目次
むちうちは、首(頚部)が強い衝撃を受けたとき等に、不自然な力によって急激に伸びたりすると起こる首の捻挫です。
交通事故では、自動車の追突事故による衝撃や急停車などが原因になって起こります。
むちうちは、受傷時に首がムチのようにしなる動きをするので、むちうちと一般的に呼ばれますが、これは正式な傷病名ではありません。
病院で診断されるときには、頚椎捻挫や外傷性頚部症候群といった傷病名が診断書に記載されます。
比較的軽い交通事故であっても、むちうちになっているケースは非常に多いので、どんな症状なのか、慰謝料請求にどう関わっていくのかを見ていきましょう。
むちうちの症状は、頚部を中心とした症状が一般的ですが、全身症状の場合もあるので、むちうちだと自覚していない方もいます。
むちうちの症状は多種多様で、頭痛や首を動かしたときの痛み、倦怠感、耳鳴り、めまい、眼精疲労、吐き気、上下肢のしびれ、背中の痛みなど様々です。
交通事故の直後に症状がなくても、2,3日経ってから症状が現れることもあります。事故直後に痛みがなかったとしても、すぐに病院を受診するようにしましょう。
むちうちの後遺症は、その症状によっていくつか種類があります。
首の捻挫や、首周辺のコリ、痛みによる後遺症は「頸椎捻挫型」と言われ、むち打ちの後遺症の大部分を占めます。
その他にも、首の神経が傷つき、めまい、耳鳴りを引き起こす「バレリュー症状型」や、首の神経根へ負荷がかかって痺れが残る「神経根症状型」、脊髄損傷による歩行障害で、非常に重症となる「脊髄症状型」、脳髄液が漏れ出す「脳脊髄液減少症」があります。
頸椎捻挫型 |
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バレリュー症状型 |
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神経根症状型 |
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脊髄症状型 |
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脳脊髄液減少症 |
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●12級13号
後遺症の症状が、レントゲンなどの画像所見や、神経学的検査で、他覚的所見として証明できる場合です。
自賠責での認定基準は「局部に頑固な神経症状を残すもの」となっています。
●14級9号
12級のような他覚的所見での証明ができなくても、事故状況や治療経過から残存症状の訴えに説明がつくものとなります。
自賠責での認定基準は「局部に神経症状を残すもの」となっています。
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むちうちで等級非該当の原因は以下の3つが挙げられます。
①他覚的所見がない
本人の痛みに対して、それを証明するレントゲンなど画像所見が無ければ、客観的に確認できないので、非該当になる可能性があります。
②通院日数の少なさ
症状の重さを判断するのに、通院回数や頻度はとても大きな要素です。通院が少ないと、それだけ軽い症状とみなされます。
忙しいから、我慢できる痛みだから、と通院を渋らず、定期的に通院して、適切な等級認定を受けられるようにしましょう。
③自覚症状が医師に伝わっていない
診察では、主治医に自覚症状を具体的に説明して、症状を把握してもらいましょう。
単に「痛い」だけでなく、痛みの箇所や、痛みが起きる場面、頻度などを積極的に伝えて診断書にしっかりと自覚症状の内容を書いてもらうことが、むちうちではとても重要です。
むちうちで後遺障害等級を獲得するには、まず、治療の継続が重要です。
一般的にむちうちで後遺障害等級が見込まれるのは、通院期間6か月程度と言われます。
治療実績が乏しいと、症状を軽くみられて非該当になる可能性が高くなりますので、症状固定までしっかりと通院しましょう。
そして、等級認定に必要な後遺障害診断書に、自覚症状や画像所見、神経学的検査所見がしっかりと記載されていることも必要です。
ただし、むちうちは画像所見で異常確認できないことが多いので、その分、検査結果の記載や自覚症状の具体性が重要になるので、自覚症状はしっかりと主治医に伝えるようにして下さい。
示談交渉は事故直後から始めることもできます。しかし通院中は、治療費や通院交通費などがその都度発生しているので、損害額を確定できません。
つまり、治療が終了して完治した時か症状固定となった時が示談交渉のタイミングと言えます。
症状固定とは、完治したわけではないけど、これ以上治療を続けても回復する見込みがない、という時点です。
ケガが完治せず症状固定となった場合には、示談交渉で後遺障害慰謝料を請求できるか検討する必要があります。
医師に後遺障害診断書を書いてもらって、等級認定の申請を行いましょう。
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むちうちで請求できる慰謝料は、治療期間に対する入通院慰謝料と後遺障害等級に対する後遺障害慰謝料です。
慰謝料算定には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があり、最も高額になるのは弁護士基準です。
妊婦は、身体の状態から治療内容が制限されます。通院日数や頻度も少なくなることが多いので、結果として入通院慰謝料が減額され、後遺障害等級の認定も難しくなりがちです。
