T字路の交通事故で過失割合はどうなる?パターン別に詳しく解説

T字路の交通事故で過失割合はどうなる?パターン別に詳しく解説

交通事故では、被害者と加害者それぞれの事故の責任割合である「過失割合」について、揉めてしまうケースが多くあります。
なぜなら、過失割合は被害者であれば受け取れる損害賠償金額に、加害者であれば支払う損害賠償金額に大きく影響するからです。

特に、T字路で起きた交通事故は、一般的な交差点での事故とは基本過失割合が変わる可能性もあり、注意が必要です。
この記事では、T字路交差点の事故について、事故のパターン別に過失割合や修正要素などを解説していきます。弁護士法人ALGによる解決事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

過失割合を相手方:依頼者=7:3から8:2に修正し、示談金が増額した事例
  • 症状:左中手骨骨折、右足趾骨折、右肩腱板損傷等
  • 後遺障害等級:併合13級

弁護士依頼前

3割

弁護士介入

弁護士依頼後

2割

過失割合を1割ダウン

T字路の交通事故における過失割合

過失割合とは、被害者側と加害者側の事故の責任を割合で表したものです。交通事故では、どちらか一方が悪いということは少なく、どちらにも過失が付くことが多くあります。
なお、T字路交差点は、法律的には「丁字路」ですが、ここでは、一般的になじみのある「T字路」として統一します。

T字路における過失割合を判断する際には、以下のようなことが考慮されています。

  • 道路の幅や一時停止規制の有無、優先道路かなどが影響する
  • そこに修正要素が考慮され過失割合が決定する
  • 過去の事例などをもとに基本過失割合が示されている

修正要素とは

修正要素とは、基本過失割合を加算・減算する要素で、事故類型ごとに、「夜間」「住宅街・商店街」「減速や徐行の有無」「著しい過失」「重大な過失」などの修正要素が定められています。
また、修正要素ごとに「-5」「+10」など修正幅が決められ、基本過失割合から加算・減算します。 修正要素の具体例は、以下をご覧ください。

【自動車同士の事故の場合】

  • 著しい過失(違反側に+10)
    • わき見運転など著しい前方不注意
    • 著しいハンドル・ブレーキ操作不適切
    • 携帯電話を使用しながらの運転
    • 酒気帯び運転
    • おおむね時速15km以上30km未満の速度違反(高速道路を除く)
  • 重過失(違反側に+20)
    • 酒酔い運転
    • 居眠り運転
    • 無免許運転
    • おおむね時速30km以上の速度違反(高速道路を除く)
    • 過労、病気、薬物などの影響により、正常な運転ができないおそれがある場合

【パターン別】T字路の交通事故の過失割合と修正要素

信号機のないT字路の交差点での交通事故は、大きく以下の2種類に分けられます。

  • 直線路(Tの-)を直進する車両と突き当り(Tの|)で右左折する車両の事故
  • 右折車同士の事故

以下、2つのパターンの事故について、道路の状況別の過失割合と修正要素を見ていきましょう。

直線路を直進する車両と突き当りで右左折する車両の事故

【パターン1】道幅が同じ場合

直進車×右左折車(道幅同じ)

【基本過失割合】

A(直進道路直進車)30 対 B(突き当たり道路右折車)70

この事故では、B車に以下の2つの違反があります。

  • 直進車妨害(道路交通法第37条)
  • 左方進行車妨害(道路交通法第36条1項1号)

B車は通常の十字路交差点と異なり、交差する直線道路を左方から通行してくる車両にのみ注意をすれば足りる一方、A車は突き当り道路から進入してくるB車が、当然に徐行してくると思うでしょうし、一般的には直進道路の方が交通量も多く、主要な道路である場合が多いはずです。そのため、このような基本過失割合となります。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

【パターン2】直線路が明らかに広い場合

直進車×右左折車(直進路広い)

【基本過失割合】

A(直進道路直進車)20 対 B(突き当たり道路右折車)80

「明らかに広い道路」とはT字路交差点の入り口において、B車の運転者が直進道路の道路幅の方が明らかに広いと見分けられるものをいい、狭い突き当り道路から交差点に進入するB車に以下の義務が発生します。

  • 直線道路を走行する車両を妨害してはならない義務(道路交通法第36条2項)
  • 徐行義務(道路交通法第36条3項)
【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

【パターン3】右折(左折)車に一時停止規制がある場合

直進車×右左折車(一時停止規制)

【基本過失割合】

A(直進道路直進車)15 対 B(突き当たり道路右折車)85

B車に一時停止義務違反があり、その違反は重大であることから、パターン2の道路幅に違いがある場合よりも、さらにB車に過失が多く付きます。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの一時停止後の進入 Aに+15
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20
「Bの明らかな先入」はどうなるのか?

