額されるのではなく、支払限度額が割合に応じて減額されることになります。 例えば、治療費などの傷害部分は、通常では、120万円まで支払われますが、7割以上の過失が有れば、2割減額され、保証される金額の限度額は96万円となります。
減額適用上の被害者の 過失割合 |
減額割合 | |
---|---|---|
後遺障害または死亡に係るもの | 傷害に係るもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
任意保険未加入の場合は、相手の保険会社が被害者に賠償し、その賠償金を自賠責保険に対し加害者請求をするといった、交通事故が生じた場合の一般的な流れにはなりません。 この場合、加害者請求をするには、被害者と加害者との間で示談し、加害者が損害賠償金を支払い、その後加害者が自身の加入している自賠責保険に保険金の請求を行います。 しかし、加害者が資力に乏しい場合や、話し合いに応じてくれない場合も多く、また、損害賠償金を一括で払ってくれないケースが多々あります。 このような場合、示談交渉が成立するか否かに関わらず、被害者請求をすることで、自賠責保険の支払い分のみにはなりますが、早期にかつ一括で受け取れるので安心です。
保険会社は、休業損害や交通費などを除き、基本的には、慰謝料などの損害賠償は示談成立後に支払います。 示談が成立するのは、人身事故の場合は治療終了(症状固定)から約半年ほどかかると言われています。また、示談交渉で納得がいかず話し合いが長引く場合は示談成立までの期間が延びてしまいます。 そのため、示談成立を待たず先に慰謝料や示談金を受け取りたいと考える方も多くいらっしゃることでしょう。 このような場合、被害者請求をすることで、先に自賠責保険分の損害賠償金を一括で受け取ることができます。その後、示談で損害賠償額が決定し、先に被害者請求で受け取った金額より高額になる場合は足りない分を相手方から受け取ることができます。
後遺障害の申請を行うときは、相手方任意保険会社が一括対応をしているかどうかに関わらず、被害者請求をするメリットがあります。 申請の方法は以下の2つです。
相手方保険会社にすべて任せるため、手間がかからないが書類が不十分な場合がある
書類や資料を集めなければならず手間がかかるが、より有利な資料を添付することができる 任意保険会社はあくまでも加害者の味方であり、被害者に有利になるような計らいはしてもらえません。そのため、被害者請求により、有利になる資料を添付し内容に透明性がある方が安心でしょう。 後遺障害等級認定は今後の示談交渉の中で損害賠償額に大きく関わるため、争いの多い事案や大きなけがをした場合は、被害者請求を行うメリットが大きいでしょう。
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被害者請求手続きの流れは以下になります。
加害者の自賠責保険は、事故時に警察立会のもと確認され、加害者が加入する自賠責保険は、交通事故証明書から特定できます。 事故証明書には、警察が確認した車検証と自賠責保険証の内容が記載されています。
被害者請求の手続きの後、自賠責損害調査事務所が行う調査の期間は、後遺障害認定が無ければ1ヶ月以内のケースがほとんどです。 (資料不足や資料の内容に不備がある場合には、時間を要する場合があります。) 調査が終わり、損害額が算出されると、損害賠償額が支払われます。 ただし、1ヶ月以内というのは、被害者請求全体の統計です。 後遺障害等級認定も一緒に行う場合には、医療照会を行うため、調査機関が長引くことで、損害賠償額の支払いまで期間が延びることもあります。
被害者請求における、仮渡金請求には以下のような特徴があります。
被害者請求でよく必要となる資料の入手先を以下の表にまとめます。事案に応じて、異なる場合もあります。
必要書類 | 入手先など |
---|---|
自動車損害賠償責任保険支払請求書 | 相手方が加入する自賠責保険会社から書類を取り寄せ、被害者が記入 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターから取得または、任意保険会社から原本印を押してもらい取得 |
事故発生状況報告書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者が記入 |
診断書・診療報酬明細書 | 受診した医療機関すべてから取得 |
死亡診断書 | 死亡診断を行った医療機関から取得 |
施術証明書 | 施術を受けた整骨院や接骨院から取得 |
印鑑証明書 | 登録した市区町村で取得 |
レントゲン写真等 | 撮影した病院で取得 |
休業損害証明書 | ・会社に作成を依頼する ・源泉徴収証を添付する |
通院交通費明細書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者が作成 |
付添看護自認書 | 自賠責保険から書式を取り寄せ、被害者が作成 |
委任状 | 弁護士に依頼して被害者請求する場合は被害者の委任状が必要となる |
診断書・診療報酬明細書 | 診断書と一緒に病院で作成を依頼 |
---|
診断書・診療報酬明細書 | 診断書と一緒に病院で作成を依頼 |
---|---|
後遺障害診断書 | 医師に通常の診断書とは違った書式を手渡しして作成を依頼 |
診断書・診断報酬明細書 | 診断書と一緒に病院で作成を依頼 |
---|---|
戸籍謄本 | 本籍のある市区町村で取得 |