但し、事故が原因で切迫早産の治療を受けるなどがあれば、その期間は交通事故の治療期間とされます。
また、不幸にも事故によって胎児が死亡した場合には、妊婦への精神的苦痛として慰謝料が増額されます。
主婦の慰謝料相場は、基本的に一般社会人と同じです。
ただし、主婦が幼児を持つ母親やシングルマザーといった場合には、治療期間を短縮せざるを得ないケースが見られます。
このような特別な事情が認められると、入通院慰謝料が増額される可能性があります。
子供の慰謝料相場も基本的に一般社会人と同じになります。
入通院による精神的苦痛は大人と子供で差がないと考えられていて、後遺障害慰謝料相場は等級によるものだからです。
但し、入院に親の付き添いが必要なら、付添費の請求はできます。
同乗者であっても、請求できる慰謝料は入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類で、その相場も運転者と変わりません。
しかし、事故の発生に同乗者の過失があると、慰謝料が減額される可能性があります。
同乗者の過失とは、運転者が飲酒運転と知っていたときや、危険運転を煽った場合などです。
入通院慰謝料は、治療期間の長さに比例して高額になります。
例えば、慰謝料算定基準として弁護士基準を使うと、通院3か月なら53万円、通院6か月なら89万円が相場になります。
また、レントゲンで異常が確認できたときは更に高額になります(画像所見ありで通院6か月:116万円)。
通院期間が6か月程度になってくると、後遺障害等級に認定される可能性があります。
むちうちに最も多い14級であれば、後遺障害慰謝料として110万円が見込まれます。
治療への第一歩として、まずは事故に遭ったらすぐに整形外科を受診しましょう。
むちうちは首の捻挫だけでなく、脳や神経にもダメージを受けている可能性があるからです。
レントゲンやMRIなどの検査で状態を確認したうえで治療方法を決めていきます。
むちうちに多い頸椎捻挫では、患部を冷やして炎症を抑え、程度によって首にコルセットをつけたりします。
炎症が治まったら、整形外科では首の牽引や温熱療法が行われますが、整骨院では、全身マッサージや電気療法で、血流を促進したりします。
むちうちはレントゲンでその症状を確認できないことが多いので、後遺障害の認定には、事故の状況、入通院日数、治療期間などの客観的な情報が大きな意味をもちます。
むちうちで後遺障害の認定をうけるには、一般的に6か月以上通院していることや、一定の頻度で通院していることが必要とされます。
保険会社はできるだけ賠償金を抑えたいので、治療期間は短い方がいいし、後遺障害に認定されないで欲しいと考えるでしょう。
そのため、治療開始から3か月を超えると、治療費打ち切りの連絡が来る可能性があります。
適切な補償を受けるためにも、専門家に相談し、保険会社の指示に安易に応じないよう注意しましょう。
主治医がまだ治療が必要と判断していても、保険会社が治療費打切りを強行することはあります。
では、打ち切られたらもう治療をやめないといけないか、というと、そうではありません。
一旦、自分で立替えた治療費であっても、交通事故とその治療に因果関係があれば、立替えた治療費は損害賠償として請求できます。
治療費打切りとなっても、必要な治療を続けて、適切な補償を受ける権利を守りましょう。
そして、自費で治療費を立替えるときには、「第三者行為による傷病届」を出すと、自身の健康保険を使って通院ができます。経済的負担を大きく軽減できますので、忘れずに提出しましょう。
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【事案概要】
X(原告)が、普通乗用車を道路脇に寄せて停車していたところ、Y(被告)の運転する普通乗用車が後方より追突し、Xは頸椎捻挫等のケガを負い、上肢の痺れによる歩行障害や握力低下の後遺障害が残った。
自賠責では後遺障害等級は非該当とされたが、Xは頚部のMRI検査による異常所見や、サーモグラフィー検査結果から後遺障害等級12級13号を主張。
それに対し、Yは本件事故状況や衝撃の程度からすると、Xが主張する後遺障害が生じることはないとし、他覚的所見などについて因果関係を否定した。
【判決】
東京地裁はMRI検査によって神経障害を医学的に証明しているとは認められないとし、サーモグラフィー検査についても同じく医学的証明には至らないとしました。
しかし、Xは事故直後から一貫した痛みを訴えており、受傷時の状態及び治療経過を勘案すると、Xの症状の訴えには医学的説明が可能であるとして後遺障害等級14級9号が認めました。
(東京地判平15・1・28)
交通事故に最も多くみられる、むちうちについてご紹介しました。
「むちうち」と一言で言っても、事故態様や治療内容など、その状況によって取るべき対応は様々です。
後遺障害の等級認定も、他覚的所見が得られにくいので非常にやっかいです。気を付けないと、損害を低く見積もられやすい傷病といえるでしょう。
しかし、保険会社は交通事故の交渉を日々行っているプロですので、専門知識がない状態で、十分な対応をとることは不可能と言えます。
早い段階で専門家に相談すれば、治療に専念しながら、適切なアドバイスを受けることもでき、示談交渉で適正な額を主張することができるでしょう。
交通事故に遭われたら、まずは弁護士へご相談されることを強くお勧めします。
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保有資格 弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:41560)