B車には一時停止義務違反があり、「Bの明らかな先入」は一時停止義務違反の結果起きたこととなるため、B車に有利な修正要素とはなりません。

【パターン4】直進路が優先道路の場合

直進車×右左折車(優先道路)

【基本過失割合】

A(直進道路直進車)10 対 B(突き当たり道路右折車)90

優先道路とは次のような道路のことです。

  • 道路標識等によって優先道路と指定されている道路
  • 道路の中央線または車両通行帯が交差点内にまで連続して設けられている道路

この事故ではA車が走行する直進道路が優先道路として指定されています。
優先道路を走行する場合は、左右の見通しがきかない交差点を通行する場合でも、徐行する義務がないため、A車の過失は低くなっています。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

増額しなければ成功報酬はいただきません

24時間予約受付・年中無休・通話無料


※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください
料金について、こちらもご確認ください。
  • ※諸経費20,000円( 税込22,000円 )がかかります。
  • ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
  • ※事案によっては対応できないこともあります。
  • ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。

右折車同士の事故

【パターン5】道幅が同じの場合

右折車×右折車(道幅同じ)

【基本過失割合】

A(右折車)40 対 B(右折車)60

この事故では、双方の道路幅が同程度なので、「左方優先の法則」にのっとり、B車の過失割合が多く付きます。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

【パターン6】直線路が明らかに広い場合

右折車×右折車(直進路広い)

【基本過失割合】

A(広路右折車)30 対 B(狭路右折車)70

一方の道路幅が明らかに広い場合については、パターン2で解説したとおりです。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

【パターン7】右折(左折)車に一時停止規制がある場合

右折車×右折車(一時停止規制)

【基本過失割合】

A(一時停止規制なし右折車)25 対 B(一時停止規制あり右折車)75

どちらかの道路に一時停止規制がある場合については、パターン3で解説したとおりです。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの一時停止後の進入 Aに+15
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

【パターン8】直進路が優先道路の場合

右折車×右折車(優先道路)

【基本過失割合】

A(優先道路右折車)20 対 B(非優先道路右折車)80

どちらかの道路が優先道路の場合については、パターン4で解説したとおりです。

【修正要素】
主な修正要素 修正割合
Bの明らかな先入 Aに+10
Aの著しい過失 Aに+10
Aの重過失 Aに+20
Bの著しい過失 Bに+10
Bの重過失 Bに+20

T字路の交通事故の過失割合が10対0になるケース

T字路の交通事故では、基本過失割合から修正要素を考慮すると、過失割合が「10対0」になるケースがあります。
例えば、以下のような事故と修正要素が当てはまります。

優先道路を直進するA車と、T字路の突き当りを右左折するB車の衝突事故(基本過失割合は、A車10対B車90)で、B車に著しい過失・重過失(B車に10~20加算)がある場合

  • ⇒ 過失割合0(A車)対10(B車)

優先道路を右折するA車と非優先道路を右折するB車の衝突事故(基本過失割合はA車20対B車80)で、B車に重過失(B車に20加算)がある場合

  • ⇒ 過失割合0(A車)対10(B車)

ただし、現実的には、T字路の場所や道路の状況、天候といった様々な要素から修正が加えられることになります。

過失割合10対0を主張するときの注意点

「過失割合0対10」を主張する場合、被害者側の任意保険会社は示談交渉を代行できない点に注意しなければなりません。

被害者の過失割合が0の場合、任意保険会社は相手方に損害賠償金を支払うことがなくなるため、弁護士法により示談交渉の代行が禁止されています。そのため、被害者の方はご自身で相手方保険会社と交渉を行わなければなりません。

しかし、被害者がご自身で交渉を行っても、相手方保険会社はなかなか主張を聞き入れてくれない可能性もあるため、過失割合0対10を主張する場合は、弁護士への依頼をおすすめします。

弁護士費用が気になる場合は、ご自身やご家族の任意保険や火災保険に「弁護士費用特約」が付帯していないか確認しましょう。弁護士費用特約を利用すれば弁護士費用の問題も解消できます。

T字路の交通事故の過失割合交渉を弁護士に依頼するメリット

T字路の交通事故の過失割合について、弁護士に依頼することで以下のようなメリットがあります。

過失割合が適切かどうかの判断やアドバイスがもらえる

  • 過失割合は警察が決めるものではなく、基本的には相手方保険会社から提示され、当事者間で交渉して決めます。弁護士であれば、提示された過失割合が適切であるか判断でき、交渉のアドバイスをします。

事故様態や法的な観点から適切な過失割合を主張できる

  • 弁護士であれば、過去の判例や法的な観点から適切な過失割合を主張・立証していくことができます。

示談交渉を任せられる

  • 弁護士はご依頼者様の代理人となって相手方保険会社と対等に交渉していきます。その結果、適切な過失割合で合意できる可能性が高まるでしょう。

T字路で起きた交通事故の過失割合に関する弁護士法人ALGの解決事例

過失割合を相手方:依頼者=7:3から8:2に修正し、示談金が増額した事例

【事案の概要】
依頼者がバイクでT字路交差点を直進走行していたところ、右折進入してきた相手方車両に追突されました。相手方からの賠償案では、過失割合は7(相手方)対3(依頼者)と提示されており、依頼者は賠償案に納得いかず、当事務所にご依頼いただきました。

【担当弁護士の活動】
担当弁護士は、過失割合について、刑事記録の写しを取得し、さらに現場の航空写真等から事故様態を検討したところ、依頼者の過失を3割とするのは不当と判断しました。

【結果】
資料から明らかな事故様態をもとに相手方主張の不合理な点を主張した結果、過失割合を8(相手方)対2(依頼者)と修正することができ、当初提示額より示談金を増額することができました。

過失割合を相手方:依頼者=9:1から実質10:0になるよう金額を交渉した事例

【事案の概要】
依頼者運転の自転車が道路を直進中、T字路交差点において相手方自動車が左側から進出して衝突されました。相手方の賠償案は、過失割合9(相手方)対1(依頼者)であり、依頼者は可能な限り10対0で解決したいとのことで、当事務所にご依頼いただきました。

【担当弁護士の活動】
相手方保険会社は当初、過失割合9対1以上の過失は認めないと主張していました。担当弁護士が粘り強く交渉を重ね、相手方からは請求を求めない片側賠償での交渉とすることとしたうえで、具体的な金額交渉を進めました。

【結果】
過失割合について明示しないものの、実質的に過失割合10対0と同様な解決ができました。

T字路で起きた交通事故の過失割合に納得がいかないときは弁護士法人ALGにご相談ください

T字路交差点で起きた事故は、どのようなT字路であったか、また様々な修正要素によって過失割合が大きく変わることがあります。

T字路交差点の事故において過失割合に納得できない場合は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは、交通事故に精通した弁護士が多数在籍しております。ご相談者様から丁寧にヒアリングした事故様態から修正要素を見出し、適切な過失割合を相手方保険会社と交渉していきます。

また、弁護士は被害者の代理人として過失割合だけでなく、損害賠償金についても相手方保険会社と交渉していくことが可能です。 T字路交差点の過失割合についてお悩みの方は、私たちに一度ご相談ください。

増額しなければ成功報酬はいただきません

24時間予約受付・年中無休・通話無料

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。 ※国際案件の相談に関しましては別途こちらをご覧ください
料金について、こちらもご確認ください。
  • ※諸経費20,000円( 税込22,000円 )がかかります。
  • ※死亡・後遺障害等級認定済みまたは認定が見込まれる場合
  • ※事案によっては対応できないこともあります。
  • ※弁護士費用特約を利用する場合、別途の料金体系となります。
弁護士法人ALG 福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治
監修 :福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治 弁護士法人ALG&Associates

保有資格 弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:41560)

福岡県弁護士会所属。私たちは、弁護士名、スタッフ名を擁し()、東京、を構え、全国のお客様のリーガルニーズに迅速に応対することを可能としております。