被害者請求で請求できる損害賠償項目について下記の表にまとめます。
損害賠償項目 | 内容 |
---|---|
治療費関係 | 治療費、付添看護費、交通費など |
文書料 | 交通事故証明書、印鑑登録証明書、住民票などの発行手数料 |
休業損害 | 事故による傷害のために発生した収入の減少 |
入通院慰謝料 | 事故による怪我で入院・通院しなければならなくなった精神的・肉体的苦痛による補償 |
後遺障害慰謝料 | 事故により後遺障害が残ったことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
後遺障害逸失利益 | 後遺障害の影響により将来的な収入が減ったことによる補償 |
死亡慰謝料 | 事故により死亡したことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
死亡逸失利益 | 本人が生きていれば得られた収入から本人の生活費を控除したもの |
葬儀費 | 通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石に要する費用 |
自賠責保険はあくまでも被害者救済を目的とした最低限の補償なので、被害者請求で自賠責保険からもらえる金額には以下のような限度額があります。
傷害による損害 | 120万円 |
---|---|
後遺障害による損害 | 75万円~4000万円 |
死亡による損害 | 3000万円 |
後遺障害部分には、後遺障害等級によって金額が変わります。後遺障害等級は1級から14級まであり、後遺障害等級の数字が小さい方が重い障害となり損害賠償額が高額となります。 交通事故の後遺障害については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
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交通事故の被害者請求をする際の注意点として以下のデメリットがあります。
被害者請求をするには、必要書類をすべて自分で集めなければなりません。 必要書類は多岐にわたるため、被害者自身がこれらの準備を行うことは大きな負担となり得ます。
被害者が自分で必要書類を集めなければならないということは、その分費用も負担しなければなりません。 診断書やレントゲン、MRIの画像などで複数の医療機関で診断を受けた場合は、交通費を使ってすべての病院に赴き書類を集める必要があります。
被害者請求は弁護士に依頼することをおすすめします。 弁護士に依頼するメリットを以下にまとめます。
被害者請求では、すべての書類・資料を被害者自身で集めなければなりません。 弁護士に依頼することで必要書類を代わりに集めてもらう事ができ、また自分で病院を回る必要がなくなるため、書類が早く手に入り、損害賠償金を早く受け取れる可能性があります。
後遺障害等級の認定は損害賠償の金額に大きく関わるため、とても重要です。 そのため、後遺障害等級が認定されるためには提出書類の質を上げ、効果的な追加資料を添付することが大切です。しかし、被害者自身が行うにも交通事故に詳しくなければどの資料の質を上げればいいのか、足りない資料は何かといったことは判断できないでしょう。 交通事故に詳しい弁護士であれば、どのような資料が必要かすぐに判断でき、適切な後遺障害等級が認定される可能性が高まります。
被害者請求により、相手方自賠責保険分の損害賠償を受け取ったら、今度は相手方任意保険と示談交渉をします。 示談交渉を弁護士に任せることで、被害者の方が示談交渉に対するストレスから解放できることや、弁護士が介入することで、一般的な基準よりも高額となる弁護士基準で損害賠償額を算出し、交渉していくことで相手方保険会社が提示する損害賠償額の金額よりも高額になる可能性があります。
被害者請求にも時効が存在します。 民法改正により、交通事故で人身被害に遭った場合の時効が、3年から5年に延長されました。 しかし、自賠責保険に対する被害者請求権の時効は、現在も3年となっています。 自賠責保険に対する被害者請求の起算点および時効期間は以下のとおりです。
傷害に関する請求 | 事故日の翌日より3年間 |
---|---|
後遺障害に関する請求 | 症状固定日の翌日より3年間 |
死亡に関する請求 | 死亡日の翌日より3年間 |
示談交渉などが長引いてしまったり、死亡事故で示談交渉ができる状態ではなかったりすると、時効の期間を忘れてしまいがちですので注意しましょう。
とても便利な制度である被害者請求ですが、被害者の方が怪我の治療や仕事をしながらでは大きな負担となることが多くあります。 無理をして怪我が悪化しないようにするためにも、被害者請求をしようと考えている方は弁護士にご相談ください。 弁護士であれば、手間のかかる資料を集めることを迅速に済ませられ、早く損害賠償金を受け取れるだけでなく、その後の示談交渉まで任せることができます。 怪我の治療中でも、仕事中でも代わりに示談交渉が進むので、ストレスなく過ごすことができます。 また、示談交渉の内容は勝手に弁護士が合意するのではなく、その都度被害者の方に連絡を入れ、一緒に考え、決断していきますのでご安心ください。 被害者請求をしたいけど手間がかかることを不安に思っている方は、ぜひ一度私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